神速の殺戮姫は太陽を嫌う   作:クトゥルフ

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どうも、太古の海神クトゥルフです

相変わらずこの主人公やりすぎじゃないかと自身でも思う場面がよくあります
こんかいはセララきゅ……いえ、ススキノの悲劇ですね

それではどうぞ


デミクァス、死す

《ススキノ》の街は《大災害》以降、最悪なまでに治安の悪化を見せていた

理由はある一つのギルドにある

《アキバ》などの他の《ホームタウン》に比べて《ススキノ》を拠点とする冒険者の人数は少なく、他の《ホームタウン》から来て一時滞在地にするといった冒険者が多いという《ススキノ》の街の特徴上、他の街で省かれたマナーの悪い冒険者が流れやすかった

ゲーム時代の頃は、《エッゾ帝国》との雰囲気や、いざとなったら《転移門》で脱出すればよいため(もっともいくらマナーが悪いと言っても、ゲーム時代にはそんな大それたことはできなかっただろうが)、そんなマナーの悪い連中がいても気にならなかった

徒党を組んでようが全然問題にならなかったのである

しかし《大災害》以降、世界は大きく変わった

今まで簡単に行き来できていた《ホームタウン》には行き来できなくなり、GMからのハラスメントコールはなくなった

当然ログアウトもできない

他の《ホームタウン》から一時的に《ススキノ》に来た冒険者はアキバの《冒険者》の多くより強い絶望に包まれたことだろう

何せ知っている仲間ははるか遠く、向こうからもこちらからも合流するのは困難だ

混乱、絶望……様々な感情が世界中を走り回ったのは当然だろう

そしてその混乱や絶望の中、人はまず仲間や自身を優先する生き物である

その考えからゲームの頃よりかなり楽になったPKに身を生じるものは多く、《アキバ》の街でもそれは発生した

しかし、もうそろそろ《アキバ》の街のPKは収まるであろう

それは大多数の人間、特に大手ギルドがPKをしていないことが大きな原因である

ならば、人が少ない《ススキノ》の街ではどうだろうか

先ほども言ったように《ススキノ》の街には人が少ない

今は知り合いもいないような人々がたくさんいることであろう

そしてこの《ススキノ》の街の冒険者の多くを占めるのが先も言ったマナーの悪い冒険者たちである

そしてその者たちはゲーム時代と同じように徒党を組んでおり、それはこの街の一番の大手ギルドである

その名も《ブリガンティア》

《大災害》後、混乱に陥った彼らが自分たちのために悪事を働き始めるのは容易に想像できる

度重なるPK、脅迫、そして大地人を捕まえ売りさばく奴隷商

街の外に逃げ出そうものなら殺され、街の中にいようものなら痛めつけられる

来るものはおらず、出るものを拒み続けるその要塞都市はただの監獄であった

しかし、ここ最近何やら治安がおかしい

《ブリガンティア》が今までよりもおとなしいのだ

PKや脅迫は件数が減り、奴隷商の真似事は行わなくなった

唐突の平和、一体何が起きたというのだろうか

大地人や冒険者たちは何やら嵐の前の静けさのような平和をありがたく享受したという……

そして審判の日は訪れる……

 

 

 

あたり一面を雪に覆われた白銀の大地、《エッゾ帝国》

その輝かしさは希望というよりも絶望などを含んだ黒々としたものに見える

出発してから一週間弱、かなりのペースで進んでいた旅もようやく目的地に到着した

もっとも到着しただけじゃ意味ないのだけれど

何度も言う通り今回の目標は人の救出である

目的地にたどり着いて終わるようなものではない

むしろここからが本番と言えるだろう

そのため慎重に作戦を実行するべく、《ススキノ》の街より少し離れたところにて作戦会議を行っていた

ここから見た感じ扉の前には誰もいない

「今のところ、警戒すべきところはないな。主君」

「なんか聞いていた話より活気があるみたいなんだが……」

「そうだね、なんか最近《ブリガンティア》がおとなしいみたいで」

そのシロエの言葉に、私は気づいた

あ、そういえばそこってあいつのギルドじゃ……

「ああ、そういうことね。シロエ、悪いけど私は私でやること先にやってくるわ」

「え、でも救出の方は?」

「大丈夫、先にやった方が楽にできるから」

「伯爵がそういうなら別にいいけど……」

それを聞いて私はアカツキや直継の静止の声を振り切って反対側の門へと飛び立った

 

