神速の殺戮姫は太陽を嫌う   作:クトゥルフ

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どうも、”太古の海神”クトゥです

大学の用事で小学校行ったり、(アイルー)と戯れたりしていたら、二週間以上経過しちゃいました
夏休みももうすぐ終わっちゃうのでどんどん投稿していきたいのになぁ……
また不定期になりそうだし……

さて、雑談はここまでにして
今回はタイトル通り、大地人の村にいきます
それではどうぞ



大地人

ふう、死ぬかと思った…………

私は一つ、ため息をつく

現在、私たちは《ススキノ》からセララを救出して、《アキバ》への帰途についている最中だ

行きを四人で越えた私たちに、優秀なアタッカーであるネコさんに、レベルは低いけれども回復ができるセララが加わったことにより、帰りは行きよりもかなり楽になっていた

そりゃあそうでしょう、少しの傷であればセララが何とかできるから、ほんの少し無茶もできるようになった上に、アタッカー過剰気味であるこのチームにさらにアタッカーが加わって火力が上昇したんだもの

そんじょそこらの敵であれば、苦戦はしない

だからといってスピードが上がったわけじゃないけど

楽にはなったけれども念には念を入れてと行きよりもゆっくりと進んでいた

それにも関わらず、私は死にかけた

それはとんでもない強敵が現れたから……………………ではない

単に私が説明不足だっただけだ

 

私が回復魔法を受けたら大火傷するってことを

 

「すみませんっ、すみませんっ」

私をここまで追いやった本人(セララ)が必死になって謝ってくる

うん、まあ、命の恩人のうちの一人を瀕死に追いやったら、そうなるわよね

「大丈夫よ、説明しなかった私が悪いんだし」

「で、でも…………」

それに納得ができないようでまだセララは謝ろうとする

「次から気を付ければいいから、ね?」

とりあえず今は休ませてと私は皆に訴えてから、木に寄りかかり私は意識を失った

結局私が目覚めることになったのは次の日の朝だった

 

 

 

それからの旅はなおさら順調だった

ええ、一回惨事を起こせば、さすがに気を付けてくれるでしょうね

本当、次からはきっちり説明しておきましょう

それで死にかけたらシャレにならないし

空を召喚笛の限界時間までゆっくりと飛んで、そこからは陸路をゆっくりと進み、日が暮れる前に野宿の準備を始める

これの繰り返しだ

特に変化もなく変わるものと言えば、会話と食事の内容、後は景色といったように本当にゆったりとした時間だった

今日もまたその繰り返しのはずであった

「あらら、これはまずいわね…………」

目の前にせまりくる不穏な空気を漂わせる黒き気配

肌に当たる湿った風は、奴の訪れを告げている

間違いない、あれは……………………

 

雨雲だ

 

なんだ、その程度かなんて思う人もいるかもしれないけれど、私にとっては心配事の一つであった

物語などの吸血鬼はそうじて弱点が多い

その代わりと言わんばかりに強大な力と驚異的な回復能力なども持っているが、弱点を突かれればそんなものは全く意味をなさない

有名な弱点と言えば、日光や大蒜、十字架などだろう

また銀製の物や聖水など聖なる力のこもったものも苦手だ

他にも心臓に木の杭を突き刺すとか、流水とか、いろいろな弱点がある

…………雨って、上から下に流れていく水よね?

スキルとしては雨でステータスが弱くなるなんてものはないけれども、《大災害》以降の《エルダー・テイル(この世界)》では何が起こるか分からないのだ

使えなかった特技が、サブ職業(サブクラス)のありようが、さまざまなものが変わってしまっている以上、こんな些細な事でも警戒しておくに越したことはない

もっともそんな長ったらしく言っている理由よりも雨にぬれたくないという理由の方が九割以上を占めているのだけれども

「直継」

「分かってるって」

横で《鷲獅子》に乗って飛んでいる直継に声をかけると、彼も気づいていたようで下方を飛ぶ仲間に呼びかける

「おーい。シロ~。にゃん太班長~」

大きな声を出さなければ聞こえない距離ではあるが、念話をかける時間すら惜しんでいるのか直継は念話を使わずに叫んだ

正直な話、私が伝書蝙蝠みたいにすればいいんじゃと思ったのは内緒だ

念話や大声なんかよりは遅いが直接話す分、念話同様、情報は正確に伝わるだろう

まあ、大声でもしっかり伝わったみたいだしいいかしら

結果として私たちは雨宿りの場所を探すために下へと降りていった

 

