戦姫絶唱シンフォギアDB   作:聖杯の魔女

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今回は難産だった………
クリスファンの皆様には、申し訳ありません………

あ、後書きでお知らせあります。


ACT4

「ん………」

 

目が覚めると、目の前には白い天井が広がっていた。あれ?確かアタシは新種のノイズの掃討に行って、その後………

 

「クリスさん!目覚めたんですね!」

「エルフ………ナイン………?」

 

視線を向けると、エルフナインがこちらを心配そうに見ていた。

どういう事か聞こうと起き上がろうとした瞬間、身体中のあちこちから痛みが走り、グッ……と強張った。

 

「無理しないでください!本来なら重症だった筈なんですから、一応安静に………」

「重症…………?そもそも、あたしはどうしてここに………ッ!?」

 

そして、ようやく思い出した。そうだ、あたしは……!

 

「あたしは…………!アイツにッ………!!」

 

そう、ギアペンダントを強く握りしめながらあたしはついさっきの、出来事………ヴィルヘルムといった男になすすべなくやられた事を思い出した。

 

ーーーーーーーー

 

「おらぁ!!」

「ッ!!」

 

飛びかかったヴィルヘルムは右腕を振り上げて攻撃しようとするに対して、あたしは咄嗟に飛び退いた。

瞬間、対象を外した右腕はそのまま、コンクリートで舗装された道路を打ち砕いて、は……?

 

「はははっ!さっきと続いて二度連続かよ。ド素人に躱されるほど手ぇ抜いたわけつもりもねぇんだけどな。俺が日和ったのかお前が期待どおりだったか………見たとこ、ガキの割に結構な死線を掻い潜ってやがるな」

 

笑いながらそう言うアイツの言葉は、今のアタシの耳には届いていなかった。先程見せたあいつの馬鹿力、今まで対峙してきた敵だと、後輩二人が倒したミカっていうオートスコアラーと、前にあのバカと一緒に戦ったヴァネッサとかいう奴と同じか………?

ともかく、今までどおり気を引き締めていかねぇと……

 

「しっかし、聖餐杯に宣戦布告だからなるべく手加減しろって言われたけどよぉ。難しいもんだな、オイ」

 

手加減?アレが?今、コンクリートを打ち砕いた一撃が、手加減……?それに宣戦布告……?そもそも、アイツは何が目的で、あたしに襲いかかったんだ……?

 

「お前、それはどういう………」

「あぁ?わかんねぇのか?今回は手加減してやる(・・・・・・・・・・)って言ってんだよ。こっちは“武器”は出さねぇで、片手だけでやってやっから、お前はさっきみてぇに銃でもボウガンでもガトリングでもミサイルでもなんでもいいから使ってみろや。お前ら『歌姫(ディーヴァ)』が実際何者だろうと、要は遊べるかどうかだしよ」

 

アタシの質問に対してアイツは、そう答えた。聖餐杯という新たな単語と宣戦布告という4文字。先の言葉から要するに目の前の男は何処かの………しかもあたしらS.O.N.Gですらも分からない組織に属していてアタシを襲ったのはその宣戦布告だと。そこまでは、理解した。けど、一つ解せないことがある。それは―――――

アイツが、完全にアタシの事を下に見ていたって事を。

上等だ、そこまでアタシを馬鹿にするってぇなら…………!

 

「じゃあてめぇのお望みどおりに、全部使ってやらァ!!!」

「おもしれぇ!」

 

そのヴィルヘルムの叫びと共に、再び右腕の掌底が振るわれる。いや、違う!さっきは咄嗟に回避したからわからなかったが、あの得体のしれない馬鹿力から繰り出される掌底はもはや鉤爪だ。当たったら、ただじゃすまねぇ!

そう判断したあたしは胴がねじ切れる勢いで身体を捻って攻撃を回避した。

 

「グッ――――!?」

 

行き場をなくした攻撃はアタシの後ろにあった街灯をそのままへし折りやがった……!

