東方逢魔暦   作:Orb

1 / 22
書いてみたくなった。ただそれだけ…ではあるけど、思いのほかオーマジオウが好きすぎてやりたくなった。


序章 逢魔降臨
プロローグ


━━薄れゆく意識の中、私は目の前の青年…『若き日の私』に対し、微笑んだ。

彼は見事に達成した。私に出来なかったこと…成し得なかったことを…彼が達成してくれたのだ。

これほどの幸せ、幸福はない…私は、もう思い残すことなどない。そう思えた。

 

今後の事は、彼に任せよう。私はもう━━疲れた。

50年もの月日を、孤独に戦い続け、何も知らない人々を殺した。最低最悪の魔王として。

だがそれは、私にとって最高最善を貫いた結果なのだ。言いたくはないが、世界を根本から変えるためには彼らは犠牲になるしかなかった。

 

私とて、好きで彼らを殺していたわけではない。

彼らは私を敵と認識し、私と戦おうとしていた。言葉が通じないなら、力で応じるしかなかったのだ。

 

だが、そんな人生に終わりの刻が訪れた。

私は消えるのだ。書き換えられる世界と共に、綺麗サッパリ…誰かの記憶に残ることもなく。

 

…若き日の私はこう言っていた。『時計の針は、巻き戻っているように見えても、未来へ進んでいるんだ』と━━。

 

ならば私がしてきたことは、無駄に終わるわけではない。

それだけで、私は安心できた。

これからは、王になりたいと純粋に願い続けていた若き日の私へ、全てを託そう…。

 

私の身体が光り輝き、完全に消え去ろうとしていることが分かる。

せめて…せめてもの贈り物として、今私が使える全ての力を使い、彼を幸せにしようではないか。

 

ゲイツ…ツクヨミ…そして若き日の私よ。私が得られなかった幸せを…次の世界で、お前たちが……。

 

 

 

最後の力を振り絞り、私は未来創造能力を使った。

それがどのような結果になったかは、今となっては定かではない。

だが、私にとって…若き日の私にとって、とても有意義になっていることは、確実だろう。

 

…これにて、最低最悪にして最高最善の魔王である私は、永遠の眠りにつける━━

 

 

 

『本当に、そうかしら』

 

 

 

━━と、思っていたのだがな。

 

 

「…何者だ。まさかこのような時にまで語り掛けてくる奴がいるとは」

「お褒めに与り光栄ですわ、逢魔時王。私の名は"八雲 紫"。以後お見知りおきを」

 

突如目の前に空間の裂け目が出来、女が現れた。

空間転移の類のようだが、彼女……八雲 紫とは何者なのだろうか。

 

「…私を逢魔時王と知り、このような狼藉を働くとは…」

「あら、狼藉なんて酷いですわ。『常盤ソウゴ』ならそのような事仰らないのでは?」

「………」

 

なるほど、若き日の私を知っているか…これはまた、やりづらい相手がいたものだ。

 

「…では問おう。八雲 紫よ。貴様の目的はなんだ」

「…………」

 

八雲 紫はしばし目を伏せ、考え込んでいた。

まるで、決意するかのように

 

 

 

 

「単刀直入に申し上げます、逢魔時王。そのお力で、私たちを救っていただけないでしょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

今、目を開けた私の先に広がる光景は、自然一色。森の中だった。

足元の湖は透明度が高く、故に私自身の顔もよく見えた。

 

「若き日の私………いや━━」

 

そこに映っていたのは…。

 

「若き日の俺…か」

 

まだオーマジオウになったばかりの…19歳だった俺の顔が映っていたのだ。




とりあえずプロローグはこれくらいで。
次回にまた少し紫とのやり取りを入れときます

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。