※今回も夏映画のネタバレがあります。
彼を最初に見た時は、まだまだ初々しい青年だった。
明るく、常に笑顔で、無邪気で、子供みたいで。
一言で表すならば、『可愛い子』だった。
でも、そんな彼にも夢があった。
『王様になる』、だそうだ。
無邪気で子供みたいな彼に似合う、メルヘンで素敵な夢だ。
でも、周りからは否定され続けてる。
やれ現実を見ろだの。
やれ進路を真面目に考えろだの。
だが彼は、どう言われても自分の夢を諦めなかった。
幼き頃から彼を育て、今も尚共に暮らしている彼の叔父も、表向きは彼の夢を応援しているかのように見えるが、やはり裏ではまともになってほしいと望んでいる様子。
そんな彼は、友達も出来ずに、ただ孤独の王様になろうとしていた。
私は、彼を王として認めたい。
いつしかそう思っていた。
彼は王となれる力を得てから、様々な経験をした。
やがてその経験は力となり、彼自身は誰もが認める王へと、近づいていた。
だが、現実は非情だ。
彼に突きつけられた現実。
それは───彼、『常磐ソウゴ』が替え玉として作られただけの存在だったという事。
つまり彼は、王であって王ではない。
偽の王に過ぎなかったという、現実だ。
彼は嘆いた。
自分が常磐ソウゴではないという事実に。
自分が偽の王であり、真の王には至ることが出来ないという事実に。
守りたい民も、守れないという事実に。
だが、彼は嘆いても諦めてはいない。
例え偽りだろうと、替え玉であろうと。
自分が常磐ソウゴでなかろうと。
守りたい者の為に、戦うのが王様だと、そう思っていた。
例えその力が後に魔王と呼ばれる力であっても、彼の真意は人々を守ることにある。
どんなに汚い泥を浴びろうとも、彼はそのために戦い続けると、決心した。
後に、最低最悪の魔王と呼ばれ、守るべき民だったはずの者たちから敵視されるなど、彼も私も…知る由もなかっただろう。
いつからだったか、彼の事を見なくなっていた。
別に興味を失くしたとか、そんなんじゃない。
だが、愛する彼の最期を悟った私は、現実から目を背けようとしていた。
私は妖怪の賢者。
人間一人の死を、何時までも引きずるわけにはいかないのだ。
……だがそんなある日、幻想郷で異変が起きた。
いつものような、異変ではない。
静かに、誰にも気づかれず、だがその足跡は大きい──。
不味い。
そう思った。
なんせ、その異変を解決できるのは、彼しかいなかったから。
だが、彼は恐らく死んでしまっただろう。
守るべき民を守れず、彼はがむしゃらに戦い続けた。
あの後どうなったか見当がつかないが、常人なら既に死んでいる。
…ダメもとで、覗いてみよう。
そう思ってスキマを開いた私は、驚愕した。
荒廃した世界。 人が生きることさえままならないようになっている未来の世界。
そこに、彼は立っていた。
彼はまだ、王として君臨しているのだ。
例え最低最悪と言われようが、最高最善を貫いた結果なのだと信じて、最低最悪の魔王となっているのだ。
私は再起した。
再び、彼を王として認めようと。
愛していた彼を、再び愛そうと。
彼が彼自身の役目を終えたその時、私が迎えに来ようと。
「……待っていてください。 常磐ソウゴ──いえ、逢魔時王」
この世界に貴方を迎え入れる、準備をしておきますから。
──あ、流石に身体は若くしますわよ。 ウフフ♪
もうハーレム路線で良いのではないだろうか…だとすると、やっぱタグ付け必要ですよね