神速の殺戮姫は太陽を嫌う   作:クトゥルフ

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どうも、太古の海神クトゥです
今回はいろいろと試しながら書いた番外編です
ログホラのロの字もでてきません
おそらく読まなくても本編が分からなくなることはないでしょうし、ルナの過去で不快な気持ちになった人は読まない方がいいと思います
その話ですし
それでもかまわない、俺は読むぞという方はどうぞ、お読みください


番外編
番外編1 傍観者は後悔を物語る


いじめっていうのはよく加害者と被害者だけに目が向けられがちだけど、その二者よりもっと罪深い人たちがいる

それはいじめがあることに気づいていながら、己が身が可愛くて、めんどくさくて、ただただ放置する傍観者である

これは僕の罪の話

ただただいじめを放置することしかできなかった傍観者の後悔の記憶

 

 

 

僕が彼女と出会ったのは小学校入学式後の初めてのホームルームだった

皆、初めての学校に興奮して落ち着きがなく、自己紹介なんてまともに聞いている子なんていなかった

その子の自己紹介が始まるまでは

彼女が立ち上がった瞬間、皆が一斉に静かになった

その子はとても可愛かった、間違いなくクラスで一番だろう

ひまわりのような天真爛漫な笑顔がすごく素敵だった

ただ静かになった理由はそれよりも見慣れない髪と目の色であろう

白というより白銀というべきであろうさらさらの髪、紅玉のように美しく紅く輝く瞳

その見たことのない色に子どもたちは驚いたのだろう

「…………です。みんなと仲良く過ごせたらいいなぁと思っています。これから一年間よろしくお願いします」

彼女は自己紹介をそう言って終えた

 

ただ結論から言ってしまえば、彼女はその思いをかなえることができなかった

周りの子どもは彼女のようにできた人間ではなかった

ただただ純粋な子供だったのだ

だからこの少女の願いは叶わなかった

 

 

 

彼女は自己紹介以降、目まぐるしい活躍をした

授業中は真剣な態度で取り組み、先生が驚くような素晴らしい意見をいっぱい出した

当然テストは常に満点であった

運動をやらせてもすごかった

男女の身体差がない時代にしても、彼女がクラスで一番運動ができた

書道だろうが美術だろうが音楽だろうが彼女はすごかった

あまりにきれいな字に先生すら驚き、絵画は平然と受賞し、楽器を弾こうが歌を歌おうが誰もが聞きほれてしまう…………

彼女はとてつもない天才児だったのだ

先生たちはとても喜んだ

手間がかからないし、わがままも言わない

その上、多彩な才能を持っている

先生たちは彼女のことを神童だの天才児だのと呼び、彼女をあらん限りの言葉で褒め称えた

それは先生たちにとって彼女を祝福するための言葉だったのだろう

しかし、残念なことにそれが彼女を呪う言葉になってしまった

 

ひまわりのように可愛らしい少女は可愛らしすぎて、女の子たちから嫉妬をもらった

あまりに秀ですぎた才能は、他の生徒の夢を握り潰し、みんなから恨みを買った

みんなとは違う見た目は、みんなに嫌悪感を抱かせた

そして、先生たちから一人だけちやほやされている光景は、みんなから嫉妬をたたきつけられた

彼女を褒め称える言葉は、周りの人の彼女に対する嫉妬を増幅させる言葉であり、それは積もりに積もった彼女への負の感情という爆薬に火をつけることとなってしまった

 

 

 

そうして初めのいじめが始まった

初めは陰口だった

「ほら、あの子の家、お金持ちじゃない。きっとお金で何とかしたんだわ」

「えー、最悪じゃん」

「アタシはそうじゃないと思うな。あいつ可愛いから、体売ったんじゃない?」

「うっわ、それ、マジでキモイ」

「最低の下種だね、あいつ」

そんな声が向こうのテーブルから聞こえてくる

おそらく彼女のことだろう

今この場には先生も彼女もいない

だからこそだれもこの話を止めようとはしない

みんな、彼女に少なからず恨みがあるから

または次のターゲットに自分が選ばれたくないから

そして誰も止めることなく陰口は続く

止まるのは先生か彼女が帰ってきた時だけ

この時点で止まっていれば、止められていれば何もなかったということで済ませられたはずだけど誰も止めることなく先へと進んでしまった

 

陰口はだんだんと苛烈になっていった

今までは彼女が来ても止まっていたが、彼女が来ても止まることなく、ただ声を潜めて彼女の悪口を言い続けた

ひそひそといった感じだが自分にも聞き取れるということは彼女には聞こえているだろう

おそらくわざと聞こえるように言っているのだろう

だが彼女はずっと何も知らないような天真爛漫な笑みを浮かべていた

それに悪口を言っていた連中は腹が立ったらしく、舌打ちの音や机を蹴る音が時折聞こえた

 

 

 

