転生したからダークヒーローをロールプレイする   作:カステラ

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桜花学園襲撃事件

 桜花学園。そこは政府が作り上げた能力者達の育成機関にして、数多くある学校の中でも偏差値の高い学校でもある。朝、体育館内で全校集会が開かれ、学園長の話を聞きながら生徒達が眠たい目を擦る。緩やかな時間が流れる中、それは突如襲来した。

 

「な、なんだ!?」

 

 体育館内に響く轟音。壊れたドアや割れた窓から、武装した集団や能力者達が続々と攻め込む。教師達が生徒達を保護するために一斉に動く。

 

「皆! 落ち着いて!」

 

 そんな荒波の中心で焔は能力を使用し、襲ってくる武装集団を倒していた。当然、生徒だけではなく教師も勿論能力者である為戦ってはいる。

 

 しかし、実践など片手で数えれるぐらいしか行っておらず、闇雲に逃げ回る下級生が枷となり、教師達や上級生達は思うように動けずにいた。

 

「能力者達を育て、クソ政府の戦力にするためにこの学園があるが、それさえ叩き潰しちまえば今後お前等は相当弱体化するよなぁ?」

 

 単身で体育館裏から突撃してきた男に組み伏せられた学園長は、苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

「き……み達は……何者、だ」

「さて、何者でしょうかねぇ!」

「ぐっ、あああああ!?」

 

 学園長が押し潰され、身体にある複数の骨が一斉に折れる音が鳴る。

 

「ギャハハハハハ! 学園長は馬鹿みたいに強いって噂を聞いてたが、とんだホラ話だったな! 日本一のサイコキネシスだとか言われてるが、痛みさえ与え続けりゃあ何も出来ねぇジジイに過ぎねぇ!」

 

 学園長を圧死させようと男がゆっくりと力を更に込めていく。学園長は苦しみながらも能力を使用し、無理やり男を引き剥がした。

 

「ぬおっ!?」

「はぁ、はぁ、はぁ」

「クソッ、あんだけやったのにまだ動けんのか……。まぁいい、直ぐにあの世に送ってやるよ!」

 

 男が学園長を殺しにかかったその瞬間、体育館の鉄筋と屋根がメリメリと曲がっていき、正確に襲撃者達を捕らえる。

 

「ぐっ、なんだこれは!? テメェの仕業かぁ!」

「わ、私ではない。しかしこの能力は……まさか……彼、か」

 

 突然の出来事で混乱が収まっていく中、正面入り口からフードを深く被った少年が、体育館にゆっくりと歩いて入ってくる。

 

「朝っぱらからギャーギャーうるせぇんだよクソ共が。天下の桜花学園様は全校集会でパーティーでもやるんですかァ?」

「ゼロ……なのか……」

「あァ、んだテメェ」

 

 ポツリと呟いた焔の言葉に、ゼロは反応し焔を見る。動揺を隠せない焔を見てつまらないと感じたのか、ゼロは直ぐに前を向いた。

 

「さァて、俺の気分を最悪にしたクソ共の親玉は誰だァ? ぶっ潰してやるから出てこいよォ」

 

 ゼロの質問に誰も返事をしない。ゼロはため息をつき、自身が拘束した内の一人に視線を向けた。

 

「テメェの親玉はどこに居やがる。俺が優しく聞いてるうちに答えんのが吉だがァ……答えそうにねェなァ」

 

 睨みつけてくる女性に、ゼロは笑みを浮かべる。ゼロはナイフを作り出し、女性の頬に近づけた。

 

「女の肌っつーのは、命ぐらい大切なんだろォ? 答えない限り、テメェの肌を切ってやるよ。後が残るように、時間をかけて同じ所を何度も何度もなァ」

 

 ツーっと赤い液体が女性の頬を伝う。女性は顔を歪めるが、依然とゼロを睨んだままだった。ゼロがもう一度同じ場所を切ろうとした時、後ろから声が聞こえる。

 

「時間稼ぎご苦労」

「あァ?」

 

 ゼロが振り向くと、後ろで拘束されていた襲撃者の一人が無理やり拘束を解き、ゼロに殴りかかっていた。奇襲に反応できず、避ける事もままならない。襲撃者の一人は決まったと確信したことだろう。

 

「奇襲たァ……敗者のやることだぜェ?」

 

 自身に届かないナイフを見ながら、ゼロはそう口にする。その立てた親指を下に向けた。

 

「敗者は惨めに這いつくばって、勝者を見上げてろ」

 

 その瞬間、襲撃者の一人は這いつくばった。うなり声を出しながら懸命に起きあがろうともがくが、一向に起き上がる様子はなく、寧ろ床にめり込んでいく。

 

「ハハハハ! これは傑作だなおい! 作品名は『這いつくばる敗者』でいいかなァ!」

 

 狂った笑い声を上げるゼロを見て、その場の全員が恐怖する。その中でゼロの笑い声に答えるかの如く、どこから現れたか分からない鉄の塊がうねうねと動き、襲撃者を飲み込んでいく。

 

「なんだこれ、クソがぁ!」

「安心しろよ敗者ァ、死なないようにしてやるからよォ! まァ、さっきよりも抜け出しにくいと思うがなァ」

 

 襲撃者の顔だけ残し、鉄の塊は身体を飲み込み終わった後、鉄は先程まで動いていたのが嘘みたいに硬化した。しかも、何故か芋虫の形で。

 

