「.....今日は学園祭だったか.....行く気がしないなぁ.....」
あれから、俺は1度も家に帰ってないし、学校にも行っていない。.....本当に気分が悪い。自分というものを見るだけで反吐が出る。心に闇を抱えてながら、何事もなかったかのように接しようとしていた自分が。表面上上手くやるのは大切だが、やっていて気持ちがいいものではない。
「ちっ.....最近は変なやつらもいないから退屈だな。」
そう、KBが発見されてからここ数週間、いつもなら見かけるチンピラ共が誰一人いない。平和と言えば聞こえはいいが、嵐の前の静けさというか.....悪い予感しかしない。
「なんでだろうな.....気分は最悪なのに、雨にあたると少しは気分が落ち着く。汚い自分を洗い流してるからか.......」
「おや?久しぶりだね、少年。」
「ああ?誰だてめ......!?なんでお前がここにいるんだ!!」
そこには....俺の.....3年前の宿敵が現れた。ほんと最悪だよ。
「なんでか.....まぁ答えてあげよう。ここ最近、この街で色々起きているみたいだからね。楽しそうだから来たのだ。」
「裏じゃ『白鴉』と呼ばれてる有名な殺し屋がなんの用だ.....?」
「また呼ばれていてね。この街までわざわざ足を運んだのだ。依頼は『黒獅子の暗殺』、つまり君を殺すことが私の仕事なのだ。」
「.........」
「まさかこんな所で会えるとは思いすらしなかったがまあ良い。私は今ここで君を殺すつもりは毛頭ない。」
「.......何のつもりだ?」
「今の君を殺しても満足出来ないからだ。3年前の君は、血に飢えた獣のようで、私を昂らせるには十分な気迫、殺気であった。だが今は打ちひしがれた弱小な生き物のようだ.....殺し屋とは言え私は弱者を殺してもなんの快感も得られないからね。」
「ふざけんな!!!今ここで、てめぇの首を引きちぎってやる!!」
「ふっ.....どうかな。」
「なっ.....!?」
俺は全力で殴ったはずだ。だかそれは簡単にいなされ、横腹にナイフを刺された。
「昔の貴様は失ったからこそ限界を越えた気迫があった。だが、今の貴様には何もない。空っぽなんだよ。」
「クソが.....」
「貴様が大切なものが壊れる時を待っている。その時、私は今まで味わったことの無いほど興奮できるはずだ。」
「くそ.....待やがれ.....」
「今回は見逃してやる。『同郷』のよしみだ。」
その後俺はナイフを抜き、血が止まるまでその場で伏した。.......全くかなわなかった。あんな簡単にやられるとは.....
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「.......き。兄貴!!起きてください!!!」
「.......ん.....ぐっ...,」
「無理しないでください。刺されたんですから。」
「悪かった.....まさかやられるとは.......」
「一体誰なんですか?そいつは....」
「白鴉....現在世界でも屈指の実力を持つ殺し屋だ。お前らなら聞き覚え位はあるだろ.....?」
「はい.....殺しに快感を覚えてて、標的を追い詰め、限界状態にしてから殺すやり方をよくすると聞いています。」
「.......話が変わるんだが、お前らは俺をどう思っているんだ?正直に話して欲しい。.....俺をどう思う?」
「どうって.......今だから言えるんですが、俺たち皆、兄貴のことは信じていますよ。最初は、こんな若いやつが偉そうな態度を取って.....なんて思った人もいるんすよ。でも、俺たちは一緒に過ごしていく中で、兄貴の温かさを知りました。兄貴は自分を大事にしてください。裏切られても誰かを信じたいと思う兄貴の心は.....立派ですよ。俺たち大人もこうやって騙し合いの世界で生きてますけど、分かるんですよ。信じることよりも信じようとすることの方がよっぽど難しいんですよ。自分の心と対峙しなきゃいけませんから。」
「そうなのか.......」
「それに今までここを出た皆も今は上手くやっていけてるみたいですし、兄貴は救っているんですよ。.......詭弁と言われるとどうしようもありませんけど、俺たちは兄貴を信じてついていきますよ。勿論、お金とかそういうの関係なしで。『一条伊月』という人間についていきます。何があっても.......」
「...........」
本当に勿体ない位の部下だ。こいつらは本当に人ができてるからそこら辺の奴らより信じられる。こういうところは、俺にはないし.......なにより立派だ。手を差し伸べておきながら俺は追い越されてたのか。
「ありがとう.....少しは軽くなったよ。」
「いえいえ、俺たちはただ思ったことを言っただけですよ。」
俺の過去を知らないとはいえ.......俺の事を真正面から見ている。偏見なしに。こういう部下に恵まれて俺は良かったよ.......
