私の居場所を求めて   作:足でされたい

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決着

「月村さん起きて。もうそろそろ昼休み終わるよ」

 

「ん……」

 

どうやら熟睡してしまっていたらしい。体を起こして時計を見ると、昼休みが丁度終わる時間の13時30分を示していた。

 

「起こして頂いてありがとうございます。それじゃ私は戻りますね」

 

「気にしないで。それじゃエレナに宜しくね彩葉ちゃん」

 

「はい。失礼しました」

 

そう言うと私は保健室を出て自分の教室へと足を進めた。

 

 

 

 

 

 

教室へと戻ると、窓際で皐月さんと柚月ちゃんと話していた彩香が、一目散に私の方へと駆け寄ってきた。

 

「大丈夫?」

 

いつもの元気な笑顔の彩香とは真逆で、私を心配そうに見つめる彩香の顔がそこにあった。

 

「うん。ホントにただちょっと疲れただけだから」

 

「ならいいけど……何かあったら少しの事でもいいから言ってよね。友達を頼る事も大切ってエレナさんも言うと思うよ」

 

「ホントにありがとう。でもホントに疲れただけだから大丈夫だよ。また何かあったら言うね」

 

「わかった……」

 

若干腑に落ちていないみたいだったが、彩香は皐月さんと柚月ちゃんの元へと戻って行ったみたいだった。

 

 

5時間目が始まるとすぐに前の席の皐月さんから私宛に小さなノートの切れ端が送られてきた。書いてあった内容は、

 

『真犯人は分かったみたいですね。いつでも力になりますから仰って下さいな。皐月』

 

やっぱり皐月さんにはバレていたみたいだった。エレナお母さんまではいかなくとも、皐月さんもよく人の事を見ている人だなと思った。私が皐月さんの立場だったら気付いているとは思えない。

 

私は皐月さんの手紙に

『大丈夫だよ。心配してくれてありがとう』

という文章だけを返した。

 

さて、どうやって湊さんに声をかけようかな。良かったら一緒に帰らない?いやいやこんなの不自然すぎる。どうしていきなり私と?ってなるに決まってるし、逃げられたら私の当初の目的である土下座をさせることが出来なくなってしまう。土下座させるなんてバカバカしいと思われるかもしれないが、今後私になにかしたらこうなるって分からせるためでもあるんだから。昔エレナお母さんも何回も揉めたって言ってたし、月村エレナの娘なら同じようにどうにかしなくっちゃ。

 

悩んでいるとまた皐月さんから手紙が届いた。

 

『女は度胸ですわ。単刀直入に聞くのが1番だと、私は思いますよ』

 

なんで前向いてるのに私の考えてる事分かるんだろう……お嬢様って皆心が読める特殊能力でもついてるの?

 

でも単刀直入か。それもいいかもね。なんたって私には湊さんが机にイタズラ書きをしている証拠写真だってあるんだ。わざわざ遠回りする必要もないか。

 

私は帰りのホームルームが終わったらすぐに湊さんに声をかけることを決意して、彩香には先生に呼び出されてるから先に帰っててという手紙を回してもらった。彩香の事だから待ってるよっていいそうだけど、そうなったら皐月さんにちょっと足止めして置いてもらおうかな。

 

私は皐月さんにその有無を伝えた手紙を渡して5時間目の授業終了のチャイムを待った。

 

 

キーンコーンカーンコーン……

 

これで後は帰りのホームルームだけ。私は湊さんに悟られないように平静を保ってその時を待っていた。内心は小さい頃楓お母さんに気持ちを伝えた時ぐらい心臓がバクバクしていて、前の席の皐月さんにその心音が聞こえるのではないかと思うぐらいだった。

 

帰りのホームルームはいつも通り進行し、乾先生が明日の予定を軽く説明すると……

 

「起立」

 

「さようなら」

 

そう言うと生徒は一斉に教室の出口へと足を運ぶ。でも私が向かうべき所はそこじゃない。私は彩香が皐月さんと教室を出たのを確認してから、丁度教室を出ようとする湊さんの腕を掴んだ。

 

