異なった歴史を辿った地球のドイツを召喚してしまった結果   作:やがみ0821

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太陽神「間違えちゃった(てへぺろ)」
エルフの神「間違いで済む範囲を超えているだろう!?」





とりあえず衝動的になろうの方で完結させた貴族になったがryの貴族ドイツぶちこんだのを書きました。
続くかどうかは未定。


未知との遭遇

 1946年9月1日 ドイツ 13時22分

 

 欧州戦争の爪痕も薄れ、人々は平和を謳歌していた。

 それは軍人も例外ではない。

 

 国防大臣として、陸海空軍を指揮下に置くヴェルナー・フォン・ルントシュテットもまた平和を楽しんでいた。

 外交関係は極めて安定、軍事的にも各国との交流を保ち、どこも問題がない。

 

 かつての陸海空軍の各省は欧州戦争後に統合され、国防省としてベルリンに存在していた。

 建物自体は広いが、それでも1つの建物で済むことは各軍の連携強化に役立っている。

 

 最近、ヴェルナーが頭を悩ませる問題といえば、三軍に対する予算の分配くらいなものだ。

 三軍を指揮下に置いているとなっているが、その実、やっていることは政府と軍、そして各軍との間の調整役だ。

 そのうち、予算分配は平時における国防大臣の最大の仕事と言っても過言ではなく、非常にデリケートな問題だ。

 

 陸軍は海軍の提案に反対である、海軍は陸軍の提案に反対である、空軍はどちらの提案にも反対である、などという文言は腐る程に聞いてきた。

 

 研究開発部分に関しては別枠で予算が組まれ、そちらでは三軍はこれまで通りに仲良く政府や民間と一致団結しているのだが、兵器の調達となると話は全く変わってくる。

 平時の少ない予算のやり繰りで大変なのはどこも一緒だ。

 

「まあ、戦争になられても困るんだがな」

 

 彼しか知らない、別の世界――前世の世界というものがある。

 すっかり歴史が変わって、全くアテにならないが、唯一分かることがある。

 

 同時代と比較して、世界全体の科学技術は飛躍的に発展していることだ。

 16年前に勃発した欧州戦争――フランスと二重帝国との戦いでも、戦争後期にはジェット機とミサイルをはじめとした新兵器をドイツは実戦投入している。

 それから戦後は他国がドイツに追いつくべく、対するドイツは優位を保持しようとし、技術開発競争がより熾烈になったのが原因だ。

 特に電子技術やロケット技術などの遅れは国家的危機とまで他の列強は認識した。

 

 その結果、今では人工衛星の打ち上げ技術を当然のように列強諸国は保有している。

 そのため、ドイツは優位性を確保する為、全地球測位システムの開発が軍官民の三位一体により急ピッチで進んでいる。

 

 

「神の杖も将来的には実現できるかもな。それをする意味があるかは分からないが……」

 

 2000年代になれば技術の発展はいよいよとんでもないことになりそうだが、あいにくとヴェルナーにはそれを見るだけの時間は残されていない。

 1885年生まれの彼はあと40年――100歳まで生きたとしても、2000年には届かない。

 

「ネットは見れるかもしれないが、動画投稿や配信までできるかというと微妙なところだ」

 

 頑張ってあと30年生きれば何とか見れるかな、と彼が思ったそのときだった。

 一瞬、窓の外が真っ白く染まった。

 

 彼は瞬時に床に伏せて、爆風や衝撃に備えるが、いつまで経ってもやってこなかった。

 

 

 5分程して、彼がゆっくりと立ち上がった時だった。

 

「閣下! 大変です!」

 

 ノックもせずに飛び込んできた従兵にヴェルナーは目を丸くする。

 

「まずは落ち着け。ロシア軍が雪崩込んでこない限りは大丈夫だ」

 

 ヴェルナーの言ったことはドイツ軍でもっとも懸念されている事柄だ。

 もしもロシア軍と真正面から戦ったならば、最終的には負ける可能性が高い。

 現在の外交関係からそんなことはまずありえないが、常に最悪を想定するのが軍隊というもの。

 

 もしもロシア軍が攻撃をしてきた場合、ただちに防衛準備態勢――Verteidigungs Bereit Schaft、略称VBS。史実アメリカでいうところのデフコンそのもの――をレベル1へと三軍の参謀総長及び総司令官、そして帝国政府と協議し、引き上げる必要がある。

 

 VBSレベル1が指示されれば、各軍の即応部隊が防衛及び反撃に出る。

 その中には車両移動式やミサイルサイロに格納されたICBM、潜水艦のSLBMなども含まれる。

 

 核兵器は実戦配備されていないので、通常弾頭であるが、その弾頭には様々なタイプがある。

 高性能爆薬を搭載したタイプや燃料気化爆弾を応用したタイプであったり、貫通タイプであったり、クラスタータイプであったり。

 とはいえ、単純な破壊力という観点から見ると、威力不足は否めない為、電子励起爆薬の実用化に向けて、全力で取り組んでいる段階だ。 

 

 なお、核兵器が配備されていないというのは開発されていない、もしくは開発できないというのとイコールでは結ばれない。

 

 ヴェルナーは大丈夫だ、問題ないと自分に言い聞かせ、従兵の言葉を待つ。

 従兵は深呼吸をし、ゆっくりと告げる。

 

「国境警備隊から緊急報告です! フランスとロシアが消えました!」

「……は?」

 

 ヴェルナーは間の抜けた顔を披露した。

 

 

 

 

 

 

 

