ゼロの使い魔の元マスター   作:ユウシャ

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1話 サーヴァント・サモナー

「あんた、誰?」

 

 地面に座る少年を高圧的に見下ろす少女・ルイズは、苛立ち混じりの声音でそう聞いた。

 少年はさ迷わせていた視線を少女に向ける。その視線に動揺も恐怖はない、少しだけ困惑しているだけだった。

 すぐに起き上がり、そして片膝をついてルイズを見上げこう言った。

 

「サーヴァント・サモナー。真名を藤丸 立香。なんだか無理やり喚ばれたような気がしたんだけど……君が僕のマスターかな?」

「は?」

「……あれ? 違うの?」

 

 ルイズの眉間の皺が更に深くなり、少年は苦笑いを浮かべる。

 

「一応状況は把握してるつもり。世界の危機、だよね?」

「な、何を言ってるの? ……あっ! 待って。待ちなさい。先生、これは何かの間違いです!」

 

 ルイズは、近くで様子を伺っていた初老の男・コルベールに詰め寄った。

 それに気圧される事もなくコルベールはゆっくり首を横に振る。

 

「何も間違えていない、ミス・ヴァリエール。彼は間違いなくゲートから現れた、君が召喚した使い魔だよ」

「人間じゃないですか!」

「そうだとも。ただそれだけだ」

 

 冷たく突き放すような言い方に少女はぐっと喉を詰まらせ、不思議な格好の少年・立香を睨み付けた。

 その視線に立香は気付かず、なにか一人言を呟いている。

 

「おかしいなぁ……僕が喚ばれたという事は世界が滅ぶほどの危機の筈なんだけど、それにしては随分とのどかな風景というか……あれ? もしかしてまさか普通の聖杯戦争?」

「なにごちゃごちゃ言ってんのよ! なんであんたみたいな平民が召喚されて来たの!?」

「平民? ……うーん……よくわからないけれど……まぁ、うん。喚ばれたからにはやることはやるつもり」

 

 ルイズは髪をかきむしった。

 召喚した使い魔のせいで迷惑しているというのに、当の本人はやる気満々だ。それがとにかく腹立たしい。

 どうにかしてやろうかと一瞬考えたが、ルイズにはそうできない理由があった。

 ワナワナと震え、やがて諦めたように脱力して立香へ顔を近付けた。

 

「本当に嫌だけど、仕方ないから我慢するわ。本当迷惑、なんであんたみたいなのが私の使い魔なのよ。私はもっと格好いいのが良かったのにこんな平民なんて。でも感謝してよね、貴族にこんな事されるなんて、あり得ない事なんだから」

「え? ちょっと待」

「黙りなさい。暴れんな」

 

 急に近付いた距離を離そうとした立香だったが、ルイズに腕を掴まれてしまった。

 そして……ルイズと立香の唇が重なり合う。

 驚きで目を見開く立香。ルイズは目を閉じている。

 そのキスは長いようで一瞬の事、すぐにルイズは距離を離す。

 

「い、今のは?」

「なによ。勘違いしないで、今のはただの契約の儀式であって、あんたなんかにファーストキスをあげた訳じゃ無いんだからね」

「契約……?」

 

 言うことは言った、とばかりにルイズはプイッと顔を背けた。

 そして暫しの沈黙。

 

「おい! 何も起きないぞ!」

 

 周りで見ていた子供たちのうちの一人がそう言うと、途端にクスクスと笑いが起こった。

 

「平民を呼び出したと思ったら、コントラクト・サーヴァントにも失敗! 流石はゼロだな!」

「うるさいっ! ゼロゼロって……痛っ!」

 

 顔を真っ赤にさせて怒鳴り声をあげたルイズだったが、急に動きを鈍らせると左手を押さえ痛みを訴えた。

 そしてルイズは自分の左手の甲を見て、目を見開く。

 

「な……なんで……?」

 

 そこには先程までは無かった印が刻まれていた。

 コルベールが驚く。

 

