「あ、2人一緒だったの?夜ご飯何かリクエストとかある?」
リビングへと降りるとエプロン姿の楓お母さんが料理本を片手に台所に立っていた。薄いピンクのエプロンは楓お母さんにとても似合っていて楓お母さんの可愛さをさらに引き立てていた。
「天使ですか……」
「何言ってるのよ彩葉……私でもそんな反応したことないわよ」
心の中の声が口に出ていたらしい。私はエレナお母さんを無視して楓お母さんの元へと向かった。
「夜ご飯のメニューですか?」
「うん。最近手抜き料理ばっかりだったから久しぶりにしっかり作ろうかなって。何か食べたい物とかある?」
「楓お姉さんのご飯なら何でも食べたいですけどしいて言うならカレーが食べたいです。子供っぽいかもしれないですけどダメですか?」
「ふふ、子供っぽいって言うか彩葉は子供なんだから好きな物言ってくれていいんだよ?大人になっても私もカレー大好きだし恥ずかしい事なんて何にもないんだからね。エレナもカレーでいいよね?」
楓お母さんが笑いながら返事を返した。なんだろう……私ががお母さんの事を好きだと自覚してから更に楓お母さんの顔をまともに見れない気がする。今の笑顔だって可愛すぎて自分の頬が緩んでいくのが分かったぐらいだ。
「えぇ。何か手伝おうか?」
「ううん。せっかくお仕事早く終わって家に居るんだからゆっくりしてていいよ。彩葉と遊んでてあげて」
「それじゃそうさせてもらおうかしらね。彩葉何かしたい事ある?」
「ちょっと来てください」
「え?ちょっと彩葉!?」
私はエレナお母さんを強引に自室へと引っ張りだした。ちなみに私の部屋はエレナお母さんの隣の部屋で、中にはベットと本棚だけ置いてある。けれど部屋にいることは少なくなった為引きこもることが減っていた。施設にいる時とは違って、日中は楓お母さんにくっついている事が多いためあまり部屋に引きこもらなくなった。
「どうしたのよいきなり……彩葉がこんなに強引だったなんて知らなかったわよ」
「やばいよ……楓お母さんが可愛いすぎる……好きって自覚してからまともに顔見れなくなってるしどうしたらいいのか分かんなくて」
「そういう事ね……それにしても敬語でクールに話してる彩葉と楓の前の彩葉とじゃ天と地との差があるわね。ホントに彩葉には驚かされるわ……紅葉さんが言ってた通りね。子供には驚かされることが多くて見てて面白いって言ってたのが今分かったわ」
「私自身こんなに話せるなんて思ってなかったよ。なんていうのかな……やっぱり似てるのかもねエレナお母さんと。すんごい話しやすいんだもん。それで……ねぇどうしたらいいの!?」
私はエレナお母さんの腰にしがみつきながら答えを待った。自分がこんなに動揺しているのも初めてだし、こんなに話したのも初めてだった。今までは施設の子にも敬語は外したことなかったのにエレナお母さんだけには敬語使わなくていいかなってなんか思ったんだよね。
「落ち着きなさいな……悪いけど私と楓ってそんな風にはならなかったのよ。なんていうか流れで付き合い始めてそのまま結婚したんだもの。もちろん流れって言っても楓の事は誰よりも愛しているわ」
「羨ましいなぁ……それでドMお母さん。楓お母さんってやっぱりモテたの?」
「誰がドMお母さんよ!」
「なんか自慢見たく言うからつい」
「全く……次言ったら楓に彩葉の事ばらすからね。話を戻すわね。モテてたかは知らないけど1人の女の子からは告白されてたわよ」
「女の子!?楓お母さんって同性に好かれやすいとかあるのかな」
「私もびっくりしたわよあの時わ。そうだ。ならその子に話聞いてもらえば?連絡してあげようか?多分私なんかよりは力になってくれると思うわよ」
楓お母さんとエレナお母さんの友達なら悪い人じゃないと思うし話聞きたいかも。私なんかでも話しやすい人ならいいんだけど……
「ホントに?でも私みたいな子供の話でもいいのかな?」
「大丈夫よ。なんなら精神年齢は彩葉の方が上よ。ちょっと待ってなさい」
エレナお母さんはポケットから携帯を取り出すと、何処かに電話をかけていたみたいだった。
「もしもしジェシカ?久しぶり。ちょっと貴方にお願いがあるのよ。は?あんたのお願いでいい覚えがないって?いいから明日15時にうちの相談所に来なさい。いいわね?そういう事言うのね。せっかく楓1日貸してあげようとしたのに。なんなら泊まりでもいいのよ?そう。ジェシカが優しい人でよかったわ。それじゃまた明日ね」
なんかエレナお母さんの黒い所を見た気がする……それに楓お母さんをだしに使っていいんだろうか……
「っていうことよ。彩葉来月までは暇なんだから明日も空いてるわよね?私の仕事が終わったら知り合いに車出させるからそれに乗って私の仕事先まで来てちょうだい」
