とりあえず、歩こう。
そう思い、俺は見知らぬ森の中を進み続けた。
生身でこのような経験をするのは、久しいな。
「…それにしても」
視線が多すぎる。
人気のない森の中だというのに、この尋常じゃない視線の数は一体なんだというのだ。
それも殺意の籠った視線だ。
「グルルルルッ…!」
痺れを切らしたのか、視線の一つと思われる獣らしきものが茂みから出てきた。
…獣、にしては何とも奇怪なオーラを放っているが。
「ここは俺がいた世界とは別の世界。これがこの世界の常識なんだろう」
そう思うしかなかった。
「グルァァッ!!」
「丁度いい。肩慣らしと行こうか」
獣が飛び掛かってくると同時に俺は【ファイズライドウォッチ】を取り出し、起動させる。
『ファイズ!』
するとライドウォッチが光り輝き、そこから『オートバジン』が登場した。
ファイズライドウォッチに込められていたファイズの力の一つだ。
「……!!」
「ウガッ…!」
オートバジンと獣が互いに衝突し合い、獣が弾き返された。
それを見逃さず、オートバジンは即座に『バスターホイール』を撃ち込む。
「ガァァァァッ……」
10秒間ほど撃ち込んだ所で、獣は倒れることもなく消滅した。
どうやら、獣に似ているだけの別のナニかだったようだ。
役目を終えたオートバジンはそのまま消える。ライドウォッチの中に戻ったようだ。
「…ここでも力は扱えるか。ならば問題ないな」
肩慣らし、と称したが要は"俺の力がこの世界で通用するのか"試したかっただけだ。
俺自身の肩慣らしは、まだしなくてもいいだろう。今の戦いを見て、周りの視線から殺意がなくなったからな。
「さて…」
ライドウォッチをしまい、俺は再び進み始める。
先ほどのナニかがこの世界に当たり前のように存在するモノだとしたら、この世界は俺の常識を遥かに上回っている。控えめに言って変な世界、だ。
賢者と名乗っていた紫があのような能力を持っていたことから、この世界の住人はもしかすると何かしらの能力を持って生まれるのかもしれない。
紫が言っていた時空干渉も、何者かの能力によるものかもしれないな。
「……ん?」
足を止める。
辺りを見渡すが、何もいない。
「…気のせいか」
人の視線のようなものを感じたのだが、どうやら気のせい──
「はぁっ!!」
──ではなかったようだ。
声がした方…上空へ顔を向けると、球体のようなものが高速でこちらに飛んできていることが分かる。これは恐らく、攻撃の類だ。
「フンッ!」
俺は即座に腕を上げ、衝撃波を放って球体を消し去る。
生身でこの力を使うのは多少体力の消費をするのだが、これを受けるよりかはマシだと判断した。
「うそっ…」
まさか防がれるとは思わず相手も驚いているようだしな。
「…上空からの不意打ちとは、予想外ではあったぞ」
「ちっ…軽々と防いでてよく言うわ」
フワフワと上空から舞い降りてきたのは、少し幼さが残っているように思える紅白の服を着た少女だった。
前々回や前回と比べても語彙力がないのは仕方ない()
オートバジンに関してはホント勝手な解釈なんだけど…言うほど間違ってないんじゃないかなぁと