「ちょっと来て」

 

私はこの時、自分がこんなにも感情のこもってない声を出せたんだなと思った。元から私の声は少し低かったがそれよりも更に低い声が喉から出たのだ。

 

「え?なんですかいきなり?」

 

湊さんは明らかに動揺していた。クラスの子もどうしたんだろう?といった表情で私達の事を見ていた。幸いそこに彩香の姿は無く、上手いこと皐月さんがやってくれたみたいだった。

 

「うるさい。黙ってついてきて」

 

そう言うと、私は返事も聞かず湊さんの腕を引っ張って屋上へと向かった。

 

きっと周りの人達は、興味本位でついてくるんだろうなと思ったが、私がいじめられているのを見ているからだろうかは分からないが、誰一人として触らぬ神に祟りなしといったぐあいについてこなかった。

 

私は屋上へと着くと、内側から鍵をかけて外部から人が入ってこないようにした。途中で先生やら野次馬がきても面倒だしね。

 

「さてと、何が言いたいか分かるよね?」

 

「分からないです」

 

強引に連れて来たと言うのに表情1つ変えず湊さんは機械のように私に返事を返した。

 

「しらばっくれないで。もう分かってるの。全部あんたがやった事なんでしょ?」

 

そう言うと私は湊さんに先程校長室で貰った写真を湊さんに投げた。

 

「あーあ。バレちゃってたか」

 

そう言うと湊さんは開き直ったかのように私を見た。先程までのおどおどしていた態度と全く違い、堂々とそこに立ち尽くしていた。いつもの湊さんとは完全に別人だった。大人しそうな印象だったのに、今目の前にいる人物は反省する様子もなく写真を眺めながら笑っていたのだった。

 

「それで?私をどーするつもり?屋上から突き落としてみる?それはそれでいいね。月村エレナの娘が殺人犯なんて事になったら大スクープじゃん」

 

未だに反省の色が見えずただただ人を馬鹿にしているような声色で湊さんは話していた。

 

「ふざけないで。でもなんで私の事をあんなに知っていたの?それだけ最初に聞かせて」

 

そう言うと先程までこちらをバカにしていた表情は消え、怒気を孕んだ声で私にこう言った。

 

「やっぱり覚えてないんだ。私はあんたと同じ孤児院にいたの!1人だけ何でも出来ていっつもいっつも自分が中心に世界を回してた。私みたいな出来損ないと違ってあんたはなんでも出来たよね。勉強だって運動だって何もかも。それに月村エレナと橘楓が来た時も自分だけ独り占めにして、挙句の果てに娘に???冗談じゃないわよ!私だって裕福な家に拾われたかった!今私が拾われたのはどんな家だと思う?父親はギャンブル三昧。母親は毎晩男を引っ掛けて帰ってきて、まともにご飯を食べられないぐらいの生活をしてるのにあんたは何?綺麗なお母さんに美味しい食事に頼めばなんでも出てくるような家庭でしょ!あんたに私の気持ちなんて分からないわよ!ちょっと机にイタズラ書きしたぐらいでわざわざ呼び止めないでよね。私帰るから」

 

私は必死に孤児院の頃の記憶を思い出していた。ダメだ全然思い出せないや。そもそも他人と関わろうとなんてしてなかったんだから湊さんの事なんて分かるはずもない。

 

「だから何?」

 

自分でもびっくりするぐらい冷たい声が出た。

 

本来なら同情してあげる場面なんだろう。確かにそんな家庭に拾われたのは運が悪かったとしか言いようがないが、それとこれとは話が別だ。今はそんな言葉が聞きたいんじゃない。

 

「今なんて言ったの?」

 

私の横を通り過ぎた湊さんが私を思いっきり睨んでいた。それはそうだろう。まさか同情されるどころかだから何?なんて言われたら火に油を注ぐようなものだ。

 

「だから何?って言ったのよ。別に愚痴ならいくらでも後で聞いてあげるわ。あんたが私を妬んで今回の行動を取った事は分かったよ。上履きを汚したり机にイタズラ書きなんてしなかったら力になれたかもしれないし、泣きながら同情してあげたわよ。ぐすん……奏ちゃん可哀想だねって」

 

ばしーん!