何なんだよあれ!?アイツの身体は、一体どうなってやがんだ!?錬金術での強化ならわかるが、アレはそんなちゃちなもんじゃねぇ。その証拠に、さっきのバルカンでの攻撃を受けといて身体には一切の傷がなかったしピンピンしてやがった。

いや…………落ち着けあたし。相手は人だ。たとえ規格外な力を持ってる化物だったとしても必ず急所が存在する筈。例えば目、例えば脳。それに加えてこっちは急所を的確に狙えるアタシのアームドギア(武器)、向こうは素手。勝機は五分五分だがアタシに優位はある。なら……!

 

「ハハハッ!二度に続いて三度目か!次はもう少し早く行くがよ………てめぇ、簡単に死ぬんじゃあねぇぞ――――」

 

そして、ヴィルヘルムの四度目の掌底を振るう。改めてみるがアイツの動きはおっさんやあのバカが使っている格闘技とか武道絵とかの様なものじゃない。

ただ無闇に速くて、そのくせ異常に重い純粋な暴威の塊。

工夫は弱者の特権だと言わんばかりの力任せは、最初から強ぇ奴特有の傲慢さ誇示していた。

けど、それがかえってアタシにチャンスを与えたのと同じだった。

すぐさまアタシは、胸骨ごと心臓を抉り取るような一撃を躱し、手に持っていた銃二丁を仕舞ってライフルを取り出すとつかさず銃口をアイツの額につけ、一寸の迷いもなく引き金を引いた。

スピードとタイミングは共に完璧。もう一度同じことをやれと言われたら不可能なほどにキレイに嵌ったカウンター。バギュン!!と銃音がアタシの耳に響き、続けて腰部のミサイルポッドを展開、つかさず全弾を発射して後退。近距離からの額への急所射撃に続いて全弾発射。文字通りアタシの全身全霊を込めた攻撃は、しかし――――

 

「で?」

「――――――ッ!?」

 

額に穴が開くどころかびくともしないアイツが体制を崩さずにその場に立っていた。嘘だろ……!?こりゃあどういう!

 

「取らせてやってこの程度かよ。こりゃどういうことだオイ」

 

アタシはそのまま持っていたスナイパーを振りかぶる。額が駄目なら脳天からの一撃なら倒せなくても昏倒ぐらいなら!

けど、怖気が走るような音と共に、振りかぶったライフルはアイツの脳天に直撃した途端に、砕け散った。なんだよそれ、冗談じゃねぇし有り得ねぇ!?コイツの身体はいったい何で出来てんだ!?

 

「どうした、おい?それで終わりか?根性見せろよ」

 

そして、つかさずアタシの空けた顔へヴィルヘルムのアッパーが繰り出され、アタシは咄嗟に腕を交差させて受ける――――が、まるで高速で突っ込んできたトラックにぶつかったかのような衝撃が私にふりかかり、そのまま吹き飛ばされた。

 

「グッ――!?があぁぁ!?ッ!」

 

そして、威力はやまずそのままビルの壁に激突。衝撃で脳がぐちゃぐちゃになったと、同時に嘔吐感がこみ上げる。

 

「が……!げぇ…………ッ!」

 

痛い……!痛い……!何なんだよこれ……!?ちゃんと機能しているのかシンフォギア!?と慟哭したいほどの激しい激痛がアタシに襲いかかる。

さっきのアッパーを防いだ結果、頭はまだぐわんぐわんするし、守られているはずの右腕の骨とアーマーが粉砕、血反吐を吐きながらもかろうじて立ち上がる。

さっきので、右腕は逝っちまった………残る左腕でなんとか、アームドギアは持てる。それに、足もまだ生きている。なら……

 

「はぁ……はぁ……、グッ……!」

 

痛みを押し殺しながら、アタシは立ち上がり折れてない左上で、ハンドガンを持つ。頭も少しは楽になってきた一方で、そんなアタシがもがくさまを見ているヴィルヘルムは薄ら笑いを、浮かべている。アイツ………!馬鹿にしやがってェ……!と、悪態をつく間にもアイツが再び右腕を構えた。……来る!

