「それでどうなったの?」
朝の通学途中に彩香から声をかけられた。結局お風呂の後エレナお母さんとあの話をする事もなく私は寝てしまった。完全にエレナお母さんに任せっきりになってしまったが大丈夫だろうか……
「まだなんともかな。エレナお母さんは協力してくれるみたいだけど犯人見つけられるかは分からないかな。正直これ以上私達でどうこうできるものでもないし任すしかないと思う」
「まぁそうだよね。あんまりこの話したくないし違う話しよ。せっかく彩葉と2人なのにこんなしんみりした話したくないもん」
そう言うと彩香はニコッと可愛い笑顔を私に向けてきた。彼女も彼女なりで気を使ってくれているのだろう。最初に出来た友達がホントに優しい人でよかった。
「なにそれ。遅れちゃうから早く行こ」
「え!?ちょっと待ってよ彩葉!」
私は少しだけ赤くなった顔を見られないように彩香をあしらうと学校へと向かった。
学校に着くと昨日の事もあってか、私に話しかけてくるクラスメイトは誰もいなかった。入学式の時に今度エレナさんの事聞かせてねって言ってた子もいたけどあからさま私の方に目を向けようとはしなかった。まぁそうだよね。私が貴方達の立場だったら庇ったら次は自分が標的にされるかもって思うし最善の選択だと思う。
「彩葉さん、彩香さん。おはようございます」
「おはようございます」
声をかけられ振り向くとそこには皐月さんと柚月ちゃんが2人並んで私の方を心配そうに見ていた。
「おはよ。別に敬語じゃなくていいのに」
「なんというかこれは家柄もあるので気にしないで下さいな。それでどうなりましたの?」
「とりあえずエレナお母さんに協力頼んだから何とかしてくれると思う。だからそれまではいつも通り何事も無かったように過ごすと思うよ」
「そうですか……何かあれば言ってくださいね。少しでもお力になりたいので」
「ありがと」
皐月さんは、最初の怖そうな印象はどこかへいってしまった。やっぱり話してみないと分からないことってあるよね。この件が無かったらただメイドにきつく当たってるお嬢様っていう認識しか生まれなかったかもしれない。
そして朝のHR、1時間目2時間目の授業をこなして3時間目に入ろうとした所で校内放送が入った。
ピーンポーンパーンポーン。
『1年B組の月村彩葉さん。至急校長室までお越しください。お母様がお見えになられました』
え?今私の名前呼ばなかった?幻聴かと思ったが彩香がダッシュで私の席の方までかけてくるところを見ると間違いないのだろう。
「ねぇ彩葉!今のってもしかして」
「いや、お願いはしたけどわざわざ学校まで来なくてもいいって……それにこんなタイミングで学校来たら私がお母さんに頼ったってバレてお母さんの力使ったのバレるじゃん。まぁいいや……とりあえず行ってくるね」
「野次馬達の処理は私にお任せ下さい。あり1匹入らないように堂場家の力を使って近付けさせんまから」
「あはは……まぁあんまり手荒な真似はしないでね」
そう言って私は、お母さんが待つ校長室へと向かった。ってかあんな大体的に放送されちゃったらエレナお母さんのファンの人達校長室の前で溢れかえっちゃうんじゃ……
私の予想通り校長室の前では人だかりが出来ていた。1年生だけではなく、2.3年生も来ているみたいだった。
「やっぱりこーなるよね……」
あんな人だかりのど真ん中を通る度胸もない私は校長室の通路の影から行くタイミングを見計らっていた。迂闊にぱっと出たら囲まれて質問攻めされるに決まってる。対応するのもめんどくさいし、出来るだけ関わりたくなかった。
どうしようかどうしようか悩んでいると、後ろから肩を叩かれた。
「ふぇ!?」
「驚かせてしまったらごめんなさい。私達は皐月お嬢様の執事です。今すぐあそこにいる人達にどいてもらいますので少々お待ちください」
その数5人。スーツに身を包んだ若い人達が校長室へと向かっていった。お嬢様ってホントに凄いんだな……
行く末を見守っていると黒服のお兄さん達が野次馬の人達に声をかけていた。ここからでは話の内容は聞こえないが、皆の顔色が青くなっていくのが見て分かった。一体なんの話をしているんだろうか……
