ニンジャと世界樹と白亜の城寨と   作:酢酢酢豆腐

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皇帝ノ月第1日目夜 湖の貴婦人亭

皇帝ノ月第1日(夜)

湖の貴婦人亭

 

「明日からは冒険にでかけるんでしょ~?でも二人だけだと危ないんじゃないかなぁ~」

 

君達は首尾良く常宿を確保することができた。ここ湖の貴婦人亭は少女ヴィヴィアンと猫のマーリンが切り盛りする宿屋だが、4人や5人泊まるには十分以上な広さと快適さをもっている。

 

一方、パーティーメンバー探しは難航していた。かつて背中を預けあった一党の仲間は既にそれぞれの道を行き、このマギニアにはいない。かといって完全なニュービーと組むのも難しい。君達は指導の下手さを自認しているうえに前の一党でも指揮やその類いの役割は負ってこなかったからだ。

 

「たのもう!」

 

「騒がしくてすみません!まだ部屋は空いてますか?」

 

君達がラウンジで頭を悩ませていると、女性騎士と特徴的な民族衣装に身を包んだ槍戦士が宿へとなだれ込んできた。

 

「あ~空いてるよ~2階の右の部屋を使ってね~」

 

「うむ!飯も食えるか?」

 

背負い袋や鎧兜をがちゃつかせながら大股で湖の貴婦人亭へと踏み込み、飯の催促をしてから女騎士は君達の存在に気づいたようであった。

 

「む、先客か」

 

「ドーモ、アドベンチャラー・ドージョーのホーンドバイパーです」

 

「私は同じくアドベンチャラー・ドージョーのフブキです」

 

「丁寧なアイサツ痛み入る。私の事はししょーとでも呼ぶが良い!」

 

君達の前に現れた女騎士はどうやら残念な存在らしかった。

 

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「なるほど、お二人はもともとアーモロードで世界樹の迷宮に挑んでいたんですね!」

 

民族衣装の青年が朗らかに言う。4人は夕食を共にしていた。

ヴィヴィアンが作ってくれる料理は量も味も満足のゆくものであった。

 

「そうだ。お前達はハイラガードの辺りから来たのか?」

 

「そうです!僕は元々エトリア辺りの出身なんですが、ししょーとはハイラガードの迷宮で冒険者やってる時に知り合ったんです!」

 

「こいつ筋は悪くなさそうなのにあんまりにもぽやぽやしていたから、私が面倒をみてやってるのだ!」

 

「あはは・・・」

 

確かに君の目から見ても、この青年は油断ならないカラテの持ち主だった。今もいつでも槍を手に戦える態勢を保っている。あるいは彼もまた君の蛇めいた視線や滲み出るカラテを警戒しているのかもしれない。

 

「ところでししょーとやらはともかく、お前の名前は?」

 

「あっ!確かに名前はまだいってませんでしたね!僕はハイランダーのウィリアムです。よかったらウィルって呼んでください!」

 

力強い握手、君とウィルの視線が交錯し一刹那、濃密なカラテが立ち上る。力自慢の冒険者であれば誰でも仕掛けるような可愛いいたずらである。

 

「ところでお前達2人で迷宮に挑もうとしているわけではあるまい」

 

「勿論。分け前の勘定を併せて考えても4人は必須でしょうね!」

 

もそもそと芋を咀嚼していた自称ししょーが応えるよりも早くウィルが返答した。

 

「ちょうど此処に4人冒険者がいるわけだが」

 

君は3人を順繰りに見つめる。

 

「前衛2人に中衛1人と後衛1人、ありがたいことに癒し手がいる」

 

間髪入れずにウィルが応える。

 

「私はホーンドバイパー=サンが望むなら如何様にも」

 

フブキの君に対する信頼は深く、重い。君は彼女の信頼に応えなければならない。

 

「うぁもぐしもさんもぐヴぁ!」

 

「ししょーは飲み込んでからでも良い」

 

「・・・私もホーンドバイパー=サンの提案に賛成だ。なんならこちらから提案しようと思っていたところだ!あからさまに手練れのニンジャとメディックなんて中々転がってないからな!」

 

「ではパーティー結成ということでいいな」

 

「乾杯しよう!乾杯!」

 

「ししょー飲みすぎは禁物ですよ・・・」

 

「ばか野郎ウィルお前私は飲むぞお前!」

 

「アイエエェェ・・・」

 

「まぁまぁ、いざとなったら私がリフレッシュさせますから」

 

「うちのししょーがスミマセン!スミマセン!」

 

こうして君と仲間達はレムリアにおける冒険と栄光の第一歩を踏み出した。なんといっても背中を預けられる仲間がいなければ冒険はできない。

 

仮に1人で樹海に挑むとすれば、一度の軽微で些細な過ちで命を失う覚悟をしなければならない。生きて成果と情報を持ち帰ってこその冒険であり冒険者だ。

 

君はアーモロードの迷宮でそれを嫌というほど分からされた。親しくなったものも樹海のつゆと消え、深海の邪神との戦いで倒れた友もいる。団結しなければ人の身で成し遂げられる事はあまりにも少ない。

 

例え君が半神的ニンジャ戦士存在でもドラゴンのブレスが直撃すれば死ぬし、魔法と呪術と星術を雨霰と浴びせられれば死ぬ。迷宮は多大な恩恵をもたらすが甘くはない。

 

「ところでホーンドバイパー=サン、ギルド名とかは決めてあるのか?マギニアの本営やら冒険者ギルドへ届けを出さねばならんぞ?」

 

君は仲間達の視線を正面から受け止め、胸元から巻物を取りだし広げた!

 

『冒険者達が道場』の文字が偉大なるオスモウフォントでショドーされている。

おお!アドベンチャラー!

 

「俺たちのギルド名はアドベンチャラー・ドージョーだ」

 

「うん!いいな!良いギルド名だ!」

 

「僕もギルド名に違わずますます強くなってやりますよー!ガンバルゾー!ガンバルゾー!ガンバルゾー!」

 

「せっかくだし、乾杯、しましょうか?」

 

「乾杯!」「乾杯!」「乾杯!」「乾杯!」

 

こうして冒険者たちの夜は更けていく。

 

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