あれから数日.....あいつらは『皆で叶える物語』というキャッチフレーズを作ったらしい。俺はその時事後処理に追われていたから傍にはいなかった。
「久しぶりに.....行ってみるか、あそこへ。」
俺にとったら忌々しい場所.....全ての元凶の地、神山へ。
「あれって伊月くんだよね?」
「そうですね.....どこへ行くのでしょうか?」
「ついて行ってみる?」
「でもそんなストーカー行為、伊月だったらすぐ気づくんじゃないのかしら?」
「それでも気になるにゃ!!」
「わ、私も知りたいです.....」
「にこはどっちでもいいわよ。今日練習がある訳でもないし。」
「そうやね.....行ってみよ。」
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スーパー
「すみません、これください。」
やっぱ逝っちまった人達にと花は手向けないとダメだろうな.....数はどう考えたって足りねぇけどな.....許してくれよ。
「はい。お若いのに買うんですね、シオンの花。何かあったんですか?」
「いえ.....大切な人に渡さなきゃいけないんです。」
「そうですか.....頑張って下さいね。」
「はい、ありがとうございます。」
「た、大切な人!?」
「伊月くんにそんな人が.....」
「.....絵里ち、真姫ちゃん、どうしたん?」
『いえ、なんでもないわ(よ)』
(ねぇねぇかよちん、あれ絶対怒ってるよね。)
(うん.....怖くて近づけないよ。)
「まさか伊月が.....ねぇ、真姫。」
「ええ、これは後できっちり話を聞かないといけないわね。」
「2人とも、声を出したらバレるじゃないですか。気持ちは痛いほど分かりますが今は抑えてください。」
「え?海未ちゃん分かるの?」
「ち、違います!!とにかくバレるので黙らないと!!」
「そういう海未が1番うるさいわよ。」
「あぅぅ.....」
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神山近く
やっぱり....ここに来ると寒気と.....トラウマが蘇る。あの時皆が目の前で殺されたこと.....母さんが見るに堪えないくらいに握りつぶされ投げられたこと.....生き延びたら生き延びたで麓の人間にはゴミ以下の扱いをされて.....それでも血の力のせいで死ぬことは叶わなかった。あの時だけは本当に何も信じられなかった。皆がいなくなったこと、自分がどういう立場に立たされたのか、そして.....これからの未来。
「やはり.....緊張はしてしまうもんなんだな.....」
「ねぇねぇ、ここどこ?」
「私も分からないわ。でも.....」
「さすがにこんな所に女の子とデートしに来るはずはないよね。」
「そうね.....じゃあどこに行くのかしら?」
「墓参り....とか。」
「でも、那月や伊月のお父さんだっていないじゃない。1人で行くのかしら.....ありえなくはないけど。」
「伊月はああ言いながらも1人で抱えてしまう所がありますから.....」
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神山
とうとう来た.....あの日からもうすぐで4年....になるのか。
「ここ.....だったかな。村の中心部は。」
山火事もあったせいかもうそこには俺たちが暮らしていた形跡も、殺された人達の遺体も、そして.....沢山流れた血も無かった。ただ閑散としている.....野原にいた。信じられないよ.....これがあの悲劇が起こった場所なんて。
「母さん....皆、4年近くここに来れなくて悪かったな。俺は自分と戦い続けた。けど負けた.....俺は弱かったんだ。今の俺がいるのはμ'sも含め、俺のことを支えてくれた人達のお陰なんだ.....。世間じゃ俺は黒獅子なんて恐れられてるんだぜ。皆信じられないだろ?それに世間じゃスクールアイドルなんてのも流行ってて凄いよ.....。俺が会った人達はやっぱりあの日のように勝手に決めつけたり、悪役を作って皆で纏まったり.....腐った連中なんざ沢山いた。あの日見た黒い部分はやっぱり世間でも同じだった。俺も世間に敵にされて、何度も戦う羽目にはったんだ。」
俺にとってあの日が転換点なのかもしれない.....やっと社会というものに、世間というものの影の部分を見た。行き過ぎた私利私欲。
