「逢魔様!」
………誰だ。
「逢魔様! 起きてください!」
黙れ……俺は、霊夢を助けなくては……。
「逢魔様!──逢魔様!!」
「っ……ゆ、紫……?」
「あ……お、逢魔様ぁ!」
紫の必死な声で目を覚ました俺は、訳も分からないまま紫に抱き着かれてしまった。
……胸が当たるとこんな音がするんだと、68年生きてきて初めて分かった。
「あ、暑苦しい……というか、ここは博麗神社か…?」
「…はい。あの後、意識がなくなった貴方様を連れて避難したんです。…霊夢たちの行方については…申し訳ありません」
「……そうか」
その言葉で、俺は起き上がらせていた体を再度寝かせる。
傷はそれなりに残ってるものの、痛みはだいぶ和らいでいる。紫のおかげだろうか。
「…少し、お休みになりますか?」
「……あぁ、どうにかして霊夢を助ける方法も考えないといけないから、な………何やってるんだ?」
「何って、膝枕ですよ」
「…………はぁ、好きにしろ」
全く、男の頭を膝に乗せるなんて…重いだけのはずなんだがな。何が嬉しいのやら。
そんな疑問を抱きながらも、後頭部の気持ちよさに負け、俺は早々に意識を手放していた。
『どうするの? これから』
眠りに落ちたはずの俺は暗い空間に佇んでおり、背後から声をかけられた。
「……やはり、お前だったか」
予想はしていた。
だが、まさか当たっているとは思わなかった。
俺が振り返ると、そこには若き日の俺──『常磐ソウゴ』が笑顔で立っていたのだ。
『やっぱ分かるよね。流石は俺』
「手元にある全平成ライダーのウォッチ、そしてジクウドライバー…予想しない訳がない」
『…それもそっか』
彼は、時空を作り替えた張本人であり、消えかけていた俺と最後に話した人物。
何かを見越してか、それともただの出来心か、コイツは自分の持っていた渡せるだけの力を俺に渡していたのだ。自らの残留思念と共に。
我ながら、恐ろしい奴だ。
『でも、まだ足りないよね』
「…あぁ、例え平成ライダーのウォッチは揃っていても、アイツ──霊夢には勝てない」
俺は最低最悪の魔王『逢魔時王』だ。故に、若き日の俺が生み出した『グランドジオウ』は扱えない。
アナザージーニアスへの対抗…そのためには、やはり──。
『………ふっふーん』
すると、ソウゴがニヤケ顔をこちらに向けてきた。
「………お前、まさか」
『~♪』
白を切るかのように口笛を吹くソウゴ。
やはりコイツ、対抗策であるアレを持ってるのか……?
『……俺はさ、叔父さんに怒られたことがあるんだ』
唐突に、ソウゴが叔父…順一郎の話をし始めた。
『寂しい時に寂しいって言えない人間なんて、人の痛みがわからない王様になっちゃうぞ…ってさ』
「…………」
人の痛みが分からない王様、か。
まさしく、オーマジオウとして人類の前に立ち塞がっていたあの頃の俺は、そんな王だったのだろう。
『……あの子、痛がってたよ?』
「…なに?」
彼がいうあの子とは……霊夢の事だろうか。
一体、何を痛がって……。
『君に邪魔だって言われてさ、ずっと痛がってた。でも、それを言わなかった』
「………」
『君が悪いって言ってるわけじゃない。でもさ、お互い、素直じゃないなぁと俺は思うんだ』
「………」
『君だって、彼女といて楽しいと思える時があったはずだ』
確かに、ないわけではない。
長年孤独だった俺からすれば、霊夢のような感情豊かな子が傍にいてくれるだけで、何から何まで新鮮だった。
料理だって、不満そうではあったが度々「美味しい」という言葉がこぼれ出てて、その度に嬉しくなった。
『……まぁ、その辺は事態が解決した後でお互い話し合えばいいよ。俺には何も出来ないしね』
「……ありがとう」
『ん? 何が?』
あっけらかんとした表情で首を傾げる。
俺は、そんなソウゴに向けて──。
「──力を、貸してくれ」
頭を下げた。それは魔王と呼ばれた者の所業ではないだろう。
だが、そんなものは関係ない。
『…うん、その言葉を待ってた』
そう言って微笑んだソウゴの手には、ひとつの光があった。
『王様ってのは、世界を良くするための存在だ。 人々を幸せに──笑顔でいてもらうために。 だから、言いたいことはハッキリ言わなくちゃね』
世界を変えずに長年魔王として君臨してきた俺と、世界を変えるために魔王となった俺。
辿ってきた歴史も、抱いた思いも何から何まで違う俺達だが。
『でもこの力は一回限り。あとは、自分の道を見つけないとね』
「あぁ…そうだな」
俺に光を授けたソウゴは、役目を終えたかのように消えていく。
…まさか、二度も自分に救われるとはな。
最低最悪の魔王も、今回限りだ。
総てを護る為に、俺は幻想郷の王になると、そう決めた。
結局アレの登場は次回になりそうです。
次々回辺りで序章終わりかなぁ……
あ、総てを護るって書いてソウゴになるのエモ過ぎません?()