キスで魔力を増幅するけど藤丸立香は男の子です   作:286545

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キスのある話の投稿が遅れたので、2話連続投稿です。
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[XXX]初心の少年と合法的にキスする方法

 大聖杯へ向かったオレ達は、門番代わりのアーチャーと戦闘する。キャスターは重傷を負い、まともに戦えるサーヴァントはマシュのみ。そんな絶望的しか見えない状況であっても、所長は生きることを諦めなかった。

 

「リッカ・フジマル! あなた、こいつとキスしなさい!」

 

 先輩の呼吸は止まった。その方法は事前に伝えていたが、だからと言って覚悟はできないものだ。しかし、たとえ先輩の心が決まらなくても、もはやオレとキスするしかない。所長命令だ!

 

「おい、そいつはヤケになっちまったのか?」

 

 オレの役割について聞いていないキャスターは、よく分かっていなかった。さきほど宝具の爆発を受けて、もはやキャスターは立ち上がれない体だ。

 

「オレは魔力を増幅できる。しかし、体液の交換が必要だ」

「要するに魔力供給か。だったらオレが仲介してやる。絵面は悪いが、空中で体液を交換すればいいだろ?」

 

 早く死んでくれ。

 

「それはそれでキスと違った問題があるだろう。それに相手から受け取った魔力を増幅して返す仕組みだ。重要なのは距離になる。当然、相手と一体化するほど良い」

 

 そういう設定でなければ、キスできないだろう!

 

「ああ? どういうこった? それじゃ増えた分は、どこから取り出してんだ?」

 

 そんな話をしている間に、地面に刺さっていた剣は浮き上がる。それらは魔剣と聖剣を問わず、呪いや祝福の神秘を宿した剣群だ。キャスターのルーン魔術による防壁であっても、防げない神秘を宿している。その無数の刃は機械的に、迷いも無駄もなく、オレ達へ降り注いだ。

 

「仮想宝具・疑似展開ーーロード・カルアデス!」

 

 展開されたマシュの宝具によって、剣群は受け止められた。しかし、これは地面に刺さっていた剣を射出しているに過ぎない。アーチャーにとって必殺技ではなく、大した負担もない追加攻撃だ。

 

「くうううううう!」

 

 盾の少女は、剣群に抗い、必死に防いでいる。キャスターも自身の維持を諦め、ルーン魔術も用いて防壁を張った

 

「奴は宝具を何でも持ってる訳じゃねえ! よく見てみろ、そこらにあるのは剣だ! 槍なんて奴の見せた1つきりだ! さっきのゲイ・ボルグはハッタリだろうよ!」

 

 アーチャーは投影魔術で、剣でない武器や道具も生み出せる。しかし、アーチャーの固有結界に登録されるのは剣に限られる。それ以外の武器や道具を生み出そうとすれば、アーチャーに大きな負担が掛かる。そんな戦闘に耐えられない強度であっても、他人に見せる程度ならば問題はなかった。

 

「魔術礼装ーー応急手当!」

 

 先輩による回復の対象はキャスターだ。どちらか迷って、先輩はマシュを選ばなかった。シャドウ・サーヴァントの戦いから時間は経ち、魔術礼装は回復している。そうしてキャスターを回復したものの、消滅までの時間を先へ延ばしたに過ぎない。弾かれた剣群は擦れ合って金切り声を上げ、展開された盾と火花を散らしていた。

 

「キスしなさい! キスするのよ! もう、それしかないの! うわあああああん! もうだめええええええ! 助けて、レフぅぅぅぅぅぅ!!」

 

 ついに所長は壊れた。もはや所長と呼べないほど乱れ切っている。オルガマリーは十分に役目を果たから、そっとしてやろう。あとはオレの役目だ。

 

「ーー我が骨子は捻じれ狂う」

 

 その瞬間、襲いかかったのは意識が飛ぶほどの衝撃だ。何が起こったのかも分からないまま、気付けば地面に倒れていた。降り注ぐ剣群は変わらないまま、遠方から宝具級の一撃を叩き込まれた。剣群をガトリングと例えるならば、さきほどの一撃はミサイルだ。さっきも言った通り剣群は追加攻撃に過ぎず、これこそ必殺の一撃だろう。

 

 その必殺の一撃を受けた少女は、たった独り、立ち続けていた。

 その必殺の一撃を耐えた少女は、たった独り、立ち向かっていた。

 