やがて連中はいじめのレベルを上げた

彼女が何もないかのようにふるまうから余計に腹が立ったのだ

だからいじめの苛酷さを増したのだ

陰口は悪口へとなり彼女の元へと直接ぶつけられた

その内容さえも酷いものとなった

そしてそれに合わせて嫌がらせも始まった

 

彼女の日常は靴探しから始まる

学校に通って下駄箱に着くと、いつものように彼女のシューズがないため、シューズを探すところから始まる

隠し場所はそこまで難しい場所ではない

だから彼女はすぐにシューズを見つけられる

そんな彼女を見て、いじめっ子たちはあざ笑う

「なんでそんなところにシューズしまってんのよ」

「下駄箱にしまいなさいよ。あ、無理か。何度言っても仕舞えないもんね」

そんな嘲笑に対して

「うん、無理だね。靴が勝手に歩いちゃうんだから」

と笑いながら言う

「は? 何言ってんの? あんたが間違えてしまっただけでしょ? 言い訳すんな」

馬鹿にされても気にせずに笑う

そのまま自分の席へと向かい、自分の席の上に置いてある綺麗な花を鞄棚の上に飾り直す

そしてホームルーム、授業と彼女の安寧の時間を迎える

しかし、その安寧の時間もグループ活動ともなると崩壊する

無視され、はぶられ、はずれくじのように扱われ、役割も持てず、いないものとして扱われる

それでも彼女はにこにこと笑いながら話しかける

何度無視されても、何度キモイと言われても

やがて給食となると自分の分は極端に少なくつがれたり、偶然の事故を装って落とされたりと散々な目にあいながらも笑いながら楽しそうに給食の時間を過ごす

昼休みはさっさと図書室に逃げるが、帰ってくると彼女の教科書やらノートやらがずたぼろにされている

彼女は笑いながらにそれを見て、そのまま授業を受ける

掃除はみんなにゴミ扱いされるために隅っこで誰にも見られないように掃除をする

そして終礼をして、家へと一人で急いで帰る

 

彼女の日常はいつもこんな感じであった

こんな日常なのに彼女はいつも笑っていた

彼女は一人でいじめに立ち向かっていた

彼女の屈しない心は本当に素晴らしいものだった

しかし、それが仇となった

それはいじめっ子たちのプライドをぶち壊した

何が何でもこいつを泣かせて見せると断言し始めるいじめっ子たちが出てきてしまったのだ

 

 

 

その結果、いじめはさらに過酷になった

おなかを思いっきり蹴り飛ばす、二階から突き落とす、集団で殴る

彼女は日に日にぼろぼろになっていった

しかし、彼女は笑っていた

たとえ頭から血を流しても、どんなに周りから殴られても笑い続けた

もはやそのころには傍観者にもその笑顔は悪魔の笑みであった

なんで笑えるのか、どうしてここまで耐えられるのか、全く分からない

もうその頃には彼女が怖かった

関われば巻き込まれてしまうかもしれないし、そもそも彼女に近寄りたくない

そう思ってしまっていた

やがて僕は恐ろしさゆえに泣いてつぶやいた

 

「バケモノ」

 

その時の彼女の表情は今でも忘れない

一瞬だけではあるけれども彼女の表情に悲しみの色が浮かんだのだから

他ならぬ自分の所為で

 

その日はいじめの現場が先生に見つかってしまった

ただし、先生は泣いている僕を見て、誰が泣かせたんだと皆に聞いた

そう、僕の泣き声を聞いて、僕が何かされていると先生は勘違いしたのだ

実際に傷ついているのは彼女なのに

実際に傷つけたのは僕なのに

先生の問いに皆はすぐに彼女を指さした

それを僕も彼女も否定することはできなかった

確かに僕が泣いているのは彼女の所為であったから

 

 

 

その後、彼女と僕は職員室に連れていかれた

先生の表情や僕の状態から周りの先生たちは間違った事情を把握したようでなんで彼女がとか嘆く声が聞こえてきた

今まで問題の一つも起こしていない、手のかからない優秀な子どもである彼女が問題を起こしたのだからそれは職員室に驚きを巻き起こすのも無理ないだろう

先生は自分の席へと僕たちを連れていくと何があったんだと聞いてきた

僕は泣きじゃくっていたから何も話せなかった

彼女は「私が悪いんです」と一言言った

正直な話、どうして彼女がいじめられていますと言わなかったのかこの時は分からなかった

体が傷だらけなのだから先生たちもいじめられているのかもしれないと思うはずなのに

どうしてこんなことしたんだと聞かれ、むかついたからと彼女は答える

その後彼女は滅茶苦茶怒られた

今までが優秀すぎたゆえの反動でとてつもなく怒られた

何でも思い通りになるなんて思うなとか、何があっても人を泣かせちゃダメだとか、皆と仲良くしたいって言ったのはお前だろとか

何も知らない先生はそういう言葉を彼女に言った

それが彼女の胸に深く突き刺さっているのは間違いないだろう

仲良くしたくても周りが許してくれない

いるだけで人を泣かせる

何もかも思い通りにならない

そんな彼女に対しては最悪の言葉だった

やがて少しして僕の親が来た

母は僕を見つけると可哀想にと言いながら優しく抱きしめてきた

僕は母の腕の中で泣いた

何もできない自分が不甲斐なくて、動き出す勇気がなくて

 

