転生したからダークヒーローをロールプレイする 作:カステラ
お知らせとして
・ゼロは中性的な顔立ち
・ゼロの使う能力の一つである鉄の支配者で作り出した鉄は一定時間で消える
の二つを一話の後書きに書いてあるゼロと能力の説明に追加しました。
恥ずかしながら書き忘れていました。申し訳ありませんでした。
「あァ?」
少女の声がした方向は後ろ。未だに身体のダメージが大きかったとしても周りを見落とすようなヘマをする筈が無いと思っていたゼロは驚いていた。
「ただいまレーナ。また隠れてたの?」
「……コイツ、さっきまで居なかったよなァ? 瞬間移動、若しくは透明化の能力かァ?」
「惜しいわ。この子の能力は光を操るのよ。光学迷彩のように姿を消せるし、光のレーザーも撃てたりするわ」
「レーザーねェ……」
ゼロは無表情でいるレーナを見る。純白の髪に紅い瞳、白いワンピースが身体と同化しているんじゃないかと思わせる白い肌。所謂、アルビノなのだろう。
「アルビノかァ。珍しいじゃねェかァ」
「ええ、この子は海外で生まれたの。名前はレーナ・アポクリファ。貴方が潰したことがある宗教団体に神として崇められてたのよ。この子を狙うハンターからは魔女と言われているわ」
「
アルビノの子供には強力な力が宿っているという迷信は未だにある。その者の骨や血肉は喰った者に富をもたらし、幸福にさせるなどは有名な話だ。
その特徴故にアルビノの子供は神聖な存在とも言われる。更に光を操る力を持っていたら一部の狂信者達は彼女を神として崇められるのも無理はない。
「にしても魔女、なァ。こいつの住んでたところは随分と古い考えの奴らしか居ねェんだなァ?」
「あの村は辺境にあったからね。ずっと魔女の存在を信じてたのよ。時代の流れに流がれず、世間から流された者達が住む魔境だったわ」
魔境だったという言葉にゼロはピクリと反応する。無表情でゼロを見続けるレーナは首を傾げた。
「だった、だァ? そこはなくなったっていうのかァ?」
「この子を狙ったハンターに焼き払われたわ。それを知った私と私の同業が急いで保護したのよ。駆けつけた時は地下室に逃げていて火傷とかの怪我はあったけど、それでも命に問題はなかったわ」
「タケルとヒナタは、恩人。とても、大切な人」
レーナの言うタケルとはヒナタの話にあった同業者である。ゼロはニィと笑いヒナタを見る。
「随分と慕われてんじゃねェかァ」
「そう言われると照れちゃうわね。でも、そうね、この子が私を大切と思ってくれるのはとても嬉しいわ」
ヒナタに頭を撫でられながら無言で見続けるレーナをゼロは無視して歩き出す。
「あなたは」
「あァ?」
「あなたは、ヒナタの、お友達?」
「……」
レーナの問いに振り向いたゼロは、何も答えず再度歩き出す。レーナはムッとした顔でゼロの服の裾を右手で掴み、ゼロは移動を拒むレーナを睨んだ。
「……なんだァ?」
ゼロが潰されたいか、と言おうとした直後にレーナは左手をゼロに向ける。
「答えて」
「答える義理があるかァ?」
睨むレーナにゼロはニィと悪い笑顔を浮かべる。それが気に入らないのか、レーナは頬を膨らました。
「答えないと、撃つ」
「撃つ、ねェ……」
ヒナタが答えないゼロにため息をつきながらレーナの肩にそっと手を置き、しゃがみ込む。
「私とゼロの関係はお友達よ。とても仲良しなの」
「おい、ヒナタ。なに言って──」
「ちょっと貴方は黙ってて」
「──っ! ……チッ」
ヒナタの視線、その先にはゼロに向けていたレーナの左手から光の球が生成されていた。ヒナタ曰わくレーナはレーザーを撃てる。
先程のレーナが言っていた“撃つ”はこの光の球は関係しているのは火を見るより明らかだった。それが撃たれる前にヒナタがレーナを落ち着かせる事にしたのだろとゼロは考えた。
「本当?」
「ええ、本当よ。ね、ゼロ?」
「……あァ。ヒナタの言う通りだァ」
これで良いだろ、と言わんばかりに睨んでくるゼロにヒナタは苦笑いを返す。流石に此処を破壊するような事になればただ事ではない。ゼロとしてもヒナタとしても負うリスクは計り知れない。
「で、だァ……俺は何をすればいいんだァ?」
頭を乱雑に掻きながらゼロはため息をつく。ヒナタには立ち上がりゼロを見た。
「貴方には暴れてる囚人達の相手をしてもらうわ。後は──」
ヒナタはレーナの両肩に手を置く。レーナは首を傾げながらヒナタを見上げた。
「……?」
「この子の護衛役をやってもらうわ」
「…………あァ?」
低く重い声。ゼロによって一瞬で張り詰めた空気となり、レーナはヒナタの後ろに隠れて少しだけ震える。
「落ち着いてゼロ。ちゃんと理由があるのよ」
「んだァ? このガキのおもりをする理由があんのかァ?」
「ええ、この子はあの閉鎖的な村とこの研究所しか知らないわ。こんな狭い世界だけじゃなくてもっと広い世界を見て欲しいのよ」
「そのために俺をねェ。テメェは理解してんのかヒナタ……俺は顔がバレしてんだぜェ?」
ゼロは髪をかきあげ、ニィと笑みを浮かべながら、ヒナタを睨めつけた。
「それに関しては大丈夫よ。ちゃんと対策してるわ」
ヒナタは睨めつけてくるゼロに怪しげな笑みを返す。それに嫌な予感を抱きつつもゼロはその対策に乗ることにしたのだった。
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「~♪~♪~」
「……」
「……」
研究所の一室。鼻歌を歌うヒナタに無言のゼロとレーナ。ゼロは目の前にある鏡に映る自分を見てキレかかっていた。
「なァ……ヒナタ」
「なに、ゼロ」
「テメェの言う対策ってェのはよォ……本当にこれなのかァ? 単にテメェの趣味ってんならァ……どうなるか分かってんだろうなァ?」
徐々に額に青筋を浮かべながらワナワナと震えていた。
「落ち着いてゼロ。上手くメイク出来ないわ」
「上手くメイク出来ないだァ? 女装と顔バレがどう関係あるんだァ?」
黒い艶のあるロングヘアーにぱっちりとした瞳、そもそも中性的な顔立ちのゼロには女装は相性が良かった。
「顔バレしてても女装と声を変えれば大丈夫よ。後は、変成器をバレない所にセットするだけね」
ゼロの正面に回り込み、変成器を取り付けるヒナタを見てゼロはため息をついたのだった。