「つまりは何かね? 現状、我々と地続きであった国々は消え失せて海になり、イギリスなどの欧州国家や日本とも連絡が取れないと?」

 

 ヒトラーの確認にヴェルナーは頷く。

 

「で、今の君の気持ちは?」

 

 ヒトラーの問いにヴェルナーは肩を竦める。

 

「四方八方の国が消えて、我々は島国になったんだ。海外領土とも全て連絡が取れるし、他国へ行っていた民間人は本国の空き地に、航行中であった船舶なども本国もしくは海外領土の周辺海域に出現している。ただ、人工衛星を失ってしまったがな」

 

 ドイツに属するものがしっかりとくっついてきた形だ、とヴェルナーの言葉にヒトラーは軽く頷いてみせる。

 

「だが正直、ホッとしている。ロシアもフランスもイギリスもいない。我々の勝利と言っても過言ではないだろう。本土侵攻の可能性が完全になくなった」

「軍事のみで見れば確かにそうだ。それ以外も考えると?」

「最悪の一言に尽きる」

 

 ヴェルナーは吐き捨てるように告げた。

 

「我々以外の国が海の底に沈んだなら良い。だが、国境地帯からの映像や証言を見る限りでは、一瞬、光った後に音や衝撃なども一切なく、目の前は海になっていた。そういう可能性は低いだろう」

 

 ヒトラーもまた、つい先程見たばかりのその映像を思い出す。

 13時25分になった瞬間、ぴかっと画面が白く染まり、その後は海しかなかった。

 13時24分59秒までは確かに陸地は存在していたが、僅か1秒で消え失せるなんぞ、とてもではないが信じられない。

 

 とはいえ、現実に起こっているので信じないわけにはいかない。

 

「VBSの段階をレベル2、準戦時態勢に引き上げようと思う。政府で検討して欲しい」

 

 ヴェルナーの言葉にヒトラーは僅かに驚くも、首を縦に振る。

 

「おそらく反対意見は出ないだろう。ただ、もしも意思疎通ができる生物や勢力を発見した場合、交戦は許可しない。自衛を除いて」

「分かっているとも。情報収集は大事だ。だが、まずは空軍の哨戒機によるものになる」

「海軍は出さないのか?」

「こうなる前となった後で、水深が変化していないという保証がない。大気などに関しては現状、我々が呼吸できていることから、特に害がないと思いたいが……」

 

 ヒトラーは即座に決断する。

 

「大気の調査は勿論、全国民の健康診断を緊急に行う必要がある。河川や海の水質調査や測量なども。14時からの緊急閣議でこれらに加え、更に必要な対応策を協議する」

「政治は任せた。軍としては海空軍の増強が急務であるかもしれない。こうなる前であるなら、必要十分だったが、こうなってしまっては特に海軍の艦艇が大きく不足する」

 

 ヴェルナーのさりげない要求であったが、ヒトラーは頷くしかなかった。

 海空軍だけでなく、陸軍も質的にはともかくとして、数的にはこうなる前から少ない艦艇や航空機、陸軍部隊でやりくりして本国からアフリカ、アジア、太平洋にある海外領土やそこに至る海路という広大な範囲をカバーしていたのに、こうなってしまってはもうどうにもならなかった。

 

 未知の脅威がある可能性もあり、軍の増強は待ったなしの状況に強制的に置かれてしまった。

 

 

 

 

 緊急閣議が始まる前にヴェルナーは国防省へと戻り、各軍のトップを招集し、対応を協議したが、すぐに結論を得られた。

 

 空軍による周辺海域の調査及び領空警戒、海軍による周辺海域の測量及び領海警備、陸軍による本国及び海外領土の警備というものだ。

 このうち、空軍による調査をヴェルナーはただちに命じた。

 

 何はともあれ、外の情報は喉から手が出る程に欲しい。

 新たな人工衛星を打ち上げるにしろ、時間は必要だ。

 

 空軍による調査は本国にある空軍基地だけではなく、各海外領土に展開している空軍基地からも同時に行われ、決定から1時間以内に各基地から哨戒機が飛び立っていった。

 

 そして、哨戒機の1機から待望の陸地発見の報告、それから次々に続報が入り、特にウクライナのような小麦畑が広がっているということで、その報告をリアルタイムで聞いたヴェルナーやヒトラーなどの軍と政府の面々は喝采を叫んだ。

 

 食料に関しては海外領土からの輸入で凌げるという予想もあったが、それでも調達ルートは多い方が不測の事態に対応できる。

 また、その陸地がドイツ本国のガイレンキルヒェンから西南へ800km程と、比較的近く、この距離はどの海外領土よりも近い可能性があった為だ。

 海外領土とは通信により連絡は取れるが、どこにあるのかは全く分かっていなかった。

 

 

 そして、最新の報告で一気に静まり返った。

 

 

 ドラゴン(ドラッヘ)に人が乗っている――

 

 

 それはまさに未知との遭遇であった。

 そして、それは相手にも言えていた。

 

 

 

 クワトイネ公国の竜騎士マールパティマは驚愕しつつも、ただちに司令部へ報告を行い、迎撃行動に移った。

 

 

 これがドイツ帝国とクワトイネ公国の最初の接触であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 なお、最初に接触したクワトイネ公国、次に接触したクイラ王国だが、その国名に関してドイツ政府内でクワトイネは鍬と稲、クイラはアナグラムで、イラクではないか、という意見が出た。

 それにより両国は日本とイギリスの異世界における勢力圏ではないか、と勘違いし、ドイツ政府から軍に対して、日英との全面戦争に備えるよう命令が出されたりしたのは余談である。




 

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