ハイラガードの迷宮で鍛え上げたシールド・カラテが持ち味。
黙っていれば長身にブロンドが映える見事なパラディン(姫騎士)
だが彼女は大酒のみでタフなししょーだ。残念ながら。
粗にして野だが卑ではないというのは彼女のこと。
◆忍◆ニンジャ名鑑#0xxx【ウィリアム】◆殺◆
ハイランダーの冒険者。血を代償に力を発揮するジツの使い手。
民族衣装に身を包み槍をもって戦う。ししょーとの連携は見事の一言。
平時はぽやぽやしているとはししょーの評。本人はしっかりしているつもり。
兄弟姉妹がおおいらしい。
皇帝ノ月第2日目
クワシルの酒場
飛行都市マギニアに属する冒険者は、法と行政を司る司令部が発行するミッションとは別に、司令部より許認可を受けた冒険者の酒場が仲介するクエストを積極的にこなすことが求められる。
クエストは多岐にわたり、迷宮内部の調査を行っている兵団への消耗品や手紙等の配達、放牧時の護衛や食べられそうな動植物の調査、迷宮までの簡易な道路の整備、衣服や武器防具の材料になりそうな魔物の討伐等々の依頼が管区ごとの冒険者の酒場に舞い込むのだ。
君たちが拠点とした湖の貴婦人亭から最寄の冒険者の酒場は「クワシルの酒場」だ。酒場の主のクワシルという男は、これまでも人を煙に巻くような言動とは裏腹に適切に依頼を振り分けることで荒くれ者揃いの冒険者を上手くこきつかってきた辣腕との評判だ。
何故君たちがクエストと冒険者の酒場について思いを致すかといえば、発端は朝一番の冒険者ギルドでの出来事までさかのぼる。
「このまま司令部に行ってミッションを受領すれば良いのではないのか?」
君は訝しんだ。
「そうだ。如何なる冒険者であれ、先ずは管区ごとの冒険者の酒場にて難度の低いクエストを受注してもらう。都市への貢献度が一定になるまでは迷宮への挑戦は許可されない。そして簡単なクエストすら容易にこなすことが出来ない冒険者であれば迷宮に挑んでも無駄死にするだけだろう。」
ミュラーの言葉には有無を言わせぬ調子がある。この説明を一介の兵士に任せずに、直接ミュラーが行っていることからも司令部の本気度が伺える。
説明を受けた後は流れ作業的に地図や最低限の装備を渡していくのか、君の視線の先では担当の兵士から支度金を幾ばくか渡された一党が希望に満ちた表情で次々と出立していく。明らかにニュービーめいている。
君の視線の先を見てミュラーは苦笑しながら語った。
「ちなみにだが、新人未満の連中には兵団が行う戦闘訓練及び座学に参加することを義務とし、しばらくは難度の低いクエストで生計を立ててもらう計画になっている。この冒険者ギルドに併設された宿舎はまさにそういった連中を寝泊りさせるための物だ」
「随分と手厚いのだな」
それは君の素直な感想だった。アーモロードの冒険者ギルドもそれなりに面倒見は良かったが、あれには海都対深都、深都対深き魔なる者共の複雑な対立構造をどうにかできる優秀な冒険者を1人でも多く欲しているという事情があったからだ。
おおよそ冒険者ギルドというものの基本スタンスは『生き残ればよし、死んだのは残念だがかわりはいる』である。
「意外だな。もっと面倒がるか・・・もしくは、モータルが幾ら死のうと構わないとでも言うかと思っていたぞ、ホーンドバイパー=サン」