 

「ぐぅッ!!」

 

続く攻撃をギリギリで躱す。先に宣言した通りに片手しか使っていないのに拘らず速すぎる!そして、その一つ一つがシンフォギアの防御を砕くほどの威力を持っていて、掠りでもしたらシンフォギアの装甲は砕け、血が飛沫(しぶ)く死の旋風。

あの攻撃をずっと躱し続けられると聞かれたら間違いなくアタシはNoと答える。はっきり言って無理だ。

しかも、力学をまったく無視した片手だけの多角攻撃(・・・・・・・・・)は徐々に速くなっていやがる。アタシが一発躱すごとに少しずつギアを上げるかの様に加速していく。もう、目で終えるレベルじゃねぇ。

故に勘―――死線ぎりぎりで発揮される本能しか、今のアタシが頼れるのはそれしかなかった。

けど、これじゃあジリ貧になるのは火を見るより明らか。

考えろ……!考えるんだアタシ……!

と、考えてる間に背にヒヤッとした感触がした。いつの間にか街灯まで追い詰められてたのか………!いや、むしろこれはチャンス!覚悟を決めろ、雪音クリス!

 

「へぇ……」

 

どうやら、向こうもこっちの意図を察したみたいだ。そうと言わんばかりに掌底の一撃が放たれる。喰らえば首と胴が泣き別れしかねない攻撃を街灯を盾にしてやり過ごす

その結果、街灯はさっきのと同じように真ん中から真っ二つに折れ曲がる。確かに恐ろしい破壊力だけど、むしろ計算通り……!

折れてヴィルヘルムの方へ倒れる街灯はアイツにとっちゃあ対した事はないけど、アタシにとっては好都合!

すぐさま、標準を街灯のランプ部に当てて発砲。バァン!と撃ち出された弾丸はランプへぶち当たって発火。火はヴィルヘルムに燃え移り炎上する。

 

「はっ」

 

だが、数秒も立たずにヴィルヘルムは腕を一払いしただけで炎を打ち消した。皮膚には火傷の痕はない、マジで何なんだアイツの身体は………!だが、それもアタシの予測通り。本命はこの数秒!アイツが燃えてるスキに肩部からミサイル二本を展開させて………

 

「持ってけダブルだぁ!!」

 

ーMEGA DETH FUGAー

 

発射!アイツが火を消す頃にはもう遅い。ミサイル二本は既に発射されそのままアイツに着弾。そのまま大爆発を起こした。

 

「―――ッ!」

 

爆風を左腕で守り、アイツがいた場所からあがる黒煙を見やる。流石にミサイル二本による火力はアイツでも耐えきれないだろう。人を殺めてしまった事が心に痛いが、アイツはアタシを殺す気で来ていた。だから―――

 

「オイ、お前」

 

と、突然、黒煙から腕が突き出てきてガシッ、と首を掴まれた。そして黒煙が晴れその中からサングラス以外は無傷のアイツが出てきた。嘘だろ………!?ミサイル二本ぶんだぞ!?生きてるはずがねぇ!ちくしょう、嘘だろ。これでも駄目なのかよ………ぐっ、息が………!

抵抗と言わんばかりにアタシはヴィルヘルムのスネに蹴りを入れるが…………案の定、砕けたのはアタシの右脚だった。

 

「ッ――――!?――――!!!」

「さっきから何なんだ?まさか、これが歌姫(ディーヴァ)の全力って言うのかよ。俺はまだ右腕しか使ってねぇのに、なんだその様は?」

 

右脚の骨が砕けた、痛みに耐えきれず首を掴まれ悲鳴を上げることができないアタシを無視して、アイツはただ失望したかのように何かをぶつぶつと呟いてた。

 

「なぁ、この際ハッキリ言うけどよ。正直暇してたんだよ、百年間ずっとよぉ。もうシケた祭りじゃ満足できねぇ。だからよ…………俺にここまで期待させて、萎えるオチつけさせたらお前………」

 

そしてギロッと、見開かれた赤い瞳から迸る赤光を放ちながらアタシの視線に合わせ、何でもないことのように言い放った。

 

「この街、地図から消しちまうぞ?」

「―――――ァ!?」

 

目眩がする。喉はガラガラになり呼吸一つすらままならない。出血している箇所は血が蒸発していき、さっきまで熱かった身体は、まるで生命力を吸われるかのように急激に下がっていき震える。

けど、一つだけわかることがある。こいつは本気(マジ)だ。その気になれば、さっき言った事を実行に移せる。それは、さっきの戦いでアタシが一番思い知らされた。

怖い―――コイツにはアタシらの常識がまったく通用しない―――!

