神速の殺戮姫は太陽を嫌う   作:クトゥルフ

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どうも、”太古の海神”クトゥルフです
今回はオリジナルストーリーですね
前回登場したあれとの会話です

それではどうぞ


吸血鬼

《吸血鬼》

私のサブクラスであるそれは本来モンスターの名前だ

それも《緑小鬼》や《鼠人間》と同じ《亜人》である

まあ、《亜人》よりも《不死種(アンデッド)》のイメージが強いけれども

《亜人》というのは普通のモンスターと違い、侵略と言っても差し支えのない行動を取る連中である

たとえば《緑小鬼》はたびたび農村を襲撃し、人々を蹂躙し、生産物を略奪する

水棲緑鬼(サファギン)》という魚を人間みたいにしたと言える《亜人》は海を行く船を襲ったり、海辺の町を襲ったりもする

このように《亜人》は他のモンスターに比べて、人間の村や街を積極的に襲うモンスターなのだ

そのため《エルダー・テイル》の《クエスト》には《亜人》に関するものがかなり多かった

大規模戦闘(レイド)》だってあるくらいだ

この世界に置ける人間たちの敵と言えば、確実に《亜人》を指すだろう

もちろん《吸血鬼》も《亜人》なので、日夜、自分たちの勢力を強めようと動いている

まあ、全ての《吸血鬼》がそう考えているわけではないけれども

私とかね

まあ、それはさておき、《吸血鬼》たちは勢力を強めるために、狡猾な頭脳を用い作戦を練る

その際、彼らは自身が生み出したモンスター《吸血鬼の従者(ヴァンパイア・サーヴァント)》を偵察に出す

《吸血鬼の従者》も《吸血鬼》も人と変わらない姿を持つモンスターだ

彼らが人の中に紛れて生活しても何の違和感もないだろう

私がこんな話をした理由は簡単だ

人間に化けた《吸血鬼》を一目で見抜ける存在なんてそれこそ

 

吸血鬼(同類)》しかいないじゃない

 

 

 

 

真夜中

もうすでに雨はやんでおり、雲の切れ間から月明かりが差し込んでいる

私はアカツキが綺麗に作ってくれた寝床を抜け出し、村の中を散歩していた

もう住民たちは寝てしまったことだろう

そんな静かな村を月明かりに照らされながらゆったりと歩く

村の家々に月明かりがあたり、とても綺麗だ

「あなたもそう思わないかしら? ねえ、《吸血鬼》さん?」

私は後ろを振り返って、言った

「やはりばれてましたか」

そう言って彼女は少し離れた建物の陰から現れた

「あれで隠れられてると思うなんて、夜の血族である《吸血鬼》をなめすぎじゃないかしら?」

「《冒険者》風情と言えども、腐っても《吸血鬼》ですね…………」

忌々し気にこちらを睨み付けながら、彼女はそうつぶやく

同じ種族なのにここまで敵意を向けられるのは、私が《冒険者》だからではない

《吸血鬼》は誇り高い魔物であり、己が支配者、絶対的な王者でないと気が済まないのだ

そのため、一つの街を狙って《吸血鬼》同士が戦うこともある

そのため多くの《吸血鬼》は敵対関係にあるのだ

だから私が純粋な《吸血鬼》だったとしても睨まれていただろう

例え彼女に勝ち目がなくとも

負けるから命乞いをすることや自身の負けを認めることなど誇りが邪魔してできないのだろう

「あらあら、そんなに睨みつけちゃって。せっかくの顔が台無しよ」

「…………分かっているくせに」

ええ、《冒険者》がいるだけでも《吸血鬼》は作戦を実行しづらいだろうし、尚且つ誰が《吸血鬼》か見抜ける《冒険者》なんて邪魔にもほどがあるから出ていってほしいなんて思っているんでしょうね

