今回は誕生記念編なので、花陽ちゃんは伊月くんのことを『伊月くん』と呼びます。
電話にて
「俺に密着する?」
「はい!!伊月くんがどうして頼もしいかを知りたいんです。」
「なぁ、明日ってお前の誕生日だよな?そんな貴重な日を俺の尾行というかなんというかそういう事に消費していいのか?」
「はい。絵里ちゃん達が卒業したら、私も2年生になりますし.....凛ちゃんみたいに自信があったり真姫ちゃんみたいに強気になれたらいいんですが.....それが苦手で。でも、やっぱり頼れる先輩にはなりたいんです。それに来年は伊月くんがいるか分かりませんし.......」
「そんな悲しい声を出すなよ。別に学校にいるかが分からないだけで死ぬわけじゃねぇんだからさ。それにお前らだけじゃ不安だからな。お前らが1人前くらいに成長するまでは俺が傍にいなきゃいけないしな。」
やっぱり伊月くんからしたら私たちは守られる対象なんだ.....だからあんまり頼ってくれないのかな?
「それで密着することなんだが.....ちゃんと親御さん説得して来いよ。別にお前を俺ら側の方には連れていかないから安心しろ。危険なことに巻き込まれないようにはするから。」
「わ、分かりました.....」
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翌朝
ピンポーン
「あれ?花陽ちゃん?どうかしたの?」
「あの、伊月くんいますか?」
「伊月?うん、寝てるよ。というか花陽ちゃんも早いよね、まだ朝の7時だよ?しかも今日休みだよ。」
「今日は伊月くんを1日密着する予定なんです!!どうしたら頼れる人になれるかなって.....」
「ああ.....でも花陽ちゃんも変わってるよね。密着する人なんて初めて見たよ。」
「やっぱり話で聞くよりも直接見た方が学べることも多いかなと。」
「じゃあ伊月起こしに行ってくれない?伊月の寝顔は見たことないでしょ?」
「はい、合宿でも寝たところ見たことありませんし。」
「なら見た方がいいよ!!絶対に得するから!!」
「は、はい.....」
伊月くんの寝顔.....真姫ちゃんや凛ちゃんも見たことがない.....なんか申し訳ないけど、見てみたい。
「伊月くーん?朝だよ.....」
「んん.....」
....え?何?今の色っぽい声?これが伊月くん!?すごく子供っぽさがある可愛い顔.....でもやっぱり体を見るとたくましい男の子だよね....那月ちゃんはずっとこれを見てるのかな.....羨ましい。
「普段出来ないから.....伊月くんの髪、さらさらだなぁ.....」
私はそっと伊月くんの頭を太ももにのせて、頭を撫でてみた。すごく撫でやすい.....普段はそんなイメージないけど細やか.....
「.......ん?花陽?もう来たのか?」
「伊月くん、おはよう。起きるの少し遅いね。」
「そうだな.....昨日は夜ずっと忙しかったからなぁ.....」
「それって黒獅子の仕事?」
「いや、それじゃなくてな.....今まで色々とやってきててさ.....ことの成り行きとは言えお店とかご近所に迷惑をかけたから謝りにいってたんだよ。マンションとかも行きたかったけど管理人さんが許可してくれなかったから謝罪の意を込めた手紙を管理人さんに渡してそれで解決したということにしてもらったんだ。」
「それって伊月くんは何も悪くないんじゃ.....」
「まあな。けど結果的に迷惑はかけたわけだし.....謝らないのは俺個人的には許せなくてな。こんなんだから何かと苦労するんだろうけど。」
やっぱりこういうことを考えられるところは凄いなぁ.....普通なら相手のせいにして終わりそうなのに。ちょっと優しすぎのような気もするんだけど.....やっぱりそこら辺は伊月くんらしいなぁ.....
「なぁ、何をメモしてるんだ?」
「伊月くんのいいところだよ。」
「俺は誇れる物なんかあんまりねぇよ。まぁお前がそれで満足ならいいんだがな。」
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街中にて
「花陽、あれ食べるか?」
「ご、ご飯!?で、でも!!今日はこれが最優先だから.....」
「まじかよ、ご飯に勝ったのか....」
「うう....バカにされた気しかしない。」
「あ、悪い。珍しかったから驚いただけだ。だから涙目になるなよ。」
「うぇーーん!!ママーー!!」
「迷子か.....おい、どうした?」
あっ.....ちゃんと目線の高さを同じにしてる.....那月ちゃんの真似をしてるのかな....
