黒獅子と9人の女神の物語   作:面心立方格子

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やっとですね.....伊月くんの過去の全貌。作者自身色々考えて作りましたので、何かおかしいところが無ければいいのですが.....
ニジガクのメンバーのURが欲しい.....とくにまだ出てないけど愛さんが欲しいです。(果林さんは既に所持しているので。)


#97 一条伊月の過去

「伊月くんの過去?」

 

「どうして伊月が黒獅子となったのか、そしてどうして城善寺家と対立することになったのか。」

 

「那月ちゃんはどこまで知ってるん?」

 

「全部、だと思うよ。けど、伊月が全員を助けたいと思っている理由までは分からない。私がお父さんに聞いた限りの内容だから.....」

 

「じゃあ、話してちょうだい。」

 

「うん.....ちょっと時が戻るんだけどね、今から60年近く前の話かな.....とある研究者さんがいたんだ。その学者さんは人が寿命を迎えられる研究をしたんだ。」

 

「寿命を迎えるってどういうことよ?」

 

「病気とか怪我とか.....そういうものによる死じゃなくて健康で寿命を全うできるってことだよ。それでその研究者さんは幾人かの死刑囚を利用して研究を始めたんだ。いくつもアンプルを打ち込んだり、精子や卵子を無理やり体内から取り出して受精させてその受精卵のDNAを組み替えたり.....」

 

「ちょっと待ってください!!そんな昔に遺伝子組み換えの技術が存在していたんですか!?」

 

「うん.....というのも戦争中に『死なない人間』という研究が一部ではあったらしいんだ。回復能力が異常な人間とか。」

 

「そんなのが.....」

 

「そしてその研究者さんは発見したの。その完成形を。.......それが伊月の先祖さんの『神山の民』なの。この名称も最近つけられたんだけどね。」

 

「先祖.....?」

 

「その後その受精卵を何個も作り出して次々人が生まれたの。そしてその人たちの特徴は...脳や脊髄など体の主要部分が傷つかない限り死なない.....いわゆる再生力がおかしい人間だよ。そしてその代償というかなんというか.....普通の人間より少し短命で体のどこかが緑色に変色しているんだ、髪の毛とか皮膚とか目の色とか.....」

 

「じゃあ伊月が銃弾で撃たれて無事だったのは.....」

 

「うん、その再生力と生命力のおかげだよ。でもね、同時に弱点もあって傷は治るけど痛みやダメージ自体の回復は少しラグがあるんだ。それでね.....作り出したはいいんだけど、どこからかそれを嗅ぎつけた週刊誌があって....死刑囚の人権を無視しているとかそういった類の内容だったんだ。その学者さんはその件をもって研究を辞めて警察に逮捕されたんだ。」

 

「では、生み出された人達は....」

 

「当初は殺そうとしていたんだ。平和を掲げた国が軍人が好みそうな人間を作ったら体裁がないからってことで.....で、その人たちは自分の命を案じて隠れたんだ。それが神山町なの。」

 

「ちょっと気になったのだけれど、もしかしてその研究に投資をしていたのは私の家なの?」

 

「うん、そうだよ。国家が絡むと不祥事になるし当時は城善寺財閥はマスコミとか金融とか色々なところにパイプがあったから証拠隠滅とかはすごく得意だったんだ。」

 

「.....そうだったのね。」

 

「そして投資を回収出来なかった城善寺家の当時の当主、.....あなたのお爺さんに当たる人かな、その人が『その血を軍国に売り、それで回収しよう』ってね。」

 

「考え方が狂気の沙汰ね。」

 

「そして研究者さんは裏で身を引き取られ暗殺、城善寺家は何十年もの間、彼らを発見することが出来なかったの。」

 

「でも、彼らが外に出ているという話もあるのよ。それでどうしてそういう特徴をもった人間が現れないの?」

 

