転生したからダークヒーローをロールプレイする   作:カステラ

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見切り発車ですが、良ければ見ていって下さい。


ダークヒーローという最高にカッコいい存在

 信号機が青に変わるのを待ってたら、突っ込んできた車によって死んだ俺は、俺の死亡処理がめんどくさいからという神様の酷い理由で転生することとなった。

 

 どうやら転生先の世界は、俺が元々いた世界で発売されてたラノベの世界らしい。その世界の一部の人達は能力を持ってるらしく、能力者である主人公は政府が作った能力者達を育成する学園で、ラブコメありバトルありの生活をしていくといったありきたりな設定のラノベだ。

 

 そんな世界に行くのだから、俺も勿論能力を持っている。俺の能力は鉄を操ることと、周りの重力操作の二つ持ちだ。

 

 しかも鉄は空間から作り出すのも可能だから、状況に左右されない安心設計付き。うん、チートだね。せっかくの二度目人生だし、ラノベの世界なのだから俺が目指すのは一つ。最高にカッコいい存在であるダークヒーローだ。

 

──────────────

 

 深夜、東京のある一区の路地裏。息を切らしながら男が懸命に走る。恐怖に染まりきった顔で時々後ろを確認しながら走る男は、行き止まりに辿り着いた。

 

「そ、んな、嘘だろ! この先にはアジトがあった筈なのに! なんで()()()があるんだよ!」

 

 歩いて追いかけてきたフードを深く被った少年が、叫びながら壁を叩く男の姿を見てニィと笑う。

 

「オ~ニさんこちらァ、手の鳴る方へ~ってかァ!」

「ヒィッ!」

「俺にバレねェようにこそこそしてれば見つかる事も無かったかもしれねェのになァ……。つーか、アジトまで案内してくれるなんて良心的じゃねェかよォ惚れちまいそうだぜェ?」

「クソッ!」

 

 男は懐から拳銃を引き抜き構える。少年はヘラヘラと笑いながら近づく。

 

「おいおい、そんなオモチャが俺に効くと思ってんのかァ? 銃なんざ能力者にとってなんの障害でもねェのは分かってんだろうがァ。さっさとテメェの知ってる情報を吐けそしたら命は助けてやるぜェ?」

「教えるわけ無いだろ! 来るんじゃねぇ、撃つぞ!」

「……ハァ。んじゃ、いいやお前。さよなら」

 

 少年が指パッチンすると鉄で出来ていた壁の一部が触手のように変形し、男を飲み込み始めた。

 

「なんだこれ! やめっうああああああ!」

 

 男は慌てて発砲するが、銃弾は少年の目の前で止まり地面へと落ちる。鉄に飲み込まれてく男を見ながら少年は歩き出す。

 

「安心しろよォ。顔は出してやる。窒息はしねェからさァ」

 

 少年は鉄の壁の一部を空け、叫ぶ男の隣を通りながら路地裏の奥へと進む。

 

「親玉も幹部も賞金首の能力者……随分と戦力を揃えてんなァ。麻薬組織はそうしねェと裏で生きることもできねェのかァ?」

 

 先程の男が所属していた麻薬組織のアジトの前。その鉄扉をねじ曲げて侵入しながら少年は監視カメラに向かって皮肉を言う。見ているであろう組織の親玉に向けて。

 

「楽しみしてろよ親玉ァ。テメェの積み上げてきたもん全部ブッ壊して、絶望を見せてから潰してやるからよォ!」

 

 口元を歪め、恐ろしい笑い声を上げながら少年は監視カメラを潰した。

 

──────────────

 

『朝のニュースです。東京の渋谷区の路地裏にて、鉄の壁に埋まった男性が発見されました。警察の調べで男性は麻薬組織の一員であることが判明しており、男性は取り調べの最中、終始怯えた表情であいつがと連呼しているため、精神系の能力の影響を受けていると見て、警察は男性を精神病院で治療させてから再度取り調べを行う方針を検討している模様です。次のニュースです――――』

 

 何時ものように繰り返される穏やかな朝食の時間に、穏やかではないニュースが流れる。そのニュースを聞いた少年神山(かみやま)(ほむら)は眉を顰めた。

 

「父さんこれって……」

「ああ、十中八九あの少年だな」

 

 焔の父親、神山玄治(げんじ)は頷きながら焔に返事をする。玄治の言うあの少年とは、フードを深く被った正体不明の少年で、自分の事をゼロと名乗っており裏社会に潜んでいる。

 

 神出鬼没で身元不明。世界征服を企む過激派や裏社会の組織とよく戦闘しているのが一般人からの報告で上がっている。三つ巴になった際には、一時的な協力を要請した能力者達や警察にも容赦なく攻撃して撤退させるまで追い込む危険人物である。

