「もしもし、那月か。」
「ん?どうしたの、伊月?」
「今日、姐さんの家に泊まってくるよ。」
「.......は?」
いや怖ぇよ。ガチトーンで、は?とか言われたら正直ビビるわ。
「伊月、あんたまさか...」
「姐さんのお義母さんに誘われたんだよ。.....お前も薄々気づいているとは思うが、今学校に魔の手が伸びている。その対策を話に行くだけだよ。」
「ことりちゃんのお義母さんが!?まさか.....」
「おい!その先を言うな!!タグを追加しなきゃいけなくなるだろ!!」
「何をメタい話を.....まぁいいよ。でも伊月、Hするならちゃんと避妊具付けなよ。」
「だからしねぇって言ってんだろ!!.....那月、親父は帰ってるか?」
「お父さん?普通に今ソファでグーグー寝てるけど。」
あの男マジなのか?今日乗り込んでもう帰ってきてるのか!?
「お父さーん、伊月から電話だよ。」
「.....ふわぁーーー。ん?電話?」
「おい親父、頼んだ仕事はちゃんとしてくれたか?」
「ああ。危うく集団リンチに合うかと思ったがな!!みんな弱くて、統率力無くて助かったわ!!」
「.....全く変わらずの化け物だな、あんた。」
「そりゃどうも。.....伊月、今回の件だが俺たちもやらなきゃならないことが出来た。」
「?なんだそれ?」
「今回の騒動の黒幕は.....俺たちのかつての同級生でな。俺や黒柳とも顔見知りなんだ。だから俺たちでケリをつけさせて欲しい。」
「.....分かった。きっちりケリをつけてくれ。」
「あと最後に1つ報告だ。その主犯はな....奴らの仲間、というか血族だ。」
「!!!!!それは.....本当なのか?」
「ああ。おこぼれとは言え、血族なんだ。どういうことか、分からないことはないだろ?」
「あいつらがまた本格的に動き出す.....」
「だが伊月、落ち着け。今はまだあいつだけだし、今回俺を襲った奴らもただの雇われで訓練を受けたとかはなさそうだ。」
「............分っている。」
「すまないな。折角のお泊まりの前にこんな話をして。たが、お前には知っていて欲しかったんだ。」
「.....了解した。じゃあ切るぞ。」
「あ、そうだ伊月!!南さん、もしくはその娘さんを雰囲気に流されて襲うなよ!!」
「うるせぇよ!!お前ら揃って俺を獣だと思ってんのか!?」
「だって.....なぁ、那月。」
「うん、伊月だって、もう...感じるのかなって。その、ね。あ、もし我慢出来なくなったらお姉ちゃんが相手になるからね。いつでもばっちこいだよ!!」
「もういいわ!!切るぞ!!」
「伊月、ちゃんと南さんの家に行く前に何か手土産買っていけよ。失礼のないようにな。」
「分かった。じゃあ今度こそ切るぞ。」
あいつ最後だけ父親らしいこと言っていったよ。
読者の為にも言うけど、俺は決して性欲とかないからな!!勘違いだけはするなよ!!
.......て何言っているんだ、俺は。
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まだ夜は涼しかった。珍しく人通りも少なく、俺の気分を落ち着ける為にはちょうど良かった。.....まさかあいつらがまた関わってるなんて.....心の奥にある黒い炎が轟々と燃えている。...だが、感情に流されてはならない。
「伊月様...」
「透谷(とうこく)、.....俺は、あの時を思い出すよ。.....頭では分かっていても、やっぱり感情に流されそうだ。」
「伊月様.....私とて気持ちは同じです。あのような汚い暗躍をしている輩を見ていては、 反吐が出ます。」
「お前は正義感が強いな.....俺はな、心の奥に復讐心があるんだよ。」
「.....この話は、今は辞めましょう。これから南さんの家に行くのですから、少しくらい気分転換をしなくてはいけませんね。」
「ああ。少し走っていくか。体動かせば少しは気が楽になるだろうな。」
「はい。お供致します。」
「透谷、お前はもう帰れ。今日の付添はここで終了して構わない。」
「しかし、伊月様に何かあれば.....」
「俺は大丈夫だ。だから休め。」
「.....分かりました、夜道は背後に気をつけてください。私は巡回でもしていましょう。」
「休めよ.....まぁ、お前の自由に過ごせ。」
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「いらっしゃい、上がってね。」
「あ、これは軽い差し入れみたいなものです。」
「あら、チーズケーキじゃない!?嬉しいわ。後でことりと2人で食べるわね。」
「あ、伊月くん!!いらっしゃい!!」
「姐さん、お邪魔します。」
「伊月君の分もご飯作ったから沢山食べてね。」
「ことりも、お手伝いしたんだよ♪だから、残さず食べてね♪」
「お気遣い感謝します。では、いただきます。」
「そんなにかしこまらなくてもいいわよ。」
いや、うま!!何これ、どうやってタレとか作ったんだ?しかもこの唐揚げ、肉汁がすげぇ出てくるな。.....これはすごいや。
「どう?おいしい?」
「はい。本当に美味しいです。今度作り方とか教えてくれませんか?」
「うん!!今度また暇があればことりと料理しようね!!」
「これ、姐さんが作ったんですか!?すごいっすね。」