「それもあってね.....神山の血はその血をもった人と子を生まないとその特徴は生まれないんだ。当時の彼らは意見が別れて、普通の人と結婚して子を産んでこんな忌々しい血を絶やすべきだと言う人と、外に出たら殺される可能性があるし、自分たちと子供を生むということは普通の人の体に負荷をかけてしまう可能性があるから、ここでおとなしく暮らそうと言う人、その2つにね。」

 

「.....まぁそうなるわね。」

 

「個人の自由ということで事は片付いたの。それから数十年は何もなく過ごせたんだ.....ある人が情報を漏らさなければね。」

 

「どういう....こと?」

 

「神山の血の力は色んな人が欲する効果がある。当時、神山の民と一般市民の間に生まれた人にはそれが無かった.....その人は町に行った時に血の力を知って貪欲に求めるようになった。だけど仮にも母親の仲間だから自分の手で殺すのをためらった.....そこで情報をリークする手を使ったの。城善寺家に。」

 

「....じゃあ。」

 

「まず城善寺家はその情報が正確かを確かめる為に親族のフリをしてしばらく過ごしたの。そして確信した。それを報告して殺して血を獲得しようって。」

 

「でも、おかしくないかな.....?遺伝の時に弱いのに血を取り入れたらその力が手に入るって。」

 

「もちろんその矛盾を指摘した人もいるの.....けれどそれを破った人間がいた。それが白鴉.....名の通った殺し屋だよ。彼は城善寺財閥に情報をリークした人物で.....ちょうど死んだ時にその死体から血液を取り出して取り入れたの。そして.....その力を手に入れた。傍系だったこともあるだろうけどさ。それを確認した城善寺家はその血を取り入れようとしたんだ.....」

 

「でもどうやって.....」

 

「誘拐したんだよ、何人も。しかも夜中に。不審に思って夜中に警戒して巡回していた人も連れ去られて.....町も雰囲気が怖くなったんだって。」

 

 

「それはそうでしょうね.....」

 

「そして.....とうとう虐殺が始まった。採取した血を大量に投与してバーサーカーのような改造人間を作って、町に送ったんだ。彼らを殺す人間、その血を取る人間の2班に分かれて。これがいわゆる『神山の惨劇』と呼ばれる事件なんだ。でもそういうことをしたのを探られるのを恐れた城善寺家はその後、彼らが住んでいた山を燃やして、山火事が起きたということにしたの。そしたら死体ごと燃やせるってことで。そして町にいてただ1人生き残ったのが....」

 

「伊月、というわけね.....」

 

「でも、じゃあ那月ちゃんもその再生能力があるの?」

 

「今はあるよ。血を入れられたからね。でも.....その前まではなかったよ。私と伊月は血が繋がっていないから。」

 

「じゃあ何で一緒に過ごしてるん?」

 

「それも説明するね.....伊月のご両親は神山で結婚してそのまま町を出たんだ....外でもやっていけるということを示したくて、でもそこを白鴉に狙われて.....殺されたんだ。城善寺財閥という後ろ盾があるから母親と同族の人間を殺すことに躊躇いが無くなったんだって。そして伊月の両親は伊月を隠していたんだ.....それをお父さんが発見して保護したんだ。元々伊月のお義父さんとお父さんは同じ仕事をしていたらしくてね.....」

 

「じゃあなんで神山にいったの.....?」

 

「前にも話したことがあるんだけど、私のお母さんはピアニストで海外で多忙だったんだ....そして中学生になった時の夏かな.....お母さんが伊月を町に連れていったんだ。お母さん曰く、伊月に真実を知ってほしかったんだって.....残酷だよね、まだ中学生になったばかりの子供に親が殺されて自分の一族がああいう過程の元で生まれたって。」

 

「伊月にそんなことを.....」

 

「でも時期が悪かった.....それが城善寺家が作戦を実行する2日前だった。そして惨劇が起こった夜、伊月のお母さんはKB、神山の血を元に作られたアンプルを投与された人間に殴られ、握りつぶされ、死んだの。.....伊月の目の前で、伊月を庇って。」

 

 

「......」

 

「城善寺さん?」

 