《ススキノ》の街の東門につくと、私は人の姿に戻り、急いで戦闘の場を構えていく

虎鋏、落し穴、ボウガンなどの罠、身を隠したり壁にしたりするための障害物、ほんの少しだけではあるがないよりはましだろう

それから私はあの男に念話を送る

出たわね

「東門で待っているわ。早く来なさいよ、デミ」

念話の向こうからは舌打ちの音がして、そのままその念話は切れた

「いいところできやがって、って感じかしらね」

私の念話の相手は因縁の相手、デミクァス

彼こそが《ブリガンティア》のリーダーであり、つまりは今回の救出劇の原因である

野放しにしているとシロエたちの救出の邪魔をしそうというか邪魔するだろうから先にそんなことをする元気すら奪おうってわけ

ぞくぞくと東門の前には《ブリガンティア》のメンバーが集まってくる

うわあ、見知った顔がいっぱいいるわねぇ……

一対一では何度か叩き潰しちゃったからね、PvP大会なんかで

デミともども私に恨みがたまってるんでしょ

他の連中は、血気盛んのようでもはや人様の耳に彼らの言葉をいれたくないレベル

よくもそんなやばいこと、平然と言えるわね、変態共が……

もっともその程度の言葉なら私は何とも思わずに受け流すことはできるけど

本当にならず者の集団ねえ、絵にかいたくらいに

こういう集団は力で団結しているからリーダーをやればいいのだけれど

 

……今回ハソレデスマスツモリハナイワ、ミンナ同罪ダモノ

 

門の方から神輿に担がれた男がやってくる

その熊のように屈強な男はあからさまに腐れきった眼をしている

周りの連中は恐れの混ざった視線をその男に向ける

ふん、来たようね

私はその男を睨み付ける

すると、向こうも同じく睨み返してきた

「会いたかったぜぇ、ルナ」

「ええ、こっちもよ」

そしてデミクァスは神輿から飛び降り、そのまま私に《ワイヴァーンキック》を放つ

私が立っていた後ろにあった雪垣が容赦なく砕け散る

「これまたずいぶんな挨拶ね」

私はデミクァスの背後へと回りこみ、言った

「ちっ、相変わらず逃げ足だけは早……」

デミクァスが言葉を言い切る前に私は挑発のためのナイフを三本投げる

一つはデミクァスの足に当たるように

残り二つは部下たちの誰かに当たるように

「くっ……てめえ!」

「あいつ……ぜってぇにぶっ殺すっ!」

「ピーーーーーーーーーーー(規制)」

……計画通りね、あまりにひどいこと言ってるやつもいるけどまあ、いいわ

目的である挑発には成功した

すぐさま私はさっき作り上げた雪垣の簡易迷路へと逃げ込む

「くそがっ! てめえら、あいつを追えっ!」

デミクァスが指示をする前にほとんどの連中は迷路の中に入っていく

残ったのはデミクァスの回復班とデミクァス、そしてこのギルドの参謀、ロンダーグとその部下、そして私

種はいたって簡単、私が霧になって彼らに気づかれずに外に出ただけだ

私は彼らの後ろに姿を現し、沈黙の状態異常と麻痺の状態異常が付いたナイフを後ろにいる人から順番に投げる

沈黙は悲鳴を防ぐため、麻痺は動きを止めるためね

まずはロンダーグの部下、次にロンダーグ、回復班、最後にデミクァスの順にナイフを当てていく

[なん……だと……]

[てめぇ、ふざけるなよ!]

