姐さんと別れた俺は、神社の階段を降り、学校に向かおうとした。
その矢先、もう1人階段を上がってきた人がいた。
高坂穂乃果、先日俺に対して殺気を放ってきた人物。もしかしたら、俺の事を黒獅子と知ってる可能性もなくはない。
「なあ、高坂先輩よ」
「.......」
「もう回りくどいことは無しだ。高坂さん、俺になんか恨みでもあるのか?」
「......」
「前俺に会った時にあからさまに俺に殺気を向けた。その理由は知らないが、俺を黒獅子だと知ってることはもう分かっている。なぜだ?俺がお前に何かしたのか?」
「.....して」
「あ?」
「雪穂を返してよ!この誘拐犯!!」
「誘拐?俺が、てか雪穂って誰だよ?」
「雪穂は穂乃果の妹だよ!雪穂を誘拐したのは黒獅子、つまり君でしょ?とぼけないで!!」
「なんでそうなるんだか.....まぁ聞けよ。まず誘拐犯なら自分の名前をばらすなんてバカな真似は絶対にしない。それにもし誘拐してるなら人質を放置することなんてあるのかよ。人質だって窓から脱出したり出来るだろ?それに拘束するにしろ人質が暴れれば、その騒音なり振動なりで隣人達が気づくはずだ。あと、『黒獅子』はこの街で汚いことをする奴らは許せないんだよ。その本人が汚いことをするかよ。どう考えたって俺は無実だ。」
「警察の人はそう言わなかったよ!今言ったことだって警察の人は予測してたし、そんなまやかしに騙されちゃダメだって!そういう手練手管な言葉遣いで雪穂を誘拐したんでしょ!!」
ダメだ、何言っても聞く気はないのか。何が面倒かって、警察が言いくるめてることだ。どうせ言葉ならなんとでも言えるとでも言われたんだろうな。
「穂乃果ちゃん!?伊月くん!?一体どうしたの?」
「ことりちゃん、ここに雪穂をさらった誘拐犯がいるよ!ことりちゃんも何か言ってよ!」
「穂乃果ちゃん、伊月くんは誘拐なんて絶対しないよ。昔から伊月くんを知ってることりが保証するよ!」
「姐さん、この話は俺と高坂先輩の問題です。庇ってくれるのは嬉しいんですが、今回は首を突っ込まないでください。」
「でも.....」
「高坂先輩、ならこうしませんか?今から2日後、俺が先輩の妹さんを救い出し、誘拐した真犯人を捕まえる。そしたら、俺の無実を認めてくれるかい?」
「もし、出来なかったらどうするの?」
「俺の事を警察に言えばいい。そしたら俺は間違いなく懲役なりなんなり刑罰を喰らうさ。俺はそれでも構わない。信用できないなら、俺の生徒証の写真でも撮ればいい。住所もかいてあるし、警察に突き出したいならどうぞ。だが、それは俺が無理だった時だけだ。それを守ってくれるか?」
「.....その言葉を信用出来ると思う?」
「信用してもらうしかないさ。現に高坂さんが俺を疑ってる理由は相手の証言だけでしょ?それを信用するなら俺は身元すら明かすんだからちゃんと信用してもらいたいね。」
「.....分かった。」
やっと納得してもらえたか。にしても今回は警察の動きがちょっと気になるな。まるでこの事件が作られているかのように。大森が裏で操っているのはすぐ分かったがあいつは表舞台には出てこないだろう。
本当に汚いやつだ。これが世間じゃ優秀な警察官だなんてもてはやされてるからな。
そして俺は高坂先輩に生徒証を見せて、学校に向かった。
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穂乃果side
雪穂が誘拐されたのが今から三日前だった。
「君の妹さんを誘拐させてもらった。因みに私は黒獅子だ。妹を返して欲しければ、500万円用意しろ。」
その電話が来た時、穂乃果は震えた。誘拐だなんてドラマの中だけだと思ってたから現実に起きると本当に怖くなる。すぐ警察に通報したら、警察の方はいつもどうり過ごせと言われた。あともし黒獅子にあっても彼の言葉を一切信用してはいけないと言われた。
そして今日会ってしまった。だが彼はそんな怖い雰囲気ではなく、誘拐したことを否定した。穂乃果はすぐ反論したけど、一条くんは痛いところをついてきて穂乃果は言いくるめられてしまった。けど彼は自分の個人情報を教えるから、雪穂を救えなかったら通報して構わないとまで言った。
「ここまで言われたら、さすがにいいえとは言えないよね.....」
「穂乃果ちゃん」
「どうしたの?ことりちゃん?」
「伊月くんはね、絶対に誘拐なんてしないよ。それに伊月くんは、昔から自分の言葉に信憑性を持たせることを特に気にしてたんだよ。口だけの人間には絶対になりたくないって」
ことりちゃんはとても一条くんと仲がいいんだね。穂乃果や海未ちゃんほどの付き合いではないかもしれないけど、とても信頼されてるんだね。
「ことりちゃんがそこまで言うなら信じるよ!それはそうと、ダンス練習しよ!もう海未ちゃんが上で待ってるかもしれないしね!」
「うん!そうだね。行こう、穂乃果ちゃん!」
とりあえず雪穂のことは一条くんがなんとかすると言っていた。なら穂乃果は、ダンスや歌をもっと練習していいライブにしなきゃ!もし出来てなかったら雪穂からも怒られるかもしれないしね。
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学校に着いてみたら、綾瀬先輩が仁王立ちして校門に立っていた。
「おはようございま「待ちなさい。」はい。」
あれ?俺なんか怒られるようなことしたっけ?
「一条くん、希からこれが送られてきたんだけど、これは何?」
スマホの画面を覗いたら、俺と姐さんが抱き合ってる場面が映し出された。希...さては写真撮ってから話しかけにきやがったな。
「いや...これは、幼なじみとの再会を喜んでいただけでして」
怖い。綾瀬先輩の顔が直視出来ない。これ下手したらそこら辺の強盗より怖い。あいつら銃持ってることが多いけど、それより恐怖を感じる。タスケテ。
「ふーん、まぁそういうことならいいわ。私はてっきりあなたがうちの生徒にセクハラをしたのかと。それに希から聞いたわ。生徒会、手伝ってくれるんでしょ?たくさん働いてもらうわよ♪」
完全にはめられた。この人らやべーわ。
まだアニメで言うと3話のはじめくらいという。展開が遅いですがオリジナル要素が多めなのでご了承ください。