何もかも思い通りにいかない彼女が可哀想で

 

ただその思いは母には届かなかった

母は彼女がいじめられていることを知らないから

先生にお子さんが泣かされたと報告されていたから

今この場で泣いているのは僕だったから

母は彼女に先生以上に怒った

自分の娘が傷つけられば、大半の母親は怒るだろう

家庭内暴力や教育方針にもよるが

僕の母は、というか両親は親ばかだから傷つけた子を許せるわけがなかった

だからこそ先生以上に辛辣な言葉が彼女に襲い掛かった

それは彼女の母が来るまで続いた

彼女の母がくると母はそちらに標的を変え、怒った

どういう教育しているのとか、お金持ちだから何でも許されるなんて思わないでとか

相手のことを何も知らないのに母は怒った

彼女の母は間違った教育をしているとは思えない

それは今までの彼女の行動からよく分かる

そう思っても僕は動くことなく母の胸元で泣いていた

 

 

 

その次の日からまたしてもいじめの内容が変わった

僕が一瞬だけ彼女が悲しんだのが分かったように何人かは彼女が化け物という言葉に反応したのに気が付いたようで、彼女をバケモノとして扱うようになった

たったそれだけの変化だったが、彼女にとっては大きな変化だったことだろう

今までは精神面にダメージがあまりなかったため、おそらく彼女はそちらで痛みなど耐えていたのだろう

でも少しずつではあるが精神面にもダメージが入ってきたことより、彼女はふらつくことをたまに見かけるようになった

体育の授業も見学することが多くなった

それでも笑顔は絶やさなかったし、学校に来ないこともなかった

それがやはりいじめっ子たちには気に食わなかったようでいじめは止まることはなかった

 

 

 

ところでバケモノと聞くと何を思い浮かべるだろうか

吸血鬼(ヴァンパイア)》だったり、《蛇眼女(メデューサ)》だったり、そんなファンタジーで出るようなモンスターを思い浮かべるんじゃないかと思う

大抵のモンスターは人間に敵意を持っているか、害をなす能力を持っている

そのためファンタジー等では人間の平穏のために倒さなければならない存在となっている

それを倒す者が一般的に英雄と呼ばれる

なんて言う法則とでも言えるお決まりがある

さてそんな思考に行きついた考えの浅い英雄(ヒーロー)に憧れる少年はどうするだろうか

答えは単純

バケモノがいるならば、倒せばいい

そしてちょうどうちのクラスには彼女(バケモノ)がいる

その結果

 

彼女は英雄気取りの少年に打ち取られた

 

彼女の胸元にしっかりと刺さったナイフ

そこからは紅い液体がドクドクと流れていく

「やった、バケモノを倒した!」

少年はナイフを抜き取り、高らかにそう言った

ゆっくりと彼女の体が後ろの方へと倒れていく

「こうなって当然だったのよ」

いじめっ子たちは彼女を一瞥するとそう言い放った

彼女を助けようと動くものはいない

今動けば、間違いなく英雄きどりの狂人はそいつを仲間と判断して襲い掛かるだろう

何より目の前に居座る死という存在が怖い

どうして早めに止められなかったのだろう

どうして先生に言いにいかなかったのだろう

どうして彼女をバケモノなんて呼んじゃったんだろう

そうすれば、そうしなかったらこんなことにもならなかっただろうに

そんな後悔の念が僕を襲う

動けず硬直していると、ふいに床に倒れ伏そうとする彼女と目があった

僕は耐えきれず泣いてしまった

 

彼女は困惑しながらもやはり笑っていたのだから

 

 

 

僕の泣き声を聞いて、先生は何か問題が起こったということに気づいたみたいですぐに教室へと駆けつけた

おかげで彼女は救急車で病院へと運ばれて、何とか一命をとりとめた

いじめっ子たちはこっぴどく叱られ、気づかなかった先生たちは責任を問われた

その事件の次の日にはいじめに関する講和を校長から聞き、先生たちにどういったことをしたのか、もしくは彼女がどういったことをされていたのかを聞かれた

こうして彼女のいじめは幕を閉じた

しかし、彼女が学校に来ることはもうなかった

 

 

 

いじめに参加するわけでもなく、救い出せる立場にいたのにも関わらず何もしない、何も知らないふりをする傍観者

ただ勇気を振り絞れば救えるかもしれなかったのに……そう僕は今でも後悔している




はい、傍観者の後悔の話でした

実際私もいじめられていました
ただ助けてといえば傍観者が助けに入ってくれました
それだけでもかなり心持が変わるものです
もっともルナみたいにいじめの規模が大きいと難しくなりますが

次回は本編の更新になるとおもいます
が、その前に改稿するかもしれません
今回でいろいろとためしたので

それではまた次回

感想、評価、批評等よろしくお願いします
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