【艦娘宝箱】ある日駆逐艦になった妹が俺の隣で寝ていました 作:暁刀魚
艦娘龍驤。軽空母としては他に一つもない特徴的な艦載機の振り分けと、少女らしい元気な姿が愛くるしい艦娘。MVPを取ったことを大いに喜ぶ姿や、赤城や加賀に負けたくないと語る姿は、まさしく等身大の少女のよう。少し薄い胸部装甲も、個性と言ってしまえば唯一無二絶対の個性だ。
そんな艦娘龍驤ちゃんと、ケッコンカッコカリをする提督の話。
「龍驤!」
「うん」
少しだけ龍驤は、神妙な面持ちで首肯した。いや、首を引っ込めるように頷いたまま、ちろりと、上目遣いでこちらを見ている。
「知っての通り、これで君は晴れて最高練度に達した」
「うん、ありがとうね? 一緒にいろんな海域行けて、楽しかったで?」
ぽつりと漏れた言葉には、少しだけ朱が刺した頬が伴った。甘いりんごのようであり、思わず手を伸ばしてしまいそうな、太陽のようだった。
「あぁ、そうだな。だが、申し訳ないが最高練度に達した以上、君が出撃する機会も激減するだろう。秘書艦としては今後とも不動だろうが、旗艦はおそらく瑞鳳辺りに譲る事になると思う」
「あ――」
照れくさそうに浮かべようとしていた笑みを、伸ばされたこちらの右手で差し止められる。首元にそっと添えられた右手に、少しだけ不安な彼女の瞳が奔った。
「けれども、だな。それは別に、私が君のことをないがしろにしているというわけでもなく、だな。その、だな」
「……ふふ」
こちらの言葉を受けてか、ようやく、彼女は楽しげに笑ってくれた。照れくさそうでもなく、遠慮がちでもなく、優しげな、彼女らしい彼女だけの笑み。
「ん? な、何がおかしいのかな?」
「いやだって、提督、何や恋する乙女みたいやん? 乙女なのはうちの方やのに」
きゃ、と楽しげに両手を頬に添えて提督から離れる。一歩だけ取って、楽しげに身体を躍らせる。
「え? 乙女?」
「何や失礼なやっちゃな」
聞き返してしまったとたんに、龍驤の顔が不満気なジト目に変わる。そうして見上げる少女はどこか歳相応に見え、彼女らしく、愛らしく、好ましかった。
「あ、いやちが」
「ふふ、ええねんええねん。ウチ知っとるで? 提督が割りと効率主義なこと」
慌てて弁明すると――頬に刺した朱は、それが理由なだけではなく、彼女に対する愛おしさが混じっていたことは、彼女には秘密だ――龍驤は再び楽しげに笑って言った。
「あ、あぁだがその」
「でも、なんやかんや言ってものぐさでお人よしなせいで効率に徹しきれないことも知っとるで」
責め立てるような視線ではない。
「ん、え?」
「それに、建造だ開発だ、ってたまに悪い癖出して資源がアレになるまで建造に走ったり」
どこか、憂いをもたせた顔つきで、思い返すように、語って聞かせるように、龍驤は続ける。狼狽するのは、こんどはこちらの方だ。
「あ、」
「とりあえず新しい娘が来たら突っついて交流をはかってみたり」
続ける。
「い、」
「ウチのこともいっぱいツンツンしてるやろ、セクハラで訴えるで!」
続ける。
「う、」
「しかも、ウチだけに飽きたらず、できれば瑞鳳はんや北上はんともケッコンカッコカリしたいとか思っとるやろ」
続けて、
「え、」
「なんでも知っとるで、何でもや。提督がものぐさなこと。提督が割りと短気なこと。提督がむっつりなこと。提督が思い込みの激しいこと。……君が、ウチや皆と一緒にいて楽しいってこと。君が、皆のこと大切に思ってるってこと――君が、なんやかんや言って、ウチのことが大好きなこと」
続けて、続けて――続けて。そうして最後に、言い切った。
「……お、おう」
「これからも、末永くよろしく。いつかあの海に太陽が沈んでいくその日まで、ウチはずっと、君と一緒にいたげるからね?」
遠くを見る瞳は、やがてこちらに焦点があって、直線上に、寄り添うように向かい合う。互いを遮る道はなく。互いを咎めるモノはない。ただ寄り添って、言葉を続ける。
思いは、全部のせた。
のせられるだけのせて、崩れ落ちそうなほど山高くして、それでも乗せられない思いを込めて、龍驤に言葉を、投げかけた。
多くの言葉が胸から浮かんで、しかし泡沫として消えてゆく。何度も言葉をつっかえさせて、何度も言葉を選びなおして、結局残った一言は、彼女に向けた、正真正銘の告白だった。
「……末永く、君を幸せにするよ誓うよ」
「ウチも……愛しとるから、ね?」
そうして二人は――――
このたび龍驤ちゃんとコンヤクカッコカリしました。
私の一番好きな艦娘であり、一番最初のコンヤクカッコカリ艦である龍驤ちゃんに捧げます。