黒獅子と9人の女神の物語   作:面心立方格子

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前回があまりにも短かったので......今回は長めに書きます。
余談なんですが、皆さんはラブライブ!シリーズのedって、1期と2期どっちが好きですか?僕はμ'sもAqoursも2期の方が好きです。


#72 本当の宣戦布告

「誰も.....いないか。」

 

俺は退路の確認に来ている。あのおっちゃんのことだから抜かりはなさそうだ。ただ.....逃げるための移動手段が歩行なのか.....?怪我人もいるしな.....

 

 

「伊月、こっちには誰もいないか。」

「ああ.....特に潜んでもいない。かえって怪しいな.....あいつらのことだ。何かしら仕掛けてるのか.....?」

「あとは一条を待とう。ここは家から遠い。追っ手が来るまではある程度時間稼ぎはできる。その間に.....ちょっとでも応急処置をするか。」

「そうした方がいいな.....と言いたかったところだが、追っ手みたいだな。」

「.........」

「てめぇが何考えてるかは俺には分からんが.....それがお前の決断なんだな、透谷。」

「やれやれ.....やはりあなた相手ではこの程度のことではすぐバレますか.....伊月様。」

「なっ!?貴様.....」

「待て、黒柳。これは俺とこいつの問題だ。首つっこむなよ。」

「.........」

「お前が裏切るとは思ってなかったが.....城善寺が転入してから急に動きが目立つようになった.....」

「私は元々あなたに対して忠誠心など無かった。それにお嬢様が来ればその害になりうる存在を消しておくのは、私の役目ですから。」

「そんなこと知ってる。なんでまだ家に囚われているんだ。」

「当たり前です。それが私の生きる意味ですから。あなたにぐちぐち言われたくありませんね。」

「生きる意味、か。透谷家の掟は知ってるが.....あれでいいのか?」

「あなたの主観で決めないでいただきたい。私は今の役目に満足しているのです。さっきの言葉、そのまま返します。あなたこそ、復讐に囚われて黒獅子などをしていてなんとも感じないのですか?私は不可解だ。」

「さぁな.....確かに、心に傷がつくようなこともあったし、時には情に身を任せたこともあった.....だが俺はお前が考えてるような理由でやってねーよ。確かにそういう感情は抱くがな。」

「では何故やっているのですか?あなたは元々こちら側と関係のある世界には生まれていない.....」

「3年前にな、あの日.....目の前で皆が化け物に襲われて死んでいった日.......殺されかけた俺をある人が命をかけて庇ってくれたんだ.........それが、お前の兄だ。あいつも透谷と名乗っていたしな。」

「.......では、あなたは今まで裏切ると分かっていた者を傍に置いていた、ということですか.....」

「まぁ、そうなるな。そこは否定はしない。」

「これはあくまで確認なのですが.....私の兄、先代の透谷を殺したのは.......あなたで正しいですね?」

「.........あぁ。あいつを殺したのは.....俺だ。」

「そうですか.....あなたを殺す理由はそれで充分でしょう。あなたはこの家を敵に回した時点で負けなのですよ。あの日、大人しく私たちに捕まっておけばよかったものを.......」

「悪いが、あいつに助けられた命をそう簡単には捨てられないな。俺は生きなきゃ行けないんだ。あいつとの約束を果たす為に.....」

「殺しておいて随分と綺麗事を言うようですね。あなたはその人を殺したのですよ?都合よく話すのを辞めてもらいましょうか。」

「信じる、信じないは自由だが、俺はあの日起こったことを美化しようとはしない。だがな.......あいつの死をただの死にするなよ。それは.....俺は許さない。」

「兄は立派だった。私の目標のようなものでもあった.....顔色を変えずに標的を殺し、私たちのような下の者には優しかった.....だがあの兄はもういない。私の憧れていた兄は.....どこかの誰かの手で殺された。その誰かがあなたなのです。」

「話し合う気はないか........」

「では、死んで頂きます。」

「かかってこい。.......黒柳、その人を頼む。俺はこいつと戦う。」

「お前はどうするつもりだ?」

「義父が来るまで持ちこたえる.....頼んだぞ。」

「分かった.......必ず生きて帰ってこい。」

「会話とは随分と余裕ですな。」

「くっ.....速い。」

「今までのものが本気もでも思っていましたか?あなたの動きを2年近く観察したのです.....今の私はあなたの戦い方を全て知り尽くしている。」

「ちっ.....思うように動けねぇ。」

 

 

ボォン!!!