「えへへ.....伊月くんに喜んで欲しかったから張り切っちゃった♪」
.....姐さん、普通に男の心掴み方を知ってるのかな.....多分これが自然なのだから、恐ろしいな。
「因みに私が作ったサラダは?」
「繊維の切り方はちゃんとしてますね。やっぱり長年やってると分かってるんですね。」
「あらあら伊月くん♪大人の女性に年齢を示唆させる言葉を言うのはタブーよ♪」
.......姐さんのお義母さんも殺気がえぐいな。こんな笑顔なのに、寒気がする。
「.....別にそういう意味で言ったわけじゃ.....すみません.....」
「次からは気をつけるのよ。でも褒められたのは素直に嬉しいわ♪」
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「ことり、とりあえず食器は片付けておいてあげるから、部屋で宿題しなさい。明日小テストがあるんでしょ?」
「あ!忘れてた.....勉強しなきゃ〜。」
「さて、伊月くん、話を始めましょうか。」
「はい。.....親父は本当に今日UTXに行ったみたいです。主犯というか黒幕は、そこの理事長、親父の同級生らしいんですよ。」
「.....桝井先輩?かしら?」
「名前までは分かりませんが、親父にも嫌悪感があるみたいなんです。」
「.....そう、ありがとう。」
「でも、主犯が分かったからと言ってあいつを捕まえることは出来ない。なんせ、他人の手を染めさせて自分は高みの見物ですから。」
「大丈夫よ。黒柳さんに任せておけば、ね。あの人、癒着とかそういうことにすごく強いから。」
「だから、それまでは音ノ木坂の生徒の安全を守るのが俺たちの仕事、ですよね?」
「ええ。お願いするわ。.....あなたの事だから、もう人質とか解放してるんでしょ?」
「まぁ.....。ただ、迂闊に動いてしまったような気がすごくしますけどね。」
「....確かに時期尚早かもしれなかったわね。....でもカバーの効く失敗だから、そこまで深く思い詰めることではないわ。」
「はい、でもそこは反省します。」
「.......ところで伊月くん?何か悩んでいるの?あなたの目、少し不透明よ。先輩も昔、悩んでいる時はそういう目をしていたわ。」
「.......いつまでも過去を引きずっている自分に嫌気が差して。.....まだ俺は3年前のあの日から抜け出せないんです。.....頭では分かっていても、心の奥に復讐心が残っているんです。今回の主犯は、奴らの血族なんですよ。.....」
「伊月くん、あなたの3年前のことは分っているわ。勿論気持ちも痛いくらいに分かる。.....けどね、その人は3年前の事件に関わっているわけではない。だから、血族というだけで人を憎んではいけないのよ。」
「.....だから辛いんですよ。頭で分っているんですけどね。」
「.......よく悩みなさい、伊月くん。あなたが考えてあなたの道を歩むのよ。もしそれが間違っていたのならば、その時は私たち大人が教えてあげるから.....悩み抜くことも大人になるための大切なことよ。」
「.....ありがとうございます。」
「さて、暗い話は終わり!!少しは楽しい話をしましょう。どう?学校生活は?」
「.....楽しいですよ。最初はぼっちになる未来しか考えてませんでしたが、良い奴も沢山いて、色々絡んだり。」
「そう。良かったわ.....好きな子とかはできた?」
「まさか。恋愛なんてありえないですよ。」
「そう?じゃあ、もし大人になっても独身のままなら、ことりをよろしくね。」
「え?姐さんとか、すぐ貰い手見つかりそうな気がするんですが...」
「あの子は少し人見知りなところがあるから、グイグイ来る人とか苦手なのよね.....それにあの子、男の子の友達があなたしかいないのよね.....私も、親の立場からして、伊月くんみたいに優しくて信頼できる子に貰って欲しいのよね。」
「まぁそこは姐さんの人生ですから.....」
「ふふ.....やっぱり楽しいわね。今日はここまでにしましょう。ことりが部屋で待っていてくれてるから行ってきたら?」
「そうですか.....ありがとうございした。」
「ふふふ、先輩、伊月くんは本当にあなたに似て育ちましたね。将来が楽しみだわ.....」
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「伊月くん、お母さんと何話してたの?」
「えっと、俺の親父の話ですよ。姐さんのお義母さん、俺の親父の後輩らしくて、関係があったんだって。」
「え!?そうなの!?知らなかった.....」
「_俺もつい最近知ったんですよ。それはともかく、スクールアイドルの方はどうなんですか?」
「にこちゃんが入ってからパフォーマンスの練習があったり、海未ちゃんもダンス練習少しきつくしてたね。ことり、ついて行くので大変だよぉ。」
「姐さんも大変ですね。でも学校のことを広める為にはそれなりの実力も必要ですしね。」
「ところで、姐さん、俺はどこで寝るんですか?」
「?ことりのベッドだよ。」
「いや、それだと姐さんの場所がないじゃないですか?」
「一緒に寝るんだよ?」
え?
透谷くんの読み方を書いていなかったので描きました。すけたにくんじゃないよ。
すみません、多分このまま進むと字数が多くなるので、次回に引き継ぎます。、