うん、今回はなんか説明多いですね。
まあ、別にいいか。
それでは本編へどうぞ。
朝帰りを怒られた直後、シロエは私に話しかけてきた
「今から、ススキノに向かうから、ルナも来てくれない?」
「ススキノ? どうして?」
ススキノはエルダーテイル日本サーバーの五大ホームタウンの一つでエッゾ帝国、現実で言う北海道にある
そう、アキバからはとても遠い
しかしながら、ゲームの頃は気軽に行けた
《トランスポートゲート》があったからだ
《トランスポートゲート》は大神殿のある街(これがホームタウン)にあり、これを使うと同じサーバーの他のホームタウンへ自由に移動できたのだ
これが使えれば、そこまで難しい問題ではないだろう
しかし、残念なことに《大災害》以降、《トランスポートゲート》は活動を停止してしまっている
しかし、ありがたいことに転移装置は《トランスポートゲート》以外にもあり、そちらは《大災害》以降も使えるのだ
それは《
こちらは《妖精の輪》がある街であればどこにでも飛ぶことができる
当然ススキノだって例外ではない
しかしだ、残念なことに《妖精の輪》には致命的な欠点がある
それは時間によって移動先が変わってしまうため、どこに飛ぶか分からないことだ
では、覚えればいいと思うが、《妖精の輪》がある街は何千、いや何万とある
その全てに行けるように設定されているなら覚えられるはずがない
そのため、ゲームの頃は攻略サイトに乗っていた情報を頼りに移動手段として使っていた
しかし、《大災害》以降、インターネット及び攻略サイトなど見ることはできない
つまりはどこへ飛ぶかは運次第と言うことで、移動手段としては向かなかったのだ
よってアキバからススキノまできちんと進むしかない
歩いたり馬を使ったりしても20日はかかる長い距離だ
まあ、シロエたちならあれがあるからもっと短いわね
シロエはルナの質問にすぐにこう答えた
「事情は後で話すよ。それで一緒に行く?」
突然言い出したから何か急ぎの用かなと思ったけど当たりみたいね
まあ、断る理由もないしいいかしら
…………ん、そう言えば私の知り合いにススキノを拠点にしているガラの悪い男がいなかったっけ?
「まあ、いいわ。でも、ちょっと待ってね」
私はフレンドリストからある男の名前を探し出し、念話をかける
「もしもし?」
『っち、何だ。ルナかよ。こっちは取り込み中なんだ。用事を言え』
「今からススキノに行くから」
『はぁっ!? 今から!? ちょっと待てよ!? こっちにも事情ってもんが……』
「じゃあ、そう言うことで」
うん、これでいいわね
念話の向こうで男が慌てふためているのを聞きながら、私は念話を切る
シロエは不思議そうな顔でこちらに話しかけてきた
「ねえ、どこに念話してたの?」
「ちょっと昔馴染みのところにね。じゃあ、行きましょうか」
こうしてススキノ遠征は幕を開けた
ついでにルナは知らず識らずのうちにススキノでの目的の方を助けていた
別方向からみれば余計なことをであるが
出発場所は《
すでに何人かの人がいるわね?
多分、彼女たちがススキノ遠征の理由に含まれるわね?
「ごめん、マリ姐。少し遅れて」
マリ姐と呼ばれた彼女は羨ましい限りのボディをしていた
…………しかし、頭空っぽそうね
いい意味でね
そんな風に値踏みしていると彼女はこちらに気づいたようだ
「ええんよ、シロ坊。というか、そちらのお姫さんだれ? もしかして彼女か?」
彼女って…………そんなんだったらアカツキが可哀想じゃない
「違うよ、前に四人で行動してるっていったでしょ? その最後の一人、ルナだよ」
その名前を聞いて、奥の方では何人かが何処かで聞いたようなと悩んでいた
スルーして挨拶しておきましょうか
「はじめまして、ルナよ。とりあえずよろしくね?」
「うちはマリエール。マリエとかマリ姐って呼んでな?」
うん、いい人オーラが溢れているわね
こういう人は、リーダーシップがなくてもリーダーに適切なのよね
「分かったわ、よろしく、マリエ。で、シロエ? ススキノに向かうんでしょ? 早く行かないといけないんでしょう?」
「そうだぜ、シロ。ルナの紹介は帰ってきてからでもいいだろ? 今はさっさとススキノに行かないとな」
「本当にええんか?」
マリエはこちらにそう言ってくる
あ、自分のギルドのメンバーでもないのにこんなこと任せていいんだろうかって顔ね
「いいのよ。困った時はお互い様っていうじゃない」
「心配要らないって。マリエさん。その娘、可愛いんだろう? 俺が声を掛ける前に他の男には触れさせないぜ。遠征ナンパまつ…………」
すっと直継の顔の横をナイフが通る
「次はもう少し鼻に近づけるわよ?」
朝露で少し冷えている《ウエノ盗賊城址》の温度がさらに下がった瞬間である
「ルナ、少し穏便にだな」
アカツキが私にそう言ってくる
「あー、それもそうね。今やらなくても良かったわ」
「やられぞんか!? 俺はやられぞんなのか!?」とか騒いでいる直継は無視してそのまま反省する
それを見て、マリエは心配になったのか、
「なあ、これ、本当に大丈夫なんか?」
とシロエに尋ねていた
「き、きっと大丈夫です。野営慣れもしてるし、この二週間で訓練したから……」
まあ、マリエたちが行くよりはいいと私は思うわよ?