「私は.....そんなことがあったにも関わらずそんなことも知らずにのうのうと彼に接していたのね.....どんな思いをさせてしまったのかしら.....それにお母様がそんなことをしたなんて。」

 

「そして伊月は心を閉ざして闇堕ちして.....今の黒獅子になったの。帰ってきたときの1年は本当に全然口を聞いてくれなくて.....私も話すのに1年ちょっとかかったの。それから伊月は復讐に心を奪われたかは分からないけど.....黒獅子になったの。これが全貌だよ.....でも、この後が本当に酷かったんだ。伊月が山から降りてきた時に伊月は麓に住んでいた人達から暴力を振るわれ続けたの。城善寺家が麓の山に『山に住んでいる人間はあなた達を害する存在で来たら排除しないと子供たちが危ない。』ってデマを流したの。お父さんが迎えに行くまで食糧もろくに与えられず大人に殴られ、馬鹿にされ続け.....目も当てられないくらい酷かったらしいよ。」

 

「そんなことが.....」

 

「そ、そんなの酷すぎます!!」

 

「そして、お父さんが伊月にそろそろ人と接して信じる気持ちを取り戻して欲しいってことで音ノ木坂のテスト生として入学させたの。伊月も自分もなんとかしないとって考えてたから意見が一致した。」

 

「伊月は強いわね、前を向けて.....」

 

「皆にも感謝してるんだよ、特に1年生組にはね。伊月のことを見捨てないでずっと接し続けてくれた.....城善寺さんも一緒だよ。それにμ'sと接していく中で伊月は少しずつ人間性を取り戻したんだよ.....それに皆は伊月の為に世間を敵に回した....自分たちのことを顧みずに。伊月の知り合いはね......伊月のことを知った途端に離れて殴ったりして、伊月は人間不信に陥ったというか.....自分が作る繋がりの脆さに絶望してあんまり作らないようにしてたんだよ。.......皆はどう?」

 

「...........」

 

「確かに驚きはしたけれど.....だからといって私は.....いいえ、私たちは伊月への評価を変えるつもりはないし、私たちが見た伊月を信じるわ。」

 

「真姫ちゃん.....」

 

「穂乃果もそうだよ!!」

 

「ことりも!!」

 

「そうね.....那月、安心して。私たちは私たちの知る伊月を信じるわ。彼は私たちのことを支え、助けてくれた。私は生徒会長としても1人の人としても助けてもらえた.....彼の生まれや血の歴史がどれだけ醜くて汚れていて悲しかったとしても......それを受け入れる覚悟はあるわ。」

 

「それはうちも同じ。可哀想とかじゃない、私たちは『一条伊月』という1人の人間を認めて受け入れて.....今まで接してきたんよ。にこっちは?」

 

 

「はぁ.....別にそれがどうしたのよって感じよ。あいつがどんな過去を抱えてようとμ'sのマネージャーであることに変わりはないわよ。それに実際にこ達を何回も助けてくれたじゃない。」

 

「私も同じ考えです。伊月がその過去のトラウマを抱えているなら.....それを越える為に私たちは協力は惜しみません。それに彼の人間性は絶対的な善人とは言えないでしょうが、1本芯があります。そしてそれを実行して私たちを助けている.....そんな立派な人を差別するほど私たちは子供ではありませんよ。」

 

「凛は怖いけど....でも、伊月くんを嫌いにはならないよ!!ね!?かよちん!!」

 

「私は.....自分の目を信じたい.....です。」

 

「私は正直申し訳ない気持ちでいっぱいで.....彼の目の前にいる資格があるかすらないと思っている。でも彼と向き合い接していけば.....そして、私が家を変える努力をしなければならない。それが私たちがしてきた罪への償い。私はどんな批判も受け入れて前に進むわ。彼と共に。」

 

 

(伊月.....よかったね、いい仲間を持って。)




ラブライブはどこへいった!?.....主人公が主人公なので日常回とかがないのは許して下さい.....次回作作る時は気をつけます。
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