 

「何事ですか.....?」

「ちっ.....まさか爆破するとはな.....」

「外の方が戦いやすい。家の中では窮屈だ。」

「人の家を簡単に爆破しないで.....まぁいいわ。今回は不問にするわ。」

「義父!!」

「伊月!!人質は解放出来たか!?」

「ああ!!黒柳が今運んでいる!!!」

「人質.....まさか!?」

「そうさ.....今回の目標はお前らじゃねぇ。人質だ。てめぇらが裏で金稼ぎする為に犠牲になっていた人間をな!!」

「ちっ.....何故その情報が外に......」

「そんなことはどうだっていい。今はお前を殺す。」

「くそ.....さっきのナイフ、毒を塗ってあったな.....体が動きにくい。」

「普通この毒は動物ならイチコロなんだが.....お前は規格外のようだな。まぁいい。じわじわ追い詰める。」

「義父!!危ない!!!」

「くそ、来んじゃねえ!!」

 

パァン!!!

 

「.....,....!?」

「ぐっ.....」

「義父.....おい!!しっかりしろよ!!!」

「今のうちに2人とも殺しなさい。」

「勿論だ。こいつらには恨みがある。この前は同郷のよしみで見逃してやったが.....今回は殺させてもらう。」

 

 

「くそ.......こうなったら.....」

 

俺はあるボタンを押した。これで逃げるしかない.......!!!

 

「おい、ガキ!!乗りやがれ!!!」

「済まない!!義父を.....頼む!!!」

「何言うとんねん!!お前も乗るんや!!!」

「だが.....俺は決着をつけなきゃいけない!!」

「この状況でそれができると思うとるんか!!このアホが!!!」

「ちっ.....なら......」

 

 

 

「俺は戦う!!!俺自身の復讐としてではなく、お前らに縛りつけられた人達を.....罪のないひとを救う為に.....俺はお前たちを倒す!!!誰も.....失わせはしない!!!」

 

「はよのれ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「逃げられましたね、追いますか?」

「今はいいわ。ともかく.....爆破した壁を直して何事も無かったようにするのよ。後はアンプルが無事か最優先で確認して。もし壊されていたら.....マスコミを買収してあいつらをする追い詰める。」

「承知しました.....当主様。」

「あと.....裏切り者を炙り出すわ。あいつらに嗅がれるようになった禍根を絶やすわ。」

「はっ.....お任せを.....」

「つまらない。あと1歩で殺せたものを.....」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ピッ.....ピッ.....

 

「一条さん、どうぞ。」

「.....はい。」

「あなたのお父さんの容態ですが....大変危険です。銃弾で体が貫通している上に、そうとう強力な毒のせいで体の機能が上手く働いていません。今は生と死の境目にいます.....我々もベストを尽くします。」

「ありがとう.....ございます。」

 

 

 

 

 

「敬一.....」

「.........くそが!!!!!」

「おい、ここは病院だぞ。壁を殴るな。」

「.....すまない。俺は.....また、また自分の無力さで他人を巻き込んだ。くそ.....俺には誰も守れないのか.......」

「.......今はお互い落ち着こう。私も、今は心の中が渦のようになっている。怒り、哀しみ、混乱......とてもまともではいられない。」

「.....それは俺もだ。」

「私は現場近くを見てくる。後処理をしなければいけないのでな.......」

「分かった。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

俺は夜の闇の中を歩いている。正直何から考えていいかすら分からない。仲間だった透谷は裏切った.....予想出来ていたとはいえ苦しいものだな。そして...白鴉と城善寺は繋がっている。白鴉は血を取り込んで適応。親父は重症を負い.....死にかけ。きっと皆また離れるんだろうなぁ.....裏切りを見抜けなかったこと、また守れなかったこと.......部下たちは分からないが、μ'sのやつらは.....どうだろうな。だけど.....

