「皆も知っての通り入学して2日目で残念な出来事が起こってしまいました。皆の前では言いづらい事だと思うけど反省してるなら後で私のところに来てください。後になって私でした。は許されないからね」
HRがはじまると私の汚れた上履きを持って乾先生が難しい顔をして黒板の前に立っていた。乾先生の表情からもすごく怒っていることが分かり、クラスの皆は静かに聞いていることしか出来ないみたいだった。
「それじゃ1時間目もそろそろ始まるのでこれで朝のHRは終わります。もうこんな悲しい出来事は二度と起きない事を祈っています」
平静を装って言っていたみたいだが、声は少し震えていたし乾先生も真剣に怒ってくれているみたいだった。
「それでどうするの?犯人探すって言ったって彩葉の事知ってる人はクラスだけじゃなくて学校全体の人が知ってるし、どこで恨み買ったかも分からないよ」
HRが終わると、すぐに彩香が私の席へと駆け寄ってきた。
「まぁ確かにね。とりあえず手当り次第聞いてみるよ。いつからこの落書きがあったかっていうのさえ分かればそれなりに絞れると思う。今日の昼休みにでも私がクラスの人に聞いてみる」
「それなら私は隣のクラスの人に聞いてみるね」
「では私は知り合いの先輩がいるので不審な人を見なかったか柚月と聞いてきますわ」
「皆ありがとう。ごめんねまだ会って2日目なのにこんな事に付き合わせちゃって」
彩香と皐月さんと柚月ちゃんにはホントに頭が上がらなかった。まだ会って2日目の私にどうしてここまでしてくれるんだろうか。私が彩香や皐月さんの立場だったら同じ事が出来たとは思えない。
「気にしないで。困った時はお互い様でしょ」
「そういう事ですわ。早くあんな嘘は嘘だったってその子に言わせなきゃですもの」
「私も流石にあれは酷いと思います……お嬢様の意思ではなく、私の意思で行動しているので気にしないで下さい彩葉様」
「皆……ホントにありがとう」
そう言うと3人は笑顔で私の方を見ていた。
私達は、昼休みを待って各自聴きこみ調査へと向かった。私は誰から聞けばいいかな。
「んー……そう言えば私の机拭いてくれてた子にお礼も兼ねて聞きに行こうかな」
私は朝自分がやられた訳ではないのにわざわざ私の為に机を吹いていてくれた子を探した。確かメガネに三つ編みの子だった気がするんだけど……あ!あの子かな。
私は教卓の前で1人ぽつんとご飯を食べている三つ編みの子に声をかけた。
「今ちょっといい?」
「え……あ、月村さん。大丈夫ですよ」
私が急に声をかけたせいか、その子はびくっと肩を震わせ驚いているみたいだった。私と同じように余り人付き合いが得意な子じゃないのかな。
「朝はありがとね。わざわざ消してくれようとしたみたいで」
「ううん。私が同じ事やられたら嫌だと思ったから……」
目線が合わない。やっぱり人と話すのがそんなに得意じゃないのかな。得意じゃないこと強いるのも可哀想だし聞くこと聞いちゃおうか。
「それで話って言うのはね。えっと……ごめん名前なんだっけ」
「湊 奏(みなと かえで)です」
「湊さんね。それで本題なんだけど湊さんが来た時にはあの落書きがあったんだよね?湊さんが初めて見つけた時クラスに他の人がいたか教えて欲しいんだ」
私の考えはこうだった。誰かうちのクラスの人が朝早く来て書いたものじゃないかなって。夜遅くに書いていたって事も考えられるけどうちの学校ってセキュリティに関しては日本一だってエレナお母さんが言ってたし、いくら先輩と言えど入学して初日の教室に簡単に入れるとは思えないんだよね。初日は部活の仮入団も禁止だしよっぽどの用が無い限り1年生の教室に近寄るとは考えられなかった。
「えっと……私が1番最初だったよ……それで私が来た時には書き込みがあって……」
「そうなんだ。ご飯食べてるところにごめんね。ありがと」
「いえ……」
最後まで結局目が合わなかった。前髪で表情は隠れていて何も読み取れないしちょっと苦手な子かもしれない。今回の件が無ければまず話すことはない子だったかな。
っていうか……
「私の考え詰んだんじゃ……てっきり誰かが朝一番に書いてたと思ったのにあの子が1番じゃうちのクラスの人じゃ100%無いじゃん……」
いざという時ホントに使い物にならないな私の考えって……後は彩香とかが帰ってくるまで無駄に聞きこまないで待ってようかな。また変な恨み貰いたくないし……
それから15分後に彩香達3人はB組の教室に戻ってきた。何か収穫はあったのだろうか。
「どうだった?」
「いつ書かれたものかっていうのは私達3人の聞き込みでだいたい絞れたよ。まず絶対白なのが先輩達。乾先生に聞いたら部活動の強引な勧誘とかを防ぐために3日間は1年生の教室っていうかこの4階には立ち入り禁止なんだって。私達が昨日入学式終わって、1年生全員が下校してから誰一人この4階には来てないって。だから書けるとしたら朝しかないと思う。まぁ生徒じゃなくて先生があれを書いてたら正直いくらでもごまかせると思うし、打つ手なしだけどね」
「なるほど……でもうちのクラスの人じゃないと思う。朝一番に登校した子じゃないかって私も考えたんだけど、うちのクラスで1番最初に登校してるの私の机の落書き消そうとしてくれてたあの子なんだよね」
「ならその子しかいないんじゃないでして?」
「え?でも消そうとしてくれてたんだよ?」
「だからこそですわ。入学して2日目でいきなり他人が嫌がらせをされててそれを助けます?私ならしませんわね。自分に飛び火しかねませんし。お友達ならともかく他人相手にそこまでしますかしら」
そういう考え方も確かに出来なくはないか。皐月さんが言う通り偽善者の振りをしていれば真っ先に自分が犯人候補から消されるもんね。これでホントに普通に良い人だったら後で皐月さんと謝りにいかなきゃだけど……
「ちょっと別ルートで調べてみる。あまり使いたくない手ではあるんだけどね」
「え、そんなのあったの!?最初からそれ使ってよ彩葉」
「いや……ホントはマジで使いたくないんだけどね……」
「それでその使いたくない手というのはどういうものでして?」
「それはね」
私がその使いたくない手を話すと、周りの3人は確かにそれなら高速で犯人が見つかりそうだと納得した様子だった。ホントにこれだけは使いたくなかったんだけどなぁ……
次回 お母さん乱舞
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