戦姫絶唱シンフォギア MP   作:ROGOSS

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思い出の作り方 (1)

「司令、どう致しましょうか?」

「うむ……」

 

 マジックスクリーン越しに弦十郎と緒川は言葉を交わす。

 翼とマリアが保護したという少女には幸いにも怪我はなかった。しかし、一目見ただけでかの有名な翼とマリアとわかってしまったことが問題となっていた。

 とりあえず急場のしのぎとして少女を本部へと連れてきていた。今回の事件に巻き込まれたとこや翼がマリアがシンフォギア装者であることを秘匿することを誓わせた。だが、問題はそれだけではなかった。

 

「司令。やはり彼女は装者としての適性が見られます」

 

 友里に手渡された資料を見ながら弦十郎は頭をかく。

 装者候補を見つけられたことは幸運だ。だがしかし、肝心の彼女の詳細に何故か違和感を覚える。

 年齢はクリスと同い年だろう。両親は事故に巻き込まれ天涯孤独の身。高校に通うことはなく、アルバイトを続けてその日暮らしをしている少女……なぜだか意図的に独り身になっているような感覚。こういう時の勘は妙に当たるものだ。それでも、勘だけの判断で貴重な人材を野放しに出来る程の余裕は二課にはない。

 

「どうしましょうか?」

「そうだな……高校には行っていないようだが……入学させるか」

「この時期の転校生ですか?」

「そうだ。間もなく夏休みになるわけだし彼女には思い出を作ってもらうとしよう」

「いったいどんな理由ですか……」

「手続きの方はこちらでやっておく。クラスはそうだな……よし、彼女と同じクラスにしよう」

「事前に説明をしなくてもいいのですか?」

「心配するな。なんとかなるさ!」

 

 緒川はやれやれと首を振る。

 弦十郎はどこか楽しそうに笑うだけだ。天涯孤独の身の少女をまっとうに高校に通わせることに安心感を抱いているのだろうか。

 問題にならなければいいけれども……

 友里は静かに心配事を思い浮かべるも口には出さない。出したところで決定がひっくり返ることなどないことを彼女はよく理解していた。

 

 

〇●〇●〇

 

「それでコイツはどういうことなんだ?!」

「ははは、そう怒るな。友達は多い方が嬉しいだろう」

「そういうことを言っているわけじゃなくてだな!」

 

 クリスは地団駄を踏む。先程から同じような内容のやりとりが繰り返されていた。

 今日は転校生がやってくると聞いていた。それでも自分には関係ないものだろうと高をくくっていたのだが……蓋を開けてみれば転校生である白井 沙優(しらい さゆ)は何故だか自分にべったりとくっついてくる。しかも今日から同居生活まで始めるらしい。

 何かしらの意図が絡んでいると察し、本部へと駆けつけて見れば親しげに弦十郎と話している沙優がいるではないか。

 そこでクリスは全てを知ることとなった。

 沙優は装者としての適性を見込まれて、私立リディアン音楽院に転校してきて、年齢的にクリスと同じであることから広い部屋で一人暮らしをしているクリスの家にとりあえず同居人として押し込んだといった感じであった。

 

「あのなぁ、おっさん! 先に相談をすることが筋ってやつじゃぁないのかっ!」

「もっともだ。すまんすまん」

 

 まったく詫びれる気がない弦十郎の様子にクリスのボルテージはさらに上がっていく。

 

「す、すみません……迷惑ですよね……」

 

 所在なさげに平謝りを繰り返す沙優を見ていると何だか怒っている自分がばかばかしくなる。

 クリスはため息を一つ付き、弦十郎を睨むと沙優の肩に手を置いた。

 

「謝ることはない。お前も被害者なわけだからな。たくっ。わかったよ。本部様々だ。言うとおりにすればいいんだろ」

「さすがは雪音くんだ。君ならそう言ってくれると思っていたさ」

「都合の良い奴め。行くぞ」

 

 クリスに呼ばれているのが自分だと気がつく、沙優もクリスの後ろを付いていく。

 沈黙が続いたまま廊下を抜けて地上へと続くエレベーターに乗り込む。その間、沙優はクリスに視線を合わせようともしない。肩をすぼめ申し訳なさそうな姿を維持し続けている。

 その様子がクリスにはどうしようもなく耐えることができなかった。

 

「やめろやめろ。悪いのはお前じゃないんだ」

「だけど……私が突然来たから……」

「あぁ、だから気にするなって。どうせ広い部屋に一人だったんだ。同居人が増えたところで困ることはない」

「そうですか……?」

「それとっ!」

 

 クリスは沙優に指を指した。ビクリと彼女の体が硬直する。

 

「同い年で同じクラスになるんだ。つまりはだ、私達は友達になるんだ。敬語はやめろ。あとクリスで良い」

「え……?」

「お前なぁ……はぁ……なんて呼べば良い?」

「え……あ、じゃぁ……沙優で……」

「わかった、わかったよ沙優。さっさと家に帰って夕飯食べるぞ」

「は、はいっ!」

「敬語っ!」

「う、うん!」

「はぁ……」

 

 今日は随分とため息をついてしまう。

 それでもクリスは心のどこかが高鳴っていくのを感じた。

 同い年で同じクラス。クラスの奴らは私と沙優が一緒に住んでいると知ったら余計な詮索をするかもしれない。だけれども、彼女と新しい生活が始まることは嫌ではない。

 

「さて……今日はごちそうにでもするか」

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