「え?わざわざ車出さなくてもエレナお母さんの仕事先なら歩いて20分ぐらいで行けるよ?」
「何言ってんのよ。あんたみたいな小さな子1人で歩かせたら危ないでしょ。いいのよ遠慮なんてしなくて。それじゃそういう事だから戻るわよ」
「わかった。ありがと」
どこが私は甘くないわよ。だよ……エレナお母さんもめちゃくちゃ甘いじゃん。じゃなかったらわざわざ電話してくれたり車回そうとなんてしてくれないよ。
その後楓お母さんが作ってくれたカレーを皆で食べてお風呂に入ってその日は幕を閉じた。
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sideエレナ
「はぁ……まさか彩葉がね」
私は、横でスヤスヤと眠る楓を見ながらため息をついていた。最初はただここの環境に慣れていなくて彩葉が敬語で喋っていたとばかり思っていたんだけどな。まさか楓の事が好きでお母さんって認めずらいなんて理由だなんて思わないわよ。当の楓は、全く気づく様子がないからいいが、楓本人が気付いたらどういう反応をするのかな。多分あの子の事だから優しく何か言うんだろうけどね。
prrrrrr……prrrrrrrr
「誰よこんな時間に……楓が起きたらどうしてくれるのよ。もしもし?」
「あ、エレナ?ごめんねこんな時間に」
「ホントよ。楓が起きたら可哀想じゃない。それで何よ詩織」
「何よはないでしょうよ……明日の事。15時に彩葉ちゃん迎えに行けばいいんだよね?」
中村詩織。私が月村家当主をしていた時のメイドの1人だ。歳は11歳差の33歳。巨乳。だが未婚である。結構な男性からのアプローチがあったらしいが全部を断っているみたいだ。詩織本人は、気になってる人がいるからと断っているみたいだがその人は私も楓も知らない。
「そうね。悪いけど彩葉の事宜しく頼むわ。怖がらせないでよ?」
「あんたじゃないんだから大丈夫よ。それじゃあね」
そう言うと電話は切れた。
「詩織さん?」
「ごめんね起こしちゃった?」
楓が目を擦りながら声をかけてきた。どうやら電話の声で起こしてしまったらしい。
「ううん、大丈夫。明日彩葉と出かけるの?」
「彩葉が私の職場がどんなところか見てみたいんだって。だから詩織にここから職場まで乗せていってって頼んだのよ」
「そーなんだ。じゃあ私は夜ご飯作って待ってるよ」
「ありがとう。詩織の分も頼んでおいていいかしら?あの子今は一人暮らしでしょ?ガサツだしまともなもの食べてないかもだから」
「分かった。それじゃまた明日ね。おやすみ」
「おやすみ」
そう言うと楓は目を閉じて布団の中へと戻っていった。私もそろそろ寝ようかな。仕事に支障でたらいけないしね。
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「彩葉!朝ごはんそろそろ出来るから降りておいで!」
「んん……朝か……」
階下から楓お母さんの声がして、私は目を覚ました。今日はエレナお母さんの友達と会う約束をしている日だ。失礼のないようにしなくちゃだよね。
「彩葉!起きてるなら返事して!」
「起きてます!着替えたら行きます」
私はきっとリビングにいるだろう楓お母さんに声を返してパジャマから私服に着替えた。
リビングへと降りると、楓お母さんが忙しそうにせかせかとフライパン片手に料理をしていた。
「おはようございます。何か手伝いましょうか?」
「おはよー。じゃあ悪いけどエレナ起こしに行って貰ってもいい?いくら電話かけても起きてくれなくて……ホントにどれだけ朝弱いんだか……」
「分かりました」
まだ起きてないのかあの人……学生時代一緒に住んでいたって言っていたけどその時も苦労したんだろうな楓お母さん。私は再び2階へと上がり、エレナお母さんの寝室へと向かった。
「エレナお母さん起きて。楓お母さん待ってるよ。あれ?いないじゃん」
エレナお母さんの部屋へと行ったのはいいが、問題のエレナお母さんが中に居なかった。入れ違いにでもなったのだろうか。
「一応他の部屋も見とこうかな。トイレかも分からないし」
私の部屋の前を通って後は楓お母さんの部屋だけだけど……私入っていいんだよね?いや、別に意識してるとかではないんだけど、想いを寄せてる人の部屋に入っていいのかな。中入って下着とか転がってたらその、ちょっとあれだと思うし……
「って何考えてるのよ!私と楓お母さんは親子なんだもん。気にすることなんて何も無いじゃん」
私は意を決してドアを開けた。
「え?なんでエレナお母さんが楓お母さんのベッドで寝てるの?」