 

「チッ、脅しただけでコレかよ。こりゃ完全に外れだな」

 

そして、掴んでいたアタシを投げ飛ばし、胴を捻り回し蹴りの構えを取りながらアタシに対してもう興味がないかのように、吐き捨てる。

 

Auf Wiedersehen(あばよ)魔弓の歌姫(イチイバル・ディーヴァ)。コイツに、期待した俺が馬鹿だったぜ」

 

そして、アイツの回し蹴りが腹部に見事に直撃し、想像を絶するような痛みに耐えきれずに、アタシはそのまま意識を失った……

 

ーーーーーーーー

 

「……………クソッ!!」

 

今までの事を思い出した事で、悔しさがこみ上げ思わずギアペンダントを握っていた拳をベットに叩きつける。

悔しかった、人の命をなんとも思わねぇ奴になすすべなくやられ更にはスキ放題言われて、報いの一つすらできなかった事に。

 

「ク、クリスさん………」

「……わりぃ、少し頭に血が登ってた……」

 

と、いけねぇ。エルフナインがいた事を思い出し、自身を落ち着かせる。そう、いくら憤怒してても、アタシが負けた事は事実。しかし、それ以上にシンフォギアを纏ったアタシを素手で倒したアイツへの恐怖はわずかにあった。ふと、そこまで思い出すとアタシはハッと、気づく。

 

「そういや、先輩たちは?それにアタシの傷は………」

 

そう、別の場所で新種のノイズと戦ってた先輩たちはどうなったんだ?それに、さっきのアイツとの戦いでアタシの右腕と右脚の骨は折れた筈なのに、今はそんな事が無いかのように自由に動かせている。

 

「響さん以外は、突然現れた黒衣の軍服の人たちにやられてクリスさんと同じように入院しています。ですが、軽度の怪我でしたので明後日くらいには退院できるかと……。それとクリスさんの怪我なんですが、響さん曰く、黒衣の軍服の人たちの一人が重症だったクリスさんを一瞬で直した、と言ってました」

「そうかよ…………」

 

よかった、あのバカ()はともかく、先輩たちは命に別状はなかったことに、内心ホッとした。けど、次にエルフナインが言ってた黒衣の軍服の人たちという、言葉が気になった。そういや、アイツも黒い軍服を着てたけど、まさか先輩たちを倒した奴らと関係が………それに、その一人はアタシの怪我を一瞬で直した………アイツといい、わざわざ敵であるアタシの怪我を直した奴といい一体なにが目的なんだ?

 

「現在、彼らについてはSONG総出で調査にあたっています。装者の皆さんは情報が見つかるまで待機してください。後のことはボクたちにお任せください」

「わかった、エルフナインも無理すんなよ?」

「お気遣い、ありがとうございます。では、ボクはこのへんで失礼します」

 

と、そう言ってエルフナインは退出して、病室にはアタシ一人だけが残った。

けど、アタシの心はまだ晴れてなかった。攻撃がまったく効かず、ましてやシンフォギアによる防御すら貫ける身体能力を持っているヴィルヘルムとかいう男と黒い軍服の奴らに多少の恐怖はあった。ほんとに、あいつ等いったい何なんだよ…………

 

「って、考えても仕方ねぇか……」

 

そう、呟いてごちゃごちゃになった頭ん中の整理と身体を休める為に、ベットに横になりそのまま瞳を閉じた。

 

ーーーーーーーー

 

「はぁ………」

 

