「ねー!聞いてるの月村!」
「あーもう!うるさい!聞いてるってば!」
私と綾小路さんはずっとこんな感じだった。道中小学生の時はどんなだったの!?ってかなんで溜息ついてたの!?ってか良く見たらめちゃくちゃ可愛いじゃん!モデルとかやってんの!?などなど質問攻めにされていたのだ。
「だって何一つ返事返してくれないんだもん。いいじゃん着くまで暇なんだし。あ!あれじゃん!学校見えてきたよ!」
ホントに自由な子だなぁ。綾小路さんは目の前に見えてきた大きな建物を見つけると目を輝かせて指を指していた。
チェリチョウ大学付属中学校は、高校、大学と共にここら辺では有名なお嬢様学校らしい。設備は充実していて、有名なお嬢様もここに入ってくるらしい。実際エレナお母さんと楓お母さんもいた事だしね。エレナお母さんがエレナお嬢様って呼ばれてるとこあんまり想像つかないんだけどね。だってあんなだし……
「くしゅん!」
「ちょっとエレナ風邪とかじゃないよね?」
「誰かが噂でもしてるんじゃないの?」
校舎の近くには新入生と思われる人達がたくさん集まっていた。皆真新しい制服に身を包んで嬉しそうだった。
「うわー!見て見て月村!リムジンで来てる人いるよ!」
「指さしたらダメだよ。でも凄いね。ホントにお嬢様学校なんだここ」
「私も良く分からないけどオバサンがここの学校なら安心して入れさせられるって言ってここに入ることになったんだ。月村もそんな感じ?」
「まぁそんな感じ」
どうやら綾小路さんは私と同じでお嬢様とかではないのかもしれない。まぁ言動的にお嬢様なわけないか。
「ふーん。あ!クラス分け発表されてるみたいだよ!見に行こーよ!」
「ちょっと引っ張らないでよ」
私は、綾小路さんに手を引かれながら学校の中へと足を踏み入れた。
お嬢様学校だけあって校舎は綺麗でグラウンドもとても広かった。門の近くでは上級生が部活の勧誘などを行っているみたいだ。
「あ!私B組だ!月村は……一緒じゃん!やったね!」
手を差し出され私は条件反射で手を上げてしまった。
パァン!
「これから宜しくね!」
「あ、うん。宜しく」
生まれて初めてのハイタッチに少しドキマギしてしまった。それに他の生徒達に見られたんじゃないかな。どうしようおかしな人だと思われてたら。
「どうかした?」
「ううん。何でもない。早く行こ。入学式まで教室待機って書いてあったでしょ」
私は他の人から変な目で見られてないか気になってその場にいられなくなり綾小路さんを置いてそそくさと校舎の中に入った。
「えっとB組は……4階みたいだね。面倒くさい……」
小学校の時は3階建てだったからなぁ。私は面倒くさいと思いつつ4階まで一気に駆け上がった。
「ちょっと月村……早いって……」
私の後ろでぜぇぜぇと息を荒らげて肩で息をしている綾小路さんがいた。もしかして運動とかは苦手なのかな?