 

「確か、ゼロだっけ……。父さんが追ってるんだよね」

「ああ、能力者の中で唯一の能力二つ持ち。あれを野放しにするのは……危険過ぎる」

 

 本来、能力は一つしか持てない筈だが、ゼロは能力を二つ行使しているのが報告で分かっており、二つもある能力が強力である為に危険視されている。

 

 最も、危険視される一番の理由は、能力が二つあるというよりも過激派の団体や裏社会の組織を、たった一人で潰し回っているのが原因である。

 

 そのような人物を野放しにするはずもなく、警察官でもあり能力者の玄治は政府の命にてゼロを捕まえようと追っていた。

 

「もし、ゼロを見つけたとしても絶対に近づくな。お前も俺と同じような能力を持っているが、ゼロとは場数が違う。たった一人で組織一つを潰す化け物だからな」

「分かってる。でも、何時か父さんと一緒にゼロを捕まえるよ。そのために、俺は学園で戦う術を学んでるんだから」

 

 十数人に一人の割合で能力者がいる現代。能力を悪用して暴れる者達に対抗すべく、政府は能力者達からなる特殊機関の結成と若い能力者達を育成するために桜花学園を作り出した。焔も能力者として桜花学園に通って居るが、そこまで学業の成績は良くない。

 

「ははは、期待してるぞ焔! その調子で勉強も頑張れ!」

「うぐっ! それも頑張るよ……」

 

 玄治は席を立って焔の頭を撫で、食器を片付けた後に身支度を整える。

 

「よし、ちゃんと母さんに挨拶してから学校に行けよ。それと、最近は物騒だから気をつけろよ」

「うん。父さんも気をつけてね」

「おう。行ってきます」

「行ってらっしゃい」

 

 玄治が部屋から出たのを見届けた後、焔は残っていた朝食を食べ終え、食器を片付けてからある部屋へと向かう。

 

「行って来ます母さん」

 

 仏壇に手を合わせ、焔は写真を見る。そこには焔の母である神山鈴音(りんね)が微笑んでいる姿が写っていた。

 

──────────────

 

 昨日の麻薬組織との戦闘を終え、ゼロはある一軒家で寝ていた。ゼロが住んでいる場所は、数年前に過激派と政府との戦いで壊滅的な被害を受け、誰も住まなくなったゴーストタウン。

 

 未だに反政府派が拠点としていると言われているが、既にゼロが全滅させたので誰もゴーストタウンには居ない。しかし、過激派が居るという噂が絶えない今、一般人は疎か裏社会の人間や政府の人間さえも簡単に近づく事がない為、ゼロの絶好の隠れ家となっている。

 

「……ふぁあああ。眠い」

 

 割れた窓から差し込む光に目を細め、ゼロは欠伸をしながら起き上がる。散歩でもしようかと考えながら、一軒家から出たゼロは周りを見てニヤリと笑う。

 

「おいおい、人がいい朝を迎えてんのによォ……多勢でゾロゾロと来やがって。死にてェのかァ?」

 

 ゼロの目の前には、黒いスーツを着た屈強な男達が立っていた。手に持つのはアサルトライフル。先頭の男はメリケンサックを装備している。

 

「死ぬはお前だクソガキ!」

 

 男達の一人がゼロへ殴りにかかるが、ゼロはそれを見ているだけで、何もしない。

 

「メリケンサックだァ? 本当に殺す気あんのかァ?」

 

 男の拳がゼロに届く前に、男の拳は腕ごと地面へと一瞬で落ちた。

 

「ぐあああああ!」

「おいおい、そんな声上げるな……正当防衛だぜ、これはよォ」

 

 メリメリと生々しい音を鳴らしながら地面へと沈む男の腕を見て、恐怖を感じて他の男達がたじろぐ。しかし、直ぐに手に持っていたアサルトライフルをゼロに向けた。

 

「俺の居場所を特定したのは褒めてやるよ。だけどなァ……狙う相手を間違えてんだよなァ?」

 

 アサルトライフルがナメクジのようにウネウネと動き出し、男達の両手に纏わり付く。叫ぶ男達を見てケタケタと笑いながら、ゼロは足元にいる男に顔を近づけた。

 

「おいクソ野郎。テメェらの親玉は何処に居やがる」

「教えるわけ、ぐああああ!」

「テメェには教えるしか選択肢がねぇんだよ。それぐらい察せや、クソが。まァ教えないなら仕方ねェなァ」

 

 男の髪の毛を掴んで上に上げゼロは作り出した鉄のナイフを片目に近付ける。

 

