転生したからダークヒーローをロールプレイする   作:カステラ

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皆様お久しぶりです。カステラです。
気づいたらこんなに時間が経ってました。
大変申し訳ありません。

ずっと時間がなかなかとれない状況がこれからも続いていくと思いますが、お暇な時に呼んでいただければ幸いです。


ゼロと青年

 鏡に写る自分を見て眉を顰めるゼロの肩をヒナタは優しく掴む。

 

「こんなに似合ってるんだからそんな不満そうな顔しなくてもいいと思うのだけれど」

「……俺がこんな格好を気に入る訳ねェだろうがァ」

 

 重くため息をつきながらゼロはレーナに視線を向ける。無表情のまま首を横に傾げるだけで、それ以上の反応を示さないレーナから、未だに肩を掴んでいるヒナタにゼロは視線を変えた。

 

「で、だァ。 俺の部屋はどこだァ?」

「そうね。結構負傷してるようだし横になってた方が良いかもしれないわ」

「……おい、待てェ。何時俺が負傷してるなんてお前に言ったんだァ? 俺は戦ったとは言っても負傷したなんて言ってねェ」

「言わなくても分かるわよ。普段と違う歩き方だし、女装する際だって私が触ったら少し眉間に皺が寄ったもの」

「……良く見てんなァ」

 

 はんっと鼻で笑いながらゼロは椅子から立ち上がる。

 

「当然よ。貴方が生まれた時から──」

「──ヒナタァ……止めろォ。それを言ったらお前の口の中に鉄ねじ込むぜェ」

「そう、ね。レーナには少し刺激が強すぎるもの」

「刺激あるねェ……まァ、だろうなァ。さっさと部屋に案内しろォ」

「ええ、分かったわ」

 

 ヒナタが部屋のドアに近づこうとした瞬間、ドアがバァンと勢いよく開かれ警官の格好をした一人の青年が転びながら入ってきた。

 

「た、大変っす! ヒナタの姉御!」

「落ち着いてジャック。そうね、まずは深呼吸すると良いわ」

 

 ジャックと呼ばれた青年はヒナタの指示通り一度深呼吸をしてから持っていた端末をヒナタに見せる。

 

「旦那が、ゼロの旦那がニュースにでてるんすよ! それに明日から捜索を開始するって!」

「あァ……?」

「あら。どうしてニュースに?」

「なんだか桜花学園に乗り込んだバカ共を締めに行ったらしいんすけど、学園の生徒に動画を取られてたんすよ!」

「それでネットに動画が流れたのね」

 

 慌てていたジャックは、女装したゼロを見て目を丸くした。

 

「えっと……姉御の新しい仲間っすか? すげぇ可愛いっすね!」

「ジャック……全く貴方は。その子は口説かない方が良いわよ」

「なんでっすか~。こんなに可愛いっ!?」

 

 ジャックがゼロに近づき手を取ろうとした瞬間、ジャックは情けなくグエッといいながら地面に押し付けられ動けなくなった。

 

「おい、ジャックゥ……誰が可愛いってェ?」

「この今まで何度も味わった不自然な重み! まさか旦那っすか!?」 

「質問に対して質問で答えるバカがどこに居やがる。良いから答えろォ……誰が可愛いんだァ、あァ?」

「や、やだなぁ旦那。ジョークっすよジョーク。可愛いのはレーナちゃんですって」

「ジャック……ありがとう」

 

 頬を赤らめてお礼を言うレーナを見てジャックは上げていた顔を下げる。

 

「うぐっ!? 尊すぎて死にそうっす!」

「じゃあ死ぬかァ?」

「それも冗談っすぅ!」

 

 ニィ、と笑うゼロとギャー、と叫ぶジャックを見てヒナタはため息をつく。

 

「貴方達、そんなことしてる場合じゃないでしょう?」

「そ、そうっす! 旦那の顔が日本中に知れ渡ったんすよ!?」

「そもそも桜花学園の生徒共に顔バレしてた時点で日本に知れ渡るなんざ時間の問題だったんだからなァ。まァ、ほとぼりが冷めるまで外に出ねェ方が良いだろうなァ」

 

 ゼロがジャックから取り上げた端末から自分に関するニュースを見ながら答える。重力から解放されたジャックは首を傾げた。

 

「えっ~と、それと旦那の女装には関係あるんすか?」

「大有りだわクソがァ」

「私が此処に匿う条件として囚人達を黙らせるのとレーナが外出した時の護衛をお願いしたのよ。流石に何の対策もしないで外に出たら直ぐに見つかるから女装で誤魔化せないかと思ってね」

 

 ヒナタからの説明を受けたジャックはゼロの周りをぐるぐると回りながら隅々まで見ていく。

 

「はへ~。確かに別人のように見えるっすけど大胆なこと考えましたね姉御」

「でも、似合ってるでしょう?」

「確かにめっちゃ似合っ!?」

 

 ジャックは再度地面に押し付けられ、ギャーと情けない悲鳴を上げる。

 