「別に一緒に来ること無かったのに」
「冷たいね……」
「こういう性格だから」
「そう……よーし!復活!行こっ!」
「だから手を引っ張らないで!」
私は綾小路さんに手を引かれながら教室に入ったのだが、それが良くなかった。教室に入った瞬間皆が私達のことをいっせいに凝視したのだ。
「え?あの二人手繋いで入ってきたよ」
「もしかして付き合ってたりするのかな?」
「ってか背の高い子モデルみたいですんごい可愛くない!?」
意見は十人十色だったがその色々な声が私の耳に入ってめちゃくちゃ恥ずかしくなってしまった。なんで手を繋いだだけで付き合ってるってなるのよ……ってか綾小路さんはたまたま行きにあっただけで友達でもなんでもないし。
私は、繋がれていた手を振りほどくと自分の席である窓側の1番後ろの席へと座った。1番後ろかぁ。身長的に後ろになったのかな。そう言えば綾小路さんはどこだったんだろ。身長順なら前の方になりそうだけど。
綾小路さんは廊下側の1番後ろの席で隣の子にすぐ話しかけていたみたいだった。コミュ力の塊かなあの子は……っていうか身長順じゃなかったんだね。それなら前が良かったなぁ……前の方が黒板良く見えるし勉強も集中しやすいんだけどね。
「ちょっと柚月!ちんたらしてないで早くしなさいよ!」
廊下の方からだろうか。甲高い声が聞こえてきた。何か揉め事だろうか。
「申し訳ありません。皐月お嬢様、こちらが教室になります」
そう言って後ろの扉が開いて入って来たのは、私と同じぐらいの身長で綺麗な金髪を肩まで伸ばした女の子と自信がなさそうに金髪の子の後ろにくっついて歩く黒髪のショートの子がそこにはいた。それにしても綺麗な人。エレナお母さんや楓お母さんには届かないにしても、彼女達が入って来て教室内の雰囲気がガラッと変わった。
「皐月お嬢様。席はこちらになります」
「ふん。喉が乾いたわ。何か買ってきてちょうだい」
「は、はい!直ぐにお持ちします」
人使い荒いなぁ……きっとお嬢様とそのメイドなんだろうけどもう少しあの子の気持ちも考えてあげた方がいいと思うけどな。ってか私の前の席ってなんかやだな……彼女らの第一印象は横暴な主人と気の弱い従者。そんな所だろうか。
「ちょっと貴方、聞いてるの?」
「え?私ですか?」
綺麗な顔が私の目の前にあった。きっと考え事をしていたせいでこの金髪さんの言葉が全く私の耳に入っていなかったのだろう。
「貴方以外誰がいるっていうのよ。私は堂場皐月よ。これから1年間宜しくお願いするわね」
皐月さんは優しそうな笑顔を私に見せながら手を差し出してきた。予想していたよりまともな対応だった。メイドさん以外にはこんな感じなのかな。その優しそうな笑顔あの子にも見せてあげたらいいのに。
「月村彩葉。宜しくね」
私は、いつもの通り名前だけを言って皐月さんの手をそっと握った。それだけで終わると思ったが私が月村と名を名乗ったところ教室内の雰囲気がまたガラッと変わり周りがざわついた。皐月さんも表情が少し固くなったように見えたが気のせいだろうか。
「ん?なにか変な事言ったかな私」
私にはなんの心当たりもなく、ぼそっと皐月さんに言葉を投げた。変な事言ったつもりはないんだけどな。
「多分周りの子がざわついたのは貴方が月村って言ったからよ。ここら辺ではその苗字は有名ですもの。月村エレナ。ここの学校で数々の伝説を残したって言われてる人よ。ある時はクラス全員を相手にして全員を返り討ちにしたり、メイドの橘楓さんを守るためならなんだってしたって聞いたわ。とにかく凄い人って事で広まってるのよ。職員室前の部活や学業成績優秀者だけが名前が乗るところにしっかりあるのよ」
そんなに凄い人だったんだエレナお母さん……家ではあんなんなのに……
「それで、月村さんはエレナさんとはお知り合いなの?」
「月村エレナは私のお母さんだよ」
別に隠す必要もないと思い私は皐月さんに二つ返事で返した。
「えええええ!!!」
私がそう言った瞬間クラス中から声が上がり、席を立って皆が私の元へとやってきた。
「月村さん今度お母さんに会わせて!」
「家でもやっぱりかっこいいお母さんなの!?エレナ様と毎日一緒だなんて羨ましすぎる!いいなー!」
どうやら選択肢を間違えたらしい。黙っておけば誰にも干渉されずにただの同じ苗字で終わっていたかもしれないのに……
「えっと……機会があれば紹介するね」
私はクラスの人にそれだけ伝えて学校のトイレに逃げ込んだのだった。
彩葉「そうだ……皆に楓お母さんの足を舐めてる動画見せれば全て丸く収まるんじゃないかな。月村エレナっていう人間の本性ってタイトルで動画編集して学校中に流してもらえば……」
エレナ「恐ろしい事しようとしないで貰えるかしら……」
天音「その役目任された!絶対面白い!!!」
彩葉「ホントですか天音さん!お願いします!」
エレナ「貴方達の命が惜しかったらやめることね」
彩葉、天音「……」