 指が砕けても、腕が折れても、肩が外れてもーー決して砕ける事のない、人理の盾だ。

 

「先輩は起きているか?」

「うん、なんとか」

 

 所長は気絶しているらしい。オレは立ち上がり、先輩の下へ歩いた。

 

「すまない。所長の言う通り、もはや選択を与える余裕はない」

「分かってる。マシュにばかり頑張ってもらう訳にはいかないから」

 

 倒れていた先輩の体を抱き起こす。片手で先輩の体を支え、もう片方で先輩の頭を支えた。

 

「覚悟は、できてるよ」

「目を閉じて、舌を出してほしい。後は任せてくれ」

 

 そうして目を閉じた先輩の顔を見下ろす。それでも不安そうな表情は隠し切れていなかった。先輩の体を支える腕から重さを感じ、合わせた肌から脈動を感じる。

 

「先輩、立派だ」

 

 初めてか?なんて聞くまでもない。息を止めて、ガチガチに緊張している様子から察せられた。

 

 オレは唇を押し当てる。先輩は小さく体を震わせた。舌を差し込み、先輩の物と絡ませる。

 

「んっ!」

 

 先輩の口から悲鳴のような声が漏れる。止めていた息は長続きせず、先輩は我慢できなくなった。流れ出した息を再び止める事は叶わず、あとは流れるままだ。互いの舌の上で体液は交わされ、互いの体の中で混ざり合った。

 

ーーReactor On

 

 先輩の体へ注がれた魔力は溢れ出す。それらは魔力ラインを通して、サーヴァントへ流れ込んだ。

 

「ん? おお?」

 

 消滅寸前だったキャスターの傷は修復される。ボロボロだったマシュの体も元通りになった。

 

「魔力も十全! いいや、万全だ! ドルイドの儀式を見せてやる、アーチャー!」

 

 100パーセントと言わず、300パーセントだ!

 

「我が魔術は炎の檻、茨の如き緑の巨人。因果応報、人事の厄を清める社。倒壊するは、ウィッカー・マン! オラ、善悪問わず土に還りなーー!」

 

 剣群は乱れ、向きを変える。その先に巨大な木編みの人形が立っていた。キャスターの宝具は、手に掴んだアーチャーを胸の檻へ放り込む。そして襲いかかる剣群と共に倒れ込んだ人形は、炎に焼かれて燃え上がった。

 

 供物の火は天へ突き立ち、溶けた鉄の雨が降る。空に掛かっていた巨大な歯車と共に、荒廃した大地は幻へ消えた。そうして固有結界の消えた後、どこにもアーチャーの姿はなかった。

 

「一発で仕留め損ねた。逃げられたな」

「え? あれで生きてるの!?」

 

 キャスターは不満そうに言って、先輩は驚いた。

 

「サーヴァントならば互いの気配を感じ取れる。アサシンの気配遮断を使われない限りだ」

「回復されると困るかな? 追いたい?」

 

「いいや、疲れたから、ちょっと休もうぜ。ちょっと死にかけたからな」

 

 そんな事はなく、完全に回復している。後で挟み撃ちを受ける可能性を考えつつも、そう言ったのは先輩を休ませるためだろう。アーチャーを取り除いて置きたい気持ちを抑えたオレは、ウェットティッシュを取り出した。

 

「先輩、これで口を拭くといい」

「あー、うん。ありがとう」

 

 少し迷って、先輩は受け取った。

 

「どうした?」

「汚い物を拭いてるみたいで悪いかな」

 

「いいや、感染症を防ぐために水も欲しい所だ」

「いつもティッシュを持ち歩いてるの?」

 

「ハンカチは不衛生で、使い回す訳にもいかない」

「そうなんだ」

 

「安心しろ。こういう役割だから、検査は受けている」

「そっか」

 

 どのように役割を果たしていたのか気になるのだろう。今のオレは先輩の中で、どんな妄想を受けているのか!

