「彩葉ちゃん起きて。朝だよ」
私は看護師さんに声をかけられて目を覚ました。時刻は……もう8時になるんだ。朝は苦手なイメージなかったんだけど疲れてたのかな。
「おはようございます。朝ごはんですか?」
「うん。10時には退院だから病院での最後の食事だから少し豪華にしておいたよ!」
そう言う看護師さんが持っていたお盆には、前まで質素だったご飯とくらべものにならないぐらい豪華な食事だった。フレンチトーストにホットケーキ。デザートにプリンまでついていた。
「美味しそう!いただきます!」
「はーい。それじゃまた取りに来るわね」
そう言うと看護師さんは外へ出て行った。朝ごはんは、どれも美味しく最高の食事となった。楓お母さんにも今度フレンチトースト作ってもらおうかな。
ご飯を食べ終わり、少し本を読んでいたら病室の扉を叩く音が聞こえた。
コンコンコン
「はい」
「おはよー彩葉。体調はどう?」
「楓お母さん!?お、おはよ。うん。もうどこも悪くないよ」
病室の入口には楓お母さんが立っていた。退院に合わせて迎えに来てくれたのだろうか。私は、エレナお母さんが1人で迎えに来るものだと思っていたからとてもびっくりした。
「そんなびっくりしなくてもいいでしょ。今、エレナが退院の手続きしてるから準備して待っててね。そこ座ってもいい?」
楓お母さんは笑いながら話していた。よっぽど私の態度がおかしかったのだろう。
「うん。大丈夫だよ」
楓お母さんはゆっくりとベッドの近くの椅子に腰を下ろした。私は、楓お母さんに言われた通り服を着替えていつでも退院出来るよう準備を終わらせた。数分もするとエレナお母さんが病室に現れた。
「お待たせ。それじゃ二人とも帰るわよ。彩葉。ちゃんとお世話になった看護師さんにお礼言っとくのよ。出来る?」
「そんなの言われなくても出来るよ」
私は、ぴょんとベッドから飛び降りるとエレナお母さんの元へと駆け寄った。
「随分嬉しそうな顔してるけど何かいい事でもあったの?」
「ううん。なんでもないよ。私看護師さんに挨拶してくるから先下行ってていいよ」
私は、エレナお母さんに一声かけるとお世話になった看護師さんに感謝の言葉を言ってエレナお母さん達が待っている出口へと向かった。挨拶をした時看護師さん達は、ちゃんと挨拶出来て偉いねって頭を撫でてくれて嬉しかったな。
出口近くへと行くと楓お母さんが待ってくれていた。
「行こっか。今日は退院祝いで彩葉の好きなカレー作ってあげるからね」
「ホントに!?やったー!」
私は久しぶりに病院の外へ出たこともあり浮かれていたらしい。ちょっと喜びすぎた自分にびっくりして恥ずかしくなってしまった。
「随分と可愛い声を出すのね」
詩織さんの車の横にエレナお母さんが立っていた。きっと気を使って2人にしてくれたのだろう。でも1番見られたくないところを見られちゃったな。私は、自分の顔が真赤になって行くのがわかった。
「いたなら来てくれればいいのに」
「せっかく楓と二人きりにさせてあげたのに酷いわね。手繋ぎながら迎えに行っても良かったのよ?」
そこにはいつもの月村エレナがいた。この前病室で弱みを見せていた人とはまるで別人だった。
「はぁ……慰めなきゃ良かったかな。早くお家帰りたいから車乗ろうよ」
私は、楓お母さんの手を引くと詩織さんの車の中へと入った。
「退院おめでとう!もうどこも痛くない?」
「はい。ホントにご迷惑をおかけしてすみませんでした」
私は詩織さんに頭を下げた。ホントに今回の1件でどれくらいの大人に迷惑をかけたんだろう……それを考えると胸が苦しくなった。
「そんな暗い顔しないでいいんだよ彩葉ちゃん。私達は何事もなく帰ってきてくれたことが1番嬉しいんだからさ。そうでしょ?エレナ、楓ちゃん」
「そうね。もう言うことは言ったし切り替えていきなさい。小さい頃のミスなんていくらでも修正効くんだからね。問題はその後の行動よ」
