私の居場所を求めて   作:足でされたい

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名前呼びと遭遇

「月村起きて。入学式終わったよ」

 

「ん……」

 

どうやら知らない間に眠ってしまっていたらしい。入学式早々寝るってこの先大丈夫かな……

 

「おーい。そろそろ私の肩が月村の体重支えきれなくなってるから早く起きてー」

 

「え?」

 

ちらっと綾小路さんの方を見ると吐息が当たってしまうんじゃないかってレベルの近くに顔があって本当にびっくりした。ってかよく見るとめちゃくちゃ可愛いじゃん綾小路さん。目は二重でパッチリしているし唇が小さくて小顔でとにかく私なんかよりずっと可愛い人だと思った。って違う!!!

 

「ご、ごめん!もしかしてずっと寄っかかってたの私?」

 

「気にしなくていいよ。緊張の糸が切れて安心したのかなって思ってたから。それに月村の寝顔可愛かったし」

 

綾小路さんはニヤニヤと笑いながら私に言葉を返した。ホントにまたそういう事言うんだから。

 

「ホントに色々とありがと。正直綾小路さんにさっき連れ出して貰えなかったらどうなってたか分からなかったかも」

 

「別に気にしなくていいって。私がやりたいようにやっただけだしさ。ほら退場だよ。とっとと進んだ進んだ」

 

「とにかく後でしっかりお礼したいからすぐ帰らないで待っててね」

 

「それなら楽しみにしとくね」

 

こうして私の入学式は無事に終わり、教室へと戻った。退場途中エレナお母さんがなんだかニヤニヤしていた気がするのは気の所為だろうか。あの人の含みのある笑み見た時って絶対何か変な事考えてるんだよね。気のせいだといいけど……

 

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教室に戻ると、私はクラスの皆に机を囲まれていた。

 

「凄いね月村さん!かっこよかったよ!」

 

「別にそんなことないよ」

 

どうやら先程の挨拶でクラスの人気者になってしまったらしい。いや嬉しいんだけどこうも周りから褒められたことってないからどんな対応していいか分からないからめちゃくちゃ困った。

 

「ほらほら皆さん。月村さん困ってるじゃないの。そろそろ先生戻ってくるし席に戻りましょ」

 

私があたふたしていたら前の席の皐月さんが助け舟を出してくれた。流石お嬢様の一声だ。さっきまで私の周りを囲んでいた人達が一瞬でいなくなった。家柄とかも有名なのかな?私はそういうの分からないし同じ1年生に上下関係なんていらないと思ってるからね。

 

「ありがとう皐月さん」

 

「いえいえ。それにしても本当にかっこよかったですわよ。お疲れ様」

 

そんなにかっこよかったら家に帰ったら楓お母さんにも褒めて貰えるかな。楓お母さんに彩葉かっこよかったよ!って言って貰える所を想像したら頬が緩んでいくのが自分でも分かった。

 

その後は乾先生が戻って来て明日からの日程をざっと説明すると今日は解散となった。

 

ホームルームが終わると綾小路さんが私の方に向かって歩いて来た。

 

「終わったねー。一緒に帰ろ」

 

「うん」

 

あれだけの事をしてもらって流石に1人で帰るなんて言えなかった私は、綾小路さんのその提案に乗ることにした。

 

「それで私にお礼って何してくれるの?何かお礼したいって言ってたよね?」

 

綾小路さんは目を輝かせて私の方を見ていた。何にも考えてなかった……こういう時どうしたらいいんだろ。

 

「逆に何か私にして欲しい事ってある?出来る範囲の事なら何でもするよ」

 

「んーそーだね。後一つだけ忠告しとくね。『何でも』なんて言葉は軽々しく使わない方がいいよ。私が難しい事言ったらどうするつもりだったの?」

 

「大丈夫だよ。その時は何にもあげないから」

 

「ホントにいい性格してるね……これはお礼じゃなくて提案なんだけどさ、綾小路さんって呼び方他人行儀で嫌だから彩香って呼んでよ。私も彩葉って呼びたいからさ。ダメかな?」

 

なんだか綾小路さんの頬がほんのり赤くなっているのは気のせいだろうか。名前呼びね。別にそれぐらいなら構わないかな。前の席の皐月さんも名前で呼んでるしね。

 

「別にいいよ」

 

そう言うと綾小路さん、ううん。彩香の顔がぱぁっと明るくなったのが分かった。

 

「よかった!それじゃ改めて宜しくね彩葉」

 