「だが、まだ完全には信じられないんだ。昔のこともあってか、どうしてもな...悪いな.....」
「別に構いませんよ。俺たちは兄貴が自分から信じれる時までずっと待ってますから.....何も急ぐことありませんよ。」
ほんと、俺が憎いよ、こんなにも分かっているのにまだ心が否定している。なんでこうなるんだよ.......
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穂乃果side
今日は学園祭......前に雨の中練習したせいか、少し体がだるいけど、ライブがあるからそんなこと言ってられない!!!頑張らなきゃ。
「穂乃果?大丈夫なのですか?」
「大丈夫だよ!!海未ちゃん!!今日のライブ頑張ろうね!!」
「はい。そうですね。」
海未ちゃんにバレそうになったけど誤魔化した。.......皆一生懸命練習して来たんだもん。ここで穂乃果がしんどいという理由で休んだらみんなの頑張りが無駄になっちゃう。お願い!何とかもって.....
「それにしても凄い雨やねー。」
「こんな中で屋外ライブは、最悪ね。」
「そうね.....でもお客さんはそこそこ来てくれてるみたいよ。雨とはいえ、いつも通りやりましょ。」
「.......うん!!そうだね。」
「もうそろそろ時間よ!!皆、準備いいわね!?」
「もちろんにゃ!!雨の中でも楽しく歌うにゃーー!!!」
「こんにちは!!皆さん!!μ'sです!!雨の中見に来てくれてありがとうございます!!精一杯歌うので、見ていてください!!!」
『No brand girls』μ's
なんとか曲は終わり、ライブは成功.......
ドサッ!!!
「!?」
「穂乃果ちゃん!?」
「すみません、メンバーが倒れてしまったのでライブは中断させてもらいます。」
そんな.....ここまで頑張ったのに.......穂乃果の意識は遠のいていった。
「穂乃果!!」
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.........寝てたのか。
俺はふと気づけば1日寝ていたらしい。疲れていたからなのか、それとも少し安心したのか.......
「伊月、ここにいたんだ。」
「那月......何の用だ?」
「伊月が元気かなって。家を出たのは気分とかの問題だよね?だったら伊月が納得いくまで行動して。お父さんもわかってると思うから。」
「ああ.....」
「それと、昨日の学園祭ライブなんだけど、.......成功とは言えなかった。穂乃果ちゃんが途中で倒れたことでライブは中断。まだ完全に治っていないし。」
まさかあいつら、あんな雨の中ライブをしたのか.........それにリーダーが倒れたとなれば....大変なことになりそうだ。
「そうか....それは残念だな。でも問題はそこじゃないだろ。」
「そうだね.......」
「その事実を、穂乃果先輩はどう捉えているかだ。体調管理すら出来てないのかと思う人もいるだろうし、無茶はするだろうから想定してたかもしれない。つまり....グループがバラバラになるんだよ。特に自分のせいで台無しにした、なんて考えれば尚更だ。これ以上何もないといいんだが.....」
最近少し短めになっています。場面の区切り具合で、どうしても1回の文量が少なくなってしまいます。そこはご理解を。