そこまで名がしれていないってことは中小ギルドなんだろうから、あれみたいな楽な移動手段は持っていないだろうしね
そうなると20日ぐらいはかかるだろう
対してこちらはあれを持っているのが三人もいるものね
私は使わないけど
他にもレベル、初心者の世話、他のギルドとの小競り合いなんかも考えるとこっちが行った方がいいわ
「これ。……いつもので悪いんだけど、食い物だから。道中でさ、食って。シロ先輩、ごめんな」
「アカツキちゃん。これはメンバーが作った傷薬ですわ、お気をつけて」
心ばかりの支援物資を受け取り、出発の時は刻一刻と近づいてきている
「マリ姐こそ気をつけてください。……その、PKとか」
「うん、うちらは平気っ。ちゃんと情報も集めとくっ」
「ばっち任せておいてよ。マリエさん」
「あはははっ。直継やんも、ちゃんと帰ってくるんよ? シロ坊は要らんみたいやから、直継やんにもませたげるからなっ。ほれほれ。お姉さんのは柔らかいぞぅ」
そう言ってマリエは直継の腕を抱き寄せて、かなり人目を引くサイズのバストに抱え込む
照れ隠しの為か彼女は笑っている
…………なんかすごい敗北感ね
「ちょっ、マリエさんっ。タンマっ」
直継は慌ててマリエから離れる
「なんやのぉ。直継やんもシロ坊と同じく拒否組なんかぁ?」
「そういう訳じゃないけどさっ」
あら、いつもはぱんつ、ぱんつ、言っているのに女の子からやられると弱いのね
まあ、何となく冗談だってのは分かっていたけど
ちなみに私がナイフ投げるのも冗談よ?
半分はね?
しっかし、マリエは面白いわね。
まあ、今はいいかしら
私はクスクスと直継の様子を笑う
アカツキは両手をこっそりと口に当てて「ばーかばーか。エロ直継死ね」と囁いている
あちらのギルドの人たちは苦笑している
止めないってことはいつものことなのね
「駄目なんか? こんなおっぱいは価値なしかっ?」
いえ、羨ましいです
そんなにあればな…………じゃないじゃないちょっと落ち着かないと
「ちょ。……そ、そういうのはですねっ。据え膳だとかえって揉めないっていうかっ。あー、もうっ。とにかく、そんなのとは関係なく助けてくるからっ!! そういうえっちくさい発言は禁止だってぇの!!」
「今日のお前が言うなスレはここね」
「そうだな。直継がいっても説得力がない」
そう言ってアカツキは直継を軽く蹴飛ばす
まあ、最高守備力を誇る《守護戦士》の前ではダメージなんぞ発生する訳もなく、厚い鎧に阻まれ鈍い金属音を鳴らすだけである
しかし、それをきっかけに直継はマリエを引き剥がす
マリエはそろそろ出発しないといけないと思っているのか、簡単に引き剥がされ、それから言った
「無事に帰ってきたら、うちの脂肪なんてどうしたってよいからさ。……ん。行ってらっしゃい、うちらのためにありがとう。気をつけてな」
さてとそろそろ行きますか?
恥ずかしいのか直継はもう先に進んでるけどね
「シロ坊、直継やん、アカツキちゃん、ルナやん。たのむなっ。セララのことっ」
直継は朝日の中で振り返って大きく盾を振り上げる
シロエも手を振り、アカツキは少しだけ小太刀を引き上げると、音高く鞘に落とし込んでいた
私はマリエの方を向き、首を縦に振って、そのままマリエに背を向け、出発した
これは別れの挨拶として、そして、必ずセララという子を救って見せるという意志の現れとして、四人は遥か北の地へ旅立った
その後、ルナの正体に何人かが気づき、驚愕の声をあげていたのは、今はどうでもいいことだろう
ここまで進めばコウモリでいいわね
私は馬から降り、コウモリの姿になる
馬はこのまま放置ね
そのうち何処かに帰るけど
私たちは崩れた高架道路、まあ現実でいう首都高なんだけど、その陸上橋のような道路を北へ北へと進んでいた
首都高から見渡せる森(つまりは今まで戦闘訓練していた場所)は絶景だった
モンスターが暴れていて殺伐としているわけではなく、野生の動物がのんびり悠々と暮らしている
それは平和でとても美しい自然だった
正直、ホームタウンの周りだからと言えば、それでおしまいなんだけども
《エルダーテイル》は現実の世界をモデルにファンタジー世界を作っている
いや、せざるを得ないと言うべきかしら?
