戦姫絶唱シンフォギアDB   作:聖杯の魔女

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いろいろと考えてリメイクしました。

いろいろと描写増やしてますので、ご容赦をば…………


前狂言 ※リメイク版

1945年、5月1日―――ドイツ、ベルリン

 

第二次世界大戦末期、帝都を包囲する赤軍50万による圧倒的な物量差に押し潰され、陥落寸前のベルリン。

 

その戦場の中である出来事が起こっていた。

 

「撃てェ!!奴をあぁ!!」

「曹長!?ガぁ!?」

 

ベルリンのとある一角…………、赤軍とドイツ軍関係なく虐殺する者が居た。

 

「ど、どうして…………」

 

今、この場にいる兵士達はどれもが死線をくぐり抜け、戦場という修羅場を乗り越えてきた者達だ。

それが、たった一人の二ヶ月前に死亡した筈の少年(・・・・・・・・・・・・・)に全てが全滅寸前まで追い詰められていたのだ。

もちろん、兵士達もタダでやられている訳ではない。携帯している火器で応戦していた。

しかし、どれほど生身で受ければ木っ端微塵になるパンツァー・ファウストを直に受けても傷一つつかない彼の前では無に等しくもはやその様は………………

 

「―――化け物」

 

そう称すしかなくただだた、彼に流れるまま虐殺されるだけだった。

 

「ヒィ!?」

 

そして、最後の一人となった兵士へ彼の視線が向いた。“殺される!!”そう直感し逃げようとするが、乾いた音がなり転げ落ちる。おそらく、足を撃ち抜かれたのだろうもはや、兵士の運命は決まっていた。

そして、少年は兵士の側へと近寄り

 

「………ごめんなさい」

 

一言、悲しそうな表情をすると武器のハルバードを一気に振り落とした。

 

        ーーーーー

「………………………」

 

先程、兵士を殺し終えた少年はただじっと自分の右手を見ていた。その手…………いや、彼の全体はたった今この場にいた兵士たちの血で汚れていた。

その目に映るのは悲しみか、それとも虚無なのか。それは少年のみが知っている。

 

『総員傾注!我らが主、偉大なる破壊(ハガル)の君の御前である。そのお言葉、黙し、刮目して拝聴せよ!』

 

ふと、少年の耳に――――いや、全ベルリン全市民との耳に、女性の声が響き渡る。

 

その瞬間、ある兵士は戦うのを止め、ある子供は泣くのを止め、ある老人は逃げるのを止めた。そして、皆が見が、我を忘れて空の一点を凝視していた。かくいう少年も―――いや、ベルリン各地に散らばった、黒衣の軍服を着た者たちもまるでわかっていたかのように空のある一点を見上げる。

 

血と炎の照り返しを受け、赤く染まったベルリンの空。帝都を覆う戦火の形がそこに映し出されていた。

それはとてつもなく巨大な鉤十字(スワスチカ)――――

その中心を貫くように屹立している尖塔に、『黄金の獣』が降臨していた。

 

その数分………、その男の手によってベルリンの民たちは自らの命を絶ち、その魂は総て、上空に出現した城へ収集されていく事となる。

 

        ーーーーー

 

無数のベルリンの民たちの魂が空中に浮かぶドクロの城へ、収集されるその光景を見ている二人の男がいた。

 

一人は先程、ベルリン全土の市民をこの様にした鬣の如きたなびく黄金の髪と総てを見下す王者の様な黄金の瞳を持つ男。

もう一人は輪郭の曖昧な影絵の如き男で老人とも、若者とも、いかようにも見れるその外見は、隠者のようであまり頼りない。

 

対照的なこの二人の男達こそが、今彼らを見上げている総ての者を凌駕する魔人の中の魔人。

 

『黒円卓』―――――『聖槍十三騎士団』第一位と十三位。首領と副首領。

 

「いや、素晴らしい。この瞬間だけは、何度経験しても飽きがこない。それだけに正直名残惜しくもありますが………」

「行くのか『カール』」

「ええ、その名も置いていきましょう。いずれ、必ず会えるはず」

 

黄金の髪の男に『カール』と呼ばれた隠者の男は何処か名残惜しそうにそう言った。

 