「んじゃ、三秒以内に教えてくれんなら目玉潰さないでやるよォ!」

「あ、ああ……」

「さァーん」

 

 ゆっくりと、ナイフが目玉へ近づく。男は恐怖で目を瞑るが、ナイフは瞼の皮膚に刺さる。

 

「にィーい」

「わ、分かった! 話す! 話すから止めてくれ!」

「それでいいんだよ。んで……何処に居やがるんだァ?」

「桜花学園だ、ボスは幹部を連れて桜花学園に奇襲をかけたんだ! 俺達は邪魔なお前を殺すために来たんだよ!」

「桜花学園? 政府が作った能力者育成機関に奇襲しにいくたァ……お前の親玉はバカなのかァ?」

 

 首を傾げながら、ゼロは顔を上げる。少し考えたような素振りをしてからゼロは笑みを浮かべた。

 

「その下らない装備からしてテメェらの親玉は俺を殺そうと思ってねェだろなァ。せいぜい足止め出来れば良いなぐらいしか思ってねェぜェ? 本当に殺したかったら幹部を何人かよこすだろうよォ」

 

 ナイフを鎖に変化させ、足元の男をグルグル巻きにして拘束した後、ゼロは歩き出す。目指すは桜花学園。理由は、朝から気分を悪くさせた者達に制裁するため。

 

「さァて、悪を始めるとするかァ!」

 

 これは、一人の少年がダークヒーローを目指して奮闘する物語……になったらいいな。




〈人物紹介〉

ゼロ
今作の主人公。中性的な顔立ちで黒い髪と黒い瞳をしているが基本的にフードを深く被っているため周りからは見えない。ダークヒーローを目指して毎日奮闘中。裏社会に潜んで裏社会の組織を潰しまくっている。

 ダークヒーローっぽくするために口調を変えてるが、内心は普通の少年のまま。裏社会の組織や過激派を潰す裏社会の人間とかダークヒーローっぽくね? という考えで行動しているが、バリバリ危険人物と思われてる。

 ダークヒーローって人殺ししない方が良いと思っている為、人殺しとかは基本的にせず、相手は拘束するようにしている。気分よく朝起きれたから散歩でも行こうとしたら絡まれ、気分が最悪萎えポヨになったので落とし前をつけさせるために絡んできた親玉を倒しにいくことにした。因みに欠伸の「ふぁあああ」は彼の素。

神山焔
転生先の世界の主人公。桜花学園に通う17歳で赤い髪と茶色の瞳をもつ好青年。困っている人をほっとけない善人でこれは彼の亡き母の教えである「困っている人を助けられる優しい人になること」の影響を受けている。警察官の父親を慕っている。

 炎を身体から出現させ、それを纏ったり自由に操って武器にするなどの能力を持つ。学園に通う能力者達の中では最強格の強さで主人公補正をちゃんと受けている。幼なじみがいたりクラスメイトに好意を寄せられていたりとラブコメも順調。ラッキースケベとか少しあるかもしれない。

神山玄治
神山焔の父親。赤い髪と少し黄色がかった瞳をしている。警察官で焔と同じような能力を持つが、焔と違う点としては炎を纏うことしか出来ず、基本的な攻撃方法は武術を使用した肉弾戦。また射撃の技術もかなりのもの。

神山鈴音
神山焔の母。黒い髪に茶色の瞳をしている。故人で、生前は心優しき人物であった。焔が9歳の時に病に倒れ、その二年後に息を引き取った。能力者ではなくただの一般人。


〈能力紹介〉

鉄の支配者
能力の名付け親はゼロ。鉄を空間から作り出し、それを自由自在に操る。鉄で作られた物も操ることができ、操る際には形状を変化させることが可能。また、作り出した鉄は一定時間経つと消える。

使用方法としては鉄を作り武器にしたり、相手の持つ鉄製の武器を液状にして相手に纏わりつけてから硬化させて拘束したり、鉄の壁を作って相手の逃げ道を塞ぐなど。鉄は質量に応じてしか変化出来ないため家の鍵から手錠に変えるなどは不可能。

重力操作
能力の名付け親はゼロ。ゼロを中心に半径1mまでの範囲内の重力を自由に変えることが出来る。変えた重力の影響を受けるか受けないかは任意で決めることができ、重力の向きを変えて壁を横歩きしたり自身の周りに何十倍もの重力をかけることも出来る。

また、銃弾のように高速で接近して来るものに対しては自動的に逆方向からの強力な重力が襲い、強制的にゼロに届く前に止めるようになっている。

尚、殴りかかるなどのゼロ自身が見てから対応できる攻撃は自身で避けるか、重力を操作して無理やり地面に埋めるなどの対処をしなければならない為、完全に守られている訳ではない。

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