驚きの表情でこちらを見るロンダーグと怒りの表情でこちらを見るデミクァス、部下たちのほうは何をされたかわからないといったように困惑の表情を浮かべていた

「ふざけるなはこっちのセリフよ」

デミクァスもろともそこにいる全員を睨み付ける

声は聞こえなくても、唇の動きで何を言っているかは分かる

「ずいぶんとおもしろそうなことをしていたらしいわねえ?」

今、私の顔は本当に友人たちには見せられない顔となっていることだろう

デミクァスも黙りこくちゃったし

本当にシロエたちと別れてこっちに来ててよかったわ

「ただの獣風情が人間様に迷惑かけてんじゃないわよ」

道徳も倫理観も自己抑制もできず本能のままに奪い、傷つける

それが獣じゃなくて何と言おうか

私は動けない彼らのもとへと向かい、首のあたりに鈴をつけていく

全員の首につけたあたりで迷路へと入っていた部下たちが壁を壊すということに気づいたようで雪垣が壊れる音がし始めた

……時間がなさそうね

私は動けない彼らの胸元をナイフで突き刺していく

全員が《大神殿》に送られる頃には迷路は障害としての意味をなさなくなっていた

だが、間に合った

何故なら彼らは目の前でリーダーがやられるのを見てしまったのだから

そしてNO.2のロンダーグがそこにいない意味を理解してしまったのだから

あからさまな戦意喪失、この戦いは私の勝ちだ

 

だけどこれで終わるとは一言も言う気はない

部下たちもまた同罪である

 

私は戦意喪失した彼ら一人一人に麻痺ナイフを当てていく

それなりの速さがあるために回避はできず、当たればレイドボスの動きが鈍くなる程度の力がある麻痺、それなりの冒険者でも簡単に動けなくなってしまうといった代物ゆえにあたったものは次々と倒れていく

そんなまた一人また一人と仲間が倒れる状況に怖じ気ついて逃げ出す者、やらなければやられると破れかぶれになる者、しかし結果は同じである

逃げた者は後ろから飛んでくるナイフに倒れ、破れかぶれに突撃した者はゼロ距離で投げナイフをくらい倒れる

最終的に立っているのは私だけになった

忘れないように一人一人に鈴をつけてから《大神殿》へと送っていく

途中麻痺が解けることがあってもすぐにかけ直し、同じ作業を繰り返す

そうして、東の門の前は真っ赤に染まった

《ブリガンティア》は私によって蹂躙されたわけである

 

ダケドマダ許ス気ハナイ

 

私はカバンの中から《召喚の鈴》を取り出し鳴らす

「《ブリガンティア》」

すると、私の目の前には《大神殿》で復活してから首につけられた鈴をとろうと頑張っているデミクァスやあれは何だったのかと悩むロンダーグ、もう足洗おうかななんて言っている《ブリガンティア》メンバーなど私が蹂躙した《ブリガンティア》のメンバーがそこにいた

彼らは少しして周りの景色の変化に驚く

「お早いお帰りで」

私はにこりと笑いながら彼らに言う

その声を聴き、彼らはこちらを見てすごく青ざめた

「サア、モット素敵ナパーティヲシマショウ?」

この時、彼らは理解した

真の恐怖はこれからであると

 

ここで《従者の鈴》と《召喚の鈴》について詳しく説明しよう

《召喚の鈴》は《従者の鈴》を装備している相手を呼び出し、助けを求めるために作られた

そのため、一人だけではなく、パーティ丸ごと呼ぶことも可能である

それと同じように同じギルドや職業を選んで呼ぶことも可能であり、それを利用して私は《ブリガンティア》全員を呼び戻したのだ

では《従者の鈴》を外せばいいじゃないかと思うかもしれない

それが可能ならばデミクァスはその首枷から解き放たれていただろう

しかし、そうはならなかった

答えは簡単

この《従者の鈴》はつけた者にしか外すことができないという高レベルの呪いがかかっているのである

解除するのに大規模戦闘で手に入る素材が必要なんて、いったいどこの鬼畜が作ったのかしらね

 