「み、ミス・ヴァリエール……何故貴方に使い魔の印が!?」

「ぶはははは!! 皆見ろよー! ゼロのルイズが召喚した使い魔の使い魔になったぞー!」

 

 笑い声が一層強くなり、それに伴ってルイズの顔が羞恥で赤く染まっていく。

 しかしその子供たちの小馬鹿にしたような笑い声は、ルイズの前に立った立香の視線を受けて徐々にに小さくなっていった。

 完全に笑いが消えたのを確認してから、立香は怒気の孕んだ声音で言う。

 

「事情は分からないけど、彼女は君たちの知人なんだよね? その彼女の失敗を、なんで君たちはそうやって馬鹿にできるの? 君たちの仕事って、失敗した人を笑うこと?」

「なんだと?」

 

 立香の物言いにカチンと来た数人が反応した。

 それに気付いていたが、構わず立香は続ける。

 

「もし今ので怒ったのなら、もう少し自分を改めた方が良いと思うよ。自分の失敗を恥ずかしいとも思ってない証拠だ。自分より劣っている人を見て優越感に浸って、馬鹿にして笑うなんて最低最悪の行為だよね?」

 

 空気がピリピリと重くなる。

 怒りで顔を赤くした何人かの男子が杖を取った。

 それにも構うことなく、立香は感情のまま言い放つ。

 

「ねぇ、君達ってそんなに偉いの? 王様?」

「そこまで!」

 

 立香が言い終わった瞬間、コルベールが叫んだ。場が静まり返り、ピリついた空気が霧散する。

 コルベールはひとつ咳払いをして口を開く。

 

「彼の発言には全く同感だ。ミス・ヴァリエールは貴方達の学友、その彼女が失敗し嘆いている所に追い討ちをかけるなど、貴族として恥ずべき行為だと思わないかね?」

「それは……」

「友に寄り添い、励ましあいながら互いに高みを目指す。私はそういう在り方こそ、貴族として必要なものだと考えているよ」

 

 諭すように教師に言われ、熱くなっていた頭が徐々に冷えていく生徒たち。一部深く頷いている生徒もいた。

 コルベールはそんな生徒達を満足そうに見たあと、立香へと視線を向ける。

 

「君も。挑発的なのはどうかと思う。正しい言葉は正しく伝えなければ伝わらない。それは覚えておきなさい」

「……すいません。ただ一つだけ訂正しておきますが、彼女は笑われるような失敗をしていません。彼女の左手の印は、僕のマスターである証です。使い魔の印……というのは分かりませんが、そういうものではありません」

「なに?」

 

 コルベールは少し思考して、生徒達に「皆は教室に戻りなさい!」と言って、ルイズと立香に着いてくるように促した。

 

 

 

「コルベールです、失礼します」

 

 ノックはしたものの返事を聞かずにそう言いながら扉を開けるコルベール。

 そこには、老人が美女にグリグリと踏みつけられている光景があった。

 

「……何をしているのですか?」

「おおおっ! コルベールくん! これは誤解じゃ!」

「コルベール先生。実はこのエロじ……オールド・オスマンにお尻を触られまして」

 

 コルベールはゴミを見るような目で、尻を踏まれて顔を高潮させている老人・オスマンを見下した。

 ルイズも厳しい視線をオスマンへと向ける。

 オスマンはヨロヨロと立ち上がると、おっほんと偉そうに咳払いをして、顔をキリッと引き締めた。

 

「何の用じゃね? 随分慌てていたようじゃが」

 

 何事も無かったかのように話すオスマンに内心で散々罵倒するコルベールだったが、事が事だけに一先ず保留とした。

 コルベールは召喚の儀で起こった出来事、ルイズの身に起こったことを簡潔に説明する。

 聞き終えて、オスマンは立派に蓄えられた髭を撫で擦りながら、ルイズの手の刻印と立香を見た。

 そして先ほどオスマンを踏みつけていた美女・ロングビルに目配せすると、ロングビルは頭を下げてすぐに退室する。

 

