ガンダムBF OVER   作:i am

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3話 ジョア=エレノア

珍しく早起きだった。時計の短針が6を指している。目覚ましが喧しく鳴る前に何故か起床した。

今振り替えると運命なのだろうか。偶々早起きして偶々早く投稿した日が、アイツと出会う日だった、偶然にしては出来すぎている。

 

早起きの僕はそのまま階段を降りて一階、リビングへと向かうと朝食を作る母さんにおはようと一言。

 

「珍しく早起きね、何か用事?」

 

「目が覚めただけだよ」

 

朝食を待つ間椅子に座りテレビをぼーっと眺めた。事件だが事故だが悲しいニュースが流れた後、何処かで聞き覚えのあるテロップが表示された。

 

「ガンプラニュース!新商品や近日発売のパーツをいち早くご紹介!」

 

こんな朝早くからガンプラの専用コーナー、しかもニュース番組で。最近のニュース番組は確かにバラエティー化してるし、不思議ではないか。

そうだ、これ初めて見るけど何処かで聞いたような。モヤモヤの原因を探るべくまだ動いていない脳で記憶を探る。段々と形になっていくモヤモヤ、これは人の顔か。

えーっと男性、若い、ちょっと抜けててヘラヘラしてるな...あー、わかった。

ケイジが見てるコーナーだ、あいつこれを見るために早起きしてるとか言ってたな。

このコーナーのお陰で遅刻は未だにないって自慢してたな、自慢してた相手も遅刻はまだ0だけど。

 

「はいワタル」

 

「ありがと」

 

運ばれてきた朝食はエッグトースト、コーヒーと一緒に朝の僕のエネルギーになってくれる。

このまま家にいても仕方ないし、学校に行ってケイジと時間潰すかな。口の食パンをコーヒーで流し込みながら、早めの登校を決めた。

 

 

驚いた。こんな偶然あるんだな。

早めの登校中、T字路でバッタリ出くわしたのはケイジ。数分でもずれると会えないのに、奇跡なのか?腐れ縁なのか?

奇跡なら、運はこんなところでケイジには使いたくない。

 

「お、お早い登校ですな」

 

「目が覚めて、することもないし」

 

ケイジとは会う度に何か話している。よく話題が尽きないものだと感心する。あっちが話を振ってくれるがどこで仕入れたのか、わざわざ仕入れてくれたのか?

この間にもまた話が変わる。ロシアのウイスキー事情からイギリス料理の話題、中々面白いし暫く相づちを打って聞いてみる。

 

「で、サンドイッチも要注意な。あっちのパンはカチコチだからな」

 

これから先イギリス旅行にいくなら、役に立つ情報だ。行くならば、の話だ。

ケイジという人間ラジオが暇を潰してくれる。登校して正解だった。靴を履き替え階段を登り奥の教室への廊下でも長々と話してくれる。

 

「ヨークシャープディングっていう肉の付け合わせは美味しいらしいぞ。」

 

へぇー、プディングねぇー。食べてみたいな。

誰もいなそうな雰囲気の教室、扉の前で音がしないのも新鮮だな。いつもいつも一部のガンプラバカが喧しくて仕方なかったし。

 

がらがら...年期の入った鉄の擦れる音、白い壁が横に流れ代わりに見えたのは

 

「...oh」

 

金髪の男子生徒だった。

 

二日連続、扉を開けると未知との遭遇。前回はよくあるシチュエーションだが、今回は違った。

 

「...good morning」

 

「あは、はぁ」

 

外国人だった。英語だ、生英語だ。生グッモーニングだ。とりあえず頷く、とりあえず、首を縦に降る。

 

頭一つ高い背と天然の金髪に英語、外国人。それが同じ制服を着ている。メガネもかけている、あと、それと、笑っているからかすごい爽やか、笑顔の清涼剤。

髪もキッチリと整えられていて寝癖を水でチョンチョンと固める僕とは大違い。

 

「あー...ふぅー、あー、ゆー」

 

英語が苦手なケイジが恐る恐る話しかけた。なんて片言なんだ、酷いぞ。しかし勇気は誉めたい、この状況で動揺しながらも声をかける行動力は流石だ。

 

「...あは、あはははは!」

 

すると爽やか笑顔がぐにゃっと崩れて笑いだした。手を叩いて大きな声で、ちょっと下品な位。

 

「いや、ごめんね。日本語一応は話せるんだ。けっこー練習したし、どうかな?」

 

「すごい上手、ペラペラじゃん」

 

ケイジ、あっちはペラペラだぞ。イントネーションも違和感ないし、先に日本語を聞いていたら外国人だとは思わなかっただろう。

 

「良かったよ。練習した甲斐があった。これで日本の生活にも支障はなさそうだね」

 

「なな、もしかしてさ!外国からの転校生、とか?」

 

「そう、ジョアン=エレノア。イギリスから来たんだ。宜しく」

 

ジョアン=エレノア...イギリスから来た転校生。

カッコいいな、名前もだし、イギリスからってのも。

 

「イギリス?飯が不味いって本当?」

 

ケイジ、お前まずそれを聞くのか?

僕も話を聞いてたから確かに気にはなったがそれまず聞かないとダメなのか?

