東方逢魔暦   作:Orb

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MMORPGによくあるチュートリアル戦闘なのであっさり目です。
逢魔版ジオウのスペックは若き日のジオウよりも微妙ながら上がってるという勝手な認識ですが、中身がチートだから多少はね?()


ベストマッチアーマー

「ウゥゥゥゥぅぅ……」

 

アナザービルドは不規則に体を揺らしながら、唸り声をあげる。

その目はやはり、俺にしか向けられていないようだった。

 

「ウゥゥ……ジオゥ…コロスゥ…!」

「…ほぉ」

 

面白い。

この世界のアナザーライダーは、やはり俺の世界のアナザーライダーとは一味違うらしい。

 

「そうと分かれば、遠慮なく行かせてもらおう」

 

時計のエフェクトと共に、俺の手元には剣型の武器が出現する。

 

『ジカンギレード! ケン!』

 

【字換銃剣 ジカンギレード】

ジオウ専用の銃剣武器だ。

これを持つのは随分と久しいが…やはり体が覚えている。

 

「ッ!」

 

俺と奴との距離は僅か20m程。

そんな距離、このジオウならば1秒足らずで詰められる。

 

「フンッ!」

 

迎え撃つ体勢なのか、動く気配がないアナザービルドに対し、俺は上段から斬りかかる。

案の定それは両腕で防がれるのだが、想定内だ。

がら空きとなったアナザービルドの腹部を右膝蹴りし、強制的に体勢を崩させる。

 

『タイムチャージ! 5...4...』

 

ジカンギレードのスロット上部にある『ギレードリューズ』を押し、オーバーロード状態にする。

このカウントが終わるまでが勝負だが、勿論攻撃の手は緩めない。

 

『3...2...』

 

体勢を崩したアナザービルドを中段から右、左へと斬りつける。

 

『1...』

 

更に上段から一撃を加え…。

 

『ゼロタイム!』

 

下から斬り上げる!

 

『ギリギリ斬り!』

 

「グァアアァァ!!!」

 

その勢いでアナザービルドは上空へ吹き飛び、地面へ落下する。

やはり、ジオウだけの力では倒せないか。

先ほども言ったが、アナザービルドには、ビルドの力でないといけないらしい。

 

「ウゥッ…グゥゥゥ……ベストマァッチ…!」

 

起き上がったアナザービルドは腰にあるベルトを操作し、言葉を喋る。

するとアナザービルドの背中から黒い羽根が生え、上空を飛び始めた。

おかしい…奴にそんな力はなかったはずだが。

 

「あ…あれは…」

 

背後で、身を隠していた博麗が口を開いた。

 

「知っているのか?」

「………確信は出来ないけど。あれは、"天狗の羽"よ」

 

天狗?

天狗とは…あの天狗か?

 

「ふむ…とりあえず、落とすか」

 

『ジュウ!』

 

ジカンギレードをジュウモードにし、再び『ギレードリューズ』を押す。

 

『タイムチャージ! 5...4...3...』

 

「ジオゥ…コロスゥ…!!」

 

だが奴もそうはさせてくれず、弓矢の形状をしたエネルギー弾を十…二十と生成し、放ってきた。

 

「ちっ…」

 

オーバーロード状態の場合、カウントが終わる前に引き金を引くわけにはいかない。

それを知ってか知らずか、奴は問答無用の攻撃を放ってきたのだ。

 

 

『夢符「二重結界」』!

 

 

その一言を合図に、俺の周りには透明度の高い防御結界らしきものが生成された。

 

「博麗…」

「っ…これでいいんでしょ!? いいからさっさと終わらせてよ!」

「…ああ」

 

『ゼロタイム!』

 

全てのエネルギー弾を受け切り、霊夢の出した防御結界は消え去った。

 

『スレスレ撃ち!』

 

トリガーを引き、『ジュウ』の文字型エネルギー弾数発がアナザービルドに向けて放たれた。

何発かは避けたようだが、数が数。

一発が体に当たり、もう一発が羽を裂いた。

これで奴はもう飛べない。

 

「終わりだ」

 

腕に装着された『ライドウォッチホルダー』からビルドライドウォッチを取り出し、起動させる。

 

『ビルド!』

 

それをジクウドライバーの『D'3スロット』に装填し、『ジクウサーキュラー』を回転させる。

 

『アーマータイム!』

 

その音声と共に、俺の隣には『ライダーアーマー ビルド』が召喚される。

単なる(アーマー)に過ぎないが、これこそがビルドの歴史そのものなのだと思うと、感慨深いものだ。

 

「…行くぞ、戦兎」

 

静かにそう呟き、ライダーアーマーへ触れる。

触れた瞬間にアーマーは空中へ飛び散り、俺の身体へ装着されていく。

 

ベストマッチ! ビルド!!』

 

複眼の『ライダー』も『ビルド』に変わり、今の俺は『ジオウ ビルドアーマー』へと変身した。ジクウドライバーのセグ表示は『2017』だ。

 

「ハァッ!」

 

右手に装備した『ドリルクラッシャークラッシャー』を使い、突貫攻撃を行う。

 

「ググググッ!!」

 

それを見事受け止め、耐えているアナザービルド。

なるほど、多少は強化されているようだ。

だが……。

 

「甘い!」

 

『フィニッシュタイム! ビルド!』

 

ジクウドライバーに装填されたライドウォッチのスイッチを押し、ジクウサーキュラーを回転させる。

 

それと同時にどこからともなく数式と1次関数のグラフが現れ、アナザービルドを拘束する。

俺はその場でグラフの上へ飛び乗り、滑走しながらドリルクラッシャークラッシャーで貫く。

 

『ボルテック タイムブレーク!』

 

「ウッ…ウッ……ウガァアアアアァッ!!!」

 

貫かれたアナザービルドは、その場で爆発し、跡形もなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

「………」

「やるじゃない。少しは見直したわ」

 

変身解除し、その場で立ち尽くしていた俺に、博麗が駆け寄ってくる。

 

「…博麗も、随分と偉そうじゃないか」

「アンタよりかはマシだと自負しているわ。それより…」

「あぁ、聞きたいことがあるんだろう? ならせめて、落ち着ける場所にでも行こう」

「なら話が早いわ。とりあえず、神社に帰りましょ。疲れたでしょ?」

 

…確かに、疲れた。

恐らく、長年オーマジオウの力を扱っていたせいで、ジオウでの戦いにブランクが生じていたせいだろう。

それとも、歳だろうか。

どの道、休めるなら有難い。甘えさせてもらおう。

 

 

…アナザービルドの変身者とウォッチが無い理由も、分からないしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

逢魔と霊夢が去った後の戦いの場には、フードを被った一人の男の姿があった。

 

「……ふむ。まだまだ改善の余地あり、か」

 

その男は不敵な笑みを浮かべ、逢魔たちが去っていった方向へと目を向ける。

 

「オーマジオウが力を失っているのは想定外だったが…面白い」

 

懐からとあるウォッチを取り出し、空へ掲げる。

 

「"博麗の巫女"……是非とも、君にはあのお方の実験に付き合ってもらおう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ジィーニアス…』という不気味なウォッチ音と共に、謎の男は姿を消した。




深夜テンションで書きました。すんません。

追記.沢山エフェクトを追加してみました

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