神速の殺戮姫は太陽を嫌う   作:クトゥルフ

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どうも、太古の海神クトゥルフです。
はい、とっても遅れました。
すいません。
今回はいつもよりは短めです。
まあ、それでも三千文字程度ですけどね。


それでは空の旅をお楽しみください

そろそろ休憩も終了ということで私は蝙蝠に変身する

それを見てか、アカツキは馬を呼ぶために馬の召喚笛を吹こうとする

しかし、それをシロエは止めた

あー、あれを使うのね?

怪訝そうなアカツキの前で、シロエは流麗な透かし彫りの施された竹製の笛を取り出す

馬を呼び出す召喚笛と似ているが、そんなものとは比べ物にならないくらい美しい

そして、その効果も段違いである

シロエ同様、直継もその笛を取り出す

私は持っているけど取り出さない

「それはなんなのだ? 主君」

小首をかしげて尋ねるアカツキにシロエは微笑むと、彼はその笛を空高く吹き鳴らす

さて、アカツキはどんな表情するかしら?

直継の笛と混ざり合ったその音色は鳥の囀りのようで、遥か遠くまで響いていく

「それって、もしかして……」

『『我が主の盟友よ、助けが必要なようだな』』

アカツキの問いかけは、鋭い鷲の咆哮によって中断される

やっぱりこれを使うわよね

急な要件だし、歩いてなんていられないわよね

それと彼らにも私のスキルが聞くのね

私はコウモリのまま、咆哮が聞こえた方向を向く

鷲の咆哮だけではなく、重い羽音も響かせて向かってくる二つの巨大な影

しかし、羽があるからと言って鳥ではない

その巨体の生き物は、私たちの頭上を大きく二度回ると、荒々しい勢いで着地して、その逞しい首をシロエと直継の足下に低く差し出した

「グリフォンではないかっ」

そう、それは天空の王たる鷲と百獣の王たる獅子が合わさった《鷲獅子(グリフォン)》と呼ばれる《幻想種》だった

当然二つの王の力を持つ生き物だ

強さもそこそこある

「まぁ。うん」

シロエはグリフォンの首筋を二、三度撫でると、荷物から取り出した生肉を与えた

「馬よりはこっちの方が早いもの仕方ないわよね」

私はそう言う

「あー、そう言えば、《伯爵》も持ってたっけ?」

「ええ。自分で飛んだ方が早いから使わないけど」

私の素早さは現在《暗殺者》の八倍

馬はもちろん《鷲獅子》よりも速いわよ

それに《鋼尾翼竜(ワイヴァーン)》なんかに見つからなくてすむし

「はは、流石は神速と言われるだけはあるな。まあ、俺らはそんなことできないからこいつで行くんだ。まさか馬で北の最果てまで行こうなんて考えるわけないだろ? そんなことやってたら年寄りになっちまうよ」

直継は、いささか意地悪にアカツキを冷やかす

まあ、乗れるって知っててもそんな物、大規模戦闘に関わってないと触れることどころか見ることもできないものね

アカツキがあまり知らないのも無理はないわ

私は手に入れたアイテム等は自身の倉庫の糧にしてるし

お陰で倉庫には無造作に幻想級アイテムが転がってるなんてザルよ?

話がずれてるわね

アカツキは直継に冷やかされたが、そのことを起こることはなく目前の鷲獅子に戸惑っていた

だいたい何をしようとしているかは察していると思うけどね

「それにしたってなんでこんな獣が……。乗るのか?」

「乗るよ。アカツキさん?」

「アカツキ、だ」

シロエの言葉にアカツキは鋭く注文を入れる

戸惑っているからといってそこは忘れないのね

シロエに呼び捨てして欲しいのよね、アカツキは

もうこんなやり取り何回か聞いたもの

「アカツキ――は僕のうしろ。……ダメかな?」

まあ、私が《鷲獅子》使えばそんなこと気にしなくてもいいんだけどね

「ダメではない。のだが……」

アカツキは怯えたように《鷲獅子》から距離をとって見ている

まあ、怖いわよね

始めて見た上にかなり強そうな獣何だもの

ちょっとした事故で殺されないよね、という恐怖は当然あるわよ

私なんか何回現実で馬から落ちて踏まれたり蹴られたりしたことか

……いや、その点においてはよく私は生きているわね

「まあ、これはすぐに解決するでしょうね」

私はボソリとつぶやく

それは誰に届くことなく空へと消えていった

 