 

「よく頑張った。先輩が勇気を出してくれたから、オレ達は生き延びた」

 

 オレは、そう言う。

 

「おう、たしかに頑張ったな。戦士の心構えとしては上出来だ、先輩」

 

 キャスターも、そう言う。

 

「はい、先輩は頑張りました。私が先生ならば百点満点を差し上げます」

 

 マシュも、そう言った。

 

「いやいや、マシュも死ぬほど頑張ったと思うよ!?」

 

 先輩も、そう言った。

 

「ーーれふぅ」

 

 所長は寝てた。

 

 

 

 洞窟の奥に広大な空間があった。どのくらい広いのかと言えば、例えば巨大な泥人形が立って歩けるほどだ。大聖杯と呼ばれる巨大な器の下に、泥で汚れた漆黒の騎士が待ち構えていた。どれほどの長い時間、ここで待っていたのか。泥に塗れても失われない金色の髪に、薄汚れたホコリが降り積もっている。

 

「ーー面白い。その宝具は面白い。構えるがいい。名も知れぬ娘。その守りが真実かどうか、この剣で確かめてやろう!」

 

 それは噴火だった。黒く呪われた魔力が爆発し、圧力となって空間を震わせる。そこから恐ろしい勢いで真っ直ぐに飛んできた騎士は、マシュの盾に剣を叩きつけた。

 

 単なる一振りだ。それは単なる通常攻撃だ。それでも十分に必殺の威力を宿している。

 

「くぅ!」

 

 事前にキャスターから、マシュは警告されていた。そうでなければ必然として、マシュの上半身は消し飛ばされていた。それほどの一撃が、瞬く間もなく、再び振るわれる。一撃が終われば次の一撃、さらに一撃、すなわち高速の連撃だ。

 

「くぅぅぅぅぅぅ!!」

 

 盾から伝わる衝撃は、マシュの手を振るわせる。回避する事など叶わず、受ける事しかできない。敵はセイバー、ブリテンの騎士王だ。剣を恐れて目を逸らせば、速やかに死ぬ。

 

「魔術礼装ーー瞬間強化!」

「オレも忘れんなよ!」

 

「忘れてなどいないーー」

 

 キャスターの杖から光が放たれる。それはルーンによって強化された魔術だ。

汚染によって対魔力の低下している今、十分に通じる。

 

「ーー見る必要もなかった。それだけだ」

 

 ただし、あたればの話だ。剣の2振りで魔術は消され、キャスターの魔術は届かない。あまりにも速すぎて、それは妨害にすらなっていなかった。

 

「アンプ、しよう」

 

 そう言った先輩の手を、オレは握ったーー話が早くて助かる。

 

「先輩、頼みがある。さっきはオレからだった、だから次は先輩からしてくれ」

「え?」

 

 そんな事を考えていなかった先輩は、驚いた。

 

「先輩はされるのではないーーするのだ。先輩が決めなければならない」

 

 平たく言えば、誘い受けである。

 

「ーー分かったよ、アンプ」

 

 オレは目を閉じる。クールな表情を保つように顔を意識する。もちろん内心はワクワクテカテカだ。この感情を知られる危険は冒せない。オレは誠実に邪心なく、職務として成している。よこしまなる者ではない。

 

 唇に触れるのは、温かく柔らかい感触だ。心の中で自身に刃を突き差し、オレから動きたい衝動を抑える。オレからやった時と異なる体験に、頭は沸き立っていた。抱き寄せたい思いを抱く自身の肉体を、完全に制御して留める。

 

 中へ押し込まれる先輩に応え、オレも舌を差し出した。オレと先輩は絡み合い、体液を交わらせる。

 

ーーReactor On

 

 先輩へ注がれた魔力は、そのサーヴァントへ流れ込む。膨大な魔力は宝具のオーバーチャージを起こし、その効果を高めた。

 

「倒壊するはーーウィッカー・マン!」

 

 セイバーの足下から、木編みの巨人が出現する。

 

「今は歩いて行けぬ隣人の庭よーーアヴァロン」

 

 宝具の真名解放と共に、セイバーの鞘は無数の破片と化した。結界の展開と共にセイバーは世界から切り離され、巨人の手は素通りする。

 

「聖剣の鞘ーー回避型の宝具か! そりゃあ剣があるんだ。鞘を持ってたって不思議じゃねえ!」

「いいや、ここにいる私は鞘を失っていた。この愚かな王の願いを聞いて、ベディヴィエール卿は泉の乙女へ鞘を返してくれたとも。この鞘は召喚時に用いられた媒介だ」

 

 セイバーという目標を失った巨人は、こちらへ手を伸ばした。大きな手が振り落とされ、マシュの盾へ叩きつけられる。

 