 

「んー、ハギスは苦手かな」

 

答えるんだ。えーっとハギスは麦や野菜を羊の胃に詰め込んで煮たり蒸したりしたもの、だったっけ。

 

「本場でもハギスは好み別れるんだ。」

 

「他にもイギリスのソーセージとかは、パン粉が混ぜられてたり。」

 

面白いじゃんこの話。口は出さず黙って二人の話を聞いていた。食から住、衣へと種は尽きることがない。

そうして時が進むとクラスメイトが教室へと入り僕らと同様の反応を示した。ジョアンは見つけ次第英語で話しかけるドッキリを仕掛けた。仕掛けられた側はその反応を見てバレないよう遠くから見守っていた。

 

授業前のHRでは既に自己紹介がすんでいるような状態で、すっかりクラスに打ち解けていた。

ジョアン=エレノアは3か月前の入学式からいたような錯覚をするほど、違和感はなかった。

 

「ワタル、ありがと」

 

「あ、うん」

 

ジョアンの席は入り口から一番奥の窓側の一番後ろ。その隣は、まさかの僕だ。今僕はジョアンの席に自分の席をくっつけて教科書を共有している。これ、ラノベでみたシーンだ。

 

「これが日本の教科書、普通だね」

 

「イギリスはどうなの」

 

「変わらないよ、こんなの」

 

日本の物が色々珍しいのか好奇心に任せ色々と物色される。楽しそうだ、異国の地に一人で来たって言ってたのに寂しさが感じられない。気になって仕方ない、いっそ聞いてみるか。

 

「ねぇ、ジョアンはどうして日本に来たの?」

 

「ガンプラ...」

 

「なんて?」

 

「...そうだ!ワタルに見せてあげるよ。今日ジョアンの家に来ない?」

 

「と、突然だな」

 

そこに答えがあるなら、いってみても良いかな。独り暮らしの部屋も見てみたいし。

 

「なら、お邪魔しようかな」

 

外国人の独り暮らしの部屋か。どんな感じなんだろ。

 

 

 

 

 

放課後、ジョアンに連れられて来たのは学校から徒歩五分。大通りから少し抜けた住宅街にある3階建てのアパートだった。結構年数がたっていて階段は所々錆び付いている。踏む度にギシギシと不安を煽る音が鳴る。

 

「ケイジは来なかったの?」

 

「英語の補修だって」

 

「ジョアンが教えてあげようかな?」

 

それはいいや、本場の英語を仕込んであげれば補修になんて行くことはない。

階段を登り終えるとすぐ左の深緑の戸の前で止まった。2の2、ここがジョアンの借りている部屋。

鍵を指すと23度捻って音がなったのを確認するとドアノブに手を掛けて引いた。

 

「むさ苦しくて狭い所だけど、どうぞ」

 

大家さんがいなくて本当によかった。

お邪魔しまーす、玄関に先に上がらせてもらうと中は思った以上に時代を感じる内装だった。右手に台所、左手にトイレ、前には畳四畳程のスペースがあり、真ん中に机、奥に小さなブラウン管のテレビが見えた。

玄関から2、3歩歩けばもう部屋で他にベットやタンスがあるだけの質素な配置。

 

「なんか、普通だね」

 

「この広さだし、これくらいで良いさ。今のところこれでジョアンは困ってないし。」

 

僕の部屋の方が物を置いている気がする。人間これだけあれば生活できる、僕の部屋には余計なものが多いのかな。ぐるっと見渡してみると、玄関からは見えなかったが右手が壁じゃないことに気がついた。分厚いカーテンのようになっていて、仕切りになっている。

 

「気づいた?ここがワタルに見せたい場所なんだ。」

 

カーテンの端を握ると僕の前をそのまま横切った。

そこで見えたのは。またも四畳分のスペース、しかしこちらとはあまりにかけ離れていた。

壁は見えず代わりにショーケースが並べられていてそこにはガンプラがびっしり。ケイジの部屋でみたよりも多く、密度が凄まじい。唯一ショーケースでないちょうど中央では勉強机の上にパソコンやら塗装ブースやら混沌としている。

 

「どう?」

 

「これ、よく入れられたね」

 

「ショーケースは組立式だし、ガンプラは日本で作ったものだから。」

 

「...ジョアンって、日本に来てどれくらいなの?」

 

「1ヶ月ないかな、2週間ちょい?」

 

に、2週間で数百ものガンプラを作ったのか。朝から晩までずっとガンプラか、ここにもまたガンプラバカが一人。

 

「これだけの数作って、好きなんだね、ガンプラ」

 

「ようやくだよ、これだけ失敗作を作って、やっと完成した。」

 

「え、今なんて」

 

「長かった。本当に」

 

「ジョアン?」

 

ショーケースを見て何か呟いている。急に人が変わったみたいに笑顔が消え、虚ろな目をしていた。

 

「...ワタル、プラフスキー粒子は不思議だね。まだ無限の可能性が残っている。」

 

「なに、言ってるの?」

 

「システムは完成した。でも、僕はこの目で見たい。システムでのプラフスキー粒子の流れ...」

 

「プラフスキー粒子を、見たいの?」

 

「うん、機械で流れを確認するのは可能だよ。でも僕は自分の目で、確かめたいんだ。」

 

「システムって、ジョアン一体何を?」

 

「意地悪だよね、わかった。ワタルには特別の特別、見せてあげるよ。」

 

にこっと笑ったジョアンはガンプラ部屋に入ると、ゴチゴチャした机からなにかを手に取った。

 

「OVER SYSTEM。プラフスキー粒子の応用、ガンプラの新しい力だよ。」

 

手にしていたのはガンプラ、ブルーデスティニー1号機。その全身は、黒く染められていた。

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