このゲームには《ハーフガイア・プロジェクト》と呼ばれる物が施工されている
《ハーフガイア・プロジェクト》とは文字通り《エルダーテイル》内にハーフサイズの地球を作るプロジェクトである
だからこそ、現実世界をモデルにしたのであろう
もちろん、ファンタジーであることを忘れてはならないため、ビルや住宅街なんかの多くは森なんかに変わってしまったけども
そして、当然そのための設定もある
今、私たちが冒険しているこの世界は《神代》と呼ばれる私たちが真に生きていた現実から数千年後の未来であるとか、なんらかの巨大な争いがあって、この世界は崩壊し……そして神々の奇跡によって再構築されたとか
まあ、その結果《神代》は終わりを告げ、その技術もその道具も建物もどんどんなくなってしまったそうだ
まあ、この辺りは割とどうでも良かったりするけどね
それに今はゲームがVRMMOまで進化しても味わえない本物のゲーム内の景色を味わいたいし
いやはや、旅人が旅をする理由が分かるわ
こうやって感動やロマンを求めて行くのもいいわね
現実の頃はそんなこともできなかったけど
「そう言えばシロエ、旅の目的はマリエのギルドの子であるセララをススキノから救うこと?」
「うん、そう。なんか、たちの悪いギルドに目をつけられたらしい。だから対人戦は覚悟…………いや、ルナにそんな心配はないか」
シロエはロカの悲劇を思い出してしまっていた
「そうそう、むしろルナにやられる奴の方が心配だぜ」
「直継、その言葉はひどいんじゃない? まあ、すでに一人ぶちのめす相手がいるけども」
その言葉に三人がぞっとしたのは間違いのないことだった
ただ言えることは三人とも同じことを思っていた
その人は本当に気の毒だなと
風の吹く高架道路は複雑な曲線描いて、より太い道路と合流している
しかし、私が見た感じ、アスファルトは不気味な脆さを見せていて、危険な香りを嗅ぐわせていた
「降りて食事にしようか」
昼過ぎ、シロエが休憩の提案をしてくる
「そうね、馬に乗っていると疲れたでしょ? 特にお尻の辺りが」
私はその言葉に同意する
だからといってコウモリの姿から戻ったわけではないけど
「馬術とかは身体が勝手にやってくれても、確かに痛いな」
「そうだね」
シロエは直継の言葉に頷く
しかしながらアカツキはそう感じていないらしく怪訝そうな顔をして「そうか?」と不思議そうだった
まあ、アカツキの身長から考えれば私なんかよりずっと軽いわよね
マリエはともかく私と比べても、脂肪の塊はついてないしね?
つまりはアカツキが軽いからあまり負担がないわけだ
「それよりさ、なんでルナは馬に乗ってないのにそんなことが分かるんだ?」
あ、それ聞くのね
「私、現実で乗馬したことが何回かあるのよ。その度にお尻が痛くてね?」
直継は「へ?」と言うような顔をしている
というか言ってる
そこにアカツキがフォローを入れる
「ルナは家に馬を飼っていたものな」
「は?」
ナイスフォローよ、アカツキ
直継が混乱してるわ
「えーとね、まあ、私の家は金持ちと呼ばれる類なのよ。それで趣味とかで馬飼ってたりとかしてね?」
もっとも私の趣味ではないけど
私は部屋でゴロゴロしたり、ゲームしたりする方が性に合うわ
何度我が家の使用人にもうちょっときちんとしましょうよとか言われたことか
直継はその説明で納得したようだ
「あー、それなら納得だ。そんなことよりもどれくらいきたかね」
「まだ半日だ。気が早いぞバカ直継」
アカツキの軽い棘がある言葉にも、直継は平然とした表情を崩さない
こんなやりとりがお馴染みになっているからってのもあるけど、私の奴に比べたら蚊に刺された程度だものね
さて、シロエが先に崩れて瓦礫により坂になった辺りから、高架道路を降りていったので私はその坂をガン無視して下にまっすぐ降りていく
現実のこの辺りは確か住宅地があったはずだけど、そんな跡は全く見当たらないわね。
あっても電柱やほんの少しの瓦礫や粗大ゴミくらいかしら
赤茶けた地面のうねるような連なりから、私たちはテーブルに使えそうな大きな岩を見つけ出し、そこで休息を取ることにした
とりあえず私は人間の姿に戻って、荷物を取り出す
今日のご飯はサンドイッチ型の湿気た煎餅に紅茶色の水
イヤー、オイシイナー(棒)
そんな風に食べているとシロエは地図と筆記用具、さらには飲み物や食べ物を取り出し、いつの間にか岩の上に置かれていたシートの上に置いた