「半世紀もすれば、東方の『シャンバラ』が完成する。彼女が歌姫たちを用意するゆえ、下僕達の遊びにでもすればよろしい。」

「あぁ、『フィーネ』と言ったか?確か卿の知り合いだったみたいだな?」

「なに、彼女とは多少の縁がありましてね。もっとも向こうは私を忌否してはいるが…………ともかく今回の契約で、あなたの魂は他に比類なき強度を得た。聖櫃創造の試行も果たした以上、『怒りの日』まで“こちら”に留まる理由はありますまい。万全を期すために、幾人か“あちら”に連れて行ってはいかがです?」

「無論、もとよりそのつもりだ。『ザミエル』『シュライバー』『ベルリッヒンゲン』そして『アイン』………彼らを共に連れて行こう」

「よろしいので?あの三人はともかく、あの狂犬は貴方でも手綱を引くのに手間取うと思いますが………」

「構わんよ。あれもあれで実に可愛げのある奴だ」

 

眼下に地獄を配したままに黄金の男とカールはチェスに興じるかのような口調で話しあう。

そしてその光景を見上げている黒衣の軍服の者たち。

彼らこそ、黄金の獣の爪牙−−−−−“人を超えた魔人”の集団。

先程、彼に名指しで指名された者たちの反応は様々だった。

 

ある者は落涙し、名指しされた名誉に震え、より一層の忠誠を心に誓い

 

ある者は不貞腐れ、しばらく人を殺せなくなる事が悲しく、いまのうちに出来るだけ殺っておこうと考え

 

ある者は無言で、その暗い瞳でカールをずっと凝視して他の何も見ておらず

 

ある者は舌打ちをし、以下にもあの男に名指しされた事が心底嫌そうな表情をしていた。

 

 

「ではまたいずれ、『獣殿』。再び我らがまみえる時こそ、互いの目的が成就すると祈りましょう」

「否、成就させると誓うのだ。傍観するだけでは何も掴めん。卿の悪い癖だなカール」

 

 

この日、世界を敵に回した『ナチス第三帝国』は壊滅した。

戦争の為に密かに収集されていた数多の秘宝、聖遺物が何処にいったのか…………未だにもって不明である。

 

        ーーーーー

そして時が流れ、2045年某日………

 

深夜――――

一部を除けば誰もが深い眠りに至る丑三つ時。

車一つも通らない首都高速道路に一つの人影があった。

詳しい姿は影に隠れてるため分からないが何一つ動かずただじっと待っていた。

 

カツン――、ふと二つの足音が聞こえ首都高に響き渡る。それは徐々に人影へと近づいていき人影の前に二つの影が出来上がった。一人は長身でもう一人は小柄と思わせる大きさで詳しい姿は影に遮られている為うまく確認出来ない。

 

「お待ちしていましたよお2人とも」

 

ふと、最初からいた人影…………声からして男性だろうか目の前に来た二人の人物へ話しかける。

 

「本当にお久しぶりです、『ベイ中尉』に『マレウス准尉』。月並みですが、相変わらずのようですね」

「相変わらずってことは、昔のまま進歩がねぇとでも言いてぇのか?言葉選ばねぇと死ぬぞてめぇ」

「ごきげんよう神父様。貴方は変わっていないというより怠け過ぎなんじゃないかしら?」

 

男から名を呼ばれた二人……………『ベイ中尉』と呼ばれた男と『マレウス准尉』と呼ばれた少女はそれぞれ反応を返す。

ふと男はキョロキョロと周りを見渡す。まるでもう一人足りないと思いながら。

 

「そういえば、『ノーネーム伍長』のお姿が見えないのですが………」

「あぁ、あの子?なんでも「行きたい場所がある」と言って一旦別れたわよ」

「行きたい場所………?なるほど、あそこですか………」

 

『ノーネーム伍長』と呼ばれる者についてマレウス准尉が答え、男は何か心当たりがあるのかほくそ笑んだ。

 

        ーーーーー

「〜〜♫」

 

月明かりに照らされたとあるライブ会場の壇上で、一人歌を口ずさみながら踊る少年がいた。

口ずさんでいる歌は『逆光のフリューゲル』。そう、いわずもかな2年前このライブ会場で『ツヴァイウィング』が歌った曲であり少年にとって思い出深いものであった。

 

「ここに来るのも、2年ぶりですね…………………奏さん」

 

自身を照らす月を見ながら、少年は何処か懐かしむ様にそう呟いた。

 

        ーーーーー

 