「でもさ.....そんな汚くて、暗い世界で.....俺は眩しいくらいの光と出会った。初めてだった、那月や親父、黒柳、橘さんや商を除いて俺の血のことを知ってもなお俺の事を信じて、認めて受け入れてくれた人達がいたんだ....嬉しかったよ。まだ捨てたもんじゃないって思えたし、それに.....俺は普通の生活が出来たんだなって。あいつらが一緒にいてくれたおかげで。これじゃ、俺があいつらを利用したみたいな感じで取られてもおかしくないんだけどな。俺は思うんだ。あいつらの光を守ることが、俺が今まで疑い、潰してきたものへの償いで.....俺がなさなければならないことだって。あの日、命懸けで俺を守ってくれた人達への弔いにもなるんだ。母さん.....あんたの言う通り、いい事もあったし.....強く生きれてないかもしれないけど、強く生きたい理由をくれた人達と出会えた。少しは.....自惚れてもいいかな?」
あ.....涙。前までは流しすらしなかったのに。俺もだいぶ感情的になったのかもしれないな....生きてて良かった。俺は今ひたすらそう思えているんだ。
「これから俺は最期の闘いに行かなければならない。この血の.....呪われた何十年と続いた因縁に終止符を打つために。その為なら.....俺は命なんてくれてやる。そのつもりでいる。本当はさ.....もっと普通の人間として生きたかった。あいつらには嘘をついたけどさ.....俺の命はいつ終わってもおかしくないんだ。この1年、生死を彷徨うことが何回もあった。血の力でそれも収まったが、あまりにも多く、過酷すぎた。もう.....普通に生きるのは無理なのかもしれないな。」
こればっかりはどうしようもない。俺たちの体は.....血は何か特効薬があるわけでもなければ治療法もない。遺伝子からそうなっているから。俺の生命力はもう無いに等しい。回復する力すらもう.....残ってないのかもしれない。
「今俺がこうやって普通に動けているのもこの血の力だ。本当なら寝たきりになってもおかしくないかもしれないんだけどな.....あいつらには言えなかった。それであいつらに迷惑をかけるかもしれない.....って思ってさ。こんな弱い自分を許せなんて言わない。ただ.....記憶の中にいてくれたらいい。たとえ世間から存在が消されても。俺は自分が生きた証をどこかに求めたいんだ。俺たちの一族が本来は知られてはいけない存在だからこそ.....人として、そういう思いを抱いたんだ。ここに来たら.......どんどん我儘言っちまうな。だけど、俺はやっと自分が進むべき道を見つけた.....あいつらがたとえ望んでいないにしても、俺はあいつらの人生を壊すものから守らないといけない。それが俺の.....宿命、だろうな。だからさ.....きっちり因縁を、俺が果たすべき宿命を成し遂げるから.....安眠してくれ。悲しみも、憎しみも.....全て含めて、安らかになってくれ。もう二度とこんな悲劇は.....起こさせない。俺はそう誓うよ。」
たとえ俺がどうなろうとも.....世間がどれだけ俺を汚く罵り、それを排除しようとしても.....その宿命だけは果たしてみせる。それが.....今の俺の生きる理由であり、宿命だから。
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μ's side
「伊月くん.....」
「どうしてそんな大事なことを.....黙ってたの?」
「.....私たちを想ってくれているのは嬉しいです.....けど私たちは誰一人、伊月に犠牲になって欲しいなんて思ってません!!」
「.....でもそれが伊月が決めた生きる道なんでしょ.....それなら私たちがわーぎゃー言って止めるのも.....野暮なんじゃない?」
「にこもそう思うわ.....だから私たちはあいつに応えないといけない。ラブライブ決勝戦で最高のステージを作って.....あいつをちゃんと迎えられるようにしないと。」
「にこの言う通りね。私たちじゃ伊月のことを止めるのは無理。私たちは9人纏まっても伊月には敵わない.....なら私たちは私たちに出来る全てをするしかないわ。」
「.....頑張ろうね。」
「凛も伊月くんの為に頑張るよ、ね、かよちん!!」
「うん.....私たちも頑張らないと。」
μ'sのメンバーはそれぞれ覚悟をした。ラブライブを優勝して、3年生を笑顔で送り出す為に....μ'sとして最高の思い出を作るために、そして.....1人の少年を迎えるために。
シオン、花言葉『追憶』『君を忘れない』『遠方にある人を思う』
書いていて重いなぁ.....ラブライブと真反対だなと常々思います。けど始めた以上、最後まで書ききります。