不審者の鎮圧は終わり、俺は少しモヤモヤしたまま教室に戻った。
.....親父が止めてくれたから良かったがやっぱりKBが関わるとなると過去を思い出し、自我を失いかける。......もうあのことは終わったはずなのにな.....
「一条くん!?大丈夫でしたか?」
「ああ。とりあえず不審者は捕まえた。警察が身柄を確保したからひとまず安全だ。」
「そうでしたか.....お疲れ様でした!!今回もあなたに助けられましたね!!」
「.......そりゃどうも。」
「一条くん、なんかぱっとしないね?何かあったの?」
「いや.....少し昔を思い出しただけだ。気分が優れないとかではないよ。」
「そう.....そうだったらいいんだけど。」
花陽に変な心配かけたな....こいつは優しいんだな。
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花陽side
帰ってきた伊月くんは少し顔色が変わっていました。.....でも、伊月くんの体を見るに、刺されたとか撃たれたということは無かったんです。.....どうかしたのかな?
私が最近気になっていること.....私は伊月くんを何も知らない。彼と接していて結構経っているのですが、どちらかと言えば私たちのことをきいてくるだけで、特に自分のことを何も話そうとしません。聞いても、彼の黒獅子としての経験談だけで、彼の中学時代のことや、親のこと、私は何もわからないです。
.......友だち、なのに知らないのは辛いです。
「ねぇ、一条くん?」
「ん?どうした?花陽?」
「あの.....伊月くんってどんな中学時代を過ごしていたの?」
「中学時代.....か。特に目立ったことはねぇよ。今と変わらない生活だよ。」
「じゃあ.....お父さんやお母さんはどんな人なの?」
「親父は.....破天荒だな。俺よりも強いし、知識もえぐい。母さんは.....俺もよく覚えていないんだ。なんせ物心ついた頃からずっと海外で仕事してたし.....たまにピアノを教えてくれる姿は、とても優しそうだったよ。」
「そうだったんだ.....今も海外で仕事しているの?」
「いや.....もうこの世にいないさ。3年前、死んだよ。.......病気だったかな.....」
「.....なんかごめんね。辛いこと聞いちゃって。」
「気にする必要はない。俺の親が死んだことをお前は知らないからな。.......そういうことは誰だってあるさ。」
「.......」
「お前は少し気を遣いすぎだ。少しは失礼があったっていいんだぜ。そうじゃなきゃ、結構狭い思いをするからな。」
一条くんはこう言ってくれていますが、やっぱり気にはなります。それに.....このことに関しては、真姫ちゃんや凛ちゃんも結構思っているんです。もう少し、距離が縮まらないかな?
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時は流れ、放課後
「絵里先輩、ダンスを教えてください!!」
「.....どうして私に頼むの?」
「絵里先輩昔バレエしていたんですよね!!それがとても上手だったから、私たちをいつも足りないと言っていた理由が分かったんです.......だから習いたいと思ったんです!!」
「ダメ.....ですか?」
「あなた達の活動は理解できないけれど.......あなた達もそれなりの人気があるし、それで学校の知名度が上がるなら協力するわ。でも、やるからには私が許せる水準まで頑張ってもらうわよ。」
『はい!!』
「絵里のやつ、少しは分かってきたんじゃないか。」
「そうやね......これも伊月くんのおかげかな。」
「....俺は何もしてねぇよ。あいつが自分と向き合ってそういう風になったんだろ。」
「そうなん?でも伊月くんが来てから、絵里ちは変わったんだよ。」
「まぁ絵里にとっては非日常的なことが沢山あったからだろうけどな。それが良く働いたか悪く働いたかは知らんが。」
「.......なぁ伊月くん、教えて欲しいんよ、どうやったらあんな風に人を助けることができるん?」
「.....どういうことだ?別に俺はそういうことをしてはいないが.....」
「今のμ'sのメンバーって、海未ちゃんとにこっちを除いて、皆伊月くんの影響を濃くうけてるやん?その裏には大体伊月くんが関わっている。絵里ちに関しては、昔からすごく変わった。うちは何もできんかったし.....だから知りたいんよ。」
「高坂先輩も、妹さんを救ったってだけで、本人とはそこまで関わっていないけど......俺は俺の母さんが昔よく言ってたことと、親父がいつも信念としているものを大事にしているだけさ。」
「大事にしているものって?」
「俺の母さんはな、昔から『何が大切なのかを考えるのじゃなくて、あなたが何を大切にしたいか考えるのよ。自分を見せない人には、他人は自分を見せないのよ.....だから、あなたはあなたの大切にしたいものを以て進んで、誰かの支えになれる人になりなさい。』って。今ならその意味も何となくわかる気がするよ。」
「因みにお父さんはなんて言うてたん?」
「親父か.....親父は『進むことをやめるな。』ってよく言ってるんだ。立ち止まれることもひとつの強さなんだが、親父は自分らしく進めって。生きていれば、必ず意見の衝突や小競り合いはおきる。その時に、自分を貫けってさ。進んでいけば、それが成功であれ失敗であれ自分を大きくしてくれる.....成功をどれだけ糧にできるか、失敗から何を学び、立ち上がるか......親父はそうやって進み続けることで、いつか誰かを救うことが出来るし、誰かの助けになるって。.....俺はその信念に信じて進んでるだけ。何も特別な話術や、心理学とかを心得てるとかそういう訳じゃないんだ。」
「そうなんや.......それはそれとして、改めて礼を言わせて欲しいんや。絵里ちを助けてくれてありがとう....伊月くんには感謝してばっかりやね♪」
「そうか?お前もすごいと思うけどな。.....人を支え続けるってかなり難しいんだ。それをお前は出来ている。尊敬するよ。」
「ふふ.....伊月くんに褒められるとなんかくすぐったいね。」
「なあ?絵里たちどこ行ったんだ?」
「.......忘れてたね、おそらく屋上やと思うけど.....」
「じゃ行くか。」
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屋上に来てみたら、皆がヨガみたいなことをしていた。.....えっと踊りを教えるんじゃなかったっけ?