《冒険者》がいると《吸血鬼》には作戦序盤で倒される可能性ができる

しかし、誰が《吸血鬼》か分からなければ村人たちは疑心暗鬼になり、《吸血鬼》側にとっては面白いだろう

だが逆に、分かってしまえばすぐに終わってしまい、《吸血鬼》側には最悪の事態だろう

それができる私には何が何でもこの村から出ていってほしいのだろう

実際明日には《アキバ》へ向けて旅立つのですぐに出ていくけどね

「さて何のことかしらね?」

ケラケラと笑いながら、何も知らないかのように言った

「しらばっくれないでくれませんか」

彼女は鬼の形相を浮かべながらそう言い放つ

あら、怖い怖い

「邪魔なんですよ、あなたがいると」

しっかりとこちらを睨み付けてながら、彼女は続ける

「出ていってくれませんか?」

丁寧な言葉遣いであるがその言葉の中には明確に殺意が埋め込まれていた

普通の《大地人》なら関係がなくとも逃げ出すであろう強大な殺意

今だったら見逃してやるから出ていけという脅迫

もっとも誇り高き《吸血鬼》たちならば、殺意におびえて逃げるなどプライドを捨てる行為はしないだろうからそのまま戦いになっちゃうけど

多分私が《冒険者》だから脅しているのでしょうね

《冒険者》は死んでも生き返るから脅しても意味はないでしょうけども

所詮は人間、恐怖で逃げ出すとでも思っているのでしょう

「嫌だといったら?」

ニヤニヤと笑いながら、私は彼女に聞く

それに対して彼女は私の首元に漆黒のナイフをあててから答える

「殺します。戻ってきたとしても殺します。何度でも殺します」

「そう」

予想してた通りね

だけど全部あんたの思う通りにはさせない

そろそろ頃合いでしょう

そして私は次の行動に移る

 

「いい気になるなよ、小娘が」

 

「え?」

先ほどのあっけらかんとした私の姿は彼女の前には存在しなかった

代わりに重罪人を目の前にした閻魔のような形相をした《吸血鬼》が彼女の後ろに立ち、首元にナイフを突きつけていた

無論、私だ

「い、いつのまに!?」

「うるさい、黙れ」

地獄の底から響いているような声で私は言い放つ

「下手に出ておれば、いい気になりおってからにそんなに死にたいのかえ?」

彼女の頭を片手で床に押さえつける

「ぐっ…………」

「出ていけ? 何度でも殺す? やれるもんならやってみぃ。おんしに勝ち目はないがな」

事実そうだろう

必死に立ち上がろうと彼女はもがくが、私の片手を振りほどくことすらできていない

このままだと意味のある抵抗もできないまま、私に殺されるだろう

そして《吸血鬼》の作戦は失敗し、村に平和が訪れる

 

などというのは甘い楽観論だ

 

第一に彼女の代わりなんていくらでもいるであろうこと

殺したところで新たな《吸血鬼の従者》が送られてくるだけだ

第二に村人に彼女が《吸血鬼》である証拠を提示できない

そうすると私はただ無力な《大地人》を殺した《冒険者(野蛮人)》になる

それは一番避けなければならない

よって彼女を殺すことはできない

そもそもまだ何もしていないからね

私にナイフを向けること以外

だから、最初から彼女を殺す以外の選択肢を取ることに決めている

今はそのための準備とも言える

 

やがて彼女はもがくことを止めた

静かに目を閉じて終わりの時を待ち始めた

そろそろいいわね

「なーんてね、冗談よ、冗談」

そう言って彼女の頭から手をどけ、フフフと笑う

向こうから見たら全く冗談に見えないんでしょうね

邪魔をしたら殺されるだろうなぐらいは思ってくれたかしら

じゃあ、次に行きましょう

「さっきの話に戻るんだけど、条件をのんでくれるなら考えてもいいわ」

「それは…………何かしら」

ケラケラと笑う私を、彼女はしっかりと睨み付けながら、そう言った

それをきっちりと睨み返しながら私は要求を言う

「いくつか質問に答えて欲しいの」

彼女は無言のまま何も言わない

「だんまりを決め込んでもいいし、嘘をついても別に構わない。ただし…………」

 