今日で何度目か分からないため息を吐く。あの日から3日が経ったけど未だに進展はなく手がかりも見つからないままだった。

変わった事といえば、今日クリスちゃんが目覚めた事と入院していた翼さん達が明後日に退院するってことを師匠から教えてもらっただけでそれ以外は特になかった。

私もなにか力になりたかったけど師匠たちは『気遣いは感謝するが、君には学生としての本分がある。後の事は俺たちに任せてくれ』っていうような事を言われちゃった。

 

「はぁ………」

 

でも確かに師匠たちの言う通り、来年で私達は卒業するから学業を疎かにできないのはわかる。でも、あの戦いで私だけが無傷でいた事に翼さんたちに申し訳ない気持ちが半分あった。

そして、もう半分は………………

 

「あの子の名前………なんて言うんだっけ……?」

 

そう、あの時出会った、眼鏡の子の名前が思い出せない(・・・・・・)のだ。あの日の出来事はいくら私がバカでも脳裏に焼きついていて忘れたくても忘れられないのに、あの子の名前だけはまるで霧がかかったかのように思い出せない。

 

「はぁ………」

 

またため息を吐く。かれこれ一日中に何回したんだろう。そのせいか、授業にあまり集中できなくて先生に何度怒られたか………いや、しょっちゅうだったような。と、そんなモヤモヤした気持ちのまま昼食も食べずにそのまま学校の屋上に向かっていた。途中で未来の呼び止める声が聞こえたけど今は、なんとなく一人になりたかった。と、そうこう考えていた間に屋上への扉の前に辿り着き、扉を開けた。

 

「って、寒ッ!?」

 

そういえば………この時期の屋上は結構寒くなるんだったっけ。念の為に、コート持ってきてよかったぁ……と思ってコートを羽織りながら辺りを見渡す。

流石にこの寒さの中なのか、屋上に来る子たちがまったくいなくて閑散していて……

 

「…………………」

「…………………」

 

いや、一人いた………その子は屋上に設置されているベンチに座って昼食のサンドイッチを黙々と食べていた。言うまでもなく、玲愛ちゃんだった。

そういえば、玲愛ちゃん、昼食はいつも屋上で食べてたんだっけ。

 

「……………………」

「えっと………玲愛ちゃん……?」

「……………………」

 

さっき、扉を開けた音が聞こえた筈なのに玲愛ちゃんは、気にもしないで食べ続けていた。

気になったので、私が隣に座っても何も反応はしめさなかった。

というより、こんな寒中の中で昼食を食べるのは中々勇気があるっていうかなんというか………

 

「さむい………」

「だあああああ!!??」

 

前言撤回、やっぱり我慢してた。ていうか、寒かったらせめて何か言ってよ玲愛ちゃん!コート貸してあげたのに!

そう思いながらもつかさずコートを玲愛ちゃんの肩にかける。と、ようやく私に気づいてくれたのか視線を私に(顔は相変わらず無表情だけど)向けてくれた。

 

「立花さん………いたの」

「いや、ついさっき来たんだけどね。あはは……というより、玲愛ちゃん、よくこんな寒い中で昼食食べれたね」

「うん、けど正直12月を舐めてた。天気予報も当てにならないね。でもコートありがとう立花さん」

「いいよいいよ、友達だから当然だよ」

 

そうはにかみながら笑うけどビュウと吹いた北風が当たってあまりの寒さに縮こまる。うぅ……コートないと余計寒い……!

 

「なんだったら、二人で一緒に着る?こう仲良く肩寄せ合って」

 

と、玲愛ちゃんがかけているコートの右裾を広げて、空いた部分のベンチをポンポンと叩いた。ようは、コートを二人でシェアして温まろうという事らしい。

そんな、玲愛ちゃんの好意に甘えて移動し入る。ふゆぅ……あったかい……

 

「あ、でも一応釘は指しておくけど。私、立花さんと、小日向さんと違って『そっち』の趣味はないからあまり期待しないで」

「いきなり、なに!?いくら私が彼氏いない歴=年齢だからって『そっち』じゃないから!?ノーマルだから!?」

「え?てっきり、暁さんと月読さんのように小日向さんと付き合っているのかと」

「未来はただの親友だよ!?あと、切歌ちゃんと調ちゃんは『そっち』側じゃないから!多分………」

 

そういえば、シェム・ハさんとの戦いの後、なんだが距離が縮まったような気が………アレってそういう意味じゃないよね?友達としてのアレがああなってアレになって、なんかややこしくなってきた!?