 

 

なんとか間に合いそうね……

私たちは今、大地人の集落に来ていた

小さな農村といった感じらしく、木で作られたこじんまりとした住居が狭い空間に散りばめられている

村民たちも天候の変化に気が付いたようで、急いで洗濯物を取り込んだり、家畜を小屋に入れようとしたりと忙しそうにしている

…………あら?

視線を感じてそちらの方を見ると一人の女性がこちらの方を見ていた

…………種族は戻したはずだけど、本能的に気づかれちゃったのかしら?

いや、大地人はそこまでの力を持つはずがないだろう

拡張パックの影響かもしれないけれど、そんな意味のないシステムは作らないでしょう

じゃあ、何故彼女は私だけを見つめているのか

……………………ああ、そうか、()()

これは面白い話が聞けそうね

そう思いながら私はシロエたちの後をゆっくりとついていった

 

 

 

シロエたちについていくと大きな家があった

なるほど、ここがこの村の中心ね

「こんにちはぁっす!」

先頭を切った直継が、屋内へと声をかける

「はいはい。旅人さんかね」

その声に応じて、奥の方から一人の老人が現れた

おそらく彼がこの村の指導者なのだろう

まだまだ現役なのだろう

背筋もピンとしており、肉付きもよいし、顔色も優れている

おそらく農作業やら何やらで身体をよく動かしているのでしょう

シロエが一晩の屋根を貸してほしいというと、彼は倉庫を貸してくれた

その倉庫は冬場のために牧草を貯蔵している場所らしく、春を終えたばかりの今でも余った藁がたくさん積まれていた

もう雨は本降りになっている

「懐かしいわね…………」

昔もこんな風に藁をため込んだ倉庫に雨宿りで駆け込んだっけ

そして、藁に飛び込んで、そのまま疲れて寝ちゃって…………

そんな懐かしさのあまり、藁の山に駆け出して飛び込んでいった私は悪くないはずよ

あなたたちだって懐かしくなってやりたくなることくらいあるでしょう?

「いや、あるけどさ…………」

「たしかにあるけれども…………」

「じゃあ、別にいいじゃない」

むすっとした顔で私は言い放った

笑いたければ笑いなさいよ

私は気にしないから

「まあ、そうだな。俺も藁の山とか大好きだぜっ」

ほんのり柔らかくてあったかいものね

気が付いたら埋もれてることもあるけど

「そうですにゃ~。ここは居心地のよさそうな場所ですにゃ」

アカツキもその言葉にうなづいている

私も本当にそう思うわ

この倉庫自体もそうだけれども、この村自身もよいところだ

だからこそやらなきゃいけないことがありそうだけれども

まあ、手は出せないから忠告やらしかできないけど

さてといつまでも藁の山の中にいるわけにはいかないわね

皆の寝床を作ったりする必要があるし

そうして私は藁の山の中から抜け出した

それを合図にしたかのように皆、それぞれ作業へと向かっていった

 

といったものの私やシロエは他の皆が作業をしてくれているので特にすることもなく、目の前で寝床づくりに励んでいる二人のじゃれ合いを聞きながら二人して苦笑するしかなかった

そこへ先ほどの老人が話しかけてきた

「旅人さんたちは、ツクバの街からですか? 《冒険者》のみなさんでしょうか?」

「ええ、はい。《冒険者》です。もっともアキバの街へと向かっている最中ですけれどね」

「ちょっと用事があったので、アキバから出かけていたのです。今は用事が終わったのでアキバの街へと帰る途中でしたの。流石にこの雨の中、帰るのはきつそうだったのでこうやって屋根を借りに来たのです」