 

「何すんのよ」

 

湊さんは私に思いっきり平手打ちをした。叩かれたのなんていつ以来かな。痛みは無く、少しヒリヒリする程度だったが湊さんの方を見ると目に涙を溜めながらこちらを睨んでいた。

 

「あんた最低だね。こんなやつだなんて思わなかった。私だって裕福な家に拾われたかっただけなのに……」

 

湊さんの目からぽたぽたと涙が零れ落ちていた。

 

「最低なのはどっちよ。確かに私はホントに運がよかった。家に帰れば可愛いお母さんが笑顔でおかえり。って言ってくれて美味しいご飯も出てくるし寝る場所にも困ってない。だからってあんな机の落書きをされて被害者ぶられても困るわよ。なんで私が加害者になってるのかホントに訳がわからないわ」

 

そう言って湊さんの方を見ると、歯を食いしばって黙ってこちらを睨みつけているだけだった。これ以上は時間の無駄だと思って私は、湊さんにこう言った。

 

「土下座して。それで全部無かった事にしてあげる。先生にはもちろん、クラスの子にも言わないであげる。こんな良い条件他に無いと思うけどどう?あんたはこれまで通り優等生を演じていればいい。私は何も無かったかのように、今まで通り学校生活を送るつもり。もちろんまた何かしてくるようなら今度は退学まで追い込むよ。どうする?」

 

私は、見下すようにして、湊さんの前に仁王立ちをして返答を待った。未だに湊さんはずっと私を睨みつけていたが、これ以上何を言っても無駄だと思ったのか、真意は分からないが、湊さんは私の前に座るとそのまま頭を下げた。

 

「すみませんでした。もう二度としません」

 

「じゃあこの件はこれで終わりね。もう行っていいよ」

 

そう言うと、湊さんは私の方を一切見ないで屋上から立ち去ろうとしたが、

 

「ちょっと待って!」

 

私は、帰ろうとする湊さんを呼び止めると、鞄の中から急いでノートを取り出し、そこに紅葉おばあちゃんの連絡先を書いて湊さんに渡した。

 

「どういうつもり?」

 

「言ったでしょ。別に変なことしなければ力になるかもって。それは孤児院の紅葉先生の電話番号。電話したら力になってくれるかもしれないよ。それじゃ私も楓お母さんが心配すると困るから帰るね」

 

そう言うと、私は屋上の内鍵を空けて校舎へ戻った。もうこれ以上話していても湊さんを傷付けるだけかもしれないし、これ以上長居しても仕方ないしね。

 

 

 

それにしても人に土下座させるのって何も気持ちよくないな……

 

 

私は、さっきの湊さんの土下座を思い出していた。少しやりすぎてしまったんじゃないかと、罪悪感が押し寄せていたのだ。それにあんな家庭環境の子にだから何?は無いでしょ……いくらムカついてたからってあれは流石に良くなかったかな……また話す機会があったら謝らなきゃだよね。

 

考えながら学校を出ると昇降口に、見知った人影が立っていた。

 

小柄でポニーテールが似合う私の最初の友達だ。

 

「彩葉!!!」

 

大きな声を上げ、一目散に彩香は私の元へと走り寄った。

 

 




彩葉「ちょっと……もう1年過ぎてるんですけど?前話から1年超えてるんですけど!?」
エレナ「今回ばかりはホントに私達の話が終わったかと思ったじゃないのよ。しっかりしてよね」
楓「まぁまぁ2人ともこうしてまだ続けられたわけだから」
彩葉「楓お母さんは作者さんに甘すぎるよ。危うく自然消滅するところだったんだからね」
エレナ「ホントに困った作者よ……次は頼むわね」


ホントの本当に遅れてしまって申し訳ありませんでした。新しい読者さんも今まで読んでくれていた読者さんも次回は早めに投稿できるよう頑張ります。良ければ感想、評価宜しくです。

前作はこちらからどーぞ!

https://syosetu.org/novel/153653/

それではまた次のお話で!
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