「キャスターさん! どうして、こちらに!?」

「ウィッカー・マンは供物を求めて怒り狂う! 大いなる自然から見れば、オレらも供物として差はないって事だ!」

 

「キャスターさんが操ってたんじゃないんですか!?」

「大いなる自然を支配するなんぞ、人に過ぎた行いでね!」

 

 幸いな事にセイバーは攻撃に移らず、結界に引きこもったままだ。

 

「悪いな、オレが戻るまで魔力の供給を絶ってくれるなよ!」

「キャスターさん!?」

 

 キャスターは巨人の檻へ飛び込み、供物として身を捧げる。そうして倒れ伏した巨人から燃え広がり、洞窟は赤く染まった。供物の火は天井を貫き、そのまま山を蒸発させる。まるで火山であったように溶岩を飛び散らした。

 

 そうして大きく開けた空の下、地上に星の光が生まれる。その光に照らされた物は暗く映り、逆に影は白く明るく映った。セイバーの宝具から放たれる反転した闇の輝きだ。

セイバーを中心として熱せられた風は渦巻き、激しい気流となって立ち昇る。

 

「極光は反転する。光を呑めーーエクスカリバー・モルガン!」

 

 呪われた輝きに変換された魔力が、セイバーの剣から射出された。燃え広がった火を余波で吹き飛ばしながら、こちらに迫る。それは山を容易に切断し、空間すら引き裂く。

 

「仮想宝具・疑似展開ーーロード・カルアデス!」

 

 黒い光を止められた事は、驚くべき結果だ。どのような障壁であっても、一瞬で蒸発したに違いない。それほどマシュの盾は、セイバーの剣と相性が良かった。

 

「ああああああ!!」

 

 ただし盾は無事であっても、それを持つ人は耐えきれない。魔力の供給によって再生し、同時に壊される。腕がバラバラになったと思えば、元に戻っている。信じる者を持たなければ耐え切れない、心を削る戦いだ。

 

 特異点の聖杯から魔力を供給されるセイバーの魔力は無限に思える。

 それはマシュも同じで、先輩から供給される魔力は無限に思えた。

 

ーーピシリ

 

 最初は幻聴と疑うほどに小さく、ひび割れる音が聞こえる。やがて大きくなり、目に見えて現れた。それはセイバーの背後から聞こえている。キャスターの宝具によって大聖杯は、大きく歪んでいた。

 

ーーバキバキ

 

 大樹の折れるような轟音は、加速するように激しさを増す。もはや崩壊を止める方法はない。大聖杯に蓄積されていた悪性が、すでに漏れ出ている。あらゆる呪いを混在した泥は地面を流れ、セイバーの足下まで広がった。

 

「ーー良かろう。運命を味方に付けるのも、重要なステータスだ。その幸運で定められた死に抗って見せるがいい」

 

 大聖杯は決壊した。洞窟の天井から流れ出した泥は、都市の全域へ広がる。黒い洪水となって歩き回るモンスターを押し流し、一掃した。火と煙で汚れた都市は塗り替えられ、泥の底へ沈む。微生物に至るまで死滅した呪われた都市に残った生物は、マシュの宝具で守られたオレ達だ。聖杯戦争は大聖杯の崩壊によって終結した。

 

「ああ? なんだ、終わっちまったのか?」

 

 魔術を用いて、空から降りて来るのはキャスターだ。その体は少しずつ崩壊し、キラキラと光の粒子を放っていた。

 

「無事だったんですね、キャスターさん!」

「ちょいと遠くまで吹っ飛ばされたから急いで戻って来たんだが、その必要はなかったか? あのセイバーを倒すとは大したもんだ」

 

「いえ、間接的に倒したのはキャスターさんという事になります」

「おっと悪い、もう時間だ。特異点の異変は解決したって事で、オレは強制帰還だ。これからが大変だと思うが、もしも生きて帰れたらランサーとして喚んでくれよ!」

 

 そうしてキャスターは消えた。あとはセイバーの消えた後にある聖杯を回収すれば完了だ。と言っても特異点の聖杯は、形だけ見ると聖杯ではない。

 

「聖杯というので金色のゴブレットを想像していました」

「聖杯って言うより、水晶みたいだね」

 

 マシュと先輩は水晶体に近寄る。しかし、それを先に拾った者がいた。

 

「ーー48人目のマスター適格者。まったく見込みのない子供だからと、善意で見逃してあげた私の失態だよ」

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