「その時は近くないうちに大事な人がいなくなるかもしれないわね。うふふふふ……」

「な!?」

《吸血鬼の従者》は《吸血鬼()》の為なら、なんだってする

家事であろうが、人間に紛れることだろうが、命を捨てることだろうが何でもする

そのため、《吸血鬼の従者》の命は非常に安い

そうすると彼女の命を脅迫の材料にしても何の意味もなさないだろう

ならば、主を殺すと言えばいい

だれが主か分からなくてもダンジョンにすくう《吸血鬼》たちを一網打尽にしてしまえば自然と主も殺してしまうだろう

「ぐっ……卑怯な……」

「最初に脅迫したのは誰だったかしらねぇ?」

これで彼女は私の質問に答えないということはなくなっただろう

が、嘘をつく可能性はまだ残っている

何故なら私には正しい答えがないからだ

正しい答えを嘘だと思うかもしれないし、間違った答えを本当だと信じてしまうかもしれない

こればかりは彼女の《吸血鬼()》柄にかかっているわね

 

 

 

「…………何が聞きたいんですか」

やはり主人の命には代えられなかったのか、彼女は忌々しげにこちらを睨み付けつつ交渉に応じてきた

「そうね、主が死んだらあなたたちはどうなるのかしら?」

相手にとっては嫌がらせのように見える質問だけど、これは聞きたいことの一つでもある

《吸血鬼の従者》は《吸血鬼》によって作られたモンスターである

では《吸血鬼(作り主)》が死ぬと《吸血鬼の従者(作品)》はどうなるのか

名だたる芸術品のように残るのか、それとも動力源がなくなったことで死に絶えるのか

それが気になったのだ

後者なら《吸血鬼の従者》を止めるには《吸血鬼(その主)》をぶちのめせばいいということになる

「私たちは残ります。ですがその主の死を認めたくないがゆえに自殺してしまうもの、人間への復讐のために力を得て《吸血鬼》になるもの、新しい主を待ち望むものとその後どのような行動を取るかは分かりません」

彼女は私をさっきより強く睨み付けながら答える

「じゃあ、次の質問。従者であるあなたたちは主の命で動いているのよね。その主の命はどうやって受け取っているのかしら?」

少し離れた場所であれ指示を円滑に遅れないのなら、作戦に支障が出るはずだ

また手紙などの物だとタイミングが悪いとばれてしまい失敗に終わるだろう

だからおそらく念話などに似た何かがあるんでしょうね

「……………………」

彼女はだんまりを決め込んだみたいだ

「ふーん、じゃあちょっと出かけて来るわ」

そう言って私は飛び立とうとする

「ま、待ってください!」

彼女は焦ったように私の腕をつかんだ

「あら、何かしら?」

「どうか、どうか主人だけは見逃してくれませんでしょうか! 私にできることなら何でもしますから! だから、だから主人だけは…………」

そう言って彼女は涙を流しながら、私に頭を下げる

傍から見たら完全にこちらが悪役よね、これ

実際は逆なんだけれども

「最初に言ったじゃない。『だんまりを決め込んでもいいし、嘘を言っても別に構わない。ただし、その時は近くないうちに大事な人がいなくなるかもしれないわね』って。それなのにあなたはだんまりを決め込んだんでしょう? なら、当然こうなることも覚悟してたんでしょう?」

「それは…………」

ぐっと彼女は苦しそうな顔をした

「まあ、いいわ。あなたが何でもしてくれるって言ったものね。私が殺しに行くのは諦めましょう」

ふふふと笑いながら私は彼女にこう言い放つ

「だからあなたがあなたの主を殺しなさい。私もついて行ってあげるから」

「え!?」

彼女の顔が驚愕に染まる

必死の願いが届いたかと思いきや、余計に悪化しているわけだしね

それもこれも何でもするから助けてと言ったあなたが悪いのよ?