「姉御っ! ()めたんすか!?」

「うふふ、どうかしら」

「冤罪っすよ! 冤罪!」

「そういやジャックゥ……お前の方では俺はどう捜索されるんだァ?」

「……それをお伝えする前に解放してもらえるのってありすか?」

「あァ、いいぜェ」

 

 二度も重力によって押し付けられ、多少ぐったりしながらもジャックは近くにあるパソコンとプロジェクターをせっせと準備し、㊙と書かれたUSBをパソコンに挿して地図を表示させた。

 

「この地図の赤い丸で囲まれた部分が明日の捜索範囲っす。勿論桜花学園やその他近辺も捜索はするっすけど一番人員が割かれるのはここっすね。因みに自分もそこに割り振られてるっす」

「随分とピンポイントだなァ?」

 

 地図上に赤い丸で囲まれているのはゼロが元々住んでいたゴーストタウンを中心とした場所であった。早めに移動して正解だったとゼロは安堵の表情を浮かべる。

 

「玄治さ……上司が取り調べで旦那がボコした組織から聞いた情報を元にこの範囲にしたらしいっす。自分は下っ端なんで会議は聞けなかったすけど」

「なる程なァ。お前を警察に送り込んどいて良かったぜェ。敵の情報が分かれば動きやすいことこの上ないからなァ」

 

 ジャックが飯泉(いいずみ)翔太(しょうた)として警察官となったのは実に半年程前になる。

 

そもそも、ジャックが警察という組織に潜入しているのは、世間に公表されず秘密裏に捜索が行われていたゼロが発見されないように捜索域を事前にゼロに伝え、見つからないようにする為である。

 

 警察に入るのはかなりの苦労が強いられた筈だがゼロの為にと奮闘したジャックには賞賛の声をかけるのが妥当というものであろう。

 

 そんな苦労をゼロは全て水の泡にしかけた訳なのだからジャックもかなり焦るのは当然のことなのだ。

 

「自分は下っ端なんで今回のデータは取ってくるのがかなり大変だったんすよ。上司にだって鋭い目で見られたっす」

「……取り合えずば捜索範囲に関するデータは暫く持ってこなくて良いぜェ。お前が怪しまれんのはマズいからなァ」

「そ、そうすけど、旦那はどうするんすか?」

「捜索範囲は口頭で伝えてくれれば構わねェ。最悪大まかな範囲を地図に囲むだけでもなァ」

 

 そうかもしんないすけど、とジャックは不安な表情を浮かべながらゼロを見る。ゼロはそれにニィと笑み浮かべた。

 

「こんな格好をしながら外に出んのもそこまで多くねェ筈だァ。警察共とぶつかるにしても万全の状態じゃねェとどうなるかわからねェし、負傷してる今は安静にしてんのが一番なんだわァ」

「そういえば見事に2回くらってたすね。大丈夫なんすか?」

「大丈夫なわけねェだろうがァ」

 

 近くの椅子にストンと座ったゼロは体の力を抜く。それを見たレーナが化粧台の上にあったタオルをゼロに掛ける様子にヒナタはふふ、と微笑みながらジャックに視線を移した。

 

「と、言うわけだからゼロは暫く此処に居るわ。外出も控えるし、負傷が治るまでは囚人達の相手もさせない。此処がバレない限りは安全よ」

「……姉御もそう言うなら分かったっす」

 

 渋々といった表情でジャックは諦める。無言で見つめてくるレーナに無言を返しながらゼロはヒナタを見た。

 

「つーかよォヒナタ。暴れてる囚人とか言ってたがァ……お前は何の研究してんだァ?」

「今研究してるのは能力を消す(・・)薬を研究してるわ」

「あァ……?」

 

 ──空気が変わった。

 

「何言ってるんすか姉御! 能力を消すなんてこと」

「出来るわよ。いえ、この言い方は語弊があるわね。出来たというのが正しいかしら。そうでしょゼロ」

「ヒナタ、テメェ……何言ってんのか分かってんだろうなァ?」

「勿論よ」

 

 ゼロの目が何時もの笑みを浮かべたものではなくなった。まるで怨敵を見るかのような殺意を孕んだ目。それを見てジャックは慌て始める。

 

「だ、旦那、落ち着き」

「黙ってろジャック。コレは見過ごせねェなァ。おい、ヒナタ…ソレ作って何するつもりだァ?」

「私は必ずレーナの能力を消すわ。髪も瞳も普通の人と変わらないものにして幸せに生きてもらうのよ」

「……それでェ?」

「それ以外何もないわ。ただそれだけが私の目標よ」

「能力を消すのも創んのもあっちゃならねェ。それは世界を壊すことってェのはお前も分かってる筈だろうがァ」

「ええ、分かってるわ。でも今更でしょう。だって──」

 

 ヒナタは笑みを浮かべる。ヒナタの視線の先に居るのはレーナ。ヒナタに見つめられて首を傾げるレーナの瞳はとても美しく輝いている。

 

 

 

 

 

 

 

 

「──この子と違ってこの世界は50年以上も前から壊れてるんだから」

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