太古の海神クトゥです
これよりとてもゆっくりかもしれませんが投稿再開します
本当に長らくお待たせしました
本編の前にちょっとした身の上話を
私電車で大学に通っているのですがその時に突然目が見えなくなりましてね
驚きましたよ、倒れてもいないのに目の前が真っ暗になったなんて
でなんでそんなことになったかといいますと
徹夜でゲームなんてしてたことによる寝不足で自律神経がうまく働けなかっただそうです
皆さんも徹夜でゲームするときは気を付けてください
さてと、今回はパルムの深き場所ですね
それでは十分にお楽しみください
快適な空の旅は一番の山場にたどり着いた
その名も《ティアストーン山地》
山を越えるだけならば、大したことではないのだけれど、いかんせんその山の上を飛んでいる連中が問題なのよね
山の上にはたくさんの《
「どうする、シロ? さすがにここをこえるのは難儀しそうだぜ?」
「倒せない相手ではないんだけどね…………」
シロエの言う通り、倒せない相手ではない
しかし、仮にも竜の眷属である《鋼尾翼竜》を、彼らのステージたる空で大量に相手をするとなると話は変わってくる
まあ、私だけなら強引に突破はできるだろうけど、それで今回の遠征の目的を達成することはできない
いったん地上に降りて、これからどう進むかみんなで話し合うことにした
その結果、私たちは《ティアストーン山地》の地下、《パルムの深き場所》へと潜っている
「――進行方向、敵の姿はなし」
「進むぞ」
少しずつこうやって前方を確認しながら前へと進む
時間はかかるけども、やみくもに進むよりは安心して進める
なにせここの敵は追いつめてしまえばいくらレベル差があっても襲い掛かってくる《
《鼠人間》自身は強くはない、しかし恐ろしいのはその攻撃によって引き起こされる状態異常だ
その名も《病毒》
回復力を弱まらせ、なおかつダメージを与え続けるといったものだ
それに適したレベルの回復役がいるならば、別段怖くはないのだが、現在私たちのもとには回復役がいない
そのためかかってしまうとかなり手痛い
もっとも私には関係ない話だけど
吸血鬼のスキル《朽ちている体》は回復魔法やポーション、日光などでダメージを受ける代わりに、《病毒》や《毒》などの一部状態異常を無効化するからなのだけど
だからと言って、さっきも言ったように私だけが駆け抜けるわけにもいかない
私じゃ、マリエに連絡つけられないからね
だからこそ対策するに越したことはない
急を要する用事である以上、戻っている余裕はない
なるべく早く、なおかつ安全に、それが私たちに求められていた
アカツキが前方を確認し、盾役である直継を先頭にシロエの書いた地図を頼りに進む
私はといえば、後ろのほうを蝙蝠の姿で警戒しつつ、敵が来たら人に戻り、ナイフを放り投げて撃退するといった感じかしらね
もっともそんなことしていたら、後ろから寄ってこなくなったけど
しかし、ここもまたすごいわね
ほんと、画面越しで見た時とは大違いね
ただ十何時間も同じ景色なのは飽きてきたけど
やがて私たちは一つの小部屋についた
「この部屋は、そこそこ安全っぽいな。――どうする、シロ?」
シロエは少しだけ考えてから
「えっと……。そだね。休憩にしよう」
おそらくいろいろ考えたんでしょうね
シロエの性格は神経質、心配性とも取れるけど、今回はそのほうが反っていいだろう
想定外の事態はできるだけ減らしておきたいからね
そんな風に考えているとシロエがいつも道理指示を出す
「直継はドアの近くへ。僕はマリ姐に定時連絡をする。アカツキは……」
「偵察してくる」
そういってアカツキは闇の中へと消えていった
「じゃあ、私はそこの隅っこで休憩してるわ」
「了解」
久々に人の姿に戻って部屋の隅っこでゴロンと寝転がる
コンクリートに固められた部屋故に寝心地は最悪であるけども、ひんやりとした床はとても気持ちいい
よく屋敷の床に寝転がっていたらはしたないなんて言われたけれども、床が気持ち良いのだからしょうがないじゃない
しっかり寝たい時にはベッドに飛び込むけども
ここ最近休憩時はみんな今回と同じように行動している
シロエはこの先どう進むかを地図とにらめっこ
直継はドア付近で敵を警戒
アカツキは偵察
私は床にごろ寝
こんな風に役割分担するまで問題がなかったわけではない
誰がどう見ても私がごろ寝してるのを問題視するでしょう?