数分もすると校長室の前に出来ていた人だかりはなくなり、今は誰もいなくなった。
「月村様お待たせしました。外は私達が見張っているので気にせず中でお母様と話されてください」
「ありがとうございます」
私は黒服の人達にお礼を言うとお母さんが待つ校長室の中に入った。
「失礼します。遅くなってしまってごめんなさい。それでなんの用?」
中に入ると、エレナお母さん、中等部の校長先生と高等部の校長先生の佳奈おばあちゃんがいた。おばあちゃんと会ったのも久しぶりかな。橘 佳奈。旧姓は観月 佳奈。年齢的にはおばあちゃんなんて年齢では無いけれども紅葉おばあちゃんと同性婚をして関係的には私のおばあちゃんという事になる。入学する時にとてもお世話になったし紅葉おばあちゃんと同じように優しい人だ。
「冷たいのね。せっかく佳奈さんの手を借りて犯人見つけてあげたのに」
エレナお母さんは来客用の椅子に座って紅茶を飲みながら話していた。ってか校長先生2人立ってるのになんで1人だけ立ってるのよ……
「それはめちゃくちゃ有難いけどわざわざここに来なくても……エレナお母さん自分が有名人だって自覚あるの?」
「仕方ないじゃない。早く伝えてあげた方が貴方も楽になると思ったのよ。まぁ私もあまり時間がないから単刀直入に言うわね。犯人は湊って子。貴方の机が窓際だった事に感謝した方がいいわね。外からの監視カメラですぐに分かったわよ」
私は犯人の名前を言われて少しだけ悲しい気持ちになった。なんであんな優しそうな子があんな事……
「そっか……ありがとうエレナお母さん。それに佳奈さんもホントにありがとうございます。ご迷惑おかけしちゃってすみません」
「ううん。私こそ事前に防げなくてごめんね彩葉ちゃん。エレナに怒られちゃったよ。こういう事が起こる想定は出来たんじゃないかって。ホントに辛い思いさせてごめんね」
そう言いながら佳奈おばあちゃんは私の髪を撫でた。
「佳奈さんが悪いわけないですよ。同じクラスの子が2日目の朝に何かやるなんて想定する方が難しいです。エレナお母さんも私のために怒ってくれたのは嬉しいけど佳奈さんに無茶言っちゃダメだよ」
「まぁそうね。思いのほか私もかなり怒ってるって事よ。湊って子に貴方が何かする前に私が1発やりたいぐらいだわ」
「ホントにやめて……」
エレナお母さんが言うと冗談に聞こえないんだよね。とにかくこれは私の問題。湊さんにちゃんと話さなきゃ。
「それじゃ私は帰るわね。この後の事は彩葉に任せるわ」
「わかった。ありがとね」
そう言うとエレナお母さんは校長室を後にして帰ったみたいだった。
「それじゃ月村さん、これが証拠の写真になるわ。辛いだろうけどちゃんと湊さんと話しておいで。本来なら私が話にいきたいんだけど自分で話したいんでしょう?」
「はい。校長先生には申し訳ないですがこの後の処理は私に任せてください。事を大きくするつもりもないので。話が終わったあとの処分はそちらにお任せします。それでは私もこれで失礼します」
「わかったわ」
さてと……湊さんに察されないようにしなきゃ。逃げられたらつまんないからね。放課後どこか遊びに行かない?って感じで誘ってみればいいか。
私は、証拠の写真をスカートのポケットに入れて教室へと戻った。
エレナ「別にお義母さんが来なくても良かったのに」
佳奈「紅葉にお願いされてたのよ。エレナちゃんが暴走しないように見張っててって」
エレナ「私そんなに何かやらかすって思われてるのかな……」
佳奈「昔やんちゃしてたって楓が言ってたよ。ジェシカちゃん締め上げたりしてたでしょ?まぁ念の為の保険よ。それで彩葉ちゃん1人に任せてよかったの?」
エレナ「私に似てるから。間違いなく私がやられたら自分でなんとかしようと思うしね。私を頼ったのも仕方なくだと思うわ。とにかくちゃんと話せることを私は祈ってるわよ」
佳奈「そうだね。帰ってきたらたくさん優しくしてあげてね」
エレナ「そこら辺は楓に任せるわ」
佳奈、エレナ「それでは次回をお楽しみに!」