楓お母さんの部屋の中はシンプルでベッド、机、タンス、ちょっとした小物以外は特に置いていなかった。まぁベッドがダブルベッドなんだけど昨晩はそういう事だったのかな。
ちょっとだけ妬けるな……
「エレナお母さん起きて。朝だよ」
「後少し……」
「起きて!昨晩はお楽しみで疲れたのかもしれないけど起きて!」
私はこの前と同じようにエレナお母さんに馬乗りになって体を揺すっていた。まぁ一言余計だったかもだけどね。
「彩葉か……起きたからちょっとどいてもらってもいいかしら」
ようやくエレナお母さんが目を覚ました。眠たそうな目を擦りながら私の顔を見ながら喋っているしもう大丈夫だろう。
「おはよ」
「おはよ彩葉。どう?初めての楓の部屋に入った感想は?」
「昨晩はお楽しみだったんだろうな以外何もないよ。ってかなんで何も着てないの……やっぱりお楽しみの後って服着ないのがお約束なの?」
「ちょっと落ち着きなさいな……私は小さい頃から寝る時何も着ないのよ。ってか顔が怖いわよ彩葉……何か怒ってる?」
「怒ってない。早く服着て降りてきてね」
「ふふ、ホントに分かりやすいわね。分かったわ。すぐ行くね」
後ろでエレナお母さんが何か笑っていた気がするが、気にせずに私は楓お母さんが待っているリビングへと降りていった。
その後は朝ごはんを食べ、家事を手伝い詩織さんとの約束の時間まで部屋で読書をする事にした。
コンコン
「ん?楓お姉さんですか?」
「うん。今日出かけるんでしょ?服とかってどうするのかなって思って」
時刻は14時。後約束の時間まで1時間という所で楓お母さんが自室にやってきた。
「服ですか?このままでいいかなって思ってたんですけど」
今の私の服は、黒いズボンに黒いワンピースを着ていた。黒1色になってしまったが別にエレナお母さんの職場だしこれでいいかなと思っていたのだが……
「はぁ……服のセンスまでエレナそっくりなんだね。エレナも黒の服ばっかり着て、カラスみたいで嫌だからやめてよって言っても、私みたいな綺麗な人はこういう服でバランス取ってるのって言って聞かなかったんだから。でも彩葉はダメだからね?はい服脱いで。今お母さんがコーディネートしてあげるから」
エレナお母さんそんな事言ってたのか……私は別に服装とか気にしてないから何でもいいかなって思ってたんだけどな。
「でも私そんなに服持ってないですよ」
「大丈夫。この前彩葉の服なら買っておいたから。ほらバンザーイして。着替えさせてあげるから」
楓お母さんの足元を見ると、確かに洋服っぽいものが置かれていた。それに着替えなさいって事か……
「分かりました」
私は、楓お母さんに言われるがままにバンザーイをして下着以外の服を全て取られてしまった。好きな人に見られてるって思うと恥ずかしくて仕方がないけど、気付かれないように無心で私は楓お母さんの着せ替え人形になっていた。
「出来たよ!鏡見てみて」
やっと終わった……楓お母さんの手が自分の肌に触れる度に変な声が出そうになるのを抑えるのでいっぱいいっぱいでどんな服なのかも見ていなかった。
「これが私……」
鏡を見ると、楓お母さんにコーディネートされた私がそこにはいた。白のミニスカートに上は黒色のワンピース。それに黒のタイツまで履いていた。長い黒髪はツインテールにされていた。でもこの髪留めって楓お母さんが使っていたやつだった気がするけどいいのかな?
「あの、この髪留めって楓お姉さんが使っていたものじゃないですか?」
私はハート型の髪留めに指を差しながら話した。前に楓お母さんがしている所を見た気がしたからだ。
「そうだよ。でも彩葉にあげる!大切に使ってね」
「ありがとうございます」
好きな人が付けていたものを自分が付けているという事実だけで私は顔がにやけてしまいそうなのを必死に隠した。
「それじゃもうそろそろ時間だからリビングに降りてよっか。詩織さんの車大きな音するからすぐ分かると思うよ」
「分かりました」
私は楓お母さんの背中を追うように下へ降りていった。
数十分もすると外から普段は聞かないような大きな車のエンジン音が聞こえた。さっき楓お母さんが言っていた通りすぐに分かるねこれなら。
「来たみたい。行ってらっしゃい彩葉。詩織さんに失礼のないようにね」
「行ってきます。分かりました」
いったいどんな人なんだろうか。大きな音する車乗ってる人って怖いイメージあるんだけど大丈夫かな……私は、エレナお母さんの職場へ向かうために玄関の扉を開け、詩織さんが待つ場所へと向かった。
感想、評価など宜しくお願い致します!次回はジェシカ初登場回になります!前作から3年経ったジェシカがどうなったのか楽しみにしていて下さい!