近々、唐突にシリアスな空気になります。
その際に唐突過ぎだろ!と思うかもしれませんがいつまでも序章を続けるわけにもいかないので、仕方ないのです…ご了承ください
朝食を終えた霊夢は自室へと戻っていった。
外出の用意をするためだ。
今日は、人里という所を案内してくれるらしい。
「食材も買っておかねばな…」
実を言うと昨夜、紫から多少のお金を貰った。
流石に俺個人で使うわけにもいかず、どうしようかと考えているとこの神社には食材が少ない事に気づいたのだ。
おかげで朝食は満足な出来ではなかったが、霊夢は美味しそうに食べてくれた。
少々不満気味だったがな。
「…霊夢の好みも聞いとくか」
果たして、素直に答えてくれるだろうか…今の俺には、それだけが不安である。
「…お待たせ」
こちらの準備はなかったので神社の外で待っていた所、十分ほどで霊夢が出てきた。
…ふむ、やはり普通の外出時もあの巫女服なのだな。
「ジロジロ見てんじゃないわよ変態!」
「ん? あぁ、いや…すまない。やはり物珍しくてな」
「だからって脇をジロジロ見るって…」
確かに変態の所業だな、すまない。
「では、行こうか。道案内は頼む」
「…はぁ」
そのため息を最後に、霊夢は無言で歩き始める。
さて…人里と言う場所がどんなものか、実に楽しみだ。
「…あのさ、ひとつ聞きたいんだけど」
道中、森の中で前を歩いていた霊夢が顔をこちらに向けて喋りかけてきた。
「何をだ?」
「アンタ、昨日戦ってるときにさり気なく魔王様がどうとか言ってたわよね? あれってどういう意味?」
…覚えていたのか。
正直あの後どう説明しようか悩んでいたのだが、言及されなかったこともあって安堵していた。
まさか自分が、人類を苦しめ続けた最低最悪の魔王と呼ばれていたなんて、説明したくても出来ないだろう。
……だが、いつまでも隠し通せるわけではない。
霊夢の眼は、鋭く、俺を見つめている。
言うしか、ないか。
「…俺は、幼い頃から王になりたかった」
道すがら、俺は里に着くまで自らの事を語った。
王になる為に戦った事。
共に戦った仲間を失った事。
破壊の道に進めず、最低最悪の魔王として半世紀、世界に君臨し続けた事。
過去の自分に全てを託し、消えようとしていた事。
それらを、霊夢は度々驚きの表情をしながらも何かを言うことなく、静かに聞いてくれていた。
最悪、罵られても文句は言えないと思っていたのだが…霊夢の人柄が垣間見えた事に、嬉しさを感じる。
俺が自分語りを終える頃には、人里と思える場所の入り口に辿り着いていた。
チラホラと江戸時代のような建物が見えるのだが……もしかすると、俺が暮らしていた時代よりも何百年も前の形で暮らしているのだろうか。
だとすると、興味が湧いてくる。
……このような感覚、何時ぶりだろうな。
そんな思いを抱きながら、俺と霊夢は人里へと入っていった。
コイツって68歳なんだ、なんて思いが霊夢の頭を埋め尽くし、最低最悪だのなんだの部分は一切頭に入っていなかったなんて、逢魔には知る由もなかった。
人里って江戸時代っぽいから歴史得意な我が魔王はワクワクしそう
だが中身68歳だからなぁ…