「話は分かった。リツカくんと言ったかね。君の知っていることを教えてもらっても良いかな?」

「分かる範囲でなら。その前に二つ質問良いでしょうか?」

「なんなりと」

「まず、この場所について簡単にで良いので教えてもらえますか?」

「ここはハルケギニアのトリステインにあるトリステイン魔法学院じゃ」

「ハルケギニア……トリステイン……。なるほど……分かりました。とりあえず結論から言います。僕はこの世界の者ではありません」

 

 あまりに突拍子も無い宣言に、ルイズが「は!?」と声をあげた。

 

「僕の知識にはハルケギニアもトリステインもありません。通常、召喚された先でその場所の知識が入ってくる筈なんですが、今回はそれも無い」

「ほほう」

「それともうひとつ僕の知ることと違うことがあります。僕の知る契約方式は、マスターの側に刻印……僕たちは令呪と読んでいるものが現れます。彼女の左手にあるものがそれです。どうやらこの世界では、サーヴァントの方にそれが出るようで」

 

 ルイズは改めて刻印を見ながら、「これが?」と疑問符を浮かべる。

 

「令呪?」

「はい。令呪……それはサーヴァントに三回まで、どんな法則も無視して無理矢理従わせる事が出来る絶対的な権利です。例えばルイズが令呪を使って「オスマンを殺せ」と命令すれば、僕はそれに抗う事もできずにそのように動きます」

「そんなこと命令しないわよ!」

「あ、うん、分かってるよ。ごめんただの例え話。君の事を信用してるから」

 

 ニッコリ笑う立香。

 立香は「とは言え」と続ける。

 

「残念ながら僕自身はあまり戦闘力は高くないので、出来ることはそれほど多くないんですけどね」

「失礼、いいかね?」

 

 それまで黙っていたコルベールが、横から割り込んだ。

 

「君はいったい何者なんだ? サーヴァントとは?」

「あー……そこからですよね、すいません。ええと……んー……ちょっと説明が難しくて……。この世界にも英雄と呼ばれる人達はいますよね?」

「英雄? ……一応、トリステインの軍に英雄と呼ばれる将軍は何人かいるね」

「あ、現代のではなくて……例えば昔話の英雄とかです」

「昔話? それなら有名な所だと、勇者レオンハルトとか英雄ガレオなんかがいるね」

「そうそう、そういうのです。サーヴァントはつまり、そういう存在です」

 

 コルベールはよくわからないと首を傾げたが、オスマンはそれで分かったようだ。

 

「つまりじゃ、過去に存在した英雄、例えばガレオを召喚し従えるとサーヴァントとなる、ということじゃな?」

「その認識でほぼ合っています」

 

 それを聞いてルイズが声を上げた。

 

「はぁ? おかしいじゃない。なんで英雄が人間に従うのよ?」

「僕も詳しくはないけど、何か目的があったり……困ってる人を助けたりする場合もあるね」

 

 困ってる人を助ける、という言葉にルイズは納得したようだ。

 しかしまだ納得のいかないことがあった。

 

「あんたも英雄だって言うの? 嘘、あんたどこも凄そうじゃないわ」

「そこもちょっと複雑でね……僕は英雄じゃないんだ。だからこそ君に召喚された事に驚いてるというか」

「意味わかんない! サーヴァントは英雄なのに、召喚されたサーヴァントのあんたは英雄じゃないってどういうこと?」

「何事にも例外はあるってこと、かな?」

 

 ルイズが立香を睨む。立香はただ曖昧に笑う。

 禿げ上がった頭をポリポリと掻いて、コルベールが口を開く。

 

「君の話を聞く限り、君にも召喚されるに足る何かがあるということなんだろう? ルイズくんに召喚された理由が」

「……そう、ですね。一応。特定の条件下で、僕はサーヴァントとして召喚される事があります。今まで一度もありませんでしたが」

「特定の条件下とは?」

 

 立香は視線を床に向けた。

 

「世界の崩壊……僕はそれを止める存在として、世界に登録されています」

 

 オスマンが眉を上げた。

 コルベールとルイズは小さく息を漏らす。

 