だけど、私がこうやって寝転がれるのは実を言うとこの休憩時間以外になかったりする
理由は夜、私が敵を引き寄せないように蝙蝠の姿のまま寝ているからだ
交代で見張りするにしても私が人の姿でいるだけで敵を引き寄せやすい
眠気で集中力が切れやすい夜はみんなの負担を軽くするべく蝙蝠の姿で寝ているわけだ
その結果シロエたちにはある程度安心して眠れる夜が出来上がった
代わりに私の疲労がたまりやすくなったが
だから休憩時間に少しでも疲れをとっておかないといくら徹夜慣れしてる私でもどこかで大きなミスをしかねない
そのため私はこうやって寝転がっているわけだ
もっとも大抵すぐに起き上るけど
むしろ私よりも反対されたのはアカツキの偵察のほうだ
まあ、見た目が小さいからね、進んで偵察に行かせようとはしないでしょう
小さくても能力は確かだし、この中では私を除いて偵察に向いていることからシロエたちも納得したみたいだけど
「こっちは問題ないです。昨日はあのあと野営して、午前中早い時間に《パルムの深き場所》に突入しました」
……ああ、いつもの定時報告ね
シロエは一日に最低一回はマリエに連絡を入れている
まあ、向こうは何も聞かされず、ただ待っているだけなんてのは不安だろうしね
だからこうして念話しているんだろうし
床の冷たさをひしひしと身で感じながらボーっとそんな風に考える
そんな風に考えているうちに少し意識が遠のいて……
やがて、私は寝てしまった
私はとても優秀な子どもだった
言われたことの大体はできたし、分からないことも少し教えてもらえばすぐにできた
計算だって、乗馬だって、合気道だって、英語だって
でも、一つだけなしえなかったことがあった
何でもできるがゆえにできなくなってしまったことが
化け物
化け物
化け物
バケモノ
そんな目で見ないで
そんな風に呼ばないで
やめて
やめて
やめてっ!
「はっ!?」
「大丈夫か、ルナ? うなされていたようだが」
そっか、さっきまでのは夢なのね……
嫌なこと、思い出しちゃったわね……
「ええ、大丈夫よ。ちょっと悪い夢を見てただけだから」
「そうか、なら良かった」
そういって私の小さな友人はシロエのもとへとかけていく
そこで何か話しているようだけれども今はちょっと気分が悪くてそれどころじゃない
床の冷たさが心を刺していくように感じる
私はすぐにその冷たさから逃げるように起き上がりゆっくりと深呼吸を繰り返す
少しして私は平静を取り戻した
「CADみたいなものだよね。僕は《筆写師》だしね」
「CADとはなんだ?」
だんだんと周りの声を聞く余裕も出てきたみたいね
「パソコンでやる製図。大学でやるんだよ。工学部だしね」
「主君は大学生なのか?」
シロエはうなずいてから「もうそろそろ卒業だけどね」と付け足していった
あら、ほとんど同い年なのね
ということは……
「そうか。ではわたしとほとんど同じ年なんだな」
「え?」「まじかよっ!?」
アカツキもシロエとだいたい同い年ということよね
そして、その反応、思った通りだわ
「そんなに意外か?」
アカツキ、あなたの知っている範囲に同じ身長の同年代の女の子がいるかを確かめればその意外性がよくわかるはずよ
もっともアカツキが知っている同年代の女子なんて限られてくるから参考にならないだろうけども
かくいう私もそんなにたくさん知っているわけじゃないけど
「冗談だろ、ちみっこ。だって、ちみっこ身長ないじゃぎゃふっ」
直継の顔面に思いっきり蹴りが入る
ほんと、きれいに蹴りを入れるわねえ……
「主君。バカ直継を蹴ってもよいだろうか?」
「だからそういうことは事前に断り入れろよっ!」
もう条件反射の域よね
昔は私もアカツキの年齢を身長で判断して怒られたっけ
あれは本当に悪かったわ
私が最も嫌がっていたことをまさか人にやっちゃうなんてね
「だいたいバカ直継は身長のことをあげつらいすぎだ」
「胸のサイズはさらに壊滅的じゃぎゃっ!?」
そんなこと言うからまたきれいな蹴り、くらっちゃってるじゃない
今度はさっきよりも強めだし……
「――アカツキ? 直継死んじゃうよ」
「そこらへんで勘弁してあげなさい、アカツキ」
「む、主君とルナがそういうなら……」
しぶしぶといった様子でアカツキは距離をとる
完全に追撃を加える気だったわね、アカツキ……
確かに直継に非はあるけどね?