「絵里、お前なぜにヨガ教室みたいなの開いているんだ?」
「ヨガ教室じゃないわよ.....ダンスにおいて大切な柔軟性、体幹能力がどれくらいか見たら絶望的だったから1からやり直しているの。」
「大丈夫かよ.....まぁ出来た方が絶対にいいだろうな。」
「もう無理〜。」
「この程度で音をあげちゃダメよ。ダンスで人を魅了したいんでしょ!?この程度出来て当たり前!!」
案外厳しめでいってるんだな。そっちの方がいいだろうけど。
というか、凛、真姫、お前らに関してはどんだけ柔軟性がないんだよ!!それだと普通に怪我しやすくなるぞ.....
「柔軟性とかは、継続すればちゃんと身につくから頑張れよ。」
「伊月くんはどれくらい柔軟性あるん?」
「えっと、座ったまま開脚して、体を倒した時、お腹は付けられますよ。体幹能力に関しては.....少なくともこの中で一番高いと思います。」
「すごいね.....それも黒獅子やってるうちに身についたん?」
「そうですね。体幹能力は元々ありましたが、柔軟性に関しては、結構最近に身につきましたよ。ほら、ナイフで刺されそうになった時、案外役に立ったんですよ。あとは、細かい動きができるようになったのは大きいですね。」
「へえ、すごいね。」
「あわわ!!」
「あ!!かよちん!!大丈夫?」
「大丈夫だよ。」
前途多難.....だな、これは。
「もういいわ、今日はここまで。」
「ちょ!?何それ!?」
「そんな言い方ないんじゃない!?」
「私は冷静に判断したまでよ。自分たちの実力が少しは分かったでしょう?」
.....あれ?絵里が前の冷たい絵里になってる。先日までのあの柔らかい絵里は一体どこにいったんだ?
「なぁ、希、どうして絵里ってあんなにスクールアイドルに対する当たりが強いんだ?」
「さっきも言ってたやん、絵里ちはバレエをしてたって。だからこそ、スクールアイドルの踊りが稚拙にみえるんちゃうかな。」
「そういうもんなのか.....まぁ分からなくもないが....」
「今度のオープンキャンパスには学校の存続がかかっているの。もし出来ないっていうのなら早めに言って。時間が勿体ないから。」
「待ってください!!ありがとうございました!!明日もよろしくお願いします!!」
『お願いします!!』
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「絵里、お前随分と硬い態度とるじゃねぇか。」
「伊月!?希!?どうしてここに?」
「そりゃあ、お前の練習指導を見に来る為さ。......顔から見て前途多難ってところか。」
「ええ。.....あの子たちはまだまだ未熟すぎる。とてもオープンキャンパスは任せられないわ。」
「そ.....だがそう決めるのはまだ早いぞ。もう少し見てから決めたらどうだ?」
「.....おそらく無理よ。」
絵里はそのまま去っていった。希は後を追いかけたのか。
ガチャ
「おいお前ら大丈夫か?随分と揉まれたみたいだな。」
「伊月くん!?どうしてここに?」
「いや、ちょっとした気分だ。ところで、急な頼みで悪いが.....引き受けてくれないか?」
新しく評価されていて驚きました。これからも頑張らねば.....
初めて見た時、絵里の「ダンスで人を魅了したいんでしょ!?」が
「デァンスで人を魅了したいんでしょ!?」って聞こえたんですよね.....聞こえませんでしたか?
あと今回も多分誕生日記念のやつは、0時0分に投稿すると思います。