ピピピピピ!ピピピピピ!ピピ!
「うーん……もう朝か……」
時計を見ると時刻は6:30分。彩香との待ち合わせには十分間に合いそうだ。
私の朝のルーティンは、起きてすぐにリビングに降りて楓お母さんにおはようを言う事。とにかくこれだけは5際の時から欠かすことは無かった。いつでも笑顔でおはよう!って言ってくれる楓お母さんを見ると朝の憂鬱な気分なんてすぐにどこかへ行ってしまうからだ。
「おはよう楓お母さん」
「おはよー。今日もちゃんと起きれて偉いね彩葉。顔洗って着替えたらエレナ起こしてきて貰っていい?」
「はーい」
私は楓お母さんへの挨拶を済ませると顔を洗い歯を磨いてエレナお母さんを起こしに行った。エレナお母さんの部屋に入ると宝石みたいな綺麗な身体が布団の上で静かな寝息を立てていた。小さい時から何もつけないで寝ていることが習慣づいているエレナお母さんを最初起こしに行くのはホントに慣れなかったな。
「エレナお母さん起きて、楓お母さん待ってるよ」
「ん……おはよう彩葉。もうそんな時間なのね。着替えて降りるから先に行ってて頂戴」
「分かった。二度寝しないでよ」
「しないわよ」
そう言って私は再びリビングへと戻った。
テーブルには楓お母さんが作った朝ごはんが3人分綺麗に並べられていた。今日の朝食の献立は、クロワッサンとコーンスープとサラダとヨーグルトだった。クロワッサンは市販では無く、楓お母さんが自分で生地から作っているらしくて驚いた。
「もう手伝うことはなさそうかな?」
「うん。大丈夫だよありがとね。それじゃエレナどうせ少し時間かかるだろうから先食べちゃおっか」
「うん!」
「「いただきます」」
そう言って私は15分もしないうちに楓お母さんが作ってくれた朝食を食べて再び自室に戻り、学校の支度を始めた。まぁ昨日のうちに持っていくものは詰めてるしちょっとのんびりするだけって方が正しいかな。まだ彩香との待ち合わせには20分もあるしちょっとゆっくりしよ。
「いろはー、エレナ仕事行くからお見送りしてあげてくれる?ちょっと手離せないの」
階下から楓お母さんの声が聞こえた。楓お母さんも家事で忙しいのだろう。1人で行かせるのも可哀想だと思い玄関へと向かった。
玄関にはスーツを身にまとったエレナお母さんが立っていた。ホントに喋らなければ世界で1番綺麗なんじゃないかと思わせるぐらいには似合っていた。
「お見送りありがとう。それじゃ行ってくるわね。ん」
「行ってらっしゃい。楓お母さんいないからって私のほっぺにチューしないでよ」
「ふふ、それじゃね」
「全くもう……」
ここは海外じゃなくて日本だよって何回突っ込んだか分からない。小学生の時はずっと気にしてたんだけどこうも毎回されると慣れるものだなと思った。
「彩葉、もう彩香ちゃん来てるみたいよ。用意出来てるなら行ってあげたら?」
先程閉めたはずのドアがすぐに開いてエレナお母さんがまた顔を出した。
「え!?ホントに!?急いで行くって言っといて」
もうそんな時間だっけ?時計を見るとまだ時刻は8時だった。待ち合わせより15分も前に来るなんて珍しいな。昨日の事をまだ心配してくれて早く来てくれたのだろうか。
「楓お母さん行ってくるね!」
「はーい!行ってらっしゃい!」
私は楓お母さんに声をかけると外へ飛び出した。門のすぐ外にちょこんとポニーテールの女の子が立っていた。彩香だった。
「おはよう彩香。早いじゃん」
「うぇ!?あ、おはよう彩葉。アハハごめんねちょっと早く出過ぎちゃった」
「なんでそんな驚いてんのよ。顔も赤いし熱でもあるんじゃないの?」
そう言って私は彩香のおでこに自分のおでこをくっつけた。
「うーん。別に熱は無いみたいだね。ちょっとなんで固まってるのよ。いつものあんたらしくも無い」
「ごめんちょっと寝起きでぼーっとしちゃってたかも、遅れないうちに行こ」
そう言うと彩香はそそくさと先に歩き出した。なんか彩香の様子がおかしいけど何か家であったのかな?
