偶然と必然の違いがあるならば、そこに誰かの意図があるかないかだと思う。これは持論だが、結局のところ誰かの手の平で踊らされていない時などない。全宇宙の生命体は神という某に支配されているのだ。自由意志などない。見えない糸で引き付けられ、引き剥がされている。
「クソ食らえってんだ」
対峙している装者を見つめながら思わず悪態をついた。
「隠し事なんざ私は好きじゃないんでね。クラウ・ソラスのサビにしてやるよ、シンフォギアッ!」
「そんなことはさせない」
「その通りデス。私と調で止めてみせる」
「何を止めるって言うんだ? 私達はもうとっくの昔に未来なんか見ちゃいないんだよッ!」
クラウ・ソラスが炎が立ち上る。ドライはニヤリと笑うと剣を振り下ろした。呼応するかのように炎が地面を伝い、切歌と調に襲いかかる。二人は左右に飛ぶと反撃を開始する。ドライも同じく攻撃を躱すと、続けてめちゃくちゃに剣を振り回す。その度に巨大な炎が辺りを焼き尽くしていく。
「おいおい、逃げてばかりじゃどうしようもねえぜッ?!」
「……」
「だんまりかよ。つまらねえやつだな」
ドライはクラウ・ソラスを上段に構えた。
「だったらもうお別れだ。あばよ、シンフォギア」
ドライはそのままクラウ・ソラスを振り下ろした。
勝った。ドライは確信した。今までの炎よりもさらに威力の高い炎を込めた一振りを広範囲にまき散らすように調整している。躱すことはおろか、防ぐことも出来ない。ギアは装者を守るために頑丈に設計されていることは知っているが、この灼熱に耐えられる訳がない。
「調、今デス!」
「わかったよ!」
ドライの立っている地面が突如、崩壊を始める。ひび割れた地面から現れたのは巨大な一対のヨーヨーだった。バランスを崩してしまっているドライに攻撃を防ぐ手段はない。
「なっ、マジかよッ!」
ヨーヨーに体を挟まれ天高くドライの体が運ばれていく。ドライは自身に急速に接近してくる鎌があることに気がついた。
「ゲッ!」
「言葉で駄目なら、力で止めるだけデスッ!」
「ふざけんな……負けるわけにはいかねえんだよッ!」
咄嗟にクラウ・ソラスのモードを切り替え、僅かに動く手首を上手く動かしてクラウ・ソラスから目映い光を照らし出す。
これで一瞬だけでも接近してくる装者の目くらましができれば……ドライの甘い考えは一瞬で打ち砕かれることとなった。
「はぁぁぁぁァァ!」
「あれを防いだっていうのかッ!」
クラウ・ソラスの能力は既に二課の調査でわかっていた。追い詰められたドライがどのような反撃をするかも想像できていた。
切歌はクラウ・ソラスが輝きを放つコンマ数秒前に黒いマントを咄嗟に前面に投げ捨てていた。剣の輝きは数秒しかない。マントの影に隠れて切歌は目くらましを受けることなく、一直線に進み続けていた。
「くそッくそッくそッ! ふざけるなってんだッ!」
「これで……終わりデスッ!」
「こんちくしょうがァァァ!」
爆発が起きた。ドライの残骸を確認することはできないが、切歌には確かに手応えがあった。
「大丈夫、切ちゃん」
「大丈夫デスよ。私達は……終わらせたのデスね」
「うん……仲良くなれたかもしれないけれど……世界を壊させるわけにはいかないから」
「そうデスよね」
勝負の時間はあっという間だった。一人で戦ってしまったドライの敗北。その結果を残して、人知れず一つの戦いが幕を下ろした。