「そっちの方が、私が殺すよりも楽しいことになりそうだし」

本当にそうだろう、従者が自分の大好きな主人を殺さなくちゃならないなんてどこの悲劇かしら

しかも断ったとしても主人は死ぬわけだし

「でも、主人の方が強いですし…………」

そんなことは分かっている、従者より弱い《吸血鬼()》などいるわけがないだろう

「その程度なら私が抑え込んであげるわよ。そうすればあなたでも殺せるでしょう?」

だからと言って、大規模戦闘(レイド)ボスとタイマン張れる《冒険者》とタイマン張れるなんてことはそうそうないでしょう

それこそ大規模戦闘(レイド)ボスでもない限り

「くっ…………」

万策尽きたようね

まあ、私もそこまで鬼ではないわ

助け舟くらいは出しましょう

「それが嫌なら質問に答えなさい、大根役者さん」

「…………いつから気づいてました?」

そう言って彼女はこちらを睨み付ける

もう彼女の目には涙など浮かんでいない

「だんまりを決め込んだ辺りからよ」

おそらく連絡手段を知らないことから、今現在も連絡を取り合っていることに気づかれてないと考え、それをもらさないためにもだんまりを決め込んだ

そうすると私が主人を殺しに行こうとするからそれを泣き脅しで止めようとした

そんな感じかしら

そう彼女に告げるとかないませんねと一言つぶやいた

 

 

 

それからいくつかの質問をした

《吸血鬼》の苦手なものは何かとか、今どれくらいの派閥がいるのかといった重要になりそうなものから、あなたの好きな人はとか、あなたの夢はといったどうでもいいものまで

いろいろなことを聞いた

重要な情報は嫌そうな顔で教えてくれた彼女だったが、夢や好きな人のことを聞くと嬉々として語ってくれた

主人はこんなにかっこいいんだとか、こんなにすごいんだとか、うんざりするほど聞かせてくれた

「ありがとう。なかなかに楽しい時間だったわ」

「こちらこそ。悪くはありませんでした」

夜明けも近いので私たちはそろそろお開きにすることにした

「じゃあ、最後の質問と行きましょうか」

真剣な表情でそう言った私に彼女は身構える

「そんなたいそうな質問じゃないわよ。あなたはこの村が好きかしら?」

彼女はゆっくりと考えてから

「ええ、好きです」

と主人のことを語るときと同じ笑みで答えた

「そう。それなら嫌われないようにがんばりなさい」

「そうですね」

彼女がこういってくれるならまだ安心だろう

彼女は村人を丁重に扱うことだろう

それならいいのよ

じゃあ、ちょうどいいからネタばらししましょうか

「ああ、そうそう。ちなみに最初からこの村から旅立つ予定だったのよ」

「へ?」

彼女は驚いたようにこちらを見る

「あなたと話をしたかったからわざとあんな素振りをしたのごめんなさいね」

「え? え?」

彼女は本気で困惑しているだろう

最初から最後まで演技だったのと言われたらそりゃあ驚くわよね

「じゃあ、またいつか会いましょうね」

そう言って私は倉庫へと戻っていった

 




いやはや、なんでこんなにルナは悪役ぽくなってしまったんでしょうね?
まあ、だいたい想像はつきますが

次回は《アキバ》の街へと帰りつくところですね

さてと次回もお楽しみに!

一つお知らせを
現在活動報告の方で二つのアンケートをやっております
片方は物語の進行に影響を与えるので期限を設けるつもりです
期限はこちらの作品で悪徳ギルド《ハーメルン》がやられてから一週間後までとしましょうか
どうかご協力のほどお願いします

感想、評価、誤字等の指摘、お気に入り登録等、気が向いたらよろしくお願いします
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