 

 

「本当に俺には居場所なんてないんだな.........無力な俺に現実を示す.....」

 

 

 

「あれ?一条さんじゃないですか。.....どうしたんですか!?その血しぶき。」

「先生.....なんでもないよ。」

「なんでもないわけないじゃないですか!!!」

「......今はほっておいてくれ。」

「だめです!!今1人にしたら大変なことになりそうですし!!!」

「.....あっそ。」

 

 

 

 

 

 

 

「だからって家までついてくるのか.....」

「一条さんとは改めてお話しておきたかったので。.....それで何があったのですか?」

「ちょっとした喧嘩ですよ。」

「嘘、ですよね?」

「.....あ?」

「君の目が普段に比べて光がありません.....まるでなにか大きな物を失ったかのように.....話してください。私は.....あなたが打ち明けてくれるのを待ちます。いつまでも.....これでも信じられないかな?」

「先生なら.....いや、またあんな.......」

「安心してください....あなたに何か暗い過去があっても.....あなたがそれで今も葛藤していたとしても.....私は『今』のあなたを見ます。生まれとかは関係ありません。私が見ているのは一条伊月という1人の子供ですから。」

「...........」

「この前話したと思うけどね.....私も1度大切な人を、父を失ったことがあるの。だから....少しは力になれるんじゃないかな?」

「先生はいいじゃないですか.....支えてくれる人がいたんだから.....俺にはいない。全てをうち開ければ誰も、俺と関わろうとはしないんだ。」

「君にだって支えてくれる人が、人達がいるじゃないですか?」

「あいつらは.....分からない。あいつらは裏切るのか.......あの時の野郎共みたいに。.....ぐっ!!」

 

 

俺は3年前を思い出した。あの時.....誰一人助けてくれなかった。それどころか死にかけの俺をサンドバッグのように蹴ったり殴ったり.....見世物のようにゴミ扱いされ、皆俺を嘲笑った。.....あいつらがそんな悪い奴らじゃないくらいわかっている.....だけど.......

 

 

「俺は....俺は.......」

「私に話して欲しい.....私は君じゃない。君の過去だって分からないし、同じ気持ちなれるとも限らない.....でもね、私は、君の気持ちを知らないままただ君を諭したくはないんだ.....だって、それは結局言われた側を傷つけることになるんだから.....話して欲しい。私は、君を傷つけたくない.....」

「先生は.......先生はどう思いますか?目の前にありえないくらいの再生力を誇る人がいたら.......」

「.......だいたい分かったよ。君のことが。君は.....神山町の出身なんだね。あの、3年前の事件の生き残り.....」

「.........どうですか?気持ち悪い、忌々しいとでも思いましたか?」

「何故私がそう思わなきゃいけないの.......たとえ君が誰であろうと君は君だよ。それ以上でもそれ以下でもない。君は.....たとえ君が忌み子と揶揄されていた子だとしても.....私の1人の生徒。そして.....μ'sのみんなにとって大切な人。それが.....私から見た君だよ。」

「....先生はどうして.....そう、思えるんですか....?俺は.....そんなに人を信じることが出来ない.....」

 

 

 

「どうして.....か。難しい質問だね。私は.......人に裏切られた経験があるから、かな。」

「.......は?」

「そういう反応にはなるよね.....人を信じるってね、本当に難しいんだ。世間じゃ信じ合うことが大切だってよく言われてるけど.......それは彼らの価値観が似ているという条件下にいるのと、あくまで裏切らない=信じるって価値観が作られてるんだよね.....だからさ、普通に生きてる人は疑うことを知らないんだ.....そして、信じることも。でも.....一度裏切られて人との関係を目の当たりにした人は.....人を本当に信じることの難しさを学ぶんだ。私だってお父さんが死んだ後にお母さんから酷い仕打ちを沢山受けたし.....今の君と少し似ているのかな?でもね.....だからこそ悩んで苦しんで.....初めて本当の意味で人を信じることができるんだ。だからこそ私は.....人を信じることが出来る。....それと同時に逆のことも分かっている。君は今その真ん中にいるのかな.....?断定は出来ないけどね。」

「..........」

「今すぐ人を信じろとは言わないよ。君が人を信じたいという想いが君を動かすまでは、沢山悩んで、苦しんで。それでも辛かったら.....先生や皆がいるから.....きっと、君のことを救ってくれるからさ....信じてみなよ、μ'sの皆を。君なら.....絶対に間違わないと思うから.....」

「先生.....」

「話しすぎちゃったかな?じゃあ私は帰るよ。優花もいるし多分安心だよ。」

「はい....ありがとうございました。」

「うん.....頑張ってね、一条さん。」

 




今回の話の中に、僕の好きなAJISAIの曲の歌詞を入れてみました。もし暇だったら探して下さい。ここからかなりシリアスが続くので、そういうことやってないと読む度に気が重くなりますからね.....
まぁ小説の雰囲気を楽しみたいという人は、これは無視してください。

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