地図には現実の日本、ヤマトの全体図とゾーン名がいくつか書いてあった
「これはどうしたんだ? 主君。ずいぶん立派な地図じゃないか」
アカツキが目を丸くするのも仕方ないわね
あまりに詳しく書き込まれているもの
1メートル四方ほどのサイズにヤマトがほぼ同じ形に書き込まれている
四色ほどの色インクで書かれた地図には河や森、村落まで書き込まれていて、素人の手書きとは思えない
「あー、そういえばシロエは《筆写師》だったわね」
《筆写師》は生産系のサブクラスで酷い言い方をしてしまえば人間コピー機だ
契約書の作成やアイテムレシピの複製など紙とペンでできることなら大半はやってのけることができる
「なるほど。つまりアキバの文書館にある地図を写してきたのだな。主君、やるな」
「で、俺たちはどの辺なんだ?」
水筒のキャップを緩めつつ直継は尋ねる
「おそらく、この辺りじゃないかな」
シロエは指先で地図の一点を指す
アキバの街とはさほど離れていない、東京の北部だ
うん、やっぱり全く進めてないわね
本当にススキノまで歩いたら絶望しそうね
「全然さっぱりだな」
「仕方ないよ。まだ半日だもの。……午後は飛ばすことになるけど」
「了解」
ん、言葉から察するにあれを使うのね?
直継たちはそんな風に話をしながら、バスケットに詰められたターキーサンドみたいな湿った煎餅を手に取り食べていた
先に食べ終わった私はちょっと物思いにふける
昨日、PKと戦った
そのPKは二度と私の前で笑うことすらできなくなるまで叩き潰してやったけどまだまだPKギルドは残っている
街中にはギルドを得ても全くやる気のない人々が転がっている
食べ物はまずい、何しても死なない、助かる見込みもない、魔物と戦うのは怖い、PKはもっと怖い、そんな感じでやることがないのだろう
大規模ギルドによる数による押し切り
ススキノのたちの悪いギルド
今の《エルダーテイル》の世界はゲームの頃の楽しさなんて消えて、不安、恐怖、悲しみなんて言う負の感情しか産んでいない
つまらないわね
あまりにも残念すぎる
不安だからこそ、協力しようなんてことにはならない
『困った時はお互い様? 何それ美味しいの?』って状態ね
ああ、腹が立つ
「……このまま、ギスギスするのかな」
アカツキは呟く
視線は遥か前方、荒地の奥をじっと見つめていた
アカツキも同じことを思っていたらしい
そこには怒りよりは悲しみの方が多いだろうけど
この世界はゲームの世界だ
ゲームの中ではなく、ゲームの世界だ
これは理解しなきゃいけないことだと思う
いくらゲームに忠実だからと言って、ここはゲームの中ではない
そういう確信が私にはあった
そりゃあ、ゲームには睡眠も食事も必要ないもの
《エルダーテイル》のゲームの世界
単に似ているだけの異世界だと私は思っている
まあ、どちらにせよ、アカツキのためにもアキバの街だけでもどうにかしてあげたいわね
ただ、私の力による圧力は大規模ギルドがこれからするであろうことと変わらないから多分私に変えることはできないわ
できることはしていくけど
本当に何とかしてくれるのはきっと…………
「そんなことはないよ」
この《腹黒メガネ》以外にいないわね
「そんなのはつまんねー」
直継もまたそういう
「そうよ。今はただ勝手が分からないだけよ」
私はそう言っておく
「……」
アカツキはずっと地平線を見ている
「大丈夫、きっとなんとかなるわ」
そう言ってから、私は小声でアカツキにいう
「彼ならきっと何かやってくれるだろうし」
アカツキはその言葉に少し驚く
しかし、すぐに
「そうだな。主君はすごいものな」
そう呟いた
その頃、後ろで何か残念なことを言っているシロエと変態がいたがまあ、私は何も見なかったことにしましょう
アカツキはしっかり冷たい目で見ていたけどね
その頃ススキノではあるギルドがこれからくるであろう《破壊者》に備え、今までにやっていたことを全て放り投げ準備をしていた
ススキノの治安がその瞬間、とても良くなったのは言うまでもない
さてと次回はパルムの深き場所ですね。
サブタイトルのネタが尽きてきてるって分かりますね。
まあ、そんなことはさておきで、感想、批評など楽しみにしております。
それとまだ活動報告の方でアンケート実施中です。
いやまあ、一人も答えてないのに終わらせるわけにはいきませんし