「僕は……生前二度、世界を救った事があります。この世界ではなく、僕の世界の話ですが」

「せ、世界を……?」

「はい。ルイズさんのようにサーヴァントを召喚し……彼らに助けられながら二度だけ」

 

 オスマンが少し声音を低くした。

 

「つまり、この世界にそれほどの危機が迫っているということかな?」

 

 ルイズとコルベールが「あ」と同時に声を出した。

 立香の発言に嘘がなければ、立香が召喚された時点で世界に危機が訪れているということになる。

 それに二人は思い至った。

 

「それは分かりません。僕の二度の戦いはどちらも、全てが終わった後が始まりでした」

「どういうことよ! 終わった後って、それじゃ救えて無いじゃない! やっぱり嘘ね!」

「凄く複雑で難しい話だけど……聞きますか?」

「うむ。お互いの為にも、詳しく知っておきたい」

 

 オスマンに言われ、立香はどこから話そうかと考える。

 

「一度目の戦いは、世界が完全に終わった後。僕達のいた場所だけが例外として取り残されて世界は何もかも消え去りました。僕たちは世界が終わることになった原因が過去にあることを突き止めて、過去へと行ってその原因を排除する旅を始めました」

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!? そんな話どう信じろって言うの!?」

「マスター、信じられない気持ちは分かるけど嘘は一切無いよ」

「ルイズくん、今は話を聞こう」

 

 コルベールに諭されて、ルイズは口を閉じる。

 

「敵は過去に世界を滅ぼす原因を送り、それによって世界が一瞬で滅びました。そして僕たちは同じように過去へ行き、その原因を排除していきました」

「まるで夢物語だな……過去に行くだなんて」

 

 コルベールは疲れたように呟いた。

 立香も「僕もそう思います」と笑った。

 

「全部で七つの世界。その全ての原因を排除して、原因を生んだ敵も倒した事で、滅んだ世界は元通りになりました。そして……」

 

 そして立香は、二度目の世界の崩壊……ある筈の無い世界を滅ぼす旅の話を続けた。

 長い時間をかけて語り終え、三人は、ほう……とため息を吐く。

 

「話はわかった。貴方が世界の危機を止める存在である事も」

「信じていただけて嬉しいです」

「嘘をついていないのは見れば分かる。伊達に長生きしてないという奴じゃな。それでどうするのですかな? 貴方は紛れもなく英雄のようじゃ。己の力で無かろうと、数多の力を率いて世界を救ったのなら、それは疑いようもない。そんな貴方が、この世界に留まる理由はないのかも知れない。ミス・ヴァリエールの使い魔になる理由も」

「あ、そんなに畏まらないでください。召喚されたからには僕はマスターに仕えるつもりです。何の理由もなく僕が召喚されたとは思えない。何かしらの縁が存在する、そう僕は考えていますから」

「ほほ、そうか。では君を正式にミス・ヴァリエールの使い魔として認める。何かと不便はあるとは思うが、ルイズ君をよろしく頼む」

「はい」

 

 立香とオスマンは固く握手をした。

 黙って話を聞いていたルイズが「で」と言った。

 

「あんた何が出来るの?」

 

 正直まだ疑っているルイズだったが、それはそれとしてそれが一番重要な事だった。難しい話は全部置いといて、自分の使い魔の性能を知りたい。

 救世の英雄だというなら、自分は間違いなく当たりを引いた筈……だが立香はまったくそんな大それた存在に思えなかった。

 ルイズの見立て通り、立香は申し訳なさそうに言う。

 

「僕は特別何もできない。ごめん」

 

 ルイズは少しだけガッカリする。

 立香は「でも」と続けた。

 

「サーヴァントにはそれぞれクラスがあってね。クラスによって得意なことが違うんだ」

「クラス?」

「基本のクラスは7つ。セイバー、ランサー、アーチャー、キャスター、ライダー、アサシン、バーサーカー。他にもいくつかあるけど、とりあえず割愛するね。で、僕はそのどれにも当てはまらないクラス、サモナーのサーヴァントなんだ」