仕方ないことは仕方ないこととして認めておかないと
「まさか主君も私が未成年だと思っていたのか?」
間違いなく思っていたでしょうね、さっき驚いていたし
予想は見事に的中していたようで、シロエはアカツキの視線に耐えきれなかったのかぼそぼそと告げる
「別に身長っていうか――年齢っていうか。困るな」
まあ、だからと言って二人とも子ども扱いしてたわけではないわね
心配することはあっても実力があるから偵察を任せるなんてこともしたわけだし
「というかシロエ、私とリアルで知り合いっていう時点で気が付かなかったの?」
「あー、そこまで考えが回らなかったみたい」
まあ、それはアカツキの身長が原因でしょうね
無意識的に私と同い年である可能性を省いちゃったんでしょう
それなら仕方ないかもねと思いつつ、シロエのほうを見ると何やら考え込んでいた
……何か懸念事項でも見つけたのかしら?
そんな私の疑念と同じことを思ったらしいアカツキが私より先にシロエに尋ねていた
「主君? なにを考え込んでいるのだ?」
「え? 別に考えてないよ」
「そんなことはない。主君は考えると、眉の間にしわが寄る」
「あー……」
平静を装おうとしたシロエであったがアカツキの観察力はすさまじく、考え込んでいることを見抜かれてしまった
というか、アカツキ、ほんとよく見てるわね
私なんてただの感覚だったのに
「ここだぞ? お爺さんのようなシワだ」
ふふっ、本当にアカツキはよく見ているのね
私は小さく笑った
「くっ。直継、伯爵、なに笑ってるんだよっ」
「だってさ。ぐはっ。はははははっ」
「ついおもしろくてね、ふふふっ」
シロエは笑い出す直継のスネを一回蹴り飛ばす
まあ、相手は変態とはいえ《守護戦士》
鎧に阻まれていたいのはシロエのほうだろうけど
私のところに来なかったのはまあ、仮にも女性だからでしょうね
「ふふふっ」
「伯爵もわらわないでよ」
些細な文句の言い合いがこうして幕を開けていく
その中でお互いに笑い楽しそうに過ごす姿はこの洞窟の冷え切った中でもとても暖かく懐かしいものだった
やがて、そんな休憩も終わりを告げて、先へ進むために私たちは立ち上がった
終わりの見えない洞窟
しかし、私たちなら大丈夫
そんな自信が心の底から湧いてくる
そんな自信を胸に私は先に広がる闇の中に溶けていった
そんな《パルムの深き場所》を抜けたのは次の日の朝早くだった
「うっ、まぶしい……」
ちょうど地平線の向こうから太陽が顔を出し始めているようだ
向こうに見える山々を紫色に縁どる日の光は海を赤く染めている
その色合いはとても美しく洞窟の中で疲れた体を癒してくれている
もっとも私の場合太陽のせいで変わらないけど
皆も洞窟のなかで疲れていたようで思い思いに体を伸ばして休憩をとっている
洞窟とは違った冷たい空気に身を任せ、私はゆっくりと深呼吸をする
潮の香もわずかに感じられるその風は私をやさしく包み込んでいく
その香りに嫌な思い出も乗ってきているけれども
「風が冷たいっ」
いつの間にやら大岩の上にアカツキが上っていた
「でも、気持ちいいぞ。やっと抜けたなっ。難所越えたぜ祭りっ」
そんなふたりを追いかけて、シロエもその大岩を上っていった
私も上りましょうかね