「ったく、余計な邪魔が入っちまったなァ……。おい女、続けるかァ?」

 

 ナイフを舐めながら、ゼロは女性に振り向く。女性は仲間が鉄の芋虫になっていく様子が目に入ったからか、絶望に染まった顔をしていた。

 

「……親玉はどこだ? それともまだ答えないのかァ?」

「それ以上は止めろ! 親玉は俺だ!」

 

 声のした方向にゼロは視線を向け、無言のまま歩き出す。ゼロの後には、またどこから現れたか分からない鉄の塊が着いていく。移動速度を徐々に上げた鉄の塊は、ゆっくりとゼロに纏わりつく。

 

「今からテメェに悪ってのは何かを教えてやるよ。拘束解いてやるから頑張って掛かって来い、全力で殺しに来るテメェを叩き潰してやるからさァ!」

 

 男の拘束が解かれ、ゼロは両手を広げる。隙をワザと晒すかのように挑発した。

 

「悪に精々足掻けよクソ野郎! 少しだけ期待してやるからよォ!」

「ふざけるなぁ!」

 

 男はゼロに殴りかかる。避ける動作も見せないゼロは、邪悪に嗤い中指を立てる。

 

「敗者と同じ真似してどうすんだァ?」

「同じ? 違うなぁ!」

「っ!?」

 

 ボスがゼロの手前で拳を止める。それとほぼ同時に、ゼロが後ろに向かって吹っ飛ぶ。

 

「がはっ!」

 

 ゼロが吹き飛びながら血を吐き出す。そのまま吹き飛べば壁にぶつかるが、纏わり付いていた鉄の塊が液状となり、ゼロを庇うことで壁にぶつかる事はなかった。

 

「……ぺっ! 随分と良いパンチだなァ?」

 

 フードが取れ、ゼロはその素顔を露わにする。口からは血を流し、決して少ないダメージではない筈である。それでも、ゼロは嗤うのをやめない。

 

「ちっ、簡単には死なねぇか。かなり強く打ったんだが」

「あァ? 手加減してんじゃねェよォ」

 

 液状だった鉄の塊はまたゼロに纏わりつく。ゼロの両手両足に移動した鉄の塊は形を変え、両手の鉄は鉤爪のように、両足は足の先が尖った針のようになっている。

 

「テメェは衝撃波でも生み出す能力者ってところかァ? つーか、何で最近俺に挑んでくるアホ共は殴る蹴るしかしねェんだろうなァ?」

「正解だ。お前に対する攻撃手段は殴る蹴る以外は効果が無いことが分かっている。ならばお前を殺すにはそれしかあるまい」

「なる程なァ……」

 

 移動してきたボスに近づいたゼロは嘲笑う様に舌を出した。

 

「その方法はもう俺には通用しねェなァ」

「そうか。なら、もう一度吹き飛べ」

 

 ボスは寸止めの殴りをするが、ゼロは拳から発生する衝撃波を避ける。それを予想し、回し蹴りを仕掛けてきたのには反応出来なかったのか、発生した衝撃波をゼロはまともに喰らう。

 

「言っただろォ……通用しねェって」

 

 その場から吹き飛ばされずに立つゼロは、ボスに顔を近付ける。

 

「はったりかと思ったかァ? 違うんだよなァ」

 

 ゼロの蹴りがボスの足に刺さる。ボスは苦しむような顔をしながら離れようとするが、ゼロはそれを許さず、左手の鉤爪を肩に刺す。

 

「クッ……」

「テメェの攻撃の威力は大体分かった。なら、逆方向から同じ力をかけて相殺してから、余波を耐える為に鉄で俺を固定すれば吹き飛ぶこともねェ」

 

 刺した鉤爪を押し込み、ゼロはボスを蹴り倒す。

 

「増強系、変質系、造形系、色々能力があるが……厄介なのは結局増強系だよなァ」

 

 ゼロは鉤爪を振り、付着した血を飛ばしながら話を続ける。

 

「だが増強系のクソ共は、力があっても頭が足りなくて使い方を理解してねェ。俺に幹部もよこさず、此処に全戦力投入して惨敗してる時点で、テメェも頭が回ってねェんだよチンピラ」

 

 ボスの身体がゆっくりと地面に埋まっていく。ゼロはニィと嗤いながら馬乗りになる。

 

「いいかァ、チンピラ。悪ってェのは暴力じゃあねェ。圧倒的な恐怖と支配から出来てんだ。その場に居るだけで周りから恐れられ、全てを支配するのが悪だ。此処で力を全力で振るって殺しにかかってる時点で、テメェは悪になりきれねェチンピラなんだよォ」

 

 ボスから離れたゼロは、纏っていた鉄を塊に変えてボスに付着させる。鉄の塊はボスの手足を拘束した。

 

「だが、俺はそうはならねェ……。俺がなんのは本当の悪だ」

 

 フードを深く被り直し、ゼロはボスを睨む。

 

「くだらない悪を潰す悪。俺の居るところには誰も殺させねェし、誰も殺さねェ。それが俺の目指すダークヒーロー()だ。覚えとけチンピラ」

 

 ふらつきながら、ゼロは出口を目指して歩く。足取りが重く、速度は遅い。しかし誰もゼロに近づくことは無く、去っていくゼロをただただ見ているだけであった。

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