「うっ.....うっ.....はぐれた。」
「はぐれた、か。なら探すぞ。早いとこお母さん探してやらねぇとな。」
「え.....う、うん!!」
「因みに特徴とかあるか?」
「えっとね.....最近茶髪にしてる人!!」
「アバウト過ぎだな.....背が高いとかそういう感じのはどうだ?」
「ママは身長高いよ!!電車でも埋もれてないから!!」
「ということは160くらいか?....まぁ、とりあえず歩いてみるか。花陽、悪いけど着いてきてくれるか?」
「勿論いいよ。これも貴重.....」
「メモし過ぎて前方不注意だけは辞めろよ。」
「それくらいは大丈夫だよぅ....」
「そう言えばここに住んでるのか?」
「ううん、今日はお母さんの会社の壮行会?みたいなのをするみたいだから着いてきたんだ!!そこのデザートが楽しみで!!」
「お、良いじゃねぇか。でも食べすぎるなよ、食べちまったらちゃんと動けよ。」
「分かってるよ、 そんなバカじゃないよ!!」
伊月くん、子供と打ち解けるの早いなぁ....それに雰囲気も柔らかい。黒獅子の時のことを知ってるからやっぱり新鮮。
「なら親の連絡先とか持ってないか?そこからお母さん呼べばいけるだろ?」
「でも、携帯ないし.....」
「俺のがある。あるならこれでかけな。」
「うん.....」
「でもよく分かったよね、伊月くん、子供が連絡先持ってるって。」
「ここより外から来てるなら恐らくはぐれることも想定してるはずだし、何よりここら辺は特徴らしい何かが少ない。それを目印に、とも言い難い。だったら誰かから連絡を入れてもらってその場がどこかを聞くんだろうよ。まぁベストははぐれないようにすることだろうけどさ。」
「そ、そうなんだ.....」
「花陽、少しついてきてくれ。」
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夕方
「ところで何かあったの?」
「これ、渡しとかないとな.....おめでとう、花陽。これは俺と那月からのプレゼントだ。」
「え!?あ、ありがとう....ございます。」
プレゼントされたのは.....ガーネットが使われた髪をまとめるゴム、そしてこれは....ペン?
「ガーネットは1月の誕生石だから使ったんだ.....那月がな。もうひとつのペンだ。俺が作ったな。」
「ペンを作ったんですか!?」
「うちの部下にそれに詳しいやつがいてな....加工までしてもらったんだ。ペンの側面、見てみろよ。」
そこには....HAPPY BIRTHDAY 花陽と書かれていました。.....すごい、凝ってるよ。
「あ、そうだ、花陽。」
「何?伊月くん?」
「先輩として、ってなやんでただろ?それだけどさ.....今のままいれば尊敬されると思うぜ。」
「それはどうして.....?」
「花陽は人を見るのが上手い.....それは個人の才能を開花させるのでも使えるし、自分に向けられるなら自分の長所を見つけられる。あとな.....尊敬されるか不安なら.....」
「不安なら?」
「背中で語れ。今の花陽が先輩になって、後輩に親身になって相談したり寄り添ってあげたり.....今と同じことをちゃんとしていれば....後輩からしたらお前はこの太陽みたいに明るくて眩しいと思える、尊敬できる人と思われるぜ。」
「そ、それ本当.....?」
「だと思うぜ。だから何も気にする必要ないよ、もし不安なら相談してくれよ.....俺がいるからさ。」
ありがとう....伊月くん。」
「ん?何か言ったか?」
「ううん、なんでもない。」
ありがとう、伊月くん.....私も頑張るよ。そして....誕生日プレゼントありがとう.....ここまで凝ってくれてありがとう....。
0時0分に投稿出来なかった.....悔しいです。
花陽ちゃん、誕生日おめでとうございます!!しっかり芯があるところとか可愛らしいところが好きです!!