私には、目標がある。
アイツの隣に立つ、という目標が。
……アイツと言われても全然分からない?
しゃーねーなぁ。 最近遊びに行けてなかったし、ちょっくら出向いてみるか。
誰かと喋っているわけでもない私は、箒を手に取り、家を出た。
目指す先は、博麗神社だ。
天気は快晴。
太陽も自己主張が激しい昼時だが、暑くもなければ逆に涼しいくらいの、気持ちの良い天候だ。
今の私は、箒に跨って空を飛んでいる。
メルヘンチックで子供みたい? はっ、言いたい奴には言わせておけ。 魔法使いはロマンなんだぜ。
「~♪」
癖と言っちゃあなんだが、私は機嫌が良い時はいつも鼻歌を歌ってしまう。
何が言いたいかというと、今の私は頗る機嫌が良いということだ。
何故機嫌が良いかって?
今日こそはアイツを倒して隣に立てるような存在になれる。そんな気がするだけだぜ。
「…………」
開いた口が塞がらない。 まさにその一言だった。
博麗神社の上空まで来た私は、見てしまったのだ。
縁側でアイツが男とイチャイチャしてる所を……!!
おいおいおいおい!
いつの間にカレピッピなんか作りやがったんだアイツ…!
ギロッ!
「ひぃっ…!?」
あり得ない。
私とアイツらの間に数十メートルの距離があり、尚且つ上空を飛んでるのに。
何故アイツから殺気がガンガン飛んでくるのだろうか。
「これは……緊急会議だぜ…!!」
伊達に元幻想郷最速だなんて言われていない。
私は猛スピードで、一人の魔法使い仲間の元へと向かった。
決して逃げたわけじゃねぇからな?
「…へぇ、霊夢が男を…」
私の目の前でテーブルに膝をつき、紅茶を啜っているのは人形使いのアリス。
かれこれ長い付き合いで、霊夢と私、そしてアリスでよく集まって朝まで飲み交わすくらいだ。
「で、どう思うよ」
「いや、どうと言われても…」
アリスは持っていたカップを置き、ため息を吐いた。
「別に、どうも思わないって言ったらウソになるけどね。おめでとうって思いが少しと、先を越された悔しさが少し、かしらね」
アリスだって人間じゃないとはいえ、いい歳した女だ。 同性の私から見ても美人だと思うし、相手がいないことを悲しんでいるんだろう。
だが仕方ない。それは、人じゃない故の寿命の違いがあるから。
アリス曰く、自らが認めた男が死んでいく様を見たくないらしい。
「貴女はどうなの? 魔理沙」
アリスからの問いかけに、私は目を瞑る。
どうかって? そんなの決まっている。
「ぜってぇ弱み握られてんだよあの男!」
客観的に見て最低な考え方である。
「だってあり得ないだろ!? あの霊夢が!」
偏見の塊である。
「きっと貢ぐようにさせてるんだぜ…!」
腐れ縁の幼馴染に対して言う言葉ではない。
「…………よし!」
私は席を立ち、箒を手に取り、大きな白黒帽子を被りなおす。
「待ってろよ見知らぬ男! 今すぐ霊夢の魔の手から救い出してやるからな!!」
──後ついでに霊夢に勝ちたい。
そんな思いを胸に込めた私は、再度博麗神社へ向かう───。
──はずだった。
『インフィニティ…』
次なるアナザーライダー(ヒロイン)は魔理沙! 正直コズミックかインフィニティかで悩みました。
今回で幕間は一旦終了し、第一章『星屑の魔法使い』を進めていこうと思います。
投稿頻度は気分次第ですので、軽く一週間開いたりするかもしれませんが、よろしくお願いします