 

「ふふ……よかった、立花さん。いつもの調子に戻って」

「ふぇ?」

「今日、あまり元気なかったから心配してたんだよ?」

 

そう少しの笑みを浮かべながら私を見ている玲愛ちゃんの言葉から察するのに、玲愛ちゃんも玲愛ちゃんなりに心配してたから、私を元気づけようとしてあんな事を言ったのかな?玲愛ちゃんらしいといえばらしいなぁ……

確かに玲愛ちゃんは、ドライな発言をする事はあるけどこうやって心配してくれるから決して冷たい人じゃないって事は私がよく知っているから

 

「それと、立花さんのこと心配していたの、私だけじゃないってこと。知っているでしょ?」

「あ」

 

そうだった、玲愛ちゃんだけじゃなかったっけ。きっと……………と、そう思いかけた時だった。

 

「いた。やっぱり、屋上に来てたね響」

「ビッキー、今日元気なかったけど大丈夫?」

 

突然、聞いたことのある声が聞こえてきてそっちへ向くと案の定、未来だった。他には、同じクラスで友達の板場弓美ちゃん、寺島詩織ちゃん、安藤創世ちゃんも私の事を心配してくれたのか、未来と一緒に来ていた。

 

「今日の立花さん、表情があまり優れていませんでしたので、何かあったのか気になって」

「あの時といい、この前のことといい、ホント響って、アニメの主人公みたいな生き方してるよねぇ」

 

さっき、私の事を『ビッキー』って呼んだ創世ちゃんは、久しくなった人や友達によくニックネームをつけていて、未来の場合は『ヒナ』、玲愛ちゃんは『ヒムテン』と、言った具合にちょっとネーミングセンスはあれだけど、基本使っているのはこの子だけで後はみんなにはあまり浸透していない。

詩織ちゃんは普段はおっとりとしてるけど、意外にも有事の時にはまったく慌てずに落ち着いていて、結構肝が据わっているんだ。あと、結構ノリがよくて今年と昨年の秋桜祭での『アレ』はすごかったっけ。

最後に弓美ちゃんは、さっきの比喩表現のようにアニメが好きで、このリディアンに入ったのもアニソンを広めるためって言ってたけど、結局あれどうなったのかなぁ……?

因みに、最近のブームは『シルヴァリオサーガ』っていう三部作のアニメシリーズでアニメ以外にも他の方でも結構人気みたい。弓美ちゃんの他にも玲愛ちゃんと切歌ちゃんも、ファンだから時折そのネタが出ることがあると思うけどあまり気にしないで。私もあまり知らないから!って、誰に言ってるんだろ私………

 

ともかく………未来と玲愛ちゃんだけじゃなく3人も私の事を心配してくれていたんだ。そうだよ、自分は一人なんかじゃない。翼さんや、クリスちゃん、マリアさんに切歌ちゃんと調ちゃんだけじゃなく、私が守るべき日常の弓美ちゃん、詩織ちゃん、創世ちゃん、玲愛ちゃん、そして親友で私の大切な陽だまりの未来がいるんだから。

 

「みんな………ごめん、心配かけさせちゃったみたいで」

「別にいいよ。3日前からずっと元気がなかったから。なにかあったの?」

「よかったら、相談にのってあげますが」

「なははは………うん、ちょっとね」

 

けど、どうしよう……いくら、私がシンフォギア装者である事を五人は知っているとはいえ、任務の事は極力外部には話さないようにって、師匠に言われているし。とりあえず、私は任務の内容は少しぼかして未来たちに話した。

 

