ニンジャと世界樹と白亜の城寨と   作:酢酢酢豆腐

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◆忍◆ニンジャ名鑑#0xxx【ホーンドバイパー】◆殺◆
かつてネオサイタマと呼ばれた一帯で産まれ、
旧文明時代から生きていると称する胡乱なリアルニンジャの
弟子になる。その後は海都アーモロードにて冒険行に挑んだ。
師匠から実費で購入したヘビ・クリス短剣を愛用している。
迷宮の踏破者になるのが夢。

◆忍◆ニンジャ名鑑#0xxx【フブキ・ハヤシ】◆殺◆
ミズガルズ図書館にて修練を積み、海都アーモロードにて冒険者になる。
今回のレムリア行きに同行した理由はホーンドバイパーを
死なせたくないから。好き。邪魔物は杖で殴って壊す。
一見温厚に見えるのは擬態であり、実際迷宮の植物めいている。


皇帝ノ月第1日目 飛行都市マギニア

皇帝ノ月第1日

飛行都市マギニア

 

目的地であるレムリアが近いのか、飛行都市マギニアの艦橋部に繋がる通路には窓越しではあるが、激しい風雨が叩きつけられている。景色が良く見える場所を探していたところ君がたどり着いてしまったのがここだった。実際のところ君が海都アーモロードに寄港したマギニアに乗り込んでからわずかに7日、未だにマギニア内部の地理に通ずるに至っておらず、君は飛行都市艦橋部付近へと迷い込んでしまったのだった。

 

君の視線の先には、橙の髪、碧眼、見事な宝石細工の冠と豪奢な甲冑を身に付けた女性の凛とした姿がある。君の予想が外れていなければ彼女こそが、この飛行都市マギニアの王女、ペルセフォネ姫だろう。君の確かなニンジャ野伏力によってか彼女はまだ君に気付いていない。

 

「レムリアは近いのか?」

 

君の問いかけに推定ペルセフォネ姫が驚き、振り向く。何となく君を警戒しているのか、振り向きざまに態勢を整えてからは油断ならないカラテを構えている。

 

「見たところ、我がマギニアの兵ではあるまい。何者か?」

 

鋭い視線と誰何の声が君に向けられる。

冒険者が名乗るように求められたならば、姓名よりも先に一党(ギルド)の名を答えねばならない。それはさながら、ニンジャ同士が出会いイクサとなればアイサツを交わさなければならないように。古事記にもそうある。

 

「ドーモ、アドベンチャラー・ドージョーのホーンドバイパーです」

 

君は素早く巻物を取り出し、広げる。そこには力強いオスモウフォントで『冒険者達が道場』の文字がショドーされていた。実際、心臓の弱い者やカラテの足りない惰弱者が長時間このショドーを見詰めていると急性NRS(ニンジャ・リアリティー・ショック:ある種のショック症状)を引き起こす可能性さえある代物であった。

 

「・・・まぁ、まだ俺含めて2人しかいないが」

 

「ふむ、パーティーメンバーを募るのはレムリアについてからでも遅くはあるまい。時にアドベンチャラー・ドージョー・・・汝は我らが募った冒険者か?」

 

君は首肯する。君自身はかつてネオサイタマと呼ばれた一帯で修行し、近隣のエトリアではなく海都アーモロードに渡った変わり者だ。海都の世界樹迷宮が他の一党によって完全踏破されたので新たな冒険を求めてマギニアへと乗り込んだのだ。

 

「遥か東の果てにあり、数多くの冒険者を輩出したというエトリア」

 

「四季を彩る美しい樹海を戴く北の公国ハイラガード」

 

「南海に位置し、多くの民が集う海洋都市アーモロード」

 

「名君と名高い辺境伯が治める最果ての街タルシス」

 

「これら諸都市の何れから来たにせよ、とにかくよくぞ馳せ参じてくれた!見れば中々に腕の立ちそうな出で立ちではないか!」

 

先程までの警戒とはうって変わって、推定ペルセフォネ姫の語り口と視線には確かな熱が込められていた。

 

「我らが向かう絶海の孤島レムリアは世界から隔絶された地と聞く。周辺海域は常に荒れ、厚い雲が島を覆うとはきいていたが・・・ここまでの道のりは正しく言い伝えの通りであった」

 

窓越しの荒天に目を向け、推定ペルセフォネ姫がひとりごちる。

 

「お前の最初の問いに答えよう・・・目的地はもうすぐだ。そろそろ雲を抜けるぞ!」

 

推定ペルセフォネ姫の言葉に君も窓の外に目を向ける。するとマギニアが暗雲を切り裂き巨大な世界樹が目に飛び込んでくる!おお世界樹!ゴウランガ!