ミュラーが君を真っ向見詰めながら言う。ミュラーは間違いなく非ニンジャであるがその胆力と気迫は恐るべきものだった。
「からかうのは止せ。俺は確かにニンジャだが、ニンジャとて1人では死ぬのが世界樹の迷宮だ」
「すまんな。実際のところこのマギニアが一番補給し難い資源は人間なのでな。大事にするのは当然だろう?」
「確かに。それで一党として登録を終え、支度金やらを受け取った後はどこぞの冒険者の酒場に行けばいいのか?」
「いかにも。だがもうしばらく待て、今君たちの名前とギルド名が刻まれた認識票を用意しているところだ。宿はどこに泊まっているんだ?」
「湖の貴婦人亭だ」
「ああ、あのお嬢さんとデブ猫のところか。となると管区としては・・・よろしい、それでは支給品を受け取った後はクワシルの酒場に向かいたまえ。地図の見方は分かるな?ここが君たちが泊まっている宿で、クワシルの酒場は通り2本向こうだ」
こうしたやり取りの後、君たちはクワシルの酒場へとやってきた。
幸い君たちは既にある程度装備を整えているので商店・職人街には顔を出していない。
君自身は愛用のヘビ・クリス短剣以外はエテルから生成可能なため、しばらくは血中カラテとエテルから生成したニンジャ装束で冒険に挑むことにした。
君はアーモロードで世話になったネイピアのような職人兼商売人とめぐり合うことが出来れば、迷宮由来の素材で武器防具を作成してもらうのも良いかもしれないと思った。
実際のところ、君は愛用のヘビ・クリス以外の装備を全てあのアーモロードの迷宮最深部での決戦にて喪失していた。無限に復活してくる邪神の触手を永遠にも感じる時間、仲間たちとともに討ち続けたためだ。
本命の一党が邪神の本体を撃破した時、君の武器防具は師匠から実費購入したヘビ・クリス短剣を除いて全て見る影も無く破損していた。血中カラテも尽き果て、一党皆が満身創痍だった。
それなりの期間休養した後、君のかつての一党はそれぞれが別々の道を歩み始めた。幸い傷は癒えたが君の実力は決戦時の半分以下だろう。
(ネイピア=サンがこのマギニアにも出張して来てれば・・・いや、無いものねだりだな・・・)
「どうした?ぼんやりして。とっとと入るぞ!」
ししょーが君のわき腹を小突く。
「うわっお前の腹筋は鋼か何かか」
「ほら、ししょーもじゃれてないで早く進んでほらほら」
「悩み事ならいつでも相談にのりますからね?」
クワシルの酒場は昼間ながらかなり繁盛しているようだった。ウェイターと思しき少女が各テーブルに酒やら料理やらを配膳しているのを尻目に、君たちはクワシルらしき男の下に向かう。
「いらっしゃーい!クワシルの酒場へようこそ!初めて見る顔ばかりだね、となると・・・クエストの方かな?しっかし見るからに手練れ!ってかんじだね。いや助かるよぉ~本当にさ!どうみても来る人来る人新人の子ばっかり何だもんなぁ。まっ、これから色々と頼むと思うけどひとつよろしく!」
胡乱の極みである。まくし立てるように話しきった白髪の男からはえもいわれぬ胡散臭さが漂うが、提示してきたクエストはどれも手堅い物ばかりだ。
君はなし崩し的にだが一党のリーダーシップを取っている者として、2枚の依頼書を決断的に選び取った!