「なるほどねぇ、顔は知ってはいるけど名前だけは思い出せない子、かぁ………」

「立花さんは、ちゃんと名前を教えてもらったんですよね?」

「う、うん………」

「確かにそれはおかしいね、いくら人助けで遅刻するのは序の口でテストは赤点ギリギリ、挙句の果てには夏休みの宿題を二学期までに終わらせられずに提出期限を延長させてもらった立花さんでも始めて会って教えてくれた名前をたった3日で忘れるのはありえないから」

「酷いよ!?玲愛ちゃん!?」

「うわぁ、ひむてん相変わらず容赦ない………」

「あはははは………あの時は、本当にありがとうございました………」

 

うぅ………確かに夏休みの宿題、玲愛ちゃんも手伝ってくれたのは事実だけど流石に馬鹿だってことは自覚している私でも流石に凹む………

 

「けど、それが立花さんのいいところなんだけど」

「玲愛ちゃん……!」

「ビッキー、ひむてんに言いくるめてられてるから………」

「しかし、名前は覚えていないのにそれ以外の事は覚えてるとなると………名前は忘れてもその人と会話をした記憶は確かにある、と?」

「うーん……例えるなら、シルヴァリオのゼファーとマイナ、アッシュとレインみたいな?そういう感じ?」

「いや、それは流石に違うと思うよ……」

 

詩織ちゃんの仮説にいつも通りのアニメの比喩表現で例えた弓美ちゃんに苦笑する未来。

でも、それだとどうして覚えているのに名前だけはすっぽりとそこだけ抜け落ちてるんだろう……?

あ、そういえば………そもそも、あの時どうしてあの子は悲しそうな表情をしていたの?わからない………けど、あの子はあの黒軍服の人たちの中でなにか違うような気がしてならない。 

もしかしたら、話し合えば分かりあえるかもしれない。今度、また会えた時にその事を伝えよう。どうしてこんな事をしたのか、なにが目的なのか、私になにか出来ないか、今度こそ絶対に……

 

「響?」

「うぇ!?あ、ごめん!考え事してた………」

 

あ、しまった。余計に心配させちゃった………。と、そんな暗かった空気を創世ちゃんのある提案で吹き飛んだ。

 

「じゃあさ、久々にみんなで『ふらわー』に寄って行く?最近、おばちゃんに顔見せてないからさ。それに、ビッキーを元気づけるためにもさ」

「おっ!いいね、久しぶりにみんなでお好み焼き、食べよっか!」

「だ、そうです。立花さんが嫌でなければですが」

 

『ふらわー』………!そういえば、最近行ってないなぁ………、おばちゃんにもあんまり会ってないし……

それに私を元気づけるためって、言ってくれてたあたり、私の事を気遣ってくれているんだ。

うん、だったらもちろん……!

 

「ありがとう、創世ちゃん。未来もいいよね?」

「うん、響がそう言うなら」

「よっし、決まり!あ、だったらさ氷室も一緒にどう?」

「お誘いありがとう。けど、今日はお客が来る日だから、早く帰らないといけないの」

「お客………?」

 

お客?玲愛ちゃんのとこに?誰なのかな………?

 

「それじゃあ、そろそろ昼休みが終わるよ?」

「えっ?って、ヤッバ!?もうすぐ時間じゃん!!じゃあ、放課後!一緒にふらわーで!」

「あ、うん!わかった!」

「では、立花さん、小日向さん、お先に失礼いたします。」

 

と、弓美ちゃんはそれだけを言って先に屋上から出た氷室ちゃんの後を追うように詩織ちゃんと創世ちゃんと一緒に教室へ戻っていった。

 

「私達も戻ろっか、響」

「あ、うん。そうだね、未来」

 

と、私も未来と一緒に戻る。ちょうどチャイムがなる一分前で、急ぎ足で屋上を出ていった

いつの間にか、心のモヤモヤは晴れていた。




突然ですが………実は、新作を二本書こうと思いまして、DBの更新がまた遅くなるかもしれません。
元から不定期だからなんだ?とか思う読者がいるかもしれませんが………
因みに書く新作はこちらになります↓

・結城友奈は勇者である×ゼノブレイド2クロスオーバー

・中学の頃、pixivで書いてた魔法少女まどかマギカとゴッドイーターのクロスオーバー小説のリメイク
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