あの後授業が終わり、俺はスクールアイドルの人達が練習している屋上に向かった。
「失礼しまーす。」
「あ、伊月くんじゃん!!今日はどうしたの?」
「あ、ちょっとスクールアイドルとやらがどんなものか見てみたくて、練習を見学させてもらうって出来ますかね?」
「うん♪いいよ!!そういえばおねーちゃんは?」
「那月ですか?あいつは、今日授業を居眠りしたことで教員室に呼び出されてるみたいです。」
「おねーちゃんらしいね♪」
そう、姐さんは、俺と小学校時代に知り合った。無論、那月もその時に。その時に那月がよく姐さんのお世話をしていたから、おねーちゃんと今でも呼んでいる。
「いけません、穂乃果、ことり!!この人は危ないです。」
「えーと、園田さん、だったっけか。俺そんな危なく見えます?」
「この前朝礼で暴れていたではありませんか!!」
「.......」
まぁあれに関してはそう捉えられてもおかしくはないか。堂々と正体ばらされちゃったし。
「もー、海未ちゃん大丈夫だよ!!伊月くんは危なくないよ!!」
「穂乃果!?あなたこの人と関わりがあったのですか!?」
「うん。雪穂が攫われた時に助けてくれたのは伊月くんだよ!!」
「あの件ですか。....でもやはり警戒を解くのは難しいです。」
「別に無理する必要はないですよ。俺だってあの時、他の人からどう思われるか大体分かってましたし、それが当然の反応だって思っていますから。高坂先輩だって、最初は狂犬のような目で俺の事睨んでましたし。」
「その事はもう忘れてよぉ!!」
「じゃ、俺は影になってますんで、気にせず練習してください。」
確かに練習が、アマチュアにしては本気だな。歌のレッスンとかもかなり頑張ってる。ただ.......
「すみません、園田さん、少しいいですか?」
「はい、なんですか?」
「あなたがダンスレッスンをする上でどこを重視してやってるんですか?」
「そうですね.....やはりひとつひとつの動きの精度を良くすることです。ひとつひとつのフレーズを大事にすることで、やはりライブの質も上がりますし。」
「なるほど.....ですが、このままいくと結構しんどいですよ。」
「どういう事ですか?」
「簡単に言えば、難しいフレーズをこなせる身体能力がないということです。確かにフレーズでも練習すれば身につくでしょう。ですが、フレーズによっては、連続してても重心を置く場所が変わったり、その時反動から立て直せる柔軟性とかが不足してると思います。」
「一体どうしてそう思ったのですか?」
「高坂先輩が、同じフレーズで何回かミスをしていた、ということと姐さんのフレーズの切り替えの時間が周りより少し遅れていたからです。声を掛け合ってフォローは出来ていましたが、本番ではそうはいかない。だからこそ、フレーズ練習に加えて、体幹トレーニングとかを入れるべきかと。採用するかしないかはそちらにおお任せしますが。」
「.....あなた、ダンス経験とかあるのですか?」
「いや、単に観察してて気づいただけですよ。相手の重心の置き方とかでどの方向に力を入れてるか位は見えますよ。」
「すごいね、伊月くん♪」
その後2時間位練習を続けていた。まだまだだなと思う。スクールアイドルがどんなものかは分からないが、可愛いフレーズや声が良いからってのも大事かもな。あまり難易度を高めて、アイドルの域を越えるのもおかしいし。
「で、伊月くん、どうだった?」
「うーん、スクールアイドルがどんなものかを知らない状態で見たので、あまり具体的には言えませんが、研鑽を積めば良いものになると感じました。あとは.....やっぱり羨ましいなと。」
「羨ましい?どういうこと?」
「いえ.....俺は熱中できるものがないなと。先輩達は、それに打ち込んでいて、でも楽しそうで.....俺じゃ絶対に経験できないことだなって。」
あの日以来、やっぱりこういう一緒に楽しみながら本気でやるということはできない。まだ自分の中でも人を信じきれない部分があるから.....羨ましいよ。
「で、ここに来た目的は単に見学だけだったんですか?」
「園田さん、鋭いな。もうすぐここにある人達が来るからそれまで引き止めておくのが今回ここに来た本当の目的です。」
「ある人達?」
『バァン!!』
「誰か助けてー!!!」
「いいからかよちん来るにゃ!!」
「ちょっと星空さん!?勢いが強すぎよ!!」
「西木野さんのペースだと日が暮れちゃうよ!!」
「ちょっと2人とも!?落ち着いてよぉ.....」
あいつら連れてきたのはいいが、なんで喧嘩してるんだ?仲良くやれよ。
「お前ら少しは仲良くやれよ。」
「だって、西木野さん(星空さん)が!!」
「たく.....喧嘩するほど仲がいいってか。それは置いといて、花陽、スクールアイドルの人達がいるから、覚悟決めて言いな。」
「え.....でも、私.....」
「もう!!アイドルやりたかったんでしょ!!絶対にやった方がいいよ!!凛は知ってるからね、かよちんがどれだけアイドルが好きかってことを。」
「そんな事はどうでもいいけど、あなたの歌唱力は相当なものよ。技術的には劣らないわ。やった方がいいわよ。」
「そんな事じゃないよ!!」
「だから、お前ら少し落ち着けよ。」
こいつらコントでもしてるのか?これサイクルから抜けられないパターンだよな.....
「高坂先輩、彼女が入部希望の1年生ですよ。」
「え!?入部!!誰だれ.....って、この前ライブ見に来てくれた子じゃん!!」
高坂先輩、花陽が怖がってるので、少し抑えてあげてください。
「私、小泉.....」
凛と真姫が、花陽の背中を押した。.....なかなか粋なことするじゃん。
「ふぇ.....?」
「2人とも応援してるんだよ。」
「私は.....」
「勇気を出せ、花陽。俺達がついている。」
「私、小泉花陽と言います!!背も低くて、声も小さくて.....いい所は何もありません。けど、アイドルに対する思いは誰にも負けません!!だから...どうかメンバーに入れてください!!」
「.....こちらこそ、よろしくね、花陽ちゃん!!」
高坂先輩と花陽が固い握手を交わした。夕日がいい感じに演出してるな。
「かよちん偉いにゃー。」
「なんであなたが泣いてるのよ?」
「そういう西木野さんこそ泣いてるの?」
「だ、誰が泣いてるのよ!!」
「それで2人はどうするの?」
「え?」
「まだまだ部員は募集中ですよ!!」
『え、えぇーーー!?』
いやそうなるわな。これ完全にノリだよな。
あの後2人も入部して、μ'sが6人になった。
作戦は成功して、結果オーライなんだが、俺にもいくつか問題が山積み。.......鬱だ。
終わりが上手く書けない。どうしたものか.......