翌朝
「で、どうだったの?」
「ええ、作曲は終わったわ。あとは歌詞と振り付けを上手く調整するだけね。」
「衣装もある程度は出来てるよ♪ただ曲に合わせて少し変えなきゃだけどね.......」
「すみません.....歌詞は思いつく限り書いたのですが、山登りに夢中になってしまい、まだ未完成なんです。」
「やっぱりそうだったのね.....大丈夫よ。まだ間に合うわ。」
「よし、帰って練習しよう!!」
「穂乃果、まだ時間はあるのですから基礎練習くらいはしないといけませんよ。」
「あはは.....そうだね。」
「橘さん、そっちはどうだった?」
「こちらは一晩中見張ってはいましたが、特に怪しい人は見かけなかったよ。ただ.....伊月くんには伝えたはずだけど、あの時は怪しい人が2人程.......」
「あれはお前のストーカーだから気にするな。こっちは仕掛けたけどな.....やっぱりあいつらだった。だが要件は違った。」
「要件?何だったんですか?」
「忠告だそうだ。城善寺財閥の当主の娘さんが音ノ木坂学院に転入するから失礼なことをすれば首が飛ぶってさ。学校に送って、俺を直接監視したいんだろうけど。ただ気になるのはそいつがどういうやつなのかってこと。」
「さぁ.....当主さんは知ってますが娘さんは知りませんねぇ.....」
「あいつに似たクズ野郎かもしれないが、かつてそこでその人に仕えていた人と出会って話したことはあるんだけどさ.....今の当主とは違うみたいだぜ。」
「違う?どういうことですか?」
「そいつの言葉が信頼できるかはともかくそいつはあの野郎みたいに自分の使用人を駒だとかは思ってないみたいでな。」
「そうなんですね.....なんにせよ伊月くん、警戒しなよ。その子が大丈夫だったとしても、その取り巻きが因縁付けて伊月くんに嫌がらせするかもしれないしね。」
「ああ気をつけよう。今回は感謝するよ。無理なお願い聞いてくれて。」
「え.....?伊月くんが私にお礼......うぅ....」
「おい、なんで泣くんだよ。別になんともないだろ。」
「伊月くんも成長しましたね.....私も嬉しいよ。」
「なんか湿っぽいな.....とにかくその転入生には気をつけよう。」
「うん、任せたよ。じゃ、戻ろっか。」
「そうっすね。」
そうして俺たちの2度目の合宿は幕を閉じた。色々あったみたいだけど、また成長出来たんだし、あいつらにとっては良かったんじゃねーの。俺にとってはまた厄介事が増えたんだけどな.....
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「さて!!こんな時期ですが、またクラスに転入生が来ました!!さぁ、入ってきてください!!」
「また転入生だね.....どんな人なんだろうね、一条くん。」
「さあな、面倒な奴じゃないといいんだけどな。」
「自己紹介お願いします!!」
「分かったわ、私の名前は城善寺冴子(じょうぜんじ さえこ)。城善寺財閥の次期当主よ。あと半年くらいだけど、よろしく。」
「へぇ.....優しそう.....」
「ほんとそれ。一条くんもう不要なんだし、消えてもいいんじゃないかな (ボソッ)」
「.......」
「とりあえず一条くんの後ろに座ってね。」
「ええ、あそこね。」
「あなたに後で話があるわ。後でここに来なさい。」
「.....ああ。」
話、か。嫌な予感しかしないな.....
