※今回は夏映画のネタバレが含まれています。
最低最悪の魔王
『最低最悪の魔王』
そう呼ばれていた者が、存在する。
何故そう呼ばれているのか、諸説ある。
曰く、人類を苦しめる悪逆非道の王。
曰く、過去を理想化して未来を否定する墓守の王。
……だが、本当にそうだろうか?
今一度見てみよう。彼の、本当の歴史を───。
「…………」
俺は、膝を地に付け、座り込んでいた。
ダイマジーンによる蹂躙を見つめながら。
何故、こうなったのだろうか。
俺の目に映るのは、空中に存在する時空ゲートへ吸い込まれる人々とそれを含めた様々な平成生まれのモノ。
そして、吸い込まれない平成生まれ以前のモノを破壊し尽くすダイマジーン。
これを送り込んだのは他でもない。 奴らだ。
周りの建物は既に崩れており、瓦礫の山と逃げ遅れたであろう人々がそこかしこに倒れている。
俺が、守りたかった人々だ。
俺が、幸せにするはずだった人々だ。
「…………あぁあああぁぁぁあぁあああ!!!!!!!!!!!」
途轍もない喪失感に襲われた。
今までにないくらい、胸の奥が張り裂けそうになった。
これ以上、こんなことを許すわけにはいかない。
そう思い、俺は立ち上がった。
「 変 身 ッ ッ ! ! ! ! 」
例え偽りだと言われても、俺は王だ。
だからこそ、守るべき民を守る為に、俺は魔王へとなる。
向かう先は、ダイマジーンとそれを操る『常磐SOUGO』……真の王を豪語する、クォーツァーのボスだ。
──懐かしき、過去の記憶だ。
想いを馳せていた私は目を開き、椅子から立ち上がる。
今は、2068年──あの出来事から、半世紀も未来の世界。
だが、世界は大きく変わった。
半世紀前より人口は大幅に減り、世界はダイマジーンの破壊行動により荒廃。
オマケに私は、『最低最悪の魔王』として扱われている。
クォーツァーの仕業だ。
私は確かに、アイツらを倒した。だが、残存勢力がいない訳がなく──そいつらの根回しによって、全ての元凶は私、だということにされてしまった。
そうなってしまえば、私にはどうする事も出来ない。
……手はあった。
時空を破壊し、一から全てをやり直すという手が。
だが、それをしない。それは何故か。
この世界を、築いてきた
私は、背後に建てられたモニュメントを見上げる。
そこには、若き頃の私の初変身を模った像と、それを囲むようにして建っている歴代平成ライダーの像。
私が生きている間は、これを無に帰してしまってはいけない。
そう思い、今も尚この世界に魔王として君臨し続けている。
なんせ、時代を駆け抜けた平成ライダーの生き証となっているのが、私なのだから。
「………来たか」
四方八方から私に向かって走ってくる集団が見えてくる。
奴らは『レジスタンス』──クォーツァーの残存勢力が作り出した、操り人形のような軍団だ。
奴等は私を、最低最悪の魔王と信じてやまない。
だからこそ、私は彼らと戦い続ける。
どんなに最低最悪な状況であっても、私は独りで戦う。
それが、王としての私の信念だからだ。
いずれは過去の自分が、全てを変えてくれると信じて──。
「………懐かしき、記憶だ」
涼しい風に煽られながら、閉じていた目を開く。
視界に入ってくるのは、荒廃した世界とは真反対の、自然豊かな木々たちだ。
顔を下げると、俺の膝で眠っている霊夢が見える。
ただただ、のんびりと話していただけなんだがな。
あの王になるという宣言から二日──こちらの世界の常識を、ある程度理解できた。
あとは、自分の眼で見て、この世界の素晴らしさというものを堪能するつもりだ。
「………本当に、ありがとう」
俺は、もういないはずの若き日の俺に向けて、再び感謝をする。
どうやら彼は、予想以上の贈り物をしてくれたようだからな。
俺は、いつの間にか所持していたジオウライドウォッチⅡを見つめ、微笑んだ。
オーマジオウVシネ化頼むよぉぉぉぉぉ……!
今回の話はとある考察を基に構成したので、もしかすると本来のオーマジオウの歴史とはまた違うかもしれませんが、そもそも仮面ライダージオウというのはループ前提の話なので、また別の時間軸とでも考えればどうとでもなr((((((