蝙蝠の姿のまますっと上に向かい、大岩の上で人の姿に戻る
「綺麗だぞ」
「すっげぇーなぁ」
そこにはさっきまで見えた景色よりもさらに色鮮やかな美しい景色が広がっていた
日の光をさえぎっていた雲は夜明けに連れ去られて海の輝きはさらに増している
色も先ほどより派手になっており、何ともいうことができない
あえて言うのならそれこそアカツキたちの一言で十分だろう
「本当に綺麗ね」
その綺麗さは心を癒すとともに私の心だけを傷つけていくものだけれども
(あの夢見てからずっとこんな感じよね……)
私は遠い過去の記憶を思い返す
それはとても嫌な記憶にまみれている
汚い言葉で汚い力で汚い人で汚れきっている記憶
忘れたくても忘れられない記憶
そんな昔のことは忘れてしまえ。私はルナの過去に何があったのかは知らないし、なぜPKに走ったのかも知らない。だがこうして私とお前は知り合えた。全てつながっているんだ。嫌なことも楽しいことも全部な。だから昔なんて気にするな。今を思いっきり生きろ。つらいこと、楽しいこと、全部受け止めて楽しもう。な、今日はいろいろ話そう。まずはそうだな……明日の予定でも立てるか?
…………師匠なら、彼女ならまた前と同じようにそういってくれるんでしょうね
そうね、今を楽しみましょうか
そうして私は目の前の景色を堪能する
不意にシロエが言葉を紡ぐ
「僕たちが初めてだよ」
……そういえば師匠がよく《茶会》のリーダーであった《彼女》の話をしてる時にそんな話をしてたっけ
《彼女》の遺伝子、《放蕩者》の遺伝子はしっかりと受け継がれているのね
「僕たちがこの景色を見る、この異世界で最初の冒険者だ」
なるほどね……、シロエもシロエなりにこの世界を楽しんでいるわけね
このゲームとよく似ている、でもとても大事なところで違うこの異世界を
こんな環境に放り込まれてみたこの景色はどう見たってゲームでは味わえない
ゲームで味わえない景色が見れるとなるとここはゲームの世界ではない
そう幾度となく思ってきたが今回のは、はっきりとそう思える力があった
「そうね、私たちが初めてね」
私はシロエに微笑みかけてそういった
一瞬怪訝そうな表情でこちらを見ていたアカツキも何やら納得したようで強くうなずいた
直継はにやりと男らしい笑いを見せて、大きく息を吸い込んだ
そういえばあなたも《放蕩者》だったわね
「そうだな。俺たちが一番乗りだ。こんなすごい景色は、《エルダー・テイル》でだって見たことはねぇ」
「わたしたちの、初めての戦利品」
二人が景色を慈しむように見やると、シロエに合図した
シロエはそれに答えるように、東の空、今まさに輝いている空に向かって《鷲獅子》の召喚笛を高らかに吹き鳴らした
私はそれに続くように蝙蝠の姿になり、東の空へと叫びながら飛び立った
はい、師匠やらルナの過去やらなにやら気になりそうなものがちらほら見えますね
え、気にならない?そうですか(´・ω・`)
次回は……ああ、そうか、彼の出番ですね
ススキノについたシロエたち一行
そこに立ちはだかるのはあの男だった!
次回、「デミクァス、死す」
お楽しみに!
感想や質問、訂正等とても楽しみにしてますのでよろしくお願いします
また、アンケートを活動報告のほうでやっていますのでそちらのほうも是非お願いします