あの後、警察が到着し事態は一応収めることが出来た。生憎一般市民にKBを投与された人間を見た者はいなかったので、騒ぎが大きくなることは無かった。
俺は那月を抱えて家に帰った。まだKBの影響がなくなったわけじゃない。だから今医者に見せたり公共の施設に連れていくのは、万が一暴走した時のことを考慮して症状が収まった後にしている。
「............」
「.........今回ばかりはお前に感謝するしかない。那月を救ってくれて感謝する。」
「俺が通ってなければ本当に危なかった。こんなところで暴れられたらおしまいだ。」
「お前、どうやって那月を止めた?」
「俺の血を使ったんだ。KBとは相性がいいだろ?特に生きた人間の生血なら尚更だ。」
「そうか.......このタイミングで悪いんだが、この前のことを話す。」
「この前?」
「お前も薄々は察しているだろうが.......お前は、俺や那月の血族じゃない。お前は拾われた子供なんだ。」
「なんとなく分かってはいたが.....どういうことか具体的に説明してもらえるか?」
「あぁ、少し長くなるがな。事の発端は今から15年前、お前がまだ生まれて間もない頃だった.......お前は別の家族の一人っ子として生まれた。そしてお前の父親は俺のかつての同期で仕事仲間だったんだ。そしてその妻は.......」
「俺と同じ神山町の生まれ、か。」
「あぁ、お前の親父もだけどな。それでな.....当時俺たちの仕事の界隈であるひとつの噂があったんだ。「血狩り」という隠語でな.......ある人間があらゆる血を求めて人を殺していたんだ.......A、B、O、AB、RH+、-.......そして神山の血。そしてその人間は.......白鴉、今お前を狙っている殺し屋だ。」
「なっ.....!?だが、なぜお前がそれを知ってるんだ?親父はSPだろ?だったら要人保護をしておけば良かったんだからどうしてそっち側の事情を知ってるんだ?」
「要人と関わっているからだよ。あいつの人間の血への執着は異常だ。しかもあいつは仮面を被って襲うから、国籍とかが分からなくなるんだよ。以前にあの男は別の国の大臣を襲ったらしい。大臣は幸い命を落とすことはなかったが、その国の治安維持機関が来た時にはかなり血を取られていたらしい。監視カメラもかいくぐってフードを被っていたから、大臣もどこの国の出身か分からず暫くは恐怖で外に出られなかったらしい。だが、正体が分からない以上指名手配にすることが難しい。全く、上手いことをしてくれる。」
「あいつと俺の本当の親になんの繋がりがあるんだ?」
「やつの出身か神山町であることは知ってるよな?」
そうか、あいつか同郷のよしみって言ってたのはこういうことだったのか.....だがそれなら自分の血で満足出来ないのか.....?
「白鴉、あいつの経歴は一切分からない。そして.....あいつは神山の血を引いていない。神山の血はそれを持つ者同士が産まない限り継承されない。一般の人との間には普通の血を持った子供が生まれるんだ。白鴉もその例だという噂がある。」
「だがあいつには胸の近くには緑色の痣があったんだ。それはおかしいだろ。」
「そう.....あいつは血を自分の中に入れたんだ。最初は興味本位で傷口に血を付けたら、あいつの傷が治ったんだ。そこからあいつはその血を自分の中に入れるようになった。そして.....血を引く者と同じ特質を持ったんだ。つまり適応したんだ。仮にも傍系だったからな。だがそれは適応した血だ。直系の血を手に入れられなかったから、殺して手に入れようとしたんだ。そしてその標的が.......お前の親達だ。もともと白鴉は町に住んでいたから誰かの目星がついていた。だが町で殺しを行えば後々の後処理が面倒だから外に出た標的をさがした.....その結果がお前の親だ。」
「.......何故俺は生き残れたんだ?」
「少し回想に入るぞ。」
「このムードでメタ発言をするな。」
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今から15年前
「あいつ、今日仕事なのになんで来てないんだ?」
「さぁ.....体調不良の連絡もない。どこか行ってるんじゃないか?」
「仕方ねぇな。俺が起こしに行ってくる。」
「頼む。もし何かあった時はすぐ連絡してくれ.....」
「大丈夫だろ、簡単に死ぬ奴じゃない。」
「.........なんだ、これは。」
今目の前に広がっているのは、汚れが何一つない部屋。だがそこには死体が2つ。息も脈もない。そして.....やけに白い。
「とりあえず本部に連絡.....ん?赤子...,?しかも寝てやがる。」
刹那、敬一は赤子を見つけた。その近くには手紙のようなものもある。
俺は命を狙われている。もし俺たち親子が死んだら、この子を.......
その後は字が消されてていて読めなかった。
「分かった.......お前のとの約束を守る。この子を立派になるまで守ってみせる。」
「おい一条、どうし.....大丈夫か!?」
「もう駄目だ。輸血をするにしろもう抜かれてから時間が経っている。これは助からない。」
「.....血狩り、か。」
「おそらくそうだろうな。だが俺らSP相手にここまで手際のいい事が出来るとはな.....」
「そうだな.....これは緊急事態だ。帰って対策を立てる。一条、この者の弔いはお前に任せる。」
「あぁ...,.......」
そして敬一は彼らの墓を立て、弔った。親族には仕事での事故死として伝えられた。自分たちの親族が殺し屋に血を抜かれたなどと言えばショックのレベルは計り知れない。
「ったく.....こんな赤子を残して死ぬなんて.....馬鹿野郎が。」
「...........」
「赤子は至って無言か。でも悲しそうな目だな。さぁ、お前もお父さんお母さんに挨拶しておけ。」
「...........あぁぁ........」
「...........この子は俺がちゃんと面倒を見る。絶対に死なせはしない.........約束だ。」
その後、一条敬一は静かに涙を流した。何も出来なかった自分を悔い、そしてこのような事態を予測出来なかった自分を責めながら.....
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「これが....お前が俺の家に拾われた発端だ。」
「.......そうか。」
「.......恨んでるか?俺を。」
「は?」
「俺はお前の父親のフリを今までしていたんだ。さらに言えばお前の父親を守れるようにしなかったんだ。恨めしくはないのか?」
「さぁな.....だけど俺が今こうやって生きていられたのは本当の親父とお前がいたからだろ。恨めしいとは思えねぇし、俺は親の顔すら知らないんだ。恨むのもおかしいだろ。」
「それもそうか.......だけど良かった。お前にこのことを伝えることが出来て.....一生黙ったままじゃ気持ち悪いしな。」
「どういうことだよ.....それはそれとして、.......これからどうする?」
「伊月。これから毎朝、俺と組手をしろ。お前を強くする。」
「罪滅ぼしなんて思ってないよな?」
「無くはない.....だが、今のお前じゃ明らかに力不足だ。俺がと組手てそのギャップを埋めろ。」
「そうだな.....那月は.....」
「暫く経過観察するしかない。今すぐには目覚めないだろうし症状が消えるかも分からない。」
「分かった.....えっと、どう呼べばいいんだ.....義父、よろしく頼む。」
なんか疲れているのか....見直した時に展開があまり意味が分からないものになってるような.......