「こちらこそ宜しくね彩香」

 

別に名前呼びくらいなんて事ないと思っていた私だったが少しだけなんだか恥ずかしかった。私は恥ずかしさを隠すために彩香に早く帰ろうと言って帰路を急いだ。

 

「お礼だけどさ、今度何か飲み物奢ってよ。私はそれぐらいで満足だよ」

 

「そっか。それなら今度お昼一緒に食べた時にでも奢るね」

 

そんな会話をしつつ私と彩香は2人で通学路をのんびりと帰っていたのだが……家まで後もう少しの所まで来た時に私は、いつも見ている2人の背中を確認した。

 

なんであの人達まだ帰ってないの!入学式終わってからすんごい時間経ってるのになんでまだこんなとこうろちょろしてるのよ。

 

なんとなくだけど、2人で一緒に帰っている所をエレナお母さんに見られたくなかったのだ。楓お母さんに見られたところで「お友達?こんにちは」ぐらいで終わると思うけどエレナお母さんに関してはどんな事を言うか全く予想出来なかった。

 

「ねぇ彩香。ちょっと回り道していかない?」

 

「え?でも彩葉の家ってもうここら辺なんじゃないの?」

 

「そうだけどちょっとこのまま真っ直ぐ帰ると色々面倒な事になる気がして」

 

彩香は、何を言ってるのか分からないと言った表情をしていた。それはそうだろう。帰るべき家が目の前にあるのになんで今更迂回したがるのかなんて分かるわけが無い。取り敢えず接触だけは避けたかった私だったがそのお願いは神様に聞き取って貰えなかったらしかった。

 

「あ、彩葉じゃない。おかえりなさい」

 

エレナお母さんに見つかってしまった。もー!わざわざ声掛けなくたっていいのに!

 

「彩葉?お母さんおかえりなさいって言ってるよ?」

 

「あーうん。ただいまエレナお母さん、楓お母さん」

 

私が2人にお母さんと言ったからだろうか彩香は、不思議そうな顔をこちらに一瞬向けたがすぐに2人のお母さんの方に顔を向けていた。

 

「こんにちは」

 

私がエレナお母さんに返事を返すと横の彩香もエレナお母さんと楓お母さんにぺこりとお辞儀をしていた。

 

「こんにちは。お友達……よね?彩葉を宜しく頼むわね」

 

「は、はい!綾小路彩香と言います。こちらこそ宜しくお願い致します!」

 

流石の彩香もエレナお母さんの前では低姿勢になっていた。まぁそれが普通か。

 

「綾小路?聞いていいかしら。綾小路由紀さんって人はご存知?」

 

「はい。私の叔母にあたる人です。この学校を進めてくれたのも叔母で小さい頃から面倒みて貰ってました」

 

「そうなのね。良かったらお茶でも飲んでいかない?楓もいいわよね?」

 

「もちろんだよ。私は楓。宜しくね彩香ちゃん」

 

楓お母さんがニッコリと笑いながら彩香に自己紹介をしていた。やっぱり楓お母さんの優しい笑顔は天使そのものだった。

 

「宜しくお願いします!ほんとですか!?それじゃお言葉に甘えてお邪魔します!」

 

え?私の意見は?ってかそんなとんとん拍子に家にあげていいの!?うちの家系ちょっと複雑なの忘れてるわけじゃないよねエレナお母さん。

 

「ほら彩葉。彩香ちゃんを案内してあげて。先に帰って準備しておくわね」

 

「え?うん。分かった」

 

そう言うとエレナお母さんと楓お母さんは、一足先に自宅へと戻って行った。

 

「めちゃくちゃ緊張した……エレナさんホントに綺麗で凛々しくてなんか私なんかとオーラが違うもん。お茶した時に彩葉の小さい頃の話とか聞いちゃおっと!ほら早く行こ行こ!」

 

綺麗で凛々しくてオーラがある。か……その魔法がとけないといいね彩香……

 

私と彩香はエレナお母さんと楓お母さんが待っている自宅へと急いだ。




エレナ「良かったじゃない楓。初日で可愛い友達作ったみたいよ」
楓「みたいだね。でもエレナ、あんまり彩葉は家にあげることに同意してはなかったみたいだよ。ちょっと不機嫌そうな顔してたし」
エレナ「由紀ちゃんの話も聞きたいしね。それになんだか面白そうだし」
楓「もー……後者が9割でしょ。とにかくせっかく来てくれるんだからくれぐれも変な事言わないでよ」
エレナ「分かってるわよ」

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