「ノーネームの事なんざどうでもいい。オイ、『クリストフ』。今何人がシャンバラに来ている」

 

ノーネームの事などどうでもいいかの様な口ぶりで男を『クリフトフ』と呼ぶベイは彼に言う。これから起こる事への確認を取るために。

 

「『レオンハルト』『ゾーネンキント』『バビロン』に『トバルカイン』そしてあなた方と今ここにいないノーネームと私で計8人。私はあと4、5日はここを動けないものでして」

「…待って。今言った『レオンハルト』って誰?『ヴァルキュリア』の抜け番かしら?」

 

クリフトフの言葉にマレウスはふと疑問を口にする。彼女の知る限り『レオンハルト』と呼ばれる者はおらず、ある理由で居なくなった『ヴァルキュリア』の代わりなのかと。

 

「えぇ、あなた方も面識はあるでしょう。あの日本人の小さなお嬢さんですよ。どうしてなかなかたいしたものになりました」

「へぇ」

「ほぉ」

 

マレウスの疑問に『クリフトフ』は答える。どうやらベイとマレウスとは幼少期に面識があると言うような言い方である。

 

「二人とも。わかっているとは思いますが、今『黒円卓』に空きを作るわけにはいきません。たとえ新参でも、未熟者でも、黄色い劣等であろうとも、彼女の存在はいるのですよ。わかりますね」

 

二人から感じた不穏な気配を感じ取ったのか釘を刺すように男が言葉を続ける。

 

「わかってるわよ当然じゃない」

「これで残ってるのは『シュピーネ』だけだが、あいつはいつ来る?」

「彼は、もうしばらくかかるでしょう。わたしが少々、調べ物を頼んだのでね」

「んん、何それ?気になるなぁ」

「おいマレウス」

 

調べ物という単語に反応したマレウスにベイが待ったをかけた。

 

「別にいいじゃねえか。『代行殿』が腹黒いことやっててくれりゃあ、こっちも色々手間が省ける。俺らは掃除してればいいのさ」

「掃除っていうか、狩りでしょう?『メルクリウス』のクソ野郎が言っていた『歌姫(ディーヴァ)』って子達がいる筈じゃなかったかしら?」

「……准尉、ほどほどに。ともあれ、副首領閣下は私達と同じ聖遺物を扱う者たち………『歌姫(ディーヴァ)』の出現をこの地に予言いたしました。あなた方はまず待機を。『歌姫(ディーヴァ)』を見つけ次第、こちらから挨拶に行くつもりで」

「レオンは?あの子は協力してくれないの?」

「『歌姫(ディーヴァ)』をおびき寄せる為の工作をしています。まあ、後で貴女がたにも手伝ってもらいますが」

「なるほど」

「了解、楽しくなりそうよ」

 

クリフトフが言う『歌姫(ディーヴァ)』が何を指すのか分からないが二人の表情は楽しみそうにしていながらも何処か不気味さを漂わせる笑みをしていた。

 

「では―――」

 

すると、あたりの空気がガラリと変わった。三人からさきほどの様な道化たようなものでなく厳粛と言っていい雰囲気だ。

 

「あらゆる悪も、あらゆる罪も、あらゆる鎖も汝を縛れず、あらゆる禁忌に意味はない。汝の神、汝の主が、汝をこの地へ導き給う。汝はその手に剣を執り、主の的を滅ぼし尽くせ」

 

「息ある者は一人たりとも残さぬよう生ある者は一人残らず捧げるよう」

 

「男を殺せ。女を殺せ。老婆を殺せ。赤子を殺せ。犬を殺し、牛馬を殺し、驢馬を殺し、山羊を殺せ」

 

「恐れてはならない。慄いてはならない。疑うことなどしてはならない。汝は騎士。獣の軍勢。神が赦し、私が赦す。汝の主が総てを赦す」

 

「汝が名誉は忠誠なり」

 

「「我らが名誉は忠誠なり」」

 

「『聖槍十三騎士団黒円卓』は此処に汝らを祝福する」

 

 

 

「「「我らに勝利を与えたまえ(ジークハイル・ヴィクトーリア)」」」

 

 

 

 

 

これは前狂言に過ぎない……………

 

しかし、恐怖劇の開演は近い……………




一話は多分、前後に分かれそう…………(前編は半分出来上がっている。)

ともかく、不定期になるかもしれませんが完走目指したいです………

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