ふと、アカツキは言った

「そんな召喚笛があると聞いたことがある。――《死霊が原(ハデスズブレス)》の大規模戦闘をくぐり抜けたプレイヤーにあたえられたっていう」

「昔ちょっとね」

シロエはアカツキに答えた

ああ、《放蕩者の茶会》の残した伝説の一つね

まあ、私の伝説の一つでもあるのだけど

《死霊が原》の大規模戦闘は死霊の王たる上級《不死種》の眠る地下墳墓の奥深くで、生命の秘密を邪悪に歪めるための魔法装置の祭壇で、死霊王の四人の騎士との戦いのことである

彼らにとっては激しい戦いだったのでしょうね

私にとっては隠れて殴って隠れて殴っての簡単なお仕事だった訳だけど

まあ、その時共闘した《翼を持つ者たちの王(シームルグ)》が友情の証として与えてくれたものが《鷲獅子の召喚笛》だ

そう言えば、一度も使った覚えがないわね

「なんでそんなものを持ってるんだ」

「びっくり隠し芸のとき便利だろう?」

そんな機会、こちらで訪れるのかしら

私は隅で笑っている

あの二人、少し恥ずかしそうね

私にとって、いえほとんどの人にとっては希少なアイテムなんだけど、彼らにとってはそうじゃないんでしょうね

まあ、そう思っていても周りは妬ましく思うのよね、これが

まあ、それはMMORPGの宿命と言うものよね

「小太刀の鞘はいつもよりしっかりとベルトに固定して。背負い袋も。風に流されるものは畳んでしまって」

シロエは腰が引けているアカツキに手を伸ばす

あ、シロエ、もしかして気づいてないわね?

鷲獅子の二人乗りなんて、否が応でも密着するじゃない

あ、アカツキもやっと気づいたみたいね

まっ、嫌ではないと思うけど

アカツキはシロエの後ろに乗ったようだ

「準備はOK?」

「うむ、主君。問題ない」

「もうちょっと腰を落ち着けて。で、僕のことを摑んでね。怖かったらしっかり摑んでよいからね。って、お腹の肉は摑まないでっ!」

あー、もうこれただのコントね

私は少し苦笑いする

直継の方は笑いを堪えられなかったようで笑い出してしまった

二人に非難の目を向けられているわよ、直継…………

まあ、気にする必要はないし、気にしてもいないだろうけどね

「お先に失礼っ!」

「私もそうさせてもらうわ」

もっとも私の言葉は鷲獅子の羽音と直継の声、そして鷲獅子が引き起こした烈風に掻き消されてしまったけど

ある程度、進んだ結果、グリフォンは無駄に羽ばたくこともなくなり、風の音もある程度小さくなって声が聞こえるようになった

「あー、こうも高度が高いと日差しが…………」

「何だ? ルナは紫外線とか気にするのか?」

直継がそんな風に聞いてくる

あー、つまりお洒落とかの話ね

「いや、そうじゃないわよ。私の場合、サブクラスと今までの引きこもりライフの所為で現実であろうがゲームであろうが太陽は嫌いなのよ」

だからこそ使用人たちはちゃんとした格好すれば綺麗なのにもったいないと言うけどね

「あー、そうか。《吸血鬼》だもんな」

「ええ」

吸血鬼の常時発動スキル《永遠の天敵》

それは太陽の出ている間のステータスを三割減し、出ていない間は五割増にするというものだ

まあ、私の場合は装備品の効果で太陽が出ている間は半減、出ていない間は二倍となっているけどね

それ以外にも《朽ちている体》とか、《吸血鬼》は日光にとても弱いのよね

「《吸血鬼》のデメリットは回復魔法で火傷すること、太陽には弱いことの二つね。特に後者は今となったらとても怖いわ」

「ああ、そうか。普通の人の暮らしだと昼間働き夜は寝るだもんな」

「そうよ。あ、シロエたちが来たわ」

あっちは空の旅を楽しんでいるわね

まあ、こんな景色そうそう見れないし

「どうだすげぇだろ!!」

うん、貴方も楽しそうね

アカツキもそれに釣られて笑っているし

「すごい。――うん、すごい。空の碧さが透き通るみたいだ」

楽しそうで良かったわ

私もコウモリの姿で微笑む

「ようこそ、空の旅へ」

誰にも聞こえないような声でボソリと私は呟いた

 




しょっちゅう予告詐欺してますね、私。
次回こそパルムの深き場所です。
次は早く出せればいいんですが。

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