…………シロエや直継が何やら私を見て驚いているが気にしない

私だって丁寧に話すことぐらいできるわよ

食事会なんかに参加することもあったんだから

「それは大変でしたね。どうぞゆっくりとお休みになってください」

「はい、そうさせていただきます」

老人も私もそう言って微笑む

そんな二人の前に液体の入ったカップが差し出された

「どうですか?」

出した本人であるシロエは老人にそう聞いた

「これはありがたい……。お茶……ですか?」

お茶、もっともこの世界の普通のお茶ではなくネコさん特性の味のあるお茶だ

今までずっと味のないお茶を飲んでいた老人はこのお茶をどう思うだろうか

「ほら、伯爵も受け取って」

「ええ」

シロエは私にもお茶を渡すと、自身の水筒の蓋にお茶を注ぎ、手近にあった木挽き台に腰をかけた

老人は丸太で作った椅子をシロエの近くまで引きずって、椅子の上に腰を下ろした

私はと言えば壁に寄りかかって、お茶をゆっくりと飲む

うん、やっぱり美味しい

ふと、老人の方を向くと初めて感じた味に驚いているみたいだ

「どうです? なかなかいけませんか?」

「これは素晴らしい…………」

老人は驚きながらも顔をほころばせた

向こうで寝床を作ってくれている二人の戯れを聞きながら、私たちはのんびりとお茶を飲む

雨はまだまだやみそうにない

「元気のよいお仲間ですなぁ」

「そうですね。お恥ずかしいです」

「いやいや、旅暮らしにはそれくらいの元気が必要ですよ。《冒険者》のみなさんであれば、それも当然です」

時間はゆったりと流れていく

「わたしたち《大地人》は旅をあまりしませんからなぁ」

それは仕方のない話でもある

《大地人》というのは、《エルダー・テイル(この世界)》の住人だ

ゲームの頃はNPC(データ)の一種であったが、《大災害》後の現在では皆、この世界を生きている人間である

しかし、この世界は《エルダー・テイル》によく似た世界だ

《冒険者》がゲームの仕様を引き継いでいるように彼らもゲームの仕様を引き継いでいる

例えば、その強さ

ゲームである以上、《冒険者(プレイヤー)》が活躍しなければならない

大地人(NPC)》が《モンスター》を倒せるほど強かったのならば、《冒険者(プレイヤー)》よりも《大地人(NPC)》が活躍するという悲しい事態になってしまう

そのため《大地人(NPC)》は弱い

冒険者(プレイヤー)》の何倍も弱い

当然彼らもそれを引き継いでおり、弱い

そんな彼らが旅に出れば大半が魔物にやられてしまうだろう

冒険者(プレイヤー)》ならば《大神殿》で復活する(一回一回アカウントロストするMMORPGは上級者向けすぎる)が、《大地人(この世界の住人)》は当然死ぬ

だからこそ旅にでる《大地人》は少ない

ここは彼らの世界なのに

「《大地人》ですか――」

「ええ、この村はよいところですし、困ることはあまりありません」

他の村や街に行くことはできなくても、彼らは自給自足に近い暮らしをしているから困ることはないのだろう

魔物関連は《大地人》の兵士や《冒険者》、《古来種》(《冒険者》に匹敵、あるいは凌駕するほどの力を持ったNPC)なんかに任せておけばいいしね

今までもずっとそう暮らしてきたのでしょう

何かを失いながらも、何かを得ながらも、己が知る常識(この世界)のもとで

………強いわね、彼らは

強者なんかよりもずっと強い、自分たちの世界がどんなに不条理なのか知っているのに嘆くこともなくそれを受け止めて生きていく

私にはできない

もうすでに一回逃げてしまっている

私たちはこの世界に強者として存在している

作り物(ゲーム)の知識をもとに、現実(ゲーム)を一時期かもしれないが生きていこうとしている

その中にある間違った知識も使いながら、生きていこうとしている

私たちは無知だ

作り物(ゲーム)は知っていても、この世界のことは全く知らない

私たちは弱者だ

現実を失っただけでも、この世界に立ち向かうことすらできなくなっている

本当に弱い

「あなたたちはお強いのですね」

私の口からぼそりと声が出た

聞こえていたのはおそらくアカツキだけだろう

 




次回はまだ大地人の村です
あれと話さなきゃいけませんからね
あれの正体、分かる人いるのかな?
それではまた次回!

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