 

 

時間は少し進み、シロエたちは無事にセララと合流した

そのセララの逃亡を手伝っていたのが昔の知り合いのにゃん太であったのは驚いたが、彼もまた一緒についてきてくれるといったときは何と心強く思えたことだろうか

しかし、シロエにはいくつかの不安要素があった

一つはルナが今どこで何をしているのか

そしてもう一つがセララを追っているという《ブリガンティア》が全く姿を現さないことだ

後者は特に怖い、《ブリガンティア》は一体何を考えているのかが分からなかった

外で待ち伏せだろうか、それとも諦めたのだろうか

「とりあえず東の方から出てもう一人の仲間と合流しましょう」

「了解ですにゃ」

シロエは先にルナを回収してから考えることにした

ルナがいれば《ブリガンティア》へどう対処するべきの手数が増えるためである

(そういえば、伯爵がやらなきゃいけないって言ってた人は一体誰だったんだろう?)

シロエはそれが《ブリガンティア》のリーダー、デミクァスであることを知る由もなかった

 

 

 

私の前には幾度となく死を繰り返し、脆弱している《ブリガンティア》のメンバーが転がっていた

許してくれ、許してくれと延々とつぶやきつつづけるもの、淡い虚空を見つめるもの、考えるのを止めたもの、そこにはもはや屍と変わらない冒険者が転がっていた

白銀の大地はもはや燃え盛る炎の真紅ではなく、どす黒い紅の色に染まりあがっていた

これ、あまりにも人に見せられない空間よね……

「……えーと、伯爵? 何やってるの?」

ふいに見知った声が聞こえて、後ろを振り向く

「あら、シロエじゃない」

シロエだけではなく直継や三日月同盟に救出を頼まれていた子、そしてその協力者のネコさんがいた

ネコさんは見ちゃいけないとばかりにセララの視界を覆っていた

ナイスよ、ネコさん

「ほんと、何をしたらこんなになるんだよ?」

「いや、ちょっとゴミ掃除しただけよ? ほら、ここにたくさん転がっているでしょう?」

そういって目の前に転がっている生気を失っている《ブリガンティア》の連中を指さす

「なるほど……だから最近《ブリガンティア》の連中が静かだったわけですにゃぁ」

「え、えーと……何が起きてるんですか?」

目隠しされていて状況がわからないセララがそうネコさん(名前はにゃん太ね)にそう聞いた

「見ない方がいいですにゃ」

「そうね、見ない方がいいわよ」

「は、はい」

今頃、セララの中で誰だろう、この人と思われているのは間違いないわね

「それにしても伯爵、これはやりすぎじゃない?」

「…………まあ、そうかもしれないわね。私的にはまだちょっと怒り足りないけど」

「お前なあ…………まあ、怒りたい気持ちはわかるぜ」

ここまではやらないけどさ、と続けてから直継は早く帰ろうぜとシロエたちに声をかける

「後でたっぷり小言を聞かせてやるからな」

「それは覚悟しとくわ」

いつの間にやらシロエの横に立っていたアカツキにそう言われてしょぼんとへこむ

シロエの方はうわ、アカツキ、いつの間にと驚いていたけれども

《ブリガンティア》の連中が見えなくなる位置まで歩き、三人は《鷲獅子》を呼ぶ

こうしてセララ救出劇は幕を閉じていくのだった

 

飛んでいる途中にアカツキとネコさんから同時に怒られるとは思っていなかったけど

 




強く生きろ《ブリガンティア》……

さてと次回は……大地人の村で宿泊まではいきますかねえ
その先までは進まないと思います
もしくはその部分がカットされてその先から始まるかもしれません

感想、評価、訂正や意見、何でもいいんで言ってもらえるとありがたいです

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