・放牧の護衛
・水源のヌシの調査(必要であれば討伐)
「うんうん!助かるよ!放牧の護衛の方は明日の朝方5つの鐘の頃に正門・・・一番大きい乗降口の前ね。あ、今晩は飲み過ぎないようにね~!まぁ僕も早起きは苦手なんだけどさ」
「なるほどな」
「遅くとも鐘4つには起きて支度しなきゃですね」
「朝の鐘4つか・・・早起きは苦手だ・・・ウィルぅ頼むぞ!」
「どのみち僕が起こすのはいつも通りじゃないですか」
「うふふ。ホーンドバイパー=サンもおねむだったら私が起こしてさしあげますね?」
君は別に早起きが苦手なわけではない。が、フブキのカワイイが過ぎたため君は黙って首肯するに留めた。
「ではさっそく指定の水源の調査に出立する」
「はいはーい!釣餌はこれを使って!頑張ってね~!」
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皇帝ノ月第2日目
水源へ続く平原
「マギニアの衛兵によればこの辺りに大きな池が有るらしい。湧水も確認出来ていて、生活用水にちょうどよい立地らしいな」
辺り一面に草原が広がり、牧歌的風景だ。ここら一帯はまだまだ危険な動物や魔物は少ない様子である。
「それはいいですね。飛行中、水は節約するように厳しく言われ続けてましたし、これで皆人心地つけるでしょう」
「私はサウナに入りたいぞ!」
「あら、おししょーさん。それなら私と一緒に行きませんか?」
「良いぞ!フブキに近付く軟派男がいれば騎士としてちぎっては投げちぎっては投げ・・・」
「お前がちぎっている間に着いたぞ。潤沢な水量の池らしい」
君達が小高い丘を登りきると、眼前にはさながら湖沼地帯と呼ぶほうが適切なぐらいの大きさの池が広がっている。生活用水をとるには十分だろう。君は依頼にあったヌシとはどの程度のものなのか、と想像する。
「釣りが得意なものはいるか?」
「あっ、僕釣りなら得意ですよ!」
君がニンジャ第六感を研ぎ澄ませるなか、ウィルが釣糸を垂れる。ししょーとフブキは動ける姿勢をとりながらも少しリラックスした様子だ。無理もない。寄港しる機会はあれど何ヵ月も都市内に缶詰めでは、自然や地面が恋しくなるだろう。
そしてウィルが釣糸を垂れはじめてから一時間、ししょーが飽きはじめた頃にそれは起こった。
水面に降り立った水鳥が何らかの巨大生物に飲み込まれたのだ!一瞬見えた巨大生物の口内には鋭い牙がびっしりと生えている!飲み込まれれば死は確実不可避であろう!
これを読んでいる読者の中に旧文明の人類はおられるだろうか?もしいらっしゃったらこの怪物をご存じかもしれない!
そう!これはヨロシ・バイオサイバネティカ社が培養繁殖・脱走事故を起こした食肉用生物バイオアナゴである!レムリアの隔絶された環境下では、未だに旧世界の動植物が独自の進化を遂げて息づいているのだ!
とはいえ、マギニア住民に危険を及ぼす可能性があるなら排除するのが今回の依頼だ!君は決断的にスリケンを投擲!
「イヤーッ!」「グワーッ!」
ウィルが釣竿を投げ捨て槍を掴み、投げる!鎖付きの大槍が巨大獰猛バイオアナゴに直撃する!凶悪な返しがついたウィルの大槍がバイオアナゴに食い込む!
「イヤーッ!」「グワーッ!」「引っ張れ!引っ張れーッ!」「グワーッ!大槍グワーッ!」
FIIIIIISH!たまらず巨大獰猛バイオアナゴが釣り上げられる!ワザマエ!
「イイイイィィィヤアァァーッ!」ZDOOM!
「アババーッ!?」
降り下ろしハンマーパンチめいて君のヘビ・クリス短剣が巨大獰猛バイオアナゴの脳天に突き刺さる!脳破壊!
こうして水源地の脅威は君達によって排除された。君達は巨大獰猛バイオアナゴの首をはねて持ち帰ることにした。正門の衛兵や行き交う冒険者達の視線を浴びながら、君達は堂々とクワシルの酒場へ帰還した!
「うわぁ!?なんだいその頭・・・それが例のヌシ?んじゃ水源は利用可能になったわけね!流石!それじゃあこれが報酬ね!」
君達は200enの報酬を受け取った。素泊まりなら4人で1週間の宿泊費にはなろうか。だが、冒険者ならそのような使い方はしない。無事に帰ったなら先ずは乾杯だ!勝利の祝杯をあげたまえ!
「今日はこのパーティーでの初戦闘だったが、俺達は上手く切り抜けた。上々の結果だ」
「取り敢えず今回の報酬で宿代の先払いとメディカ幾つかは用意できそうですね」
「そうだな」
「金勘定の前に勝利の祝杯だろー!」
「ほら、お料理もきましたよ!」
「ヌッ。それでは今日の勝利に・・・」
「乾杯!」「乾杯!」「乾杯!」「乾杯!」
手練れの冒険者とはいえ冒険にも生活にも金は必要だ。明日も君達には放牧の護衛仕事がある。たが今だけは勝利の余韻とアルコールに包まれてあれ!