「何か出来るの?」

 

 少しだけ期待のこもっためを向けるルイズを見て、立香はちょっと可愛いなと思う。

 

「僕の役割はサーヴァントを……僕の繋いできた縁を呼び出す事だ。僕と共に世界を救った英雄を呼び出して共に戦う。制約は多いけれど、それでも一騎一騎が強力なサーヴァント達だ」

「強い使い魔を召喚できるってこと!?」

「まぁ……だいたいそんな感じかな?」

「凄いじゃない! あんたの話、あんまり理解できなかったけど、世界を救う程の力を持ってるのよね!?」

「う、うん」

 

 ルイズの熱気に少し引き気味に頷く立香。

 

「じゃあ早速超強いの呼んでちょうだい!」

「え、今?」

「ええ、今すぐ!」

 

 おかしな流れになってしまった、と立香はオスマンとコルベールに助けを求める視線を向けた。

 だが二人も口にはしないが、成り行きを静観する構えだった。

 諦めた立香は、仕方ない、と立ち上がる。

 誰を呼ぼうか……と悩み、自分にとって一番馴染みの深く気安い関係でもある英雄を呼ぶことに決めた。

 右手を何もない空間へと突き出す。

 

「……召喚術式、起動。クラス名・アーチャー。真名・エミヤ。我が呼び掛けに応じ、縁を辿り……ここに顕現せよ!」

 

 青白い魔法陣が床に浮かび上がり、魔方陣の線を稲妻が走った。

 そして目が眩む程の光、直後……赤い外套を着た肌の黒い男・エミヤが魔方陣の中心に立っていた。

 おおー! と笑顔で歓喜の声をあげるルイズとは対照的に、エミヤは非常に苦々しい表情だった。

 

「……アーチャー、真名をエミヤ。呼び声に応じ参上したが、何故私なんだ……?」

「ごめん……パッと思い付いたのがエミヤだったから……」

「…………話は聞いていた。君は何故次から次へと面倒に巻き込まれるんだ」

「ううん……」

 

 エミヤは顔を右手で覆い、深く深くため息を吐く。

 そんな様子も気にせず、ルイズははしゃいでいた。

 

「貴方も英雄なのよね!?」

「そんな大それたものでもない。私はただの……成れの果てだ」

「ふーん? でも強いんでしょ?」

「うん、エミヤは強いよ。それは保証する」

 

 きっぱりと言う立香に、「マスター……」と嫌そうにするエミヤ。

 

「まぁ……そうだな、呼ばれた以上は尽力するよ。よろしく頼む、ミス・ヴァリエール」

「リツカのサーヴァントなんだから、つまり私のサーヴァントでもあるのよね?」

「……一応、そうなるのか? とは言え最終的な決定権はマスターにある。そこは誤解しないでくれ」

 

 納得したのかしてないのか、ルイズはエミヤを上から下まで値踏みするように眺めた。

「強そうには見えないけど……でもリツカも嘘は言ってなさそうね……」などと機嫌良さそうにしている。

 オスマンはおほんと咳払いをした。

 

「ともかくこれで問題解決じゃな。ルイズ君もめでたく進級できて万々歳で良かった良かった」

 

 明るく能天気にそう言ったオスマンだったが、コルベールは何となく嫌な予感がしていた。

 本当に良いのだろうか、これから世界が大変な事になるんじゃないか……そう疑念を浮かべてはみたが、考えたところでコルベール個人ではどうにもなら無い事だった。

 とりあえず今は考えない事にして、コルベールはエミヤを観察した。

 あまりにも隙が無い。その隙の無さに舌を巻いた。談笑している間も一分の隙も見せない。

 何よりエミヤは【自分が見られている事を理解していた】。

 恐ろしい相手だ……とコルベールの背中を冷や汗が落ちた。

 

「今はこんなものかな? とりあえず飯の時間じゃ、食堂に行くとするか」

 

 オスマンに促されて、全員で食堂へと向かうことになったのだった。




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