休憩時間
「城善寺さんって、どういう趣味があるの?」
「そうね.....特にはないのだけれど、強いていえば散策かしら。新しく見えることが意外と楽しいの。」
「普段どんなご飯食べてるの!?今度誘って!!」
「誘えたら、ね。うちは何かと厳しいから。」
「あ、そっか。、ごめんね。」
「さっき一条くんと話してたけど、なにか脅されてたの?」
「いいえ.....ちょっとした挨拶よ。」
「でも安心だよねー。城善寺さんがいれば一条も怖くないよね。」
「彼が何かしたの?」
「あいつがいるせいで事件に巻き込まれるし、ほんと最悪。」
「でもそれは彼が原因ではないのでしょう?」
「それでもさー、トラブルメーカーって言うかさ、今までそんなことなかったのにあいつが来てからそういう事件が増えたってわけ。だから結局あいつがいるからーってなっちゃうじゃん?だから城善寺さんも何かあったらあいつのせいにしていいよ。というか物騒なのはアイツ絡みって考えていいよ。それにさ、小泉さんとかスクールアイドルの子達も一条と絡んでるんだよね、あれ絶対脅されてるんだよ。じゃなきゃ内気な小泉さんがあんなに話すわけないし。だから城善寺さん、小泉さんたちをあの野郎から解放してあげて。」
「随分と酷い言われようね.....」
「まぁ城善寺さんがいれば大丈夫だと思うよ。」
「城善寺......か。」
「一条くん、どうかしたんですか?」
「いや、何でも.....俺今日の練習少し遅れるわ。」
「え?何で?」
「ちょっとした野暮用があるからな。」
「分かったよ、気をつけてね。」
「ああ。」
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放課後
「で、何の用だ?」
「私が何故ここに来たか、分かるかしら?」
「俺の監視、だろ?」
「半分正解、ね。私がここに来たのはこの学校の評価を守ることとあなたを抑制するためよ。」
「守る?どういうことだ?」
「下調べはしたのだけれど、この学校はスクールアイドルのおかげで持ち直したようね。そこは素晴らしいのだけれど、あなたがいる.....この事実が世間によく思われるかしら?」
「さあな.....世論だったら悪く思われるだろうな。暴力を行使しまくっている人間がこんな学校に来てるんだからさ。」
「あなたがどんな人間かは知らないわ。でも、少なくとも良く思う人は殆どいないでしょうね。だから私が動いた。あなたが何かすれば.....分かるわね?」
これは明らかに脅迫だ。いや、死刑宣告か.....自分がいるから、いつでも情報をリークできる。今までみたいに雇われた奴なら容赦なく叩ける。あっちは仕事だからやられてもそれまでだ。だが世間から高評価されている財閥の当主の娘となると話は変わってくる。発言に信憑性が変わってくる。つまり、俺が学校で何かをすれば.....たとえそれが事実無根だったとしても、それが世間に真実として伝わる。それがたとえ教員が相手でも.....この学校の人間を守ろうとすれば、俺は干されるし、逆に見捨てれば、それはそれで俺の悪評が出回るだろうし、何より俺の信念に反する。くそが.....足元を見られるっていうのは本当に嫌なもんだ。
「俺はお前が来ようとやることを変えるつもりは毛頭ない。そう上の奴らに伝えておけ。」
「そう.....あとこれは依頼よ。」
「あ?」
「この学校に護衛なんて連れてきたら迷惑でしょ?だから私のボディーガードをしなさい。そうすれば、学校におけるあなたの好感度も少しは上がるわよ。」
「却下だ。そんなもん誰がするかよ。」
「なら100万出すと言えば、引き受けてくれるかしら?」
「金出せば意見を変えるとでも思ってんのか。」
「ええ、今まで大金を積んだ時、断った人は誰一人いなかったもの。あなたとて大金は欲しいでしょ?」
「いらねーよ。俺を買収出来ると思ってるそのおめでたい思考回路を直してこい。俺は金を積まれようと引き受けるつもりはない。俺が守るのは、全員だ。お前個人を守りはしない。よく覚えておけ。それがお前のかつての使用人、いやこういった方がいいか?城善寺財閥の次期当主を守り、汚れ仕事を担当している『透谷』との約束だからな。」
「なぜ彼を.....」
「それは今どうでもいい。とにかく、俺はお前の依頼を拒否する。そして.....お前らがここの奴らになにかした時は.....たとえお前でも容赦しないからな。」
「交渉決裂ね、まぁいいわ。つまらないことで呼んですまなかったわね。ではこれで失礼するわ。」
「何故彼が透谷を.....一体どこで?」
テストが終わった.......
スクスタにフェス来てますね。こういうの前もって知っておけばよかったかな