「なんかあった?」
「え?そんなに私おかしかったかな?」
「元からおかしいけど今日はもっとおかしいよ。なんか落ち着きないように見えるよ」
「誰が元からおかしいけどよ。多分彩葉の気のせいじゃない?ほら行こ」
「うん」
少し様子がおかしい事が引っかかったが、まぁ特に気にするようなことでも無いかと思い、私達は学校へと向かった。
校門前に着くと丁度皐月さんと柚月ちゃんが車から降りてくるところだった。
「あら、彩葉さんに彩香さん、おはようございます」
「おはよー」
「おはよ」
皐月さんの後ろで小さく柚月ちゃんもぺこりとお辞儀をしていた。
「彩葉さんは大丈夫でしたか?昨日は約束をまっとうできなくて申し訳なかったですわ」
「気にしないで。ただ彩香が暴走しただけでしょ。もう大丈夫だよ。心配させてごめんね」
「でしたら良かったですわ。全然謝る必要はないですわよ。また何かあったらすぐに相談してくださいね。私で出来ることでしたら何でも致しますから」
笑顔で皐月さんは私に返事を返した。本当に綺麗な笑顔だなと思った。楓お母さんの笑顔には勝てないけど私が男の子だったらその笑顔で絶対に好きになってたよ。
「立ち話もあれですし教室へ行きましょうか。柚月、鞄」
「はい」
んー。やっぱり柚月ちゃんには厳しいのは変わらないのかな。人様の事だから言えないけどもう少し優しくしてあげてもいいのに。
「どうする彩葉?また上履きになんかされてたら怒る?」
「引っぱたいてやるわよ。あれ?何この手紙」
私が下駄箱を開けると、そこに入っていたのは何かイタズラされた上履きとかではなく、可愛くデザインされた手紙がちょこんと上履きに乗っていた。
「あらまぁ、入学して早々ラブレターとは彩葉さんもすみにおけませんわね」
「え!?彩葉にラブレター!?」
「ちょっと2人とも声が大きい。他の人に聞かれたら面倒でしょ」
「ねぇ!?誰から!?」
「あーもううるさい。後で教えてあげるからとにかく教室行くわよ」
グイグイくる彩香を制して私は、これ以上話をややこしくしない為にも早く教室へと向かった。
教室について座席へ荷物を置いて手紙を空けようと思ったが、いかんせん彩香と皐月さんの目がこっちに向いていて読みずらかった。どうせ誰に何を言われても付き合わないのは決めているし読まずに捨ててもいいんじゃない?とも思ったが流石にそれは可哀想すぎるもんね。
「ちょっとお手洗い行ってくる」
「ふふ、行ってらっしゃいませ。彩香さんは止めておきますわね」
「何がなんでも止めて」
「承知致しましたわ」
皐月さんには意図が伝わったようだった。他の誰にもバレずにこの手紙を空けるところなんてトイレの個室ぐらいしかないと思ったのだ。私は朝のホームルームが始まる前に急いでトイレへと向かった。
「そもそもホントにラブレターかなんて分からないしね。えーっと……」
『月村彩葉さんへ。突然の手紙でごめんなさい。今日の放課後1人で屋上に来て貰えませんか?話したい事があります。 今村美彩より』
誰すぎ???
ってかこれなんて読むんだろ名前。みいろでいいのかな?なんか彩葉、彩香に美彩ってどんだけこの学校は彩りたいのよ……まぁ名前はどうでもいいとして、告白って確定したわけでもないし話なら聞きに行こうかな。
この時の軽い決断を後悔する事になるとは彩葉はまだ知らなかった。
皐月「彩葉さんは凄いですわね。入学してすぐにラブレターなんて中々貰えませんもの。柚月もそう思わない?」
柚月「はい。ですが皐月お嬢様も小学生の時貰ってましたよね?」
皐月「まぁそうね。全部断ったけど。私には柚月もいるし彼氏も彼女も作る気はないですわ」
柚月「私では役不足ですよ」
皐月「そんな事無いわよ。貴方も十分に綺麗よ」
柚月「ありがとうございます」
彩葉、彩香「皐月さんが柚月ちゃん褒める所初めて見た……」