「うん。彩葉の笑顔が皆大好きだからそんな顔しないで」
「……ありがとうございます」
私は、皆に見られないように涙を流した。エレナお母さんは気付いていたみたいでそっとハンカチを差し出してくれた。
「着いたよ。それじゃまたね彩葉ちゃん」
車を数十分を走らせるとすっかり見慣れた景色になった。やっと帰ってこれた……数日帰っていなかっただけなのに凄く懐かしく感じられた。
「はい!」
私は笑顔で詩織さんの車を降りた。
「やっと元気になったみたいね。それじゃ行きましょうか」
エレナお母さんの後を追うように私は、家の中へと入った。
「ただいま」
私はそう言うと靴を脱いで並べるとリビングへと向かった。
「それじゃ私は溜まってる仕事があるから自室こもっちゃうから何かあったら言ってね」
「え!?ちょっとエレナお母さん!?」
不敵な笑みを残してエレナお母さんは2階へとあがっていった。
「全く……何か飲みたいものとかある?」
楓お母さんも察したのだろう。やれやれといった表情をしていた。
「えっと……楓お母さんと同じのでお願い」
私は自分の心臓がバクバクしているのが分かった。口の中も乾ききっていて落ち着いていられなかった。好きな人と二人きりになるってこんな感じになっちゃうんだ……私はまたひとつ知らない感情を覚えた。
「じゃあミルクティー作ってあげるからちょっと待っててね」
楓お母さんは優しそうな顔で私に返事を返した。この優しそうな顔を向けてくれたから今の私がいるんだよね……施設で楓お母さんに声をかけてもらっていなかったらきっと今でも静かにずっと本を読んで寝ての繰り返しだったんだろうな。
私はソファに腰を降ろして楓お母さんを待った。
「お待たせ。それじゃ早速だけどあの時の返事言ってもいいかな?」
私にミルクティーを出すと、ぽつんと楓お母さんは横に座った。
「うん……」
返事は分かってる。私はそれを聴くのがとても怖かった。
「そんな怖い顔しなくても大丈夫だよ。えっとね。まずはありがとう。正直心配だったんだ。彩葉とちゃんと仲良くなれるかなって。私も初めて子供を持ってどう接したらいいか分からなかった。でも彩葉は母親としては未熟な私達にちゃんとついてきてくれたよね。ホントにありがとう。それじゃ本題に入るね。ごめんね彩葉。彩葉とは恋人同士にはなれないよ。これから彩葉は色んな人と会って、色んな経験をすると思うんだ。だからもっと広い世界で色んなものを見て欲しい。彩葉って名前の由来覚えてる?彩りある人生を歩んで欲しいって言ったよね。だからこれから長い時間をかけていろんな色を見つけて欲しいんだ」
楓お母さんは、私から目を離さないでゆっくりと話した。答えはやっぱりダメだった。でも自分で思っていたよりショックでないことに気付いたのだ。理由は分かってる。楓お母さんが私の事を真剣に考えてくれたからだ。そうだよね。私の人生はまだ始まったばかりなんだもん。
「ありがとう楓お母さん。私これから頑張るね!それで楓お母さんに紹介しても恥ずかしくない人を連れてくるから!エレナお母さんより素敵な人絶対に見つけてくるね!」
「ふふ、楽しみにしてるね。それじゃエレナ呼んでこよっか。きっと気使って2人にしてくれたと思うしあんまりほっとくと拗ねちゃうからね」
「そーだね」
私と楓お母さんは2人でエレナお母さんがいる2階に向かった。
「ねぇ彩葉?」
「うん?何?」
「これからも3人で仲良くずっと暮らそうね」
「ふふ、何それ。言われなくてもずっと一緒だよ」
私は、楓お母さんに抱き着いた。やっと見つけた私の居場所。これからどんな事が起きてもこの3人なら絶対やって行けると思った私だった。
投稿遅れてしまって申し訳ありません……
次回からは彩葉が中学生になった話を書いていきます。ここまで読んでくださってありがとうございました!