 

「見たか!あの大樹こそ我らの目的地、汝らの挑む冒険の舞台である」

 

君がレムリアの世界樹を眺めていると、ニンジャ第六感が何者かの接近を告げる。

 

「姫?こちらでしたか。無事に到着しましたので演説のご準備を・・・」

 

漆黒の鎧に身を包んだ壮年の軍人とおぼしき男がペルセフォネ姫に声を掛ける。

 

「ミュラーか、分かった。準備は出来ている。ホーンドバイパー=サン、汝も広場へと向かうが良い」

 

ペルセフォネ姫が君に移動を促すと、漆黒の鎧の男、ミュラーが君へと向き直る。

 

「ホーンドバイパー=サンといったか。君は?」

 

「アドベンチャラー・ドージョーのホーンドバイパー=サン、集ってくれた冒険者だそうだ」

 

君が応えるよりも先に、今や推定の2文字が外れ、正真正銘のペルセフォネ姫本人と分かった彼女がミュラーに応えた。

 

「なるほど、志願してくれた冒険者か。私はギュンター・ミュラー、軍人としてこの飛行都市マギニアに仕えている」

 

ミュラーと名乗った男は重々しく今回の冒険行について語り始めた。

 

「今回の旅では、君のような冒険者が何千と集まっている。これらはみな伝説の古代文明とその秘宝に惹かれたためだ。とはいえ、集まった全員にレムリア踏破の意志が有るかは分からん。加えて実力面でも、誰もが君のようにあからさまに練り上げられたカラテを持つ訳ではない。」

 

一呼吸あけてミュラーは続ける。

 

「真摯に我らの声に応えるもの、未知の樹海を踏破したいもの、このマギニアに乗りたかっただけのもの、金儲けが目当てのもの、末は町で居場所を失ったヨタモノ崩れまでもが集った。我らは様々な思惑はあれど団結して迷宮攻略に当たらねばならぬ。故にこれから姫様がそれを促すべく演説をなさる。君も広場へ行きパーティーメンバーの目星でもつけるがいい」

 

 

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『互いに名も知らぬ冒険者なれど、未知なるものへ挑む心を持つ同志と思え』

 

君は先程のペルセフォネ姫の演説を脳内で反芻していた。心は良いにしても随分数だけは揃っている、というのが君の感想である。アーモロードの迷宮で錬磨された君の目には、広場へ集った多くの冒険者の半数はニュービーに映った。

 

(ニュービーが多いが、中には遣えそうな奴もいる・・・誰と組むべきか)

 

君のようなニンジャ戦士でも迷宮に1人では挑めない。シンプルに言って死ぬからだ。船酔いのために船室で休んでいるメディックを除けば、君のかつての一党のメンバーもいない。むしろ彼女ほどの癒し手が同行してくれた事は君にとって大変な幸運であったと言えよう。君は幸運の味を噛み締めつつ、ぞろぞろと冒険者ギルドへ向かう人の波を見送った。

 

 

「フブキ=サン、船酔いは治ったか?」

 

冒険者に与えられたマギニア中層の船室で、君は現状唯一のパーティーメンバーの少女と会話していた。

 

「折角の上陸日なのに・・・私に付き合わせてしまってすみません」

 

「気にするな。それを言うなら俺はフブキ=サンに何度命を救われたか分からん」

 

「ふふっ。それもそうですね、ホーンドバイパー=サン」

 

フブキはかのミズガルズ図書館で修練を積んだ癒し手にして、共に海都アーモロードの迷宮に潜った仲間だ。広場に集まっていた冒険者の中でも彼女ほどの手練れは珍しいのではないかと思われる。

 

「荷物は俺が持とう。取り敢えず常宿にできる宿をとってから冒険者ギルドへ向かおう」

 

「ありがとうございます。他の冒険者の方たちはいかがでしたか?」

 

「冒険者ニュービーが多いように感じた・・・だが、予想以上にヨタモノめいた連中は少ない」

 

「あらあらそうですか」

 

上層へと上がるエレベーターの中でぽつぽつと言葉を交わす。君が海都アーモロードの大港で酔っぱらいの船乗りからフブキを救って以来、彼女はいつもこの調子でにこにこしている。君も満更ではないから共にレムリアに挑もうと思ったのだろうが。

 

「ね、ホーンドバイパー=サン」

 

「どうした?」

 

「今度こそ私たちで踏破しましょうね」

 

「ああ